仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
姫「──むう……」
街を探索する零達が古い友人達と、それぞれ久々に再会を果たす少し前。零達に申し出てこの世界で感じた
姫は瞳を伏せ、両手を合わせたまま違和感の正体を探ろうと辺り一帯に神経を集中させながらその出処を探し出そうとしてるのだが、どうやら成果はあまり芳しくないのか、集中する姫の顔の眉間の皺が時間が経つに連れて徐々に険しくなっていく。
そんな中、姫の近くに魔法陣が出現し、その中から別の場所でこの世界について調査していた魚見が現れ、集中状態に入っている姫に背後から近付いていく。
魚見「桜ノ神、そちらの首尾は如何ですか?こちらは全然で……」
姫「……私の方も同じくだな……調べれば調べるほど、この世界に対する疑念の念が積もるばかりだ……」
合流した魚見の顔を一瞥しつつ、姫は両腕を組んで周囲の街並みを訝しげに見回していく。
二人の目に映る景色は平々凡々な平穏な光景。零達から聞かされた破滅の痕跡さえ一切見当たらない、当たり前の日常が何処までも続いている。
……しかし、
魚見「ええ……何しろ、
姫「ああ……。とは言えこれが悪意を持った何者かの仕込みだとして、零の傍にいる私達の存在を認知していないとも思えない。いずれ気付かれるないし、この違和感に気付いた時点で、私達が彼等にこの事を話さないとは向こうにだって分かる筈もないのだし」
魚見「……つまり、敢えて私達は見逃されてされている、と?」
姫「真相を暴かれた所で支障はないのか。或いは私達の口から彼らに告げられる事で、向こうにとって何かしら益のある事態が既に仕組まれているか……可能性は色々と考えられるが、どっちにしたって面白くない。こうして私達が右往左往している姿も、何処で誰に見られてるのか分かったもんじゃないんだしな」
ふう、と、心底不服そうな表情と共に姫が深く溜め息を吐き出す。その様子を尻目に魚見は顎に手を添えて思考に浸り、もう片方の手を軽く宙に振るうと、彼女の手から細かな青白い無数の粒子が流れた。
魚見「比較的近い次元に存在するであろう、この世界のミッドチルダを探そうとしても干渉が出来ない……。それどころか、時空越しの生命の僅かなゆらぎでさえ一切感じられないなどと、こんな事が本当に有り得るのでしょうか……?」
姫「それだけ世界の繋がりを隔てている力が強いのか……或いは
姫「桜ノ神」
姫「……判っている。あくまで私の中での最悪を想定した予想だ。間違っても、彼女達の前で口を滑らせたりやしないさ」
魚見から咎めるような声音と眼差しを向けられ、己の不謹慎さを恥じるように目を伏せて溜め息混じりにそう返すと、組んでいた両腕を解き、姫はもう一度辺りを見回す。
姫「しかしまぁ、ここから先はどうしたものかな……まさか神格二人が揃って大した収穫を得られなったなどと、私達の契約者に知られればあからさまに肩を落とす顔が容易に想像出来てしまう」
魚見「元々お互い、神としてそれほど大した位でもないでしょう。とはいえ、それでも最低限の尊厳ぐらいはあります。せめて小さくとも、何か手掛かりの一つくらい───」
と、零達と合流する前に何かしら手柄を用意しておかねばならないと、神としての威厳を保つ為にも此処からのアプローチの方法を姫と相談し合う中、魚見は不意に口を止め、口元を手で覆いながら無言で姫の顔をジッと見つめ始めた。
姫「…?魚見?」
魚見「『───咲夜。そのまま振り返らず、背後に意識を集中させてください。近くの物陰から、こちらの様子を伺っている人影の姿が見えます』」
姫「『──なに?』」
突然念話で話し出した魚見に言われるまま、姫は彼女に言われた通り振り向く事なくすぐさま背後に向けて意識を集中させると、其処には……
「……………………」
自分達から少し離れた先の建物の影。こちらの様子を窺うようにして隠れる人影の姿があり、左半身が僅かに物陰からはみ出ているが、その風貌はこの平穏な街風景に似つかわしくない薄汚れたマントで覆われていて男か女か判断が付かない。
姫「『──見るからにの不審者だな…。魚見、君の方から相手の姿はもっと良く見えないか?』」
魚見「『先程から試みてはいるのですが、向こうに気付かれて逃げられるのも面倒ですので、あまり直視するのも難しいですね……。シルエットだけで性別を判断するのは難しいですが、魂の色合いからして、こちらに危害を加えるつもりは今のところなさそうです』」
姫「『敵対の意志はない、という事か?』」
魚見「『どうでしょう。個人的な印象で言えばその判断も難しい。私達の感覚で分かりやすく伝え合うのなら、上役やリアと相対した時のような感じと思って頂けると……』」
姫「『なるほど。つまり敵だな』」
魚見「『判断が速すぎます。今のはあくまで例えなのですからそのまま鵜呑みにしないでください』」
今の状況で彼女の天敵であるあの二人の名前を例えに出すのは不適切だったかと、一瞬で険しい顔付きになる姫を宥めながら軽く自省した魚見は、物陰の人物の立ち位置から視えないように姫の身体を壁にして中指に嵌めたリングをこっそり交換していく。
魚見「『ともかく、現状やっと見つけた貴重な手掛かりです。今はあの方と無難な形での接触を図るべきでしょう。桜ノ神、フォローをお願いします』」
姫「『無難、なぁ……こうやってコソコソこっちを盗み見してる時点で、下手に接触しようとすれば荒事になる可能性の方が高いと思うが……』」
魚見「『それも含めてのフォローです。この世界に危険がないか、本当に零達の世界なのかを確かめる為にも、漸く見付けた手掛かりを逃す訳にはいきません』」
思い立ったが吉日。若干渋々な反応の姫に反して魚見の行動は早く、即座に交換したリングをバックルに翳そうとし、そんな彼女を前に姫も仕方がない……と溜め息を吐きながら魚見が動き出すタイミングを見計らって奇跡の力を行使しようと両手の掌を徐に合わせようとした、瞬間……
───姫と魚見、そして不審者の周囲を何の前触れもなく銀色のオーロラが覆い尽くし、そのまま三人は何処かの山の中の森林の中にいつの間にか転移させられてしまったのであった。
「!?」
姫「っ、何だ?!」
魚見(強制転移させられた…!?場所は……海鳴市郊外の森?別の世界に跳ばされた訳ではない…?)
ほんの一瞬の内に降り掛かった急展開な異常に僅かにパニックになりつつも、魚見は自分達が跳ばされた現在地が海鳴市の郊外である事を瞬時に把握しつつ、次に不審者に目を向ける。
この中で自分と姫を転移させたとすれば、可能性として一番に怪しいあの不審者の仕業だと踏んで即座に拘束しようと腰のバックルに手を伸ばし掛けるが、見れば、不審者も困惑した様子で辺りを見回している。
魚見(…?この転移は、あの人の意図したものではない…?)
『───おやおや。逃げ出したネズミを捕まえようと張ってた罠に、まさかハズレばかりな上に予想以上の大物が掛かるとは思わなかったなぁ』
姫「!誰だ!?」
この強制転移があの不審者の手によるものではないと確信した矢先に、何処からともなく飄々とした声が届いた。
三人が慌てて振り返ると、其処には木の影から黒いライダー……仮面ライダーリュウガが静かに姿を現し、徐に三人の方に静かに視線を向けていく。
姫「お前は…!」
魚見「異世界のダークライダー…?何故この世界に…」
リュウガ『何故って、そりゃあこっちは目的達成がまだなんだから。君達の旅が終わったからって、こっちが気を使って手を出さなくしてあげる義理とかないでしょ?』
姫「そんな話をしてるんじゃない……!この世界は今、外からの侵入も内からの脱出も出来ない状態だ。そんな場所にどうやって……!」
リュウガ『……ああー……そもそものってハナシね……ま、別に答えてあげても構わないんだけど、その前に、そっちの人をこっちに渡してもらっていいかなぁ?』
「……っ!」
警戒して身構える姫と魚見の鋭い視線に特に気に留める様子もなく、何処か気怠げに頭を揺らして視線を動かしたリュウガの眼差しが、ボロボロのマントを羽織った人物に向けられる。
その赤い瞳と目を交わしたマントの人物が身を縮こまらせて半歩下がると、リュウガは乱雑に草を踏み鳴らしながら自身の鼻の辺りを人差し指でクルクル回し、近付いてゆく。
リュウガ『なーんか臭いっていうかさァ……アンタ、もしかしなくても
魚見「……居るハズがない…?」
その引っ掛かる物言いに、魚見の眉間が訝しげに歪む。
しかしその間にもマントの人物は迫るリュウガを前に少しずつおぼつかない足どりで後ずさりしていき、姫と魚見を何処か名残惜しそうに一瞥した後に彼女達に背中を向けて一目散に逃げ出すが、そうはさすまいとリュウガの右手が左腕のブラックドラグバイザーに伸び掛けた寸前、彼の前に姫が咄嗟に立ち塞がりながら腰に戦極ドライバーを装着させる。
リュウガ『ちょっとちょっとぉ…邪魔しないでくれない?こっちは貴方達に用はないんだからさぁ。事情も知らないのに首を突っ込むとかやめておいた方がいいよ?』
姫「生憎だったな。私達は根っからのお節介焼きなんだ。あの人間が誰かは分からなくとも、目の前で無抵抗に襲われている所を黙って見過しては守り神の名が尚更廃るというもの」
魚見「それにまだ、こちらからの質問に何一つ答えてもらっていません。何故貴方がこの世界にいるのか、そもそも貴方々が何者なのか……。全て吐いてもらいますよ、洗いざらい」
逃すつもりはないと、既に指輪のカバーを下ろして腰にベルトを出現させている魚見が姫の隣に並び、共にリュウガと対峙していく。
完全に臨戦態勢に入っている二人を前にリュウガも首を振って面倒そうに溜め息を漏らしつつ、腰のVバックルのカードデッキからカードを一枚静かに抜き取った、その時……
―……PPPPPPPPP!―
魚見「!」
姫「あっ…!」
姫のポケットから、不意に携帯の着信音が鳴り響いた。
それは同時刻、高町家へ手掛かりを探しに訪れているすずかからの着信。
いざとなった時、或いは何かの異変や不審な点を発見した際には直ぐに他の仲間にも知らせるようにと事前に話し合っていたが、まさかこのタイミングでかと不意打ちの着信に二人が意識が一瞬そちらに向いたその隙を見逃さず、リュウガがブラックドラグバイザーにカードを装填しながら二人へ突進する。
『SWORD VENT!』
リュウガ『お先に』
姫「っ…!魚見っ!」
魚見「くっ!」
『defend now!』
バイザーを展開して電子音声を鳴らした直後、遙か空から黒いドラグセイバーが回転しながら振り降りてリュウガの掲げた手の中に収まり、そのまま剣を手にした腕を勢いよく振り下ろす刃が二人に襲い掛かるも、魚見がセイオウドライバーのバックルにリングを通し、そのまま素早く突き出した掌の前に巨大な朱い魔法陣の障壁を出現させてリュウガの剣を防ぐ。
が、その拮抗も長くは続かずに瞬く間に魔法陣は粉砕されるが、二人がリュウガから離れる十分な時間稼ぎにはなり、左右に別れるようにその場から飛び退いた魚見は反対方向の姫に向けてすぐさま叫ぶ。
魚見「桜ノ神!ここは私が引き受けます!貴方はすぐに皆さんの元へ!」
姫「分かってる!すまんが任せた!」
パンッ!と、魚見が言葉を言い切るより先に両の手を合わせた姫は奇跡の力を用いてなのは達の元への転移を試み、姫の全身が桜色の輝きに包まれいざ跳躍しようとして、
……「ブブゥッ!」と、空間に大きなノイズが走ったような不可解な感覚が身を襲い、姫の身体から神氣を帯びた光が掻き消えるように消し飛んだ。
姫「?!なん、だ……?力が行使出来ない…!?」
リュウガ『……ああー……成る程。最初に聞かされた時は半信半疑だったけど、ホントにこういうのが出来るんだ?
魚見「っ、ゼロっ?何の話を…それよりも、桜ノ神に一体何をしたのです……!」
先程まで顕現出来ていた筈の力を発揮出来なくなり、自身の両の手を目を見開いて見つめ狼狽する姫。その様子を見て関心の声を漏らすリュウガの反応から、彼が何かを知っているのだと確信して問い詰める魚見だが、リュウガは肩の上に黒いドラグセイバーを乗せながら彼女の方に振り返り、ほくそ笑む。
リュウガ『僕は何もしていないさ。ただこっちには、君たちみたいな神様とかにちょっと詳しい人がいてね。さっきの罠もその人が設計したお手製みたいだけど、体の調子とかどう?』
魚見「……まさか」
嫌な予感が胸中を過ぎり、魚見はテレボートのリングを中指に嵌めて腰のバックルに翳してみる。しかし……
『error!』
魚見(っ…!ドライバー内の神氣が上手く働かない……!さっきの転移の際に何かを仕込まれた……?!)
姫(神氣の活性が乱されているのか……!?身体もダルい…!これでは例え跳べたとしても、力をコントロール出来ずに目的の場所とは見当違いの場所に跳び兼ねないぞ……!)
神氣に関連する技、機能が尽く謎の不備を起こしてしまっており、これでは零かなのは達の元に直接異変を報せに行く事が出来ない。
それならばと、姫は懐から携帯を取り出してすずかに折り返しの通話を掛け直そうとするが、彼女の死角から二体のライダー……ライオトルーパーが武器を振りかざし、いきなり奇襲を仕掛けてきた。
姫「なっ……!―ブザァアッ!―グッ!」
魚見「桜ノ神!!」
不意を突かれて一瞬慌てるも、反射的に身体が動き、姫は咄嗟にその場から飛び退いて二体のライオトルーパーの刃からギリギリ身を躱す。
そのまま受け身を取りつつ地面から起き上がった姫が顔を上げた先には、リュウガの背後の森の奥から続々と現れるライオトルーパーの軍勢の姿が。
姫「こいつら……!」
リュウガ『本当なら本命を捕らえる為の戦力だったんだけどね。ま、厄介な貴方達を此処で食い止める時間稼ぎが出来るんなら寧ろ上々かなぁ……。だから力が安定するまで、暫く遊んでいきなよ』
姫「っ、魚見!」
『PEACH!』
『Lock On!』
魚見「分かってます!」
『shabadwubi touch henshin!shabadwubi touch henshin!』
黒いドラグセイバーの切っ先を二人に突き付けて、リュウガはライオトルーパーの軍勢を一斉に差し向ける。
各々に武器を振りかざして容赦なく襲い掛かるライオトルーパー達を前に、姫は手速く親指で押したピーチロックシードを腰に装着した戦極ドライバーに装填しながらライオトルーパー達の攻撃を捌きつつ掌底で反撃し、魚見もバックルを操作しながら軽快な身のこなしで攻撃を躱しながらライオトルーパーを蹴り飛ばし、二人はそのまま後ろへ下がって肩を並べ、同時に最後の変身動作を行う。
姫&魚見「「変身!」」
『ソイヤッ!』
『PEACH ARMS!豪華☆絢爛!』
『gouka!now!』
『gou!gou!gou-gou-gou!』
深い森の不気味な闇を切り裂くほどの大音量の二つの電子音声が同時に響き渡り、姫は天神、魚見は聖桜へと変身を完了させていく。
そして天神は変身時に右手に現れた桜雪、聖桜はウィザーソードガンで変身直後を狙って飛び掛かってきたライオトルーパー軍団をそれぞれ迎え撃っていき、リュウガは二人の戦いぶりを遠くから静観しながらブラックドラグバイザーを展開し、更に腰のVバックルからカードをもう一枚抜き取る。
リュウガ『変身出来る程度にはまだ力が安定してるって感じかぁ……。良かったですよ。一方的に殴られるサンドバッグとか、こっちとしてもつまらないんでね、っと!』
『STRIKE VENT!』
聖桜『ッ!―ガギィイインッ!!―ぐうっ!?』
天神『っ、魚見っ!』
カードをブラックドラグバイザーに装填しながら一息で聖桜の目前にまで肉薄し、右腕に装備した彼の契約モンスターの一体であるメタルゲラスの頭部を模したメタルホーンによる刺突で聖桜に奇襲の一撃をかましたのである。
無数の火花を胸から撒き散らしてゴロゴロと地面を転がる聖桜に追撃を仕掛けようとリュウガが再びメタルホーンを突き付けて飛び出すが、其処へ真横から割り込むように天神が飛び込んで桜雪の刀身でメタルホーンの切っ先を受け止め、グッ!と踏ん張りを入れてリュウガをその場に押し留めた。
リュウガ『無理しない方がいいですよ?変身出来たとはいえ、体の不調まで治った訳でもないでしょ?』
天神『随分と舐めてくれるじゃないか…!これくらいハンデにもならないっ、出し惜しみ無しで掛かってくるといいさ!』
リュウガ『あっそ。なら遠慮なく!』
呼吸が少し荒い天神の強がりを一笑に付し、左手に持ち替えた黒いドラグセイバーを下から振り上げて桜雪を上に押し退けながらメタルホーンを入れ替わりに突き出すも、天神も負けじと左腰に収めた無双セイバーを咄嗟に引き抜きつつメタルホーンの切っ先を弾き、そのままお互いに間合いを取るように距離を取って暫しの睨み合いの立ち回りの末、両者はほぼ同時に地を蹴り上げて再度正面から互いの両手の得物を交錯させるようにぶつけ合わせていくのだった。
◆◇◇
「──はぁ、はぁ、はぁ……っ!!」
その頃。天神と聖桜、リュウガが激突する戦場から逃げ果せたマントの人物は森林の中を息を切らしながら必死に走り抜けていた。
両足を忙しなく動かしながら後ろを見ると、天神と聖桜があの場でリュウガ達の相手を引き受けてくれたおかげか追っ手の類の姿は見られず、適当に目に付いた樹木の元で漸く足を止めて木に手を付き、何度か咳き込みつつも呼吸を整え、そのまま木に背を預けながらズルズルとその場に座り込んでいく。
(っ……
その名を胸の内に思い浮かべた瞬間、マントの人物は一言では言い表せない様々な感情が胸に押し寄せ、小さく身を縮こまらせながら嗚咽を噛み殺すように呻き、フードの影で覆われた顔から大粒の涙が、幾つも幾つもこぼれ落ちてゆく。
(──こんどは……今度は絶対に、
胸に手を当て、ここにはいない誰かに向けて乞い願い、マントの人物はヨロヨロとその場から身を起こし、再び歩み出した拍子に力なく下ろした左手からジャラッ!と、ペンダントが滑り落ちそうになって咄嗟に強く握り締め、そのまま力なく何処かに向かって歩き出していく。
───嘗ての輝きもなく、赤い宝石に無数の酷い亀裂が走る、