仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十二章/響鬼×けいおん!の世界⑬

 

鳴滝が差し向けた王蛇、そしてバケガニを音撃道の流派が一つとなった梓達と共に無事に撃退した零達と大輝。

 

 

その後。日も落ちて黄昏刻となり、この世界を去ろうと土手を歩く大輝の背後から、梓が紬と澪を連れて追いかけてきた。

 

 

梓「大輝さん!」

 

 

大輝「…………。まだ何か用かい?」

 

 

既にお宝を手に入れたからか、梓の方に振り返る大輝の返事は何処か素っ気ない。しかし梓は構わず、寧ろ澪と紬と顔を見合わせた後に微笑を浮かべ大輝と向き直っていく。

 

 

梓「私達が鬼を受け継ぐ事が出来たのも、貴方のおかげです。本当に、ありがとうございます!」

 

 

大輝「─────」

 

 

てっきりこれまでの暴挙を責められるだろうと高を括っていたからか。そう言って大輝に深く頭を下げながら礼を告げる梓達の予想だにしていなかった真反対の反応に、大輝の方も思わず呆気に取られた顔を浮かべるも、その表情もすぐに無愛想なものに変わり嫌そうに目を逸らした。

 

 

大輝「やめたまえ、気色の悪い。俺はただ俺のやりたいようになっただけだ。ただその結果が、君達の利になっただけの話でしかない」

 

 

梓「でも……」

 

 

大輝「だから」

 

 

食い下がろうとする梓の前まで歩み寄り、その顔に指鉄砲の指先を突き付けて、大輝は不敵に笑う。

 

 

大輝「君も、君がやりたい事をこのまま真っ直ぐに貫き通せ。俺が保証しよう。君達が見付けたソレは、それだけ価値のあるお宝だってね」

 

 

梓「……はい、師匠!」

 

 

梓達が辿り着いた答えをお宝と称し、自分なりのアドバイスを掛ける大輝に向ける梓の笑顔に最早陰りはない。

 

 

それで彼女は彼女なりに、今回身に降りかかった様々な試練ときちんと向き合えたのだと実感した大輝は微笑しながら「それじゃあ」と、踵を返して歩き出していく大輝の背中を見えなくなるまで梓達が静かに見送る中、そんな彼女達から離れた場所では、大輝と梓達のやり取りを遠巻きに見守る零達の姿もあった。

 

 

優矢「……なんかさぁ、今日やけに爽やかな感じ出してね?あの人」

 

 

なのは「うぅん……案外面倒見が良かったりする、のかなぁ?ルミナちゃんとかにもそうだし」

 

 

零「……ただのいつも通りの泥棒だろ。一々あんな奴の気まぐれに付き合ってたらこっちが馬鹿見るだけだぞ」

 

 

映紀「ドーカンだな。今回は音撃道のお宝が梓達の為になるからってノリはしたが、あいつのやり方はストレートじゃねえしぜんっぜん気に食わねぇっ」

 

 

フンッと、カッコつけて去っていく大輝の背中から目を逸らし、馬鹿らしげに鼻を鳴らしながら吐き捨てる零と映紀。そんな彼らの辛辣な反応にスバルとエリオも否定出来ずただ苦笑いを浮かべるしかない中、大輝を見送った梓達が零達の元にまで駆け付け、同じように礼をするように頭を下げた。

 

 

紬「皆さんも、私達の為に本当にありがとうございました」

 

 

澪「お前達が流派を一つにするきっかけを作ってくれたおかげで、漸く私達も前へ進んでいける。本当にありがとう」

 

 

なのは「そんな…実際に音撃道を一つにしたのは皆の勇気が生んだ結果なんだし、私達はほんのちょっぴりお手伝いしただけだよっ」

 

 

梓「それでも、改めて感謝の言葉を伝えたくて……アリサさんは、これから皆さんと一緒に旅に出るんですよね?」

 

 

アリサ「うん、まあ、ね。……ヒビキさんの後を継いだばかりで大変な時に、お世話になったばかりなままいなくなるのは心苦しいけど……」

 

 

梓「気にしないで下さい。今の私には、同じ道を歩いてくれる仲間がいます。だからアリサさんも、皆さんと一緒に救われた世界で平穏に過ごして欲しいです。……きっとヒビキさんも、そう望んでるって思いますから」

 

 

アリサ「……ん。ありがと」

 

 

申し訳なさそうな顔を浮かべるアリサの心境を気遣い、穏やかな笑みを浮かべてアリサの門出を祝う梓の言葉に心救われたのか、アリサは控えめに頷きつつ同じように微笑み返し、梓の手を静かに取っていく。

 

 

アリサ「私も、私達の世界の為に頑張る。だから梓達も、これからも頑張って。ね?」

 

 

梓「……ハイ!」

 

 

快活に頷き返す梓に、アリサも嬉しそうにお互いに微笑む。そして二人は別れを惜しむように徐々に手を離し、先に写真館に戻ろうと歩き出した零や映紀達の後に続いていくアリサの背中を見つめ、梓はヒビキから託された変身音叉を胸に当てて静かに見送っていく。

 

 

梓「さよならは言いません。大輝さんとも、アリサさん達とも……いつか、また」

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

すずか「──アリサちゃん!!」

 

 

アリサ「すずか……!よかった、そっちも無事だったのね!」

 

 

フェイト「それはこっちの台詞だよ…アリサも無事で、本当に良かったぁ……」

 

 

はやて「せやな。これで海鳴市の幼なじみメンバー、全員集合や!」

 

 

そしてその日の夜。響鬼の世界での役目を終え写真館に戻ってきた一同。アリサはすずかを始めとした幼馴染の面々から迎えられて和気あいあいの歓迎ムードの中、零はその様子を横目に撮影スタジオの間で他の皆と集まり、いつものように現像したピンボケ写真……夕日の中の梓とヒビキの顔が写し出された写真を眺めていた。

 

 

栄次郎「おお、師匠と弟子。中々絵になりますなあ」

 

 

スバル「ヒビキさんから鬼を引き継げた事だし、梓ちゃんも音撃道も、将来は立派になりそうですね!」

 

 

零「この世界はアイツらに任せておけばきっと大丈夫だろう。……ただ、最後の世界だってのに、俺の記憶は結局……」

 

 

なのは「…………」

 

 

そんな呟きと共にピンボケした写真を持つ手とは逆の零の手には、これまで世界を辿って絵柄が全て蘇ったクウガからキバまでの正史ライダー達のカードが握られている。

 

 

遂に最後の世界の旅を終えたというのに、自分の記憶はまだ不完全で知るべき真相や真実には辿り着けていない。

 

 

果たしてこのまま本当に旅を終えてしまうべきなのか。そんな心境を微かに覚える零の横顔に食事の準備の手伝いをしていたなのはが気付き、脳裏に鳴滝の言葉がふと蘇る。

 

 

―ディケイドは既に九つ目の世界を訪れている。ディケイドが全ての旅を終えた時、世界は破壊される……!―

 

 

なのは(……ううん。そんな筈がない。だって私達も、零君も、今までの世界を滅びの現象から救ってきた……零君がその世界を破壊するなんて……きっと何かの間違いだ)

 

 

キャンセラーの世界を破壊し掛けた事。雷牙の世界を破壊してしまった事をあれだけ悔いて、自分自身を傷付けてまで自責の念に駆られていたあの零が、再び破壊者になるなんてある筈がない。

 

 

何処か自分にそう言い聞かせているようにも聞こえるかもしれないが、それでも今の零を信じたいという思いから鳴滝の言葉を頭から振り払うようになのはが食事の準備の手伝いを再開する中、何処からともなくキバーラが白い羽根をパタパタと羽ばたかせながら愉快げに零達の頭の上を飛び回っていく。

 

 

キバーラ「さあさあ、早く次の世界へ出発よ〜♪」

 

 

零「……次?もう九つの世界は全て回ったぞ。カードも全部元に戻ったしな」

 

 

姫「その筈だな。……む?という事は、君達の世界はこれで救われたって事になるのか?」

 

 

スバル「そうですよ!はぁ〜、長かった旅もこれでお仕舞いかぁ……」

 

 

ティアナ「なんで最初は嬉しそうなのに、後半からちょっと寂しそうなのよ?……まぁ、その気持ちも分からなくもないけど」

 

 

思えば此処まで沢山の出来事があったなぁと、すっかり終わりムードになってこれまでの旅の記憶を振り返り、嬉しさと少しの名残惜しさを感じるスバルに少しだけ同調を見せるティアナ。

 

 

それは他の面々も同じなのか、それぞれのメンバーが旅の記憶を振り返る中、栄次郎が名案を思い付いたようにポンっと掌の上に拳を落とす。

 

 

栄次郎「よし、旅の終わりを記念してみんなで写真を撮ろうか!」

 

 

エリオ「あ、いいですね!撮りましょう!」

 

 

ヴィヴィオ「私も私も~!」

 

 

ヴィータ「せっかくのめでたい日なんだ。雰囲気バッチリな奴を頼むぜ、栄ちゃん!」

 

 

栄次郎「ふふふっ。任せて。えー、背景ロールは何にしようかな〜?」

 

 

と、鼻歌混じりに栄次郎が背景ロールを弄っていると、ロールが勢いよく幕を下ろし、今度は炎に包まれる世界の絵の背景ロールが現れ、淡く発光し始めた。

 

 

チンク「うお、何だこれは!?」

 

 

シグナム「っ、何の世界だっ?」

 

 

キバーラ「何々?どうしたの?」

 

 

背景ロールが降りたと同時に、撮影スタジオの窓の外から赤い鮮烈な光が差し込んで室内が真紅に染まっている。

 

 

突然の異常。どう見ても不穏な背景ロールを前にフェイト達の間でどよめきが広がる中、零、そしてなのはとスバルはその見覚えのある背景ロールを目の当たりにして、それぞれの表情に緊張が走っていた。

 

 

スバル「な、なのはさん、零さん……これって……」

 

 

なのは「私達の……世界……」

 

 

零「……どうやらいよいよ、本当に元の世界に戻る時が来たようだな……」

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―とある平行世界の謎の建造内・玉座の間―

 

 

終夜「───遂に零達が九つの世界を巡り終えたか……」

 

 

同時刻。終夜率いる組織が拠点を構える玉座の間にて、裕司、慎二、そして恭平の三人が集まり、零達の旅の動向について玉座に腰掛ける終夜に報告を行っていた。

 

 

裕司「はい。外史のライダー達の世界を除き、漸く零はディケイドとしての力を完全に取り戻せたと言っても過言はないと思われます」

 

 

終夜「そうか。……慎仁、零の因子の覚醒率は現状どの程度まで上がっている?」

 

 

慎仁「そうですねぇ……。大体で言えば七割半、といったところでしょうか?雷牙の世界での一件のおかげか、零先輩と因子の適合率も爆発的に上がり始めましたしねぇ」

 

 

恭平「…………」

 

 

ふふっ、と、口元に手を添えて何処か楽しそうに笑う慎仁。

 

 

そんな彼の様子に恭平が横目に鋭い目付きを向ける中、慎仁の報告を聞かされた終夜は暫しの間一拍置いて俯いた後、やがて薄い息を吐き出し、顔を上げて重々しい声音で告げる。

 

 

終夜「刻が来た、という事か……裕司、今動けるメンバーに招集を掛けて『例の世界』に向かうよう指示しろ。俺も動く」

 

 

裕司「!しかしそれは……いえ、始めからそういう計画でしたね……」

 

 

終夜の宣言に反射的に異を唱え掛ける裕司だが、すぐに思い留まるように頭を下げて大人しく引き下がる。

 

 

終夜もそんな裕司にはそれ以上は何も語らず、次に恭平に目を向けて指示を飛ばす。

 

 

終夜「恭平、お前は真也達と共に『例の世界』で奴らの帰還を出迎えてやれ」

 

 

恭平「……えー。俺っちにソレ任せちゃう?こういうのって裕司とか、もっと他に適任がいると思うんだけどなぁ」

 

 

終夜「裕司にはここの警護の為に残ってもらわねばならん……。ヴェクタスは例の玩具を連れ回して連絡もまともに取れんし、総一に関しては響鬼にやられた傷の完治がまだ済んでいない。すぐに動かせるとしたら、他にお前達以上の適任はいまい」

 

 

恭平「へーへー。要するに他がサボったりヘタこいたから、俺らに白羽の矢が立ったって訳ねぇ。……ほんとにいいんだな?」

 

 

終夜「無論。全てはこの刻の為だったと言っても過言ではないのだからな」

 

 

最後に真剣味を帯びた口調で最終確認を取る恭平に、終夜は愚問だと言わんばかりに目を伏せながらハッキリと断言する。

 

 

そんな終夜の顔をジッと暫く見つめた後、恭平はやがて「はぁ〜」とダルそうに頭を掻きながら踵を返し、終夜の指示通りに動こうと玉座の間を後にしようとした、その時だった……

 

 

 

 

―ドッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンッッッッ!!!!―

 

 

 

 

慎仁「……ん?」

 

 

裕司「な…なんだ…?爆発音!?」

 

 

 

 

突如前触れもなく、拠点の何処からともなく謎の爆発音と微かな振動が玉座の間を揺るがしたのである。

 

 

急な出来事に襲撃か事故かと、裕司が一人動揺を浮かべて辺りを見回す中、そんな彼の目の前に不意に電子モニターが出現し、其処には焦った様子の綾の顔が映し出されていた。

 

 

綾『ゆ、裕司さん!緊急事態です!れ、例の監禁してるナンバーズが脱走をして逃げ出しました!』

 

 

裕司「はあ!?どういう事だ?!奴の牢は厳重に閉じられていたハズ……!」

 

 

綾『その筈だったのですが……!しかも例の"アレ"も持ち出されたらしく!今も行方が掴めていない状況です!』

 

 

裕司「なんだと……?!」

 

 

焦燥感に駆られる綾に釣られるように、裕司も動揺を露わに困惑を隠せない様子でいる。

 

 

が、終夜は特に気にする素振りを見せず、目を伏せて溜め息を一つこぼす。

 

 

終夜「そう慌てるな。今こちら側から転移出来るのは『例の世界』だけだ。それ以外の道筋が全て閉ざされている以上、あの機械人形が向かう先は我々と同じだろうさ」

 

 

裕司「ですが……!」

 

 

終夜「案ずるな。お前は綾と共に残って、揺り篭の破損箇所の確認と修復を。俺は同行出来るメンバーと共に『例の世界』へ向かい、零達を迎えるのと同時進行で件の機械人形を再び捕らえる。何か異存は?」

 

 

裕司「っ……。……いいえ、貴方がそう判断するのであれば、俺も同様に従うまでです」

 

 

では、と、裕司は終夜に軽く会釈してすぐに駆け出し、揺り篭の修復作業の為に動き出していく。

 

 

その後ろ姿を見届けた後、慎仁は両手を後頭部に回しながら「あーあ」とわざとらしく嘆く声を上げる。

 

 

慎仁「裕司先輩も苦労人ですよねー。こうも次から次にひっきりなしにトラブルが起きて休む暇もないとか、同情しちゃうなあ」

 

 

終夜「くだらん雑談は其処までにしておけ。慎仁、お前も早く『例の世界』でセッティングを始めろ。真也達にも同様に伝えて、だ」

 

 

慎仁「はいはい……人使いが荒いことで……」

 

 

「は〜っあ」と、心底めんどうそうにボヤきながら玉座の間を後にしていく慎仁。

 

 

そうしてその場に残された終夜と恭平だけであり、裕司と慎仁が去った今、二人の間には重苦しい沈黙だけがずっと流れていた。

 

 

恭平「……えーっと?終夜サン?俺もそろそろ行った方がいいかな?ってか、一緒にいく?」

 

 

終夜「…………。そうだな。先ずは現地で真也達と合流しよう。作戦内容についてはまた其処で改めて説明を行えばいい」

 

 

恭平「おー…そ?なら途中で何かアイツらに差し入れでも用意──」

 

 

終夜「恭平」

 

 

言い切るより前に、背筋を冷たい感覚が走って思わず足を止めてしまう恭平。

 

 

終夜はそんな恭平の横をすれ違う間際、彼だけに聞こえるように小声で囁くように告げる。

 

 

終夜「───一度目は見逃す。しかし二度目はもうない……この意味、分かっているな?」

 

 

恭平「──────」

 

 

 

それだけを伝えて、終夜はそのまま足を止めることなく玉座の間を静かに後にしていく。

 

 

そうして、その場にたった一人残された恭平は終夜がいなくなってから漸く呼吸を思い出したかのように深く息を吸って吐き、額から冷や汗を流しながらにたりと笑った。

 

 

恭平「さっすがー……リーダーを任されるだけの事はあるねー……」

 

 

口調こそ飄々としているが、心臓は未だに先程のプレッシャーでバクバクと激しく振動している。

 

 

やがて何度か深呼吸を繰り返し、漸く少しだけ落ち着きを取り戻した恭平は薄暗い玉座の間の天井を仰ぎ見、何処か自嘲気味に不敵に笑ってみせた。

 

 

恭平(道化と笑いたきゃ笑えばいい。こんな損な役回りなんざ、俺一人で十分さね)

 

 

それは一体、誰に向けての独白なのか。

 

 

ただ一人だけ、それを知る本人は改めて気合いを入れるように前髪を搔き上げて深呼吸をし、前を向いて終夜の後に続くように歩き出していく。

 

 

──これが自分の選んだ、ただ一つの道なのだと、力強く胸を張って足を踏み締めながら。

 

 

 

 

 

第二十二章/響鬼×けいおん!の世界END

 

 

 

 

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