仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―寂れた神社―
一方その頃。ヒビキから殆ど一方的に梓を押し付けられる形で彼女の新しい師匠になどとされてしまった大輝は、ヒビキからの急な破門宣告を受けて気落ちして大人しくなってしまった梓と共に、ついこの間、零達とカッパが戦いを繰り広げた廃寺の前で一緒に並び、座り込んでいた。
梓「嘗て音撃道は1つでした……イブキ流、ザンキ流、ヒビキ流の3つに分かれたとき、巻物も3つに分かれたそうです……」
大輝「なるほどね……。しかし、ちょっと意外だったかな。こんな簡単に資料まで見せてくれるだなんて」
そう云う大輝の手の中には、梓に頼んで読ませてもらっているヒビキ流に残された数々の古い関連資料の本が握られている。
つい先程、ヒビキと別れたばかりの彼女にこれらの資料をダメ元のつもりで見させてもらえないか申し出てみたのだが、彼女は思いの外すんなり受け入れた……というよりは、今はそんな事はどうでも良さそうに、梓は抱え込んだ膝の上に顔を埋めて酷く落ち込んでしまっている模様だった。
梓「巻物なんてどうだっていいんです……そんな事よりも、私はずっとヒビキさんの弟子でいたかった……」
大輝「そんなに落ち込むような事かい?俺が今の君の立場なら寧ろ、あんな中途半端に弟子を投げ出すような奴から開放されてスッキリするだろうけど」
梓「ヒビキさんはそんな人じゃありません!!」
ヒビキへの誹謗に、梓は思わず身を乗り出して大声で反論する。大輝は手元の資料から横目でそんな彼女の顔を一瞥すると、梓は俯き、再び膝を抱えてポツポツと語り出した。
梓「私……昔ヒビキさんが卒業した学校に通ってたんです……。私も元々音楽好きで、あの人の活躍とか知ってて憧れて、それを追う形で入学して部活とかにも入ったまでは良かったんですけど、其処から先は何だかんだあって上手くいかなくて……。特に大した実績も残せなかった自分は駄目なんだなぁって思ってた私に、ヒビキさんだけは言ってくれたんです……。「凄いよ梓ちゃん!私と一緒に音撃やろ!」って……」
大輝「へえ。それはよかったね」
梓「……でも破門にされて、それも不可能になりました……私、これから一体どうしたら……」
手を差し出してくれた師匠からも見放され、目指していた道も見えなくなった。やはり自分はダメだったのだろうか?だからヒビキに見放されたのか?頭の中でそんな嫌な想像や考えまでグルグルと巡り出した梓を他所に、大輝は粗方読み終えた資料を置いて立ち上がった。
大輝「君は君の思うようにすればいいんじゃない?取り敢えず俺は、ザンキ流とイブキ流から巻物を奪いにいくとするよ」
梓「……無理に決まってます、そんなの……今のヒビキ流と違って規模も大きいですし、ザンキさんやイブキさんも相当な実力者で……」
大輝「どうかな。やる気さえあれば、不可能な事なんてこの世には無いと思うけど?」
梓「……やる気……」
そういえば昔、ヒビキとの修行の中で似たような事を言われた覚えがある気がする。思い出に浸る梓の耳に、山門の方から不意にアホっぽい大声と共に一人の金色の長髪の女性……風麺の従業員姿のルミナがおかもちを片手に手を振ってやってきた。
ルミナ「師匠〜〜!!言われた通りの品、持ってきました〜〜!!」
大輝「意外と早かったね。仕事が速いのは君の良いとこだ」
ルミナ「にへへ〜、そうですかね〜?」
それほどでも〜と、満更でもなさそうに頭を搔くルミナ。大輝は彼女が持ってきたおかもちの中からラーメンを一つ取り出すと、梓の前に差し出した。
梓「え、何を……」
大輝「情報提供の礼代わりって奴さ。他人には借りを作らせるけど、自分が作るのは主義じゃないんでね。食べ終わったら後で回収しにくるから、どっかその辺に適当に置いときたまえ」
ほら、と促す大輝に圧されるまま、梓は大輝とラーメンを交互に見て若干戸惑いながらもおずおずとラーメンの丼を受け取っていく。
そうして用が済んだ大輝はその場を後にしようとするが、不意に道中足を止め、振り向いた視線の先の梓に指鉄砲を向ける。
大輝「悩むのは悪い事じゃない。けどそれと同じぐらい、まずは動くってのも選択肢の一つだ。動けば何かが始まるさ、少女君」
梓「…………。はい」
大輝の言葉に何かを感じ入る物を得たのか、先程まで気が沈んでいた梓の顔にほんの少しだが笑顔が戻る。
その顔を見届けた大輝は微笑しながらルミナを連れて廃寺を後にすると、残された梓は膝の上に乗せたラーメンのラップを解いていく。
途端に腹の虫から声を引き出させるような香ばしい匂いが湯気と共に鼻に届き、頂く前に両手を合わせてから二つに割った箸でラーメンの麺を啜ると、その味に梓の表情は自然と綻んだ。
梓「……おいしい」
◇◆◇
―斬鬼流弦闘道場―
ザンキ流が構える、如何にも正統派な武闘派の道場。中ではザンキがザンキ流の巻物を手に見守る中、澪を混じえた弟子達が汗水を流して武道の稽古に励む光景があり、修行の頃合いを見てザンキが弟子達に呼び掛ける。
ザンキ「稽古はそこまで!今から休憩を挟む!各自、水分補給は決して怠らぬよーに!」
「「「押忍!!」」」
「うむ!」とザンキが腕を組みながら頷くと、弟子達は各々休憩に入っていく。その中で、澪がタオルを取りにいこうと歩き出した矢先に携帯が床に落ちてしまい、たまたまソレが視界に入ったザンキは澪に届けてやろうと携帯を拾い上げるが、携帯の画面を見た途端、ギョッと目を見開かせた。
何故ならそのホーム画面には、普段着に身を包んだ澪と共に、笑顔でピースするイブキ流の紬、更には若干ぎこちない顔で笑うヒビキ流の梓の二人と一緒に写った画像が待ち受けになっていたからである。
ザンキ「み、澪ォ!なんだコレ!?なんで他の流派の二人と一緒の写真なんて待ち受けにしてんだよぉ!!ってか何で一緒にいんの!?」
澪「え……いやまぁ、流派間云々の話とかプライベートにまで持ち出すような事でもないというか……日常生活でまでいがみ合ってたら普通に気が重くなるだけだろ?」
ザンキ「た、たるんでおる……!ザンキ流ともあろう者がこんな堂々と!というかなにあたしに内緒で遊んでんだー!!さーそーえーよぉおおおおおーーーーーッッ!!」
澪「いや結局そっちが本音だろ!い、いだだだだ!!まったまった!極まってる!!極まってるからぁーー!!」
自分を除け者に他の流派の三人と仲良さげに遊びに行ってた事に羨ましさと嫉妬心から、憤怒のあまり卍固めで絡んでくるザンキの腕を悲鳴と共にタップしまくる澪。
他の弟子達はそんな二人のやり取りを前に、最早いつもの日常茶飯事だと特に気にする素振りもなく、中には面白がって傍観する者もいるが……
「──たのもー!」
やる気のないそんな一声と共に、道場の門が開かれた。
弟子達や、やいのやいのとそれまで騒いでいたザンキと澪も声がした門に一斉に目を向けると、道場の入り口から悠々とした足取りの大輝と、いつの間にか普段着に着替えたルミナの二人が土足のまま道場内に踏み込んできた。
澪「っつぅ……な、何だお前達は……!」
大輝「見ての通りさ。ま、所謂道場破りってヤツ?」
ザンキ「道場破りぃ!?」
驚きでザンキが声を荒らげると共に、他の弟子達が一斉に大輝とルミナを取り囲んで身構えていく。そんなピリついた光景を前にルミナが「お〜」と物珍しげに眺める中、大輝は特に興味無さそうにザンキ達を適当に指差す。
大輝「こっちもあんまし時間を掛けたくてね。とりあえず、ザンキって人はどれ?」
ザンキ「な、何を〜〜!?」
澪「師範が出るまでもない!……こんな礼儀知らずは、私が軽く捻ってやるさ」
ザンキ「み……澪ぉ……!」
「ふっ……」と、感動で目をウルウルさせるザンキに澪はキリッとした顔付きでサムズアップを返す。
そして澪は道着の帯を締め直しながら気合を入れ、大輝の前に対峙して隙のない構えを取ると共に、「やあっ!!」と気迫の篭った勇ましい雄叫び共に大輝に挑み掛かった。
2秒で返り討ちにされて床に伏した。
ザンキ「って即落ち二コマかよォ!?」
澪「う…うぅ……軽く捻られたぁぁぁぁ…………!」
お尻を突き上げるような姿勢で床に倒れてグズグズと泣く澪。ザンキはそんな彼女にツッコミを入れつつ次は自分が!と大輝にすぐさま掛かろうとするが、大輝は其れを手で制し、ある交渉を持ちかけ出した。
大輝「実力は今見てもらった通りさ。……他の流派を潰す為に、俺の腕を買う気はないかい?」
ザンキ「……はえ?」
大輝が持ち出したのは、澪を倒してみせた自分達を助っ人として買って欲しいという申し出。
予想外の提案にザンキだけでなく、倒れる澪、他の弟子達も困惑で道場内にどめよく声が広がる中、大輝はただただ爽やかな笑みを無言で返していくのだった。
◇◆◇
「───ちっ。めんどくせぇ事になってきたな……」
そんな大輝達のやり取りを、道場の外から気配を殺して様子を伺う青年の姿があった。
黒いスーツに身を包み、ダークアッシュの髪色のショートヘアをした青年……GEAR電童の世界で仮面ライダー歌舞鬼として暗躍した、真也達と同じ『組織』のメンバーの一人である成宮総一は道場の特に目立たない窓の隙間から大輝とルミナを睨み付けると、頭を掻きながら窓の隙間から離れていく。
総一(零達が巡る最後の九つ目の世界……。響鬼の力を順調に取り戻せるように監視しとけって依頼だったが、あの盗っ人が関わるなら時間が掛かってくんぞこりゃ……)
何よりも彼にとって誤算だったのが、よりによって肝心のこの世界のライダーであるヒビキのあの体たらくだった。
あのようなザマでは、零が響鬼の力を取り戻せるのが一体何時になるのか皆目検討も付かない。
特に桜ノ神や人造人間、其処に加えて水ノ神までいるのでは、例え何らかの障害が起きても今の零達ならば難なく突破してしまえるだろうが、それが=響鬼の力を得るのに繋がるのかも不明だ。
総一(…………。しょうがねえ。気は乗らねえが、こっちから横槍を突いてみるか)
効率を考えるのなら、多少強引にでもいくしかない。そう決心した総一は黒い変身音叉を取り出し、その場を静かに後にしていくのだった。