仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十三章/『なのは』の世界②

 

―海鳴市・市街地―

 

 

なのは達とは別行動を取り、街の調査で市街地に向かった零達一行。

 

 

其処で彼等が目の当たりにしたのは、滅びの現象に見舞われた痕跡もなく、ミッドチルダと同様に銀色のオーロラに覆われて崩壊していたであろう街並にも異常は見られず、街を行き交う人々も仕事や休日で忙しなく、何時もの平穏な日常を過ごしているごく普通の光景だった。

 

 

スバル「街の方も…至って普通、だよね…?」

 

 

ティアナ「パッと見はそうだけど、私達じゃ零さん達の地元に詳しい訳じゃないからあんまり何とも言えないわね……。零さんから見て、何か違和感とかってあります?」

 

 

零「今のところは特に、だな……見覚えがある場所を適当に歩いてみてはいるが、俺達がミッドに移り住んでから増えてる施設まであって判別が難しい……あんなレジャー施設とか昔あったか……?」

 

 

優矢「じゃあ意味ねーじゃん!?あんな自信満々に俺達を引っ張ってきたのなんだったの!?」

 

 

あー……?と、顎に手を添えて、訝しげに目を細めながら遠くに見える外観が新しめの施設を見つめる零の呑気過ぎる発言に、彼に無理矢理引っ張って連れてこらされた被害者の優矢がガーッ!と吠える。

 

 

スバル達の方も多方そんなことだろうと思っていたのか、何とも言えず苦笑いを浮かべたり、肩を落として溜め息を吐いたりとする中、ギンガがすれ違う人々の顔を見回しながら零に近付き、声を抑えめに喋り掛ける。

 

 

ギンガ「でも、少なくとも街の雰囲気は平穏な感じですよね。すずかさんとアリサさんから聞いた話じゃ、この街でも滅びの現象が起きていたみたいだし、この様子だとあれらの異変がそもそもなかった事になってる……って思ったらいいんでしょうか…?」

 

 

零「……結論を出すにもまだ判断材料が足りんな……。ともかく、引き続き他に手掛かりがないか探すぞ。幾ら里離れが長かったとはいえ、あからさまに俺達の世界と違う点さえ見つかれば自ずと結論も出るだろうよ」

 

 

優矢「だからその点ってのどう見分けんだよ……そういう事ならすずかさんかアリサさんのどっちかにでも同行してもらってた方が良かったじゃんか……」

 

 

零「すずかはともかくアリサは有り得ん。この街でアイツを横に連れて歩くとか、昔のトラウマが蘇って胃が痛くなる。……それにもし、此処が本当に俺達の世界じゃないなんてアイツらが知れば───」

 

 

言いかけて、零の脳裏を過ぎったのは終夜と出会い、自分達の旅が本当に終わって世界が救われたのだと、心の底から喜んでいたなのは達の顔。

 

 

もしも真相次第では、あの顔に陰が差してしまうかもしれないと考えただけで胸の内にキツく締め付けられるような痛みが走り、その想像を振り払うように軽く頭を振ると、零は優矢達の顔を見回しながら口を開く。

 

 

零「ま、誰かに急かされてる訳でもないんだ。怪人もいないんなら、このまま伸び伸びと街を歩き回ってみて──」

 

 

「───そうだ。君はそのまま、この世界で平穏に暮らすといい」

 

 

「「「……!!?」」」

 

 

気を取り直そうと皆に呼び掛けようとした零の言葉を、何処か喜悦を帯びた聞き覚えのある声が遮った。

 

 

一同が驚いて反射的に振り返ると、いつの間に其処にいたのか、鳴滝が零達に背を向ける形で静かに佇んでいた。

 

 

零「鳴滝!?」

 

 

鳴滝「今日は、お祝いを言わせてもらうよ。おめでとう」

 

 

キャロ「……え、えぇ?」

 

 

エリオ「お、お祝い?」

 

 

突然の鳴滝の出現を前に、これまでの世界の時と同様問答無用で襲いにきたのかと咄嗟に身構える一行だが、対する鳴滝には何故か敵意はなく、寧ろ今までの彼の口から出る筈もない台詞が飛び出した。

 

 

一体何事なのかと、鳴滝からの思わぬ祝言に優矢達は毒気が抜かれて目を白黒させながらキョトンとなる中、零やギンガは警戒を解かずに怪訝な眼差しを向け続けている。

 

 

零「どういう風の吹き回しだ、気色の悪い。いつもみたく迷惑な刺客を送り付けてこないのか?」

 

 

鳴滝「もうその必要はなくなったからね。九つの世界を巡り、旅を終えた君は君だけの世界を得た。これからの人生、君には幸福だけしか訪れないだろう。……嬉しいよ、私も」

 

 

怪しむ零の棘のある言に憤る素振りすら見せず、ゆっくりと頭だけ振り向いた鳴滝が見せた顔には、不気味なほどに穏やかで、言葉通りに心底嬉しそうな微笑みが浮かんでおり、鳴滝はそのまま銀色のオーロラカーテンに呑まれ何処かへと姿を消してしまった。

 

 

スバル「……ほんとにお祝いだけ言って、帰っちゃった……」

 

 

ギンガ「……私達が九つの世界を巡り終えたから、もう零さんを狙う必要はなくなったって、本当にそう認識していいんでしょうか?」

 

 

零「なワケあるか……。だったら今までの世界で、あれだけしつこく邪魔してきたのは何だったんだ?アズサの命を利用してまで俺を消そうとしてきたアイツがあんな殊勝な事を言ってくる事自体、どう考えたって何か裏があるに決まってる」

 

 

優矢「だよ、なあ……ってことはやっぱ、この世界にも良からぬ何かがあるって警戒してた方が良さそうかあ……」

 

 

だとしたらソレ(・・)は何なのか。

 

 

鳴滝の不自然しかない言動からますますこの世界への懐疑心が膨れ増す零達だが、しかし、その疑いを裏付ける具体的な根拠も未だ見付かっていないのもまた事実。

 

 

零はこめかみに人差しを当てて熟考するも、結局は思考が堂々巡りを繰り返すばかりでそれ以上は進展しない。

 

 

零(……仕方ない、か。はあっ……)

 

 

本当に気が乗らないが、やはり此処は地元民のすずかとアリサと合流し、彼女達の助力を借りて街の探索を進めるきかと考えて懐から携帯を取り出した所で、その場に「ぐぅ〜〜……」と間の抜けた音が響き、スバルが両手でお腹を抑えて肩を落とした。

 

 

スバル「あうぅ……もうダメぇ……此処まで我慢してきたけど、そろそろお腹空き過ぎて限界ぃ〜……」

 

 

ティアナ「アンタねぇっ……。今この状況でそれ言える雰囲気じゃないって分かってるでしょっ?」

 

 

キャロ「あー……でも、私達も元の世界に戻って来れたと思って朝食を抜いちゃって、そのまま此処まで来ちゃいましたし、もうそろそろお昼時ですよね?何かあった時の為に、軽く何かお腹に入れておきません?」

 

 

エリオ「だね……。いざって時に空腹で満足に戦えないってなったら大変だし、僕もキャロの意見には賛成かな……」

 

 

フリード「キュクルル〜!」

 

 

ティアナ「あ、あんた達ねぇ……」

 

 

おずおずと、控えめに手を挙げながら言い難そうにそう申し出たキャロとエリオ、キャロの頭の帽子の上にぬいぐるみのフリをして乗ってるフリードも同意を示すように鳴き声を上げるのを見て、ティアナが皺が寄っている眉間を抑えて心底呆れる中、そんな気の抜けるやり取りを前にギンガは苦笑いし、零と優矢に目を向けた。

 

 

ギンガ「えと…みんなこう言ってますし、何処か適当なお店にでも入って腹ごしらえでもしません?ずっと気を張っているのもあんまり良くないでしょうし、息抜きを兼ねて、みたいな……」

 

 

零「……まあいいだろう。ぶっちゃけ俺も、アイツらと合流するのに心の準備とかしたいしな……そうだなあ……彼処とかどうだ?」

 

 

キョロキョロと辺りを見回し、零が親指で軽く指した先には、白の壁がキラキラと輝いているように見えると錯覚してしまうほど豪勢な外観をした料理店……というか、何処からどう見ても庶民が簡単に足を踏み入れるのも憚られるほど威圧的な雰囲気が凄まじい、純白の佇まいがとても目立つ高級店だった。

 

 

優矢「ま、まじかよ……!いいのかよあんなお高そうな店で!?」

 

 

零「ああ、ついさっき気持ちの悪い祝いの言葉を貰ったんだ。口直しに高級ディナーでもしなきゃだろ?お前の奢りでな」

 

 

優矢「へー!そりゃ太っ腹──え、待って?なんて?俺の奢り?なにいうてますのアナタ???」

 

 

零「なんだ?この世界の真相はともかく、九つの世界を巡り終えたのは事実なんだ。旅を終えた俺達に、ディナーの一つでも奢ってくれてもいいだろう?」

 

 

優矢「いや俺にそんなん払える訳ねーじゃん?!普通の高校生よ俺?!そんな高級ディナーとか―ドンッ!―うほぉ!?」

 

 

零「ケチケチすんな。せっかくの祝いムードが白けるだろう?ほら、お前らも突っ立てないで着いてこい」

 

 

ギンガ「え…えーとっ……」

 

 

ティアナ「い、いいのかしら、これ……」

 

 

キャロ「う、うーんっ……」

 

 

スバル&エリオ「「優矢さん!!ご馳走になりまーす!!」」

 

 

優矢「待ってよぉ!?俺マジでこの人数に奢るの!?しかも大食い三人抱えて!?嘘でしょ!?」

 

 

零「そんなビクビクすんな。しゃーない、俺が先陣を切ってやる。今回はたらふく食えよ、お前ら!」

 

 

スバル&エリオ「「おおーー!!」」

 

 

優矢「待ってぇええええええっ!!お前に入られたらマジで俺に逃げ場ないってぇええ!!お願いだからま───!!!」

 

 

半泣きになりながら慌てて零を止めようと走り出す優矢だが、時は遅く、零は既に店の入り口の前まで辿り着いて扉のドアノブに手を掛けており、ガチャッ!と音を立てて開かれた扉の奥に零が、続いて優矢が慌てて駆け込んだ瞬間……

 

 

―パァアンッッ!―

 

 

優矢「……へ?」

 

 

零「……あ?」

 

 

二人が店内に足を踏み入れた瞬間、不意の破裂音と共に、零の頭上から金銀の派手なテープや無数の紙吹雪が降り注いだ。

 

 

そんな思わぬ展開に零も優矢も色々と降ってきた店の天井を見上げ、続いて入ってきたスバル達も上から降り注ぐ紙吹雪や、テープ塗れの零の姿を見て状況に理解が追い付かず混乱する中、店内のあちこちから従業員と思われる正装姿の女性従業員達、そして、オーナーかと思われる服装に身を包んだ整った髭の男性が彼女達の前に立った瞬間、皆が一斉に零に向けて盛大な拍手を送った。

 

 

「おめでとうございます!あなたは当店オープン以来、1万人目のお客様でございます。本日のお食事は全て、無料とさせていただきます!」

 

 

「「「「……は?」」」」

 

 

オーナーがそう告げたと共に、彼の背後に控える従業員達が何処からともなく『祝!1万人突破!』の横断幕を広げたと共に拍手の勢いが増していき、対する零達は徐にお互いの顔を見合わせ、「なにこれ……?」といきなりの超展開に唖然として立ち尽くすばかりだったが、そんな彼等の前に……

 

 

「──いやぁー。記念すべき1万人目が、まさか見知った顔になるとは思わなかったッスねぇ〜」

 

 

零「……!」

 

 

戸惑う一同の耳に、何処からともなく飄々とした声音の男の声が届く。

 

 

頭や服に付いた紙吹雪とテープを払っていた零は、その声を聞いた途端に僅かに目を見開いて手を止め、思わず声が聞こえてきた方に振り向くと、オーナー達が一斉に道を開くように左右に散り、店の奥からこの煌びやかな場に似つかわしくない、ラフな格好をした細目の黒い髪の青年が店の奥から手を振って姿を現した。

 

 

零「お前……一樹……?」

 

 

一樹「やーッス。中学卒業して以来ッスねー、零。相変わらずの仏頂面、久々に見られるとは思わなかったッスよぉー」

 

 

やはは、と、如何にも軽薄そうな笑顔を零に向けるのは、彼やなのは達の中学生時代の友人の一人、市道一樹。

 

 

終夜と同じく、中学を卒業して以来の再会だった。

 

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 

―高町家・零の私室―

 

 

なのは「───!あった…!やっぱりここに仕舞ってた!」

 

 

一方。零達とは別にこの世界について調査を開始したなのは達は、先ずはこの世界と自分達の世界との類似点を見つけるべく、一番分かりやすい点である零がいたという痕跡(・・・・・・・・・)の有無を調べていた。

 

 

それらの証拠は実家が一緒であるなのはの家に行けば直ぐに見付かると考えて、一行が訪れた高町家にはしかし家族の姿はなく、途中で母達の顔を見ようと寄った店先にもCLOSEの看板が掛けられていて奇妙に思ったなのは達だが、どうやら街に残っていたアリサとすずか曰く、高町家の面々は今現在旅行中で家も店も空けているとのこと。

 

 

それならばと、玄関先に隠しておいてある非常用の家の鍵を使って中に入ったなのはに続き、皆で零の部屋に踏み入り(無論無断ではあるが)、零が桃子に管理を任せていた彼の部屋中をひっくり返す勢いで探していた中、零の机を漁っていたなのはが一冊のアルバムを見付けた。

 

 

すずか「よかったあ……。棚の方は全然だったから、一瞬ほんとに零君の部屋なのかな?って疑っちゃったよ……」

 

 

はやて「机かー。部屋に入って直ぐに怪しいて思ったけど、く〜、あそこで素直に直感に従っとくべきやったなぁっ」

 

 

アリサ「アイツの持ち物なんかで一喜一憂してたらキリないわよー?どーせ昔の写真なんだし、此処に残していったぐらいなんだから大したものなんてな……うぐぁっ」

 

 

先にアルバムを見付けられなかった事をちょっと悔しがるはやてに呆れながらそう言いつつ、なのはの手からひょいっと手に取ったアルバムを開き、中を覗いた途端にアリサが目眩でも起こしたようにグラッと身体を揺らし、そのままアルバムから顔を離して目元を抑えてしまう。

 

 

フェイト「ア、アリサ?だいじょうぶっ?」

 

 

アリサ「ぐうっ…油断してたっ…そうよね…昔のなら、今よりよっぽどヒドイのなんて当然じゃない……あんた達、これ見るなら一旦目を凝らしてからの方がいいわよ…でないとイカれるわ、目が…」

 

 

はああああ……と、何だかやけに疲れた顔でアルバムを差し出してくるアリサの様子に訝しげな反応を浮かべるなのは達だが、アルバムの中身を見た瞬間、彼女が言わんとする事を否が応でも分からされた。

 

 

アルバムの中には昔の零が撮った写真が収められていたが、その出来はどれもがピンボケしているものばかりな上、まだ撮影の腕も其処までな時期に撮ったばかりなものな為か、今に比べてクオリティーもより酷く、それらをズラリと並べて一度に視界に入れれば、思わず立ちくらみを覚えるほどの苛烈な色彩の暴力に見舞われる威力を放っていた。

 

 

はやて「うおあああっ……ひ、久々に見ると、ほんまにこの頃の零君の写真て凄いなあ…色んな意味でっ…」

 

 

なのは「うんっ。……でも、この強烈さは間違いなく零君の写真っていうか…本人にしか出せない味だよね、これ…」

 

 

彼の写真、それこそ昔のソレを良く知る彼女達だからこそ断言出来るが、こんな下手に下手を塗りたくったかのような出来前の写真など他の人に模倣など出来ようハズもない。

 

 

これは間違いなく零の写真だと確信を持ち、であるならば必然的に、この海鳴市は滅びの現象に襲われた自分達の世界の故郷で違いはないハズだ。

 

 

はやて「となると…やっぱりこの世界は私らのいた世界、って事やろか…でもそうなってくると、ミッドと連絡が取れない事も、デバイスの起動や魔法がまだ使えない事にも疑問が残ってくるし…」

 

 

フェイト「もしギンガの見立て通りなら、一応納得出来る部分もあるんだけどね…問題は、そう思える要素が足りていないのが現状なんだけど…姫達の方で、何かこの世界についての進展とかってまだないのかな?」

 

 

自分達の世界との確かな類似点は見付けたが、それだけでは零も言っていた疑問や不穏な点を払うには些か心許ない。

 

 

次元に関する問題ならば、神である姫や魚見の知恵を借りればそれらを振り解けるのではと思い、見れば、すずかが既に自分の携帯で姫達に連絡をし始めている。

 

 

が、何秒か待った後、すずかは携帯を耳元から離して首を横に振った。

 

 

すずか「だめ。姫さん、留守電になってて通話に出ない…」

 

 

なのは「取り込み中、なのかな…それとも──」

 

 

考え込むように顎に手を添えながら言い掛けて、なのはは頭を振って言葉を飲み込む。

 

 

不確定要素が多い今はあまり、皆の心配や不安な気持ちを煽るような発言はしたくない。気を取り直すように、多少強引にだが話題を逸らそうと、少し声を上擦らせながらもなのはが軌道修正を試みる。

 

 

なのは「姫さん達の方にはとりあえず、メッセージだけ送っとこうか。何もなければ、きっと向こうから折り返しがくるだろうし。零君達の方はどうかな?部屋や写真があること、本人の耳にも伝えておきたいけど…」

 

 

アリサ「こっちでもうやってるわ。でも出ないのよアイツ。だから一緒にいるティアナちゃんの方に連絡してみたんだけど……ねぇ、どう思う、これ?」

 

 

そう言って、眉間に皺を寄せて携帯の画面をジッと睨み付けていたアリサが、なのは達にも画面が見えように突き出す。

 

 

其処にはどうしてそうなったのか、何処かの豪勢なレストランの中で全身紙吹雪やテープ塗れになってジト目で立ち尽くす零と、そんな彼の肩に手を回し、もう片方の手で画面に向かってピースをする笑顔の一樹の姿も一緒に写されている画像がメッセージで送られてきていた。

 

 

フェイト「か、一樹!?」

 

 

はやて「なんで零君達と一緒に…というか、どこやのここっ?何がどうしてこうなったんや…」

 

 

すずか「……あれ……ここ、確か一樹君が贔屓にしてるって言ってたお店じゃなかったっけ…?少し前は違うお店だったけど、色々派手に改装して新店を出したとか言ってたような……」

 

 

アリサ「ええ、アイツの実家がお金出してって話。でもだからこそ変なのよ。だってアイツん家──」

 

 

なのは「……?一樹君、家で何かあったの?」

 

 

何やら訳知り顔で一樹の実家について深刻げに語るアリサとすずかの会話になのは達が不思議そうに反応を返すと、二人は互いに顔を暫し見合せた後、アリサが徐に、奥歯に物が挟まるような口ぶりで話し出す。

 

 

アリサ「アイツ、今なんか家の方で親戚と色々揉めてるそうなのよ。実家を仕切ってる父親が寝込んでて、その隙に叔父とかの親戚連中が代わりに仕切って色々と好き勝手にやってるとかなんとかさ……」

 

 

フェイト「そ、そうなの?そんな話、私たち全然……」

 

 

すずか「まあ、あくまで噂話な部分も多いから…でも、叔父さんとは上手くいってないのは多分本当かもしれなくて、零君達が今いるお店、その叔父さんが元は一樹君のお父さんが仕切ってたお店に勝手に手を加えたみたいなの。一樹君、あんまりそのこと快く思ってなかったらしいんだけど…それなのになんであのお店に…」

 

 

父親の危篤。それに親戚との仲違いからの確執。今の一樹を取り巻く複雑な環境を聞かされ、驚愕と共に大きな心配を覚えるなのは達だが、アリサとすずかの方は別の疑問から画像に映る一樹の元気そうな姿に違和感と疑問を覚えているようだ。

 

 

若干重苦しくなる空気。それを感じ取ったのか、空気を呼んで皆の会話を今まで黙して聞いていたヴィヴィオがなのはの服の袖を軽く引っ張る。

 

 

ヴィヴィオ「なのはママ…?」

 

 

なのは「……!ぁ、う、ううん。だいじょうぶっ。なんでもないよ?」

 

 

不安げな眼差しを向けて見上げるヴィヴィオを安心させようと、僅かに身を眺めたなのはがヴィヴィオの頭を撫でる。

 

 

その様子を見て、あまり気落ちしている様子を子供に見せる訳にはいかないとフェイト達も気を取り直し、先ずははやてが先に提案を口にする。

 

 

はやて「とりあえず、ここから私らもどう動くべきか考えよか?一樹君と一緒にいる零君達と合流するか、連絡が付かない姫さん達の安否の確認も兼ねてそっちとの合流を目指すか」

 

 

フェイト「ううん…ここから二手に別れる、のは難しいかな……?今戦える力を持ってるのは、Kウォッチを使える私達の中の誰か一人とヴィヴィオだけなんだし…ここから何が起きるのか分からない以上、下手に戦力を分散させるのもそれはそれで悪手になり兼ねないし…」

 

 

アリサ「うーーん……あーーー……あーーーー、ダメだわ……!色々と気になる事がノイズ過ぎて、ぜんっぜん考え纏まんないっ……ねぇ、ちょっと外出て気分転換しない……?なんか外の空気吸いたい気分よ、今っ」

 

 

すずか「あはは……じゃあ、一旦そうしようか?あんまり零君の部屋にお邪魔するのも申し訳ないし……」

 

 

なのは「ん、私もそれは賛成。……あ、アルバムは持ってってもいいかな?私達には分からないけど、もしかしたら零君も知らない写真とかが混じってて、それが何かの手掛かりになるかもだし」

 

 

アリサ「いいんじゃない?……ついでに、アイツの昔の写真で弄り倒して一泡吹かせられるかもだし、私的にも持っていかない理由はないわ。ふふふふ」

 

 

フェイト(……な、なんだろ……アリサが言うと、もの凄く物騒に聞こえるような錯覚を覚える気が……)

 

 

すずか(アリサちゃん……絶対にアレで積もりに積もった今までの不満を零君にぶつける気だあ……)

 

 

ファサー!と髪を払い、何やら生き生きキラキラとした艶のある顔付きで自信満々に微笑むアリサから邪な動機を感じ取って顔を引き攣らせてしまうなのは達だが、触らぬ神に祟りなしにと追求は避けた。

 

 

ともかく今は外に出て一旦インターバルを取り、その後に他の皆に連絡を取ったり、どちらかと合流すべきか話し合おうと、零のアルバムを持ち出して家の前にまで移動した彼女達の前に……

 

 

「──お?アリサにすずか……え、まさか、なのは達か?!」

 

 

「「「……え?」」」

 

 

家に鍵を掛け、元の場所に鍵を戻してその場を離れようとしたなのは達に向けて、不意に何処からともなく驚きの声が届いた。釣られて一同が振り返ると、其処には……

 

 

真也「──まじかよ。お前らの顔が揃うとか、今日って盆の日だったりしたか?」

 

 

恭平「おーおー、めっちゃ久々なメンツじゃーん!元気にしてたかー?」

 

 

なのは「!真也君に…恭平君!?」

 

 

まるで有り得ないものでも目にしたかのように、乾いた笑みを浮かべて立ち尽くす白い花束を手にした青年と、そんな彼の背中からひょっこりと顔を出して、戯けた笑顔と共になのは達に向けて片手を振るもう一人の青年……なのは達や零の中学時代の友人である荒井真也と、進藤恭平らの姿があったのだった。

 

 

 

 

 

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