仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十三章/『なのは』の世界①

 

 

なのは「終夜君…!やっぱり終夜君だった!」

 

 

バイオリンを持つ手を静かに下ろす終夜の姿を目にした途端、それまで自分達の世界に戻って来られたという実感を得られずにいたなのはとフェイト、はやてとアリサとすずかが一目散に彼の元へ走り出していく。

 

 

一方で、終夜の方は駆け寄ってきたなのは達と、彼女達の背後からゆっくりとした足取りで追い付いてきた零。そして彼等の遙か後ろからこちらの様子を伺うように立ち尽くす優矢やヴォルケンリッター、スバル達の姿を順に目を向けて首を傾げた。

 

 

終夜「高町にハラオウン、八神に零まで……何故お前達がこんなところに?いつの間に海外留学から戻ってきたんだ?」

 

 

フェイト「え?あ…あー…えっと……」

 

 

なのは「それは、そのぉっ……」

 

 

はやて(そ、そやった……アリサちゃんとすずかちゃん以外の友達には、私らが魔導師って事も内緒にして、他の皆には卒業後に海外へ留学したって話で通してもらっとったんやったっ……!)

 

 

漸く元の自分達の世界に帰ってきたという実感を得てから舞い上がり過ぎてしまい、終夜達に隠していた自分達の秘密に関する言い訳を咄嗟に返せずにしどろもどろになってしまうなのは達だが、そんな三人の前にすずかとアリサがほぼ同時に慌てて割って入る。

 

 

すずか「じ、実はね!なのはちゃん家が家族旅行でお店を暫く開ける事になるってなって、それならその間のお店番をしようって決めたついでに、四人とも休みを貰ってこっちに一旦戻ってきてたんだって!」

 

 

アリサ「わ、私達もさっき急に連絡もらって知ったのよ!サプライズで〜!だとか言ってさ!ほーんと、タチ悪いったらありゃしないわよねー!?」

 

 

零(オーバーリアクション過ぎて逆に怪し過ぎるだろ……もっと抑え目に出来なかったのか……)

 

 

アリサ(うっさいわね!?こっちだって咄嗟のアドリブでめちゃくちゃ焦ってんだから!アンタも少しは乗りなさいよぉ!?)

 

 

身振り手振りを使って必死に零達の為に誤魔化そうとしてくれている二人の厚意は有り難いのだが、正直少々わざとらしさが勝って返って怪しさ満載なリアクションにしか見えない。

 

 

呆れ気味に眉間の皺を抑えつつ、終夜に聞こえない声で苦言を呈する零にアリサも小声でかち切れる中、終夜はジーッとそんな彼等のやり取りを暫し無言で静観した後、やがて小さく微笑みながら手にしたバイオリン一式をケースに仕舞い始めた。

 

 

終夜「まあいいさ……。予想外で驚きこそしたが、お前達に偶然再会出来たのは俺も運がいい。こうして久方ぶりに、友人達の元気な姿をもう一度拝めたのだからな」

 

 

アリサ「そ…そーよーねー!?いやぁ、こんな日にアンタにも偶然会えたんだし、もしかしたら他の奴らにもバッタリ会っちゃったりしてねー!」

 

 

零「…………」

 

 

思いの外あっさりと引き下がってくれる姿勢を見せて話を切り上げる流れにいけそうな終夜の口ぶりに、アリサも一瞬戸惑いつつソレに合わせていく。

 

 

ただ、零は何故かそんな終夜の顔を何やら神妙な表情で意味深に見つめ続けており、バイオリンを仕舞ったケースを背中に背負った終夜はそんな零の視線に気付き、小首を傾げた。

 

 

終夜「どうした零?俺の顔に何か付いているか?」

 

 

零「…………。いや、何でもない。そんな事より、こんな所で呑気に楽器なんて弾いてていいのか?確かお前、今は実家のデカイ会社の若社長をやってる身分なんだろう?」

 

 

終夜「ああ……その心配なら必要ない。これでも周囲の人間には恵まれててな。こんな俺の少しの息抜きの為に、代わりに業務を進んで引き受けてくれる部下がいてくれてるんだ。……打算有りきでの、だがな」

 

 

そう言って、終夜は溜め息混じりに自嘲気味な笑みを浮かべる。そんな彼の返答になのは達も「あ……」と何かを察した様子で押し黙ってしまうが、終夜は彼女達の反応に逆に困ったように眉を顰めながら苦笑してしまう。

 

 

終夜「そんな気まずそうにしてくれるなよ。今のは場を和ませようと思った俺なりのジョークだ」

 

 

はやて「じょ、ジョークてっ……」

 

 

零「笑い流していいものか判断に困るブラックな奴をサラッと出してくれるな。今ので笑ってたらこっちの品性が疑われるだろうが」

 

 

終夜「そうなのか?ふむ……それは悪かった。俺もまだまだ精進が足りないという訳だな」

 

 

やれやれと、首を振って苦笑いを浮かべながら背負ったケースを抱え直しつつ、終夜は零達一人一人の顔を感慨深そうに眺めていく。

 

 

終夜「では、俺はそろそろ仕事に戻る。せっくの里帰りに付き合ってやれず申し訳ないが、久々の帰省だ。他の連中に会うことがあれば、代わりに宜しく伝えておいてくれ」

 

 

フェイト「う、うん!わかったっ」

 

 

アリサ「アンタも仕事、頑張んなさいよー!」

 

 

バイオリンケースを背負ったまま踵を返し、片手を振りながら歩き去っていく終夜の背に呼び掛けながらそれぞれ見送りに手を振るなのは達。

 

 

そして終夜の姿が小さく見える所まで遠いた途端、一同揃ってガクッと緊張が解けたように体の力を抜いて項垂れた。

 

 

はやて「あ…あっぶなかったぁ……危うく魔法の事とかバレてしまうところやったっ……」

 

 

なのは「うん…でも終夜君がいるって事は、私達、本当に自分達の世界に戻って来られたって事になるんじゃないかな!」

 

 

零「…………どうだかな」

 

 

すずか「え……零君…?」

 

 

なのは達が終夜との再会で漸く元の世界に戻ってこられたかと確信して盛り上がる中、一人、零は腕を組んだまま終夜が去っていった方角を目を細めて睨み付け、そのままその視線を一同に向けていく。

 

 

零「これまでの世界でだって、並行世界のお前達と何度も何度も出会ってきたんだ。あの終夜が俺やお前達の事を知っていたとしても、それが本当に俺達の知る、俺達の世界の終夜だって確定するにはまだ早すぎる気がする」

 

 

フェイト「それは……そう、かもだけど……」

 

 

零「それに俺達が最初に世界を巡る旅を始めた出発点はミッドだった。なのにいざ帰ってきてみたらミッドの元の場所にじゃなく海鳴市だなんて、どう考えたって可笑しいだろ」

 

 

スバル「……つまり、此処は私達の世界じゃなくて、私達の世界に近い別世界かもしれないって事ですか……?」

 

 

自分達を知る終夜に出会えたからといって、諸々の疑問点が未だ不明瞭なせいで零はまだこの世界が本当に自分達の世界だとは確信を持てていないらしい。

 

 

そんな零にスバルが怪訝な眼差しを向けると、零は言葉を返す代わりに懐から待機状態のアルティを取り出してみせた。

 

 

零「疑問を拭えない理由がもう一つある。本当に世界が完全に元に戻ったのなら、滅びの現象のせいで機能不全になっているデバイスが未だ何の反応も示さないのは可笑しい。……お前達はどうだ?誰か一人でも、自分のデバイスや魔法が復活した奴は?」

 

 

フェイト「それは……」

 

 

エリオ「言われてみれば、確かに……?」

 

 

零に言われ、各々が自身の相棒であるデバイスを取り出してみるも、どれもがあの滅びの現象に巻き込まれて以降と同様に何の反応も示さず、ザフィーラも人間の姿に変身しようと試みて気合いを入れるも、一向にその予兆が見られず肩を落として首を横に振った。

 

 

ザフィーラ「駄目だな……やはり、滅びの現象の影響がまだ続いているというのか……?」

 

 

ギンガ「どうなんでしょう……。その可能性か、或いはまだゆったりと滅びの現象の影響が消えていっている最中で、ある程度の時間を置けばまたデバイスも魔法も復活する線もありえそうですが……」

 

 

今のこの現状では様々な可能性の線が絞り切れず、一体どうやって本当に元の世界に戻って来られたのか、それとも別の世界にやって来てしまったのか確かめる方法が思い付かず頭を悩ませてしまう一行だが、零は顎に手を添え、暫し考え込んだ末に真剣な表情で皆の顔を見回していく。

 

 

零「一先ずいつも通り、この世界について探索してみるべきだな。俺は俺達の世界の海鳴市と何処か相違点がないか調べる。なのはやはやて達はそれぞれの家に戻るなりして、何か異変がないか手掛かりになりそうな物を探してみてくれ。後は──」

 

 

姫「──すまない。少しいいか?」

 

 

手始めにこの世界を調査する方向で零が方針を固めてメンバーを振り分けようとする中、姫が小さく挙手をする。

 

 

零「なんだ木ノ花。何か妙案でも思い付いたのか?」

 

 

姫「や、それほど大した案って訳じゃない。ただ少し気になる事があってな。私と魚見で、それをちょっと調べてみようと思ったんだ」

 

 

ティアナ「?気になる事って…」

 

 

キャロ「もしかして、何かこの世界に不審な点を感じたとか……?」

 

 

訝しげな顔のティアナ、不安げな眼差しを向けるキャロからの疑問に、姫と魚見は小さく首を横に振って優しく否定する。

 

 

姫「そんな心配する程ではないさ。現状、其処まで切羽詰まったような何かを感じ取った訳でもない。ただ……」

 

 

魚見「この世界に着いてから、何やら奇妙な違和感を微かにこの世界から感じるんです。本当に些細なモノなのですが、とはいえそれを敢えて無視するのも些か咎められると言いますか……ですのでそれが何なのかを確かめる為にも、私たち二人で街を回ってその違和感の正体を確かてみようかと」

 

 

チンク「二人だけでか?いや、しかし……」

 

 

ウェンディ「幾ら神様だからって、流石に何も分からない内に二人だけで行動するって危なくないッスか?せめて同行するメンバーをもう何人か付かせるとか──」

 

 

この世界に不明瞭な点が多く見られる現状、たった二人だけで同行してこの世界を調べようと申し出る姫達に心配を露わにする一同だが、零は暫し考え込む素振りを見せたあと、やがて観念したようにため息を吐きつつ渋々ながら頷く。

 

 

零「今は少しでも手掛かりが欲しい状況だしな……それにまあ、コイツらがその辺の下手な輩相手に遅れを取る事もそうそうないだろ。いざって時には木ノ花の力や魔法でどうとでも出来るのだし……ただ、」

 

 

姫「分かっているさ。何か異常を見付けたらすぐに知らせる。二人だけで無茶をする気はないとも」

 

 

魚見「この町の土地も、貴方と契約を交わした際に流れ込んできた記憶と一緒に分かっていますから、迷子になる心配もありません。それに私と桜ノ神だけであれば、仮に何かがあっても逃走は容易い。不死のこの身、例え致命的な負傷を負ったとしても、皆さんの元へ戻れる保証は出来ていますから」

 

 

なのは「…………。二人が其処まで言うぐらい、この世界には得体のない知れない何かがあるかもしれないって事ですか……?」

 

 

終夜との再会で元の世界へ戻って来られのだという実感を得て喜びに浸っていた矢先、懐疑的な零や復活しない自分達のデバイスと魔法、自らの身に危険が降り掛かる可能性を考慮している姫達の様子から不安の念が心の内に蘇り、心配そうに眉を下げるなのは。

 

 

それは他の面々も同様なのか、不安げに互いの顔を見合わせる海鳴市組やFW、彼等の言葉にも一理あると深刻げに考え込み始めるヴァイスリッターやチンク達の反応を見回し、姫は胸の前で両手をヒラヒラさせて苦笑いを返す。

 

 

姫「そんな重たく気にする必要はない。これはあくまで念の為の調査、答え合わせみたいなものだ。私達が気になった違和感に対してのな」

 

 

魚見「ええ。それにソレが悪い物だとも限りません。もしかしたら、まだ世界が再構築の途中で起きてるバグのような物かもしれませんし、そういった異常であれば私達の力で修正してしまえば即解決します。ですから皆さんは皆さんで、ここが本当に自分達の世界なのか、どうかその目で確かに見極めて下さい」

 

 

はやて「…………。ん、分かった。あんまり悲観的になるんも良くないし、私らは私らで前向きに、且つ油断せずに調査を進めよか?……久しぶりの海鳴市、せっかくやからあの子にも見せてあげたいしな」

 

 

ヴィータ「……はやて……」

 

 

シャマル「……そうですね。車椅子、用意しておきましょうか」

 

 

シグナム「私も手伝おう。人一人、ベッドから起こして運ぶのは大変だろう?」

 

 

シャマル「ふふ……ええ。では、お願いします」

 

 

不安を帯びた空気を振り払う様に、敢えて明るく振る舞って方針を固めたはやてに同調し、ヴォルケンリッターの面々はひと足先に来た道を戻って光写真館を目指し歩き出していく。

 

 

はやてもその後を追う前に一度足を止めて、他の面々の顔を見回す。

 

 

はやて「取り敢えず今は、私らの家とかを起点に知ってる場所を一つ一つ見て回ってみるべきやと思う。ここで燻っててもしょうがないし、それにホントに私らの世界なら、なのはちゃんのご家族とか知り合い……昔の友達の無事とか、色々と確かめとかんとあかんやろし」

 

 

なのは「……そうだよね……うん、今はとにかく出来る事からやっていこう。零君、私はヴィヴィオとフェイトちゃん達で一回家に戻ってみるけど、そっちは……」

 

 

零「俺は街の方を見てくる。……家が無事ならそれでいいが、それはそれであんまり実家に連絡していないのを正面から愚痴られちゃたまったもんじゃないからな……」

 

 

すずか「ああ……そういえば今思い出したけど、なのはちゃんと違って零君が全然家に連絡寄越してくれないって、前に会った美由希さんがずっと文句言ってた気がする……」

 

 

アリサ「私は店先で桃子さんから延々愚痴られたわよ?それもスゴーくさびしそーに。一体何処の誰のせいでしょーねぇー?」

 

 

零「うるせえ」

 

 

んー?と、両腕を組んであからさまに煽るような眼で顔を覗き込んでくるアリサから鬱陶しげに目を逸らし、零はたまたま近くにいた優矢の襟首を無造作に掴みながら歩き出す。

 

 

零「ともかくそんな事情なんでな。そっちはお前らに任せた。スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、フリード、ギンガは俺達についてこい。他は好きにしろ」

 

 

スバル「へ?あ、は、はい!」

 

 

優矢「ちょちょちょっ!俺は?!俺の意志は無視なの?!俺の人権どこいったぁ?!」

 

 

ギャーギャー!と両腕をバタバタさせながら悲鳴を上げる優矢の抗議も無視し、ズカズカと彼を強引に引きずって街の方へと向かっていく零の後を指名されたスバル達が慌てて追いかけていき、その背中を見送ったなのはは残った面々と顔を見合せてゆく。

 

 

なのは「じゃあ、私達もここからは各自行動開始で。姫さん達はさっき言ってた違和感の調査で、私達は縁のある場所での手掛かり探し。アズサちゃんは……」

 

 

アズサ「うん…私はいざって時の為に、写真館に残っとく…。栄次郎やキバーラの事もそうだけど、フェイトのお姉ちゃんやあのルーテシアって娘を守るのは、私とアスハだけでも十分事足りると思うから…」

 

 

フェイト「アズサ…ありがとう…」

 

 

恐らく本人の希望としては零の護衛について行きたい所だろうに、フェイト達の心情を察して進んで自ら写真館を守る役目を引き受けてくれるアズサに感謝しつつ、一行は彼女を残しそれぞれ街の探索に向かってその場で別れていった。

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

───同時刻。

 

 

終夜「──ああ。そうだ。予定通りに奴らも動き出した」

 

 

街を一望出来る、海鳴市展望台にて。其処には先程零達と別れた終夜が遠くの景色を見つめたまま、周りに人がいないにも関わらず、淡々とした声音で携帯も無しに誰かと会話をしている姿がある。その目は此処からずっと遠くの、常人の視力では決して見える筈のない光景……何やら怒り気味の優矢の声を無視し、スバル達と共に街の歩道を渡る零の姿をハッキリと捉えていた。

 

 

終夜「例の厄介な女神共も、こちらで用意した餌に掛かって引き離す事が出来た。後は各員、手筈通りに動け。……以上だ」

 

 

何処か物憂げな溜め息を一呼吸吐き、誰かとの話を切り上げた終夜は僅かに体重を掛けていたフェンスから手を離し、踵を返しながら、静かに告げる。

 

 

終夜「残念だったな、零……この世界(・・・・)に足を踏み入れた時点で、俺達の勝ちだ……」

 

 

 

 

 

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