仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
ザンキ流とイブキ流、そして零達がバケネコを退治したその一方。拠点の留守を魚見と映紀に任せた梓はいつも修行場として利用している近くの森林で、ひとり修行に励んでいた。
梓(私も早く鬼にならないと……!いえ、なってみせないと!)
太鼓代わりの板がえぐれる程に太鼓撥を何度も熱心に叩き付ける梓の脳を過ぎるのは、これまで魔化魍を倒してきたヒビキやザンキにイブキ、そしてカッパを撃退したディケイドの姿を間近で目の当たりした時の記憶。
一日でも早くあの人達のようになりたい。そんな強い一心のままに額に汗を滲ませて修練を積んでいる中、ヒビキが近くの木の影からひょいっと顔を出し、軽い足取りで梓に近付いてゆく。
ヒビキ「あずにゃーん。何やってるの?」
梓「何ってっ、鍛えてるんです!今いい感じなので邪魔しないでください!」
そう云って彼女の言う通り徐々に修行に熱が入り始める梓。
ヒビキは後方腕組みでそんな彼女の真面目な修行の様子を暫しジーッと眺めていると、いきなり梓の手から撥を取り上げて適当にその辺に放り捨ててしまった挙げ句、おまけに練習台まで地面から引き抜いて倒して梓の修行を妨害してしまう。
梓「な…何するんですか?!」
ヒビキ「はい、練習はもうヤメヤメ〜。こんなのやったって疲れるだけだし、そんな事よりごはんにしよ〜。今えいちゃんが焚き火でお魚焼いてくれてるんだけど、どれも美味しそうだったよー!」
いきなりの暴挙に憤慨する梓の意見に耳を傾ける様子もなく、ヒビキは手を払いながらいつも通りヘラヘラした笑顔で話題を変えていく。
しかしこんな横暴。普段の彼女を知る梓からしてみればあまりにも違和感と不自然さを拭いきれず、ヒビキに詰め寄って問い詰めてしまう。
梓「ヒビキさん……一体どうしちゃったんですか?最近おかしいですよ!まっすぐ私を見てくれないし、鍛えもしてくれないし!」
ヒビキ「そうかなぁ?……あっ、見てよあずにゃん!綺麗な花だねー。写真撮って戻ったら皆も喜んでくれるかなぁ〜!」
梓「っ、ヒビキさん……!」
どんなに怒鳴っても、ヒビキはそんな彼女の声もまるでたまたま吹き抜けたそよ風の音を聞き流すかのように相手にもしてくれず、偶然見付けた足元に咲く黄色い花に目を向けるばかりで梓の方をちっとも見てくれようとしない。
その背中に梓も寂しさのあまり悲しげに眉を顰めてしまう中、そんな二人の背後にある樹木の影から一人の青年……大輝が忍び寄る姿があった。
大輝(お宝の巻物は、あの中か……)
どうやらヒビキが背負うバックパックの中に響鬼の世界でのお宝があるらしく、早速お宝を奪いに動き出そうとした直前だった。
ヒビキ「う〜ん……ほっ!」
ヒビキが花の写真を携帯で撮りながら振り返りもせず、屈んだ姿勢のまま予備動作もなしにもう片方の手でいきなりディスクアニマルを頭上に放り投げる。するとディスクアニマルはまるでブーメランのように空中で急に軌道を変え、そのまま大輝が隠れる樹木に突き刺さった。
大輝「なっ……(今、明らかに俺の気配を読んで……!?」
ヒビキ「今日はやけにお客さんが多い日だね〜」
梓「だ…誰なんですか…?」
のほほんとしたまま花の写真を撮り続けるヒビキ。気配は完全に殺していた筈なのに、緩そうな見た目と雰囲気とは裏腹にいつの間にか自分の存在に気付いていたヒビキに底知れなさを感じ、大輝は戦慄を覚える。
梓の方はそんな一瞬の間に密かな攻防が繰り広げられていたとは気付かず、木陰から現れた見知らぬ顔の大輝を訝しげに見つめていると、何枚か花の写真を撮り終えたヒビキがふと何かを思いついたように僅かに顔を上げ、黄色い花を一輪摘んで立ち上がり、梓と向き合って彼女の道着の胸ポケットに無言で挿し入れた。
梓「ヒビキさん……?」
ヒビキ「ちょうどいっかぁ。あずにゃん、たった今から破門ね。今日からの新しい師匠は〜……あの人でーす!」
梓「……はいいいい!!?」
あろう事か、出会って早々見ず知らずの盗人である大輝を指差して梓を任せると急に言い出すヒビキ。
そんないきなりの支離滅裂な発言に梓も困惑でただただ叫ぶしかなく、大輝も耳を疑って怪訝な眼差しをヒビキに向けるも、ヒビキの方は相変わらず毒気の抜けるテンションでブンブンと大輝に大手を振っていく。
ヒビキ「それじゃこの子のこと、後はよろしくお願いしますね〜!」
梓「……ま、待って下さい……!ヒビキさん!唯先輩!!」
突然破門を告げられて、戸惑う梓の声にヒビキは特に後ろ髪を引かれる素振りすら見せずに、そそくさと何処かへ去っていってしまった。
大輝(……惚けた言動をしている癖に、踏み込める隙が一切見当たらなかった……ある意味一番厄介な相手だな……)
梓「……ヒビキさん……」
ヒビキに置き去りにされ、途方に暮れて立ち尽くしてしまう梓。だが大輝の方はあのヒビキから今すぐお宝を奪うのは無理かもしれないと考えるばかりでそんな少女を前にしても気遣うつもりもなく、寧ろこの子ならお宝について何か他に手掛かりを持っているかもしれないとすぐに思考を切り替えて気落ちする梓へと歩み寄っていく。その近くで、
ヒビキ「………………」
あのままいなくなったかと思いきや、二人の近くの木陰に身を潜めながら苦々しい表情を浮かべて空を仰ぐヒビキ。
そして二人の方を一瞥すると、ヒビキは何処か名残惜しそうに二人に気付かれぬまま今度こそその場から静かに去っていってしまうのであった。
◆◆◇
―IᗷᑌKI Lesson Studio―
イブキ流の修行場である、清潔さと美しさで彩られたお洒落な施設に招かれた零とエリオとアズサの三人。
各々が手厚い歓迎を受ける中、外のテラスでティータイムを楽しみつつ、零はある興味深い話を聞かされていた。
零「音撃道秘伝の巻物?」
イブキ「ええ。これが、イブキ流のものです」
零達と同席するイブキは同じく隣に座る紬の手から受け取った一本の古びた巻物の紐を解き、テーブルの上に広げていく。
しかし其処に書かれてる内容は難解で回りくどい部分も多く、とてもじゃないがまともに読めるもののようには見えない。
アズサ「読めない……」
アスハ『字もところどころ消えちゃってるじゃないのよコレ。解読とかめんどそーだし、私はパス』
とは言いつつも元より興味が薄いのだろう。アスハは眠そうに欠伸をしながらアズサの意識の奥に引っ込んでしまう。
エリオ「何なんでしょう、暗号とかなのかな……?」
イブキ「分かりません。ただこの巻物には、音撃道の真のお宝が隠されているのだとか」
紬「その巻物は、3つの流派それぞれが持っています」
零「……成る程。ようするに三つ全部集めれば、その宝とやらの居所なり何なりが掴める系の奴って訳か」
イブキ「そのようですね。私の夢は、イブキ流が音撃道の頂点に立って、その宝を手に入れる事……なのでどうか、皆さんにもそのお力添えして頂けないかと、こうしてお招きさせてもらった次第でした」
三人を招待した理由を包み隠さず告白し、自分達の流派に手を貸して欲しいと改めて申し出るイブキ。その頼みに、零は呑気に紅茶を啜りながら淡々と告げる
零「大体分かった。ならまずはザンキ流でも潰すか」
イブキ「え……え?さ、早速ですか?」
零「弟子を助けるのが大師匠の務めだからな」
エリオ(ちょ、ちょっと零さん……!いいんですか?!そんな簡単に引き受けたりなんかして!)
即断即決でイブキ流からの頼みを引き受ける零に流石にエリオも顔を寄せて小声で心配の旨を伝えるも、零は至っていつも通りの真顔でティーカップを置きつつ同じように声の音量を抑えながら話す。
零(今のところ、この世界での滅びの現象も見られないしな。もしかしたらそのお宝とやらが原因で起きる可能性も捨て切れない以上、どっちにしろ件の宝とやらは一度見極めておく必要がある)
エリオ(あ、そういう……でも良いんでしょうか?なのはさん達に相談も無しに……)
零(その為の連絡役に市杵宍をあっちに置いてきたんだ。何か事態が動けば向こうからも連絡がくるだろう。一先ず俺達は流れに身を任せて、状況次第で臨機応変に対応を変えてくぞ)
エリオ(……分かりました。ちょっと申し訳ない気持ちもあるけど、そういう事でしたら、僕もお手伝いします)
その為にも先ずはザンキ流と事を構える必要があるがなと、面倒臭さを感じつつも音撃道の秘伝とやらの正体を確かめる方針を固める零の案に、エリオも若干なのは達への罪悪感を感じつつも同意を示し、頷いていくのであった。