仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編集⑱
番外編/だから、待ってる。


 

―光写真館―

 

 

なのは「──何気にずっと気になってたんだけど…優矢君って、自分の世界のこなたちゃん達とはどういう関係だったの?」

 

 

優矢「……んぇ?」

 

 

とあるライダーの世界を訪れ、数日が経ったとある日の午前中。

 

 

いつもの如く波乱万丈な事件を無事解決した後、この世界での役目を終えて次の世界へ発つ前に必要なものを取り揃えようと殆どのメンバーが買い物などで留守にしてる中、今回留守番係となって他の海鳴市組の面々と一緒にテーブルを囲み、栄次郎が煎れてくれた珈琲を啜っていたなのはが何気なくそんな一言を言い放った。

 

 

不意の質問に、撮影スタジオのソファーの上で完全OFFモードで寛いでた同じく留守番組の優矢が間抜けな声を返してしまったのと同時に、ソファーの反対側の端っこに足を組んで雑誌を読んでいた零が心底くだらなさそうな目でなのはの顔を見た。

 

 

零「藪から棒に急に何の話をし始めてんだ……身内の下世話にまで首突っ込み出したらいよいよキリないぞ、お前」

 

 

なのは「えっ。べ、別にそんな下心全開で聞いた訳じゃないよ!?ただほらっ、今はたまたま他の皆も出払ってて話題も特にないし、前々から気になってた事を聞くなら今のタイミングかなーって思っただけでっ……」

 

 

零「ほう。それでこれを機にと、年端もいかぬ未成年者共の乳くりあいを根掘り葉掘り聞きたくなったか。コイツはとんだムッツリだ。今日からお前の事はエースオブエース改めスケベオブスケベと敬意を込めて呼んでやる。泣いて喜べよ」

 

 

なのは「フツーにやめて!?というかそもそも其処まで云われなきゃいけないようなこと聞いたかなぁ私!?ねえ私の方が可笑しいのコレ?!」

 

 

はやて「なのはちゃん、零君の言うことなんか一々真に受けてたらあかんて……」

 

 

アリサ「右に同じ。ほら、見なさいよ今のアイツの心の底から興味なさそーな顔。多分今のも特に考えず口先だけのテキトーで喋ってただけよ?」

 

 

零「おお。よく分かったな。あまりにどうでもよすぎる話題にビックリし過ぎて完全に脳死で喋ってしまってたぞ。あーヤレのヤレ。今度からは気を付けて話題振れナー?」

 

 

なのは「え。あ。うん。ありがとう。とりあえず今回の授業料って事で全力全開のビンタお見舞いしてもいい??」

 

 

すずか「ちょっ、なのはちゃん!?ストップっ、ストーップ!!」

 

 

フェイト「今は十割くらい零が悪いけど手を出したらなのはもトントンになっちゃうから!抑えよ!ね!?」

 

 

ぐでーん、と、今回の旅の役目を終えてから完全にやる気が底を尽いているのか、ソファーの上に上半身を投げ出すような形で預けながらニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている零の態度から完全におちょくられていたのだと気付き、青筋を顔に浮かべながら服の袖を捲って椅子から立ち上がろうとするなのはを両脇の席のすずかとフェイトが全力で落ち着かせようと宥めに掛かる。

 

 

そんなワチャワチャした光景を前に話題の中心である筈の優矢はすっかり置いてけぼりを喰らい、気まずげに隣に座る零となのは達の顔を交互に伺いつつ、おずおずと右手を挙げていく。

 

 

優矢「あのー、サーセン……いつの間にか蚊帳の外に放り出されてて割って入るのも恐縮なんですケドー……そもそもの話、何でそんな話を俺に…?」

 

 

なのは「ふぅううーー……ふぅううううっっーーーー……深呼吸、ビークールだよ私っ…………ええっと、実はこの間、進君の所のこなたちゃん達と久々に通話で話して、そういえば優矢君と優矢君の世界のこなたちゃん達の関係性とかあんまり聞いた事なかったなって思ったのがきっかけでね……?だから特に深い意図があっての質問じゃ無かったというか……」

 

 

零「ほおー…………いや待て。進のとこのこなた達?お前らいつの間にアイツ等と連絡取れるようになってたんだ?」

 

 

すずか「?えーと……もう随分前からじゃ無かったかな?」

 

 

フェイト「その辺りあんまり覚えてないけど、ほら、最近アリサも合流したでしょ?だから近況報告も兼ねて、アリサの事も一緒に紹介しよっかって話になって。言ってなかったっけ?」

 

 

零「一から十まで全部初耳だわ。アイツ等と連絡出来るようになったなら先に教えとけよ。俺だってアイツらの近況は気になってたってのに」

 

 

はやて「あー……そ、それはごめんやけど、私らもうっかり忘れてて、ついっ」

 

 

なのは「いいよいいよはやてちゃん。こんな意地悪な人に一々知らせる必要なんてないんだからっ」

 

 

ジト目を向けてくる零の眼差しに居た堪れなさそうに後頭部を掻くはやてだが、先程のおちょくられた件を未だ引きずってるなのはは椅子に座り直しながら「つーんッ!」とそっぽを向いて完全に拗ね切っている。

 

 

彼女のそんな様子にフェイト達も苦笑いを浮かべたり呆れたりする中、はやてが先に我に返り優矢に向けて口を開いた。

 

 

はやて「せやからまぁ、なのはちゃんのさっきの質問も当人の言う通り単純な疑問というか……もっと言うと、優矢君の高校生活ってどんな感じやったんやろってちょっとだけ気になってな?アリサちゃんやすずかちゃんと違って私らは高校いけんかったから、どんな青春送ってたんやろうなぁって興味湧いてもうて」

 

 

優矢「せ、青春って、別に其処まで大袈裟な事なんてしてませんでしたよっ?こなたとは昔から一緒に遊んでて、かがみ達とは放課後に一緒に寄り道して遊び倒したりとか、そんなんばっかでしたし」

 

 

なのは「そうなの?なーんだ……思春期の学生同士、もっと何か甘酸っぱい展開とか期待してたんだけどなぁー」

 

 

優矢「いやんな期待し過ぎですって。ガチで大した事ないですよ?何か古くなった教材を買いに、放課後二人で遠出したりとか。休日のこなたの家で、朝から晩まで徹夜でゲームして寝泊まりしたこととかぁ……」

 

 

すずか「うん……うん?」

 

 

優矢「あとはそーだーな……あ、やまとって覚えてます?俺の世界で相棒だったんですけど。俺がクウガになった日ってちょうどバレンタインデーが近くて、当日にアイツからせめてのお礼(・・)つって義理チョコもらったんすよ。こんな言い方アレですけど、せっかくのチョコなら、本命とかだったらめっちゃ嬉しかったよなーってちょっと思ったりしてたっけ」

 

 

はやて「……ち、因みになんやけど、そん時ってこなたちゃん達からも貰ってたりするっ…?」

 

 

優矢「貰いはしましたけど、まあ所謂義理っていうか友チョコ的な……?かがみとかスゲー何度も念を押して『義理だから、勘違いしないよーに!』って言ってくるし、それ見てこなたが『お約束のツンデレを押してくね〜』なんてからかって無駄に怒らせるもんだから、宥めるのがもう大変で大変で……」

 

 

フェイト「…………えと……それはー、全員手作りだったり、する?」

 

 

優矢「え、ああー……そう、っすねぇ……?一応?ああでも、そんなThe手作り!って感じの力入ってるヤツじゃなかったっていうか、こなたなんて、毎年チロルとか市販のヤツくれるぐらいだから皆結構テキトーですし」

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

零(…………ぅおおっ、とぉ……全然関係ないと思ってタカ括って見物してたら、なんだか空気が変わってきたぞぅ……?)

 

 

「参っちゃいますよね〜」と、困り顔で頭を掻きながら世間話のノリで話す優矢が喋る度に、先程までゆるやかな様子だったなのは達の表情が徐々に真顔になっていくにつれ、何やら場の雰囲気の熱が心做しか下がっていっているような気がする。

 

 

完全に我関せずにいても流石にその変化には気が付いたのか、ソファーに投げ出していた身体が自然と襟を正すように背を伸ばして気まずげに座り直していく零を尻目に、何処か気疲れした様子で目頭を抑えていたなのはが深い溜め息と共に徐に眉間に皺を寄せた顔を上げる。

 

 

なのは「優矢君。ちょっと真面目にお話しよっか」

 

 

優矢「……へ?え、と……え?俺、何か変なこと言いました?」

 

 

すずか「言っちゃったっていうか、ウン……」

 

 

アリサ「流石にこればっかりはそっちのこなたちゃん達が可哀想になってくるというか……いやまぁ、コレに比べたらまだ情状酌量の余地ぐらいあるかー?って気もするけど……」

 

 

零「……おいなんだ。何故其処で俺を見るんだ」

 

 

先程までずっと傍観していただけなのに急に矛先を向けられて不服げな目で反論を返す零。

 

 

しかし優矢はそのやり取りを見て数秒ぐらい固まった後、まるで閃きを得たようにビギーン!と凄まじい勢いで稲妻が頭の中を駆け抜け、なのは達が言わんとしている事を瞬時に察し慌てふためく。

 

 

優矢「いや、いやいやいや!!違います違いますって!!俺とこなた達は別にそんな関係じゃないですよ!?変な勘違いしないでくださいよ!!」

 

 

ブンブンブンブン!と、ソファーから勢いよく起き上がりながらなのは達の勘違いを訂正しようと必死に否定して手を激しく振る優矢だが、そのリアクションになのは達は更に深々とため息を吐き出し、各々呆れ気味に口を開き始めた。

 

 

はやて「あんなぁ、優矢君……。普通女子は幾ら仲良しやからって、そんな気もない男の子と二人きりでお出掛けとか、自分の家に寝泊まりさせるとか、何よりバレンタインの日にわざわざ手作りでチョコ贈ったりとかせえへんのよ……」

 

 

優矢「え、ええっ?で、でもそれ言ったら、この間のバレンタインでなのはさん達もチョコを作って俺とか他の皆にも振舞ってくれてたじゃないっすか……」

 

 

なのは「アレはほら、皆でバレンタインを楽しもうって趣旨でのパーティーだから意味合いが全然違うっていうか……」

 

 

零「そうだぞ優矢。俺もコイツらや他の皆からチョコ貰ってたし。しかも何だか一際気合いの入ってたチョコでな?毎年貰う度に、やっぱりバレンタインデーってのはどいつもこいつも浮かれるもんなんだなぁと改めて実感したもんだ」

 

 

「「「「「……………………」」」」」

 

 

優矢「(……あっ、ヤバーイ。俺今完全に踏んじゃいけない地雷踏んだっぽい……)」

 

 

なのは達の事だ。恐らく零に関してはそれぞれ本命チョコを当時に手渡してたに違いはないが、やはりというべきかこの男、自分がなのは達から本命を貰っていたという自覚はなかったらしい。

 

 

そんなのほほんとした零の発言で撮影スタジオ内の温度が一気にただ下がりしたような冷たさが流れ始めたのを肌で感じ、優矢は慌ててこの話題を切り替えようと半ば強引に話の路線を戻そうと口を開く。

 

 

優矢「で、でもほら!俺結構こなた達と付き合い長いですし!友達っていうか、腐れ縁っていうかっ?多分そーゆー意味合いの方が近いんじゃなっ──」

 

 

なのは「ない」

 

 

はやて「ないよそんなん」

 

 

フェイト「有り得ないと思う」

 

 

すずか「優矢君、もうちょっと相手の心の機微とかちゃんと感じ取れるように努力すべきだと思う」

 

 

アリサ「でないとマジでコイツみたいに手遅れになるわよ。マジで」

 

 

零「だから何で一々俺を刺してくるんだ!俺今までのやり取りでお前達に其処まで言われるような事言ったか!?」

 

 

アリサの辛辣な言葉を締めに、何故か一斉に零の方に振り返るなのは達のジト目を一身に受けあまりに理不尽だと叫ぶ零。

 

 

無論そんな声に聞く耳を持つ者もいる筈もなく、優矢に関しては完全に零を尻目になのは達からの指摘を受けて大きな衝撃を隠せないでいるようだった。

 

 

優矢「え……ええ……?つ、つまり俺、こなた達から異性として見られてたって認識していいんスかっ……?」

 

 

なのは「つまりも何も、ちょっと話を聞いただけでもその認識にしかならないかなあ……」

 

 

優矢「俺が試験ヤバい!ってなってた時、みゆきさんがスゲー熱心に勉強教えてくれたことも…!?」

 

 

すずか「ああ、うん…それは半分善意の可能性もあるけど、多分…?」

 

 

優矢「つかさが一緒に家帰ろうって誘ってくれた時、どうせならかがみも誘おうぜ!って俺が言った時に何だか微妙そうな顔してたのも!?」

 

 

アリサ「つかさちゃんって、確か内気な子じゃなかったっけ……?幾ら気づけなかったとはいえ、そんな子が勇気振り絞ってお誘いしてたのに無下にするってのはちょっとぉ……」

 

 

優矢「ええ……じ、じゃあこなたん家に泊まった時、いつも俺の膝とか股の上に頭乗せてやけにリラックスしてた時とか──」

 

 

はやて「それもうあかんやろ。ギルティやん。その股からぶら下がってるソレ引きちぎったろか……?」

 

 

優矢「ひえ……」

 

 

零「お…おい待て待て待て……話は良く分からないが、流石に其処まで圧かけてコイツを追い立ててやる事もないんじゃ──」

 

 

「「「「「よく分からないならちょっと黙ってて!!」」」」」

 

 

零「ようし観念しろ優矢。俺にはもう助け舟が出せそうにない」

 

 

優矢「見切り付けるの速すぎるってぇ!!?」

 

 

流石に今の優矢の追い詰められっぷりに何だか他人事とは思えず零もフォローしようとするも、優矢に向けられてた五人からの圧を自分に浴びせられて即座に掌を返してしまう。其処へ……

 

 

ドール「──ほうむ。しかし零さんの言う事も珍しく真っ当といいますか、このまま優矢さんばかりが悪し言われるのも早計な気もしますぞぅ」

 

 

零「ふぉおおおうっ!!?」

 

 

優矢「ぎぃああああっ?!!」

 

 

ニョキっと、零と優矢が座っているソファーの背後の窓から蛇のように入ってきた銀髪の幼い変質者……もとい、ドールが不意にいきなり乱入者してきた。

 

 

フェイト「ド、ドール!?」

 

 

なのは「え、な、なんで窓から急に!?」

 

 

ドール「チャース。皆さんお久しぶりですう。最近中々顔を出せずに申し訳な……おや?お二方は何をしておらして?そんなびっくりしたお顔でソファーから転げ落ちたりして」

 

 

零「だ…っ…誰のせいだと思ってやがるこのクソ人形っ……!」

 

 

優矢「さ、最悪だ……!よりにもよってこんな時にコイツが首を突っ込んでくるとか……!」

 

 

ドール「ワーオ。ちょっと顔を出しただけなのにすんごい負の信頼とリアクション。日頃の行いの悪さを実感しちゃうわー」

 

 

ドールの顔を目の当たりにした途端、バクバクと早鐘を打つ胸を抑えながらまるで親の仇でも見るように睨み付けてくる零と絶望した面持ちで頭を抱えてる優矢を尻目に、ドールは無駄にヌルヌルした動きで窓から室内へと入り込んでいく。

 

 

ドール「いやはや、実は栄次郎さんへの珈琲豆のお土産をとば近くまで寄ったんですが、なにやら面白そうなお話をしてたんで暫しの間聞き耳を立てておりまして」

 

 

零「ようするに盗み聞きしてただけだろうがっ……」

 

 

ドール「ぬーん。いやストレートに言えばその通りなんですがね?そこはもうちょいワードを選んでプリーズしてくれたらなーと思わなかったりしてーと」

 

 

すずか「えと……一応聞きたいんだけど、聞き耳立ててたって、具体的にどのくらい前から……?」

 

 

ドール「へい。『えー?それ単にアンタの食べ過ぎなんじゃなーい?』の辺りからです」

 

 

優矢「……え、そんな会話あったっけ?どの辺の話…?」

 

 

アリサ「いやそこの男子二人がここ来る前に私らでしてたやり取りじゃない!?今まで何処のいたのアンタ!?」

 

 

ドール「まーまーまー。そこは別に重要じゃないですってー。今はホラー、女性陣からボッコボコにされてる優矢さんをお助けせねばならないと思いこうして馳せ参じたんですからねー、私」

 

 

優矢「……え?俺っ?」

 

 

ね?と、うっっすい笑みを貼り付けた顔のままのドールに両手を差し出された先の優矢は急に話を振られて困惑気味に自分の顔を指さしながら思わず間抜けな声で聞き返してしまう中、ドールは間髪入れず懐からノートPCを取り出した。

 

 

ドール「私、実はこう見えても色んな世界の記録というものを生業としてましてね?皆さんの今までの旅路はもちろんの事、他の世界の皆さんのこれまでの些細な出来事までバッチシ記録しとるんですわ。無論優矢さんの世界も例外でなく」

 

 

アリサ「世界を…記録っ…?」

 

 

零「お前ソレ要するに世界規模の盗撮盗聴になるんじゃないのか……」

 

 

ドール「クレームでしたら私を造った存在に言ってくだせーよう。生業とは言いましたがそうなるようにそもそも最初っから付いてる機能っつーか、私にもOFFに出来ねーんですもんこの能力。わりとキチーすよー?こうして話してる間にも色んな世界で起きてる出来事がリアルタイムで頭に直接ぶちこまれるんですからー」

 

 

意外としんどいんですよーと、自分の額を親指でグリグリしながら心底めんどくさそうな顔を浮かべつつ、ドールは撮影スタジオの背景ロールを手馴れた手つきで弄り、白い無地の幕を降ろしていく。

 

 

ドール「まあそんな話はともかくとしてデスよ。優矢さんも一方的にあれこれ言われ続けるのもいい加減癪でしょう?ここはほら、零さんと俺は違うんだぞーって言い返して身の潔白を証明してやりましょーや。私もお手伝いして、過去の記録を再生って形でお手伝いしますから」

 

 

零「お前にまで其処まで謂れる筋合いねえぞっ」

 

 

はやて「というか何でシレッと優矢君側に味方しとるんやろ……もしかしてまた何か良からぬ事とか企んでへんよね……?」

 

 

ドール「エー?ヤダーん。完全なる善意からですヨンそんなんある訳ないに決まってるじゃないですかーン」

 

 

フェイト(すごい…お手本みたいな棒読みで誤魔化された…)

 

 

零(胡散臭いを何重にも重ねたような顔してやがる…追求してもこの調子で躱す気だなコイツ…)

 

 

カタカタカタカタッターン!と、いつの間にか起動させてるノートPCのキーボードを両手で操作しながらうっすら目が開いている笑顔で怪しむはやてにそう言いつつ、ドールは背景ロールの無地の幕に向けてノートPCのデスクトップ画面を投影していく。

 

 

ドール「とまあ悪ふざけもこの辺にして…実際のとこ、どします優矢さん?弁明したいとのご希望でしたら私の方からテキトーなとこの記録を流して皆さんにお見せする事も出来ますが」

 

 

優矢「出来ますが、って急に言われてもさ……俺の過去の記録ってようするに俺以外の皆の思い出でもあるんだろ?それを勝手に流すとか結構な抵抗感あるんだけど……」

 

 

ドール「オォン…言われてみれば確かにその通り。ほんなら会話の一部分だけ流すとかはどーでっしゃろ?無論顔出しとか無しの音声のみ」

 

 

優矢「なぁんか嫌な言い回しするなぁっ……まぁ、それぐらいだったらまだアリ、かぁ……?」

 

 

ドール「ウッス。じゃあ適当なとこで、コレとかどです?」

 

 

―ポチッ―

 

 

 

 

 

 

『えー?普段の委員長してない時のいずみも俺は良いと思うけどなぁ。オススメしてくれるヤツとか全部面白いのばっかだし。一緒にいてもずっと飽きないし気が楽だよ?俺』

 

 

『ぇ……あっ、えと……あ、ありがとう、ございますっ……あの、先輩…今度の休日って、予定空いてたりとかってします……?』

 

 

 

 

 

 

ドール「ウス。終わりです。ね?上手く出来てたでしょ?」

 

 

優矢「ね?じゃねぇえええええええっっ!!!!切り抜き方に悪意があるってぇええええええええええええええっっ!!!!」

 

 

ヘヘッ…と、何故か褒められるのを前提としてるかのように鼻の下を擦って照れくさそうに笑うドールに、優矢の迫真の絶叫が炸裂する。

 

 

無論、こんな内容を聞かされたなのは達の方はと言えば澄んだ水を得た魚が如く。それはもうキラッキラッした眼でこぞってドールの周りに殺到した。

 

 

フェイト「ドール!!もういっかい!!今のってもう少し長く流せない!?」

 

 

なのは「っていうか今の相手っていずみちゃんだよね!?今の会話の流れって何処からどうしてこうなったの!?ねえ優矢君!!?」

 

 

優矢「ぁ、ぁああっ…ち、違くてぇ…!あん時っていずみから色々悩みの相談とか受けてた時でぇ…!あくまで先輩として俺なりに元気づけようとしただけでぇ……!」

 

 

はやて「……ほんで?結局、休日に一緒に出掛けたん?」

 

 

優矢「………………。あの、コミケに二人で、いずみが欲しがってたグッズとか色々と買い物に……ハイ……」

 

 

零「……?買い物してただけなら別に可笑しな所とか何もないだろ?」

 

 

アリサ「うん。アンタもういいからちょっと黙ってて」

 

 

零「何でだッッ!?!?」

 

 

一人だけ皆の話の内容に付いていけず、説明を要求したら辛辣に一蹴されて激しくショックを受ける零。

 

 

その一方で、今の音声を流したドールは今の皆のやり取りを見て珍しくも気まずげな顔で硬直し、額から冷や汗を流しながらしどろもどろに口を開く。

 

 

ドール「いやぁ、ええと…全体の会話の流れとか雰囲気を汲んでギュッと詰め込んだら此処が一番ピッタリかなぁと思ってぇ……特にこれといった他意はなかったと言いますかぁ……」

 

 

優矢「尚更タチわりぃよ!!ってかそれなら余計に何でここピックアップしたん!?こんなん誤解深まるだけって事前に分かるだろォ!!?」

 

 

ドール「いやまぁそうなんですけど、ほら、私も全部の記録を完全に把握してる訳ではないんでぇ……これどういう場面の記録だったっけ?ってなるのがたまにあると言いますかぁ……」

 

 

優矢「だったら尚更先にそれ言えやァッ!!いっちゃん伝え忘れちゃ駄目な情報じゃんそれ!!」

 

 

目を泳がせて弁明するドールだが、そんな人形のうっかりのせいで余計に誤解が深まった優矢の腹の底からの絶叫がずっと止まらない。

 

 

ドールはそれらの言葉を一身に受けてダラダラと暫し汗を流しながら熟考した後、気まずげな顔をそのままに優矢の方に振り返る。

 

 

ドール「ま、まあまだ序の口っすよ!ほら!次行きましょ次!今度は優矢さんからのリクエストで!ご本人からの指定なら先ずさっきみたいにならないですから!次はもうちょい長く流しますから何か思い出深い話とかドーンと下さいよ!」

 

 

優矢「ぜぇっ、ぜぇっ……また急に言われてもっ……じゃあ、えーと……あ!しょ、正月にかがみとつかさん家の神社でバイトした時!あん時は特に変なやり取りした覚えとかないからちょっと会話長くてしても大丈夫!……なハズ!」

 

 

零「もう既に自信無くなってるじゃねえかお前……」

 

 

優矢「いや今度は絶対大丈夫だって!!そーゆーわけで頼むドール!!」

 

 

ドール「任せてくだせェ。ほぉおおあおおおお!ぽぉう!」

 

 

優矢に背を押されるまま素早い指捌きでノートPCのキーボードを弾いた途端、再び優矢と相手の会話の一部分のシーンが音声のみで流れてきた。

 

 

 

 

 

 

『うおぉぅ……話には聞いちゃいたけど、実際に体験してみると年末年始の神社ってホントに忙しいんだなコレ……』

 

 

「まーねー。神社やってる以上はどうしようにも避けられないって奴よ。毎年恒例って感じ」

 

 

『ははは……ってなると、かがみが神社継いだりした暁には毎年の年末は大変そうだよなぁ。俺で良かったらバイトの手伝いとかやろうか?』

 

 

『気持ちは有り難いけど、今のとこその予定ないわねー。卒業したら法学部にいきたいし、巫女をやるにしても結局手伝い止まりで終わりだと思う』

 

 

『だよなー。前々からそういう話してたし……ってなんだ?何かあっち騒がしいな。悪い、ちょっと様子見てくるよ』

 

 

『あ、うん。ごめん。任せた』

 

 

 

 

 

 

フェイト「──うーん。今度はちゃんと普通、かな……」

 

 

すずか「まあ、さっきみたいに一発でダウトってなる部分はなかったんじゃないかなぁ」

 

 

優矢「ほ、ほら言ったじゃないっすか!さっきのはたまたまですって!別にアイツ等からそんな異性として見られるような事とかホントに言われた事な──」

 

 

 

 

 

 

『──まー、さ……アンタが将来うちの神社一緒に支えてくれるってんなら、私としては別にそっちもアリかなーって気はするけど……なんて……』

 

 

 

 

 

 

なのは「……………………」

 

 

フェイト「……………………」

 

 

はやて「…………………………」

 

 

すずか「……………………………」

 

 

アリサ「………………………………」

 

 

優矢「……………………………………」

 

 

零「……………………………………?」

 

 

ドール「……あ、サーセン、まだ続きあったみたいです。ハイ」

 

 

優矢「ハイ。じゃないんだけどォオオオオオオッッ!!!!?」

 

 

シナーとした顔で気まずそーにそんな報告を遅れてしてきたドールに、優矢渾身の絶叫が炸裂する。

 

 

確かにやり取り自体には特に何もなかったが、今のは声音からしてもわりとガチっぽいかがみの漏らした本音くさかった。

 

 

優矢本人も初めて聞かされた彼女の本音にかなり動揺しているらしく滅茶苦茶にパニクってる中、なのはが何やら腰の後ろに回した両手の指を絡めながら、ドールのノートPCの画面を覗き込む。

 

 

なのは「ねえドール?確か記録は沢山あるみたいこと言ってたけど、さっきみたいなのって他にもまだ沢山あるのかなぁ?」

 

 

ドール「……えー……あーハイ……一応まあ、そっすねー……」

 

 

なのは「そっかぁ。じゃあもうちょっと検証の為に記録見ないと駄目だよねー?これって身の潔白の証明の為なんだし」

 

 

フェイト「うん、私ももう少し必要だと思うなー」

 

 

はやて「今のところ潔白に繋がる証拠とか一切出てへんしなー。うん。しゃーないよなー、しゃーない」

 

 

優矢「ま…待って…その前にちょっと俺の方で一旦確認とか……あの、その……!」

 

 

ゾロゾロと、なのはに続くようにフェイトとはやてもドールの周りを囲んで笑顔で促すように語り掛ける三人だが、その顔からは有無を言わせぬ絶対の『圧』が感じられる。

 

 

その『圧』を一身に受ける当のドールは完全に固まって目線を泳がせまくりながらもう三人の言う事を聞くしかないと決心してると雰囲気で分かり、優矢は助け舟を求めて零の方に振り返るも、あちらはあちらで同じように『圧』を放つアリサとすずかの間に挟まれてビクビクと身を縮こまらせているという醜態を晒して最早使い物にならないと一目で分かってしまった。

 

 

 

 

 

────そして。

 

 

 

 

 

『──え?お姉ちゃんと比べてどうかって…そんなん気にする必要ないだろ?つかさにはつかさにしかない魅力があるんだし。もっと自信もっていいって。ウン。もしつかさから告白されたりしたらソッコーで付き合っちゃうぜ?俺』

 

 

『んー、俺はみゆきさんの子供っぽいとこも好きですよ?いやそんなお世辞とかじゃなくてマジで。俺としても、いっつもお世話になりっぱなしで申し訳ないなって思ってたし。だから普段からもっと甘えてもらえたら嬉しいかなーって』

 

 

『ゆたか!?大丈夫か!?ほら、背中乗れ!……や、迷惑なんかじゃないって。こういう時は持ちつ持たれつ、助け合いだろ?こういう時ぐらい男の俺にドーンと頼ってくれって』

 

 

『うん?や、みなみと一緒に居て退屈だった時とかねえよ?こうやってチェリーの散歩に付き合うのも楽しいし。ほら、前に動物の話とか色々聞かせてくれてただろ?あん時もすげぇ活き活きしてたし、笑った顔も可愛いんだなぁって新しい発見があったからさ。寧ろ楽しいよ、みなみと一緒にいるの』

 

 

『お、やまと?どしたそんな怖い顔して……痛ッたぁ!?ちょ、なんで急に抓るんだよ!?……え、や、まぁ、確かにさっきの未確認めちゃくちゃ強かったから、怪我隠してたのは謝るけどさ。これくらい唾でも付けときゃ治る……え?怪我が治るまで、代わりに弁当作る……?え、どゆこと?ちょ、やまとさん!?聞いてる!?』

 

 

『───え?あー、や、別に何にもないけど……ああ、うん……ウン……そっ、か……うん、うん……その、なんだ───ありがとな、こなた……』

 

 

 

 

 

 

優矢「ウワァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!ギィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!」

 

 

なのは達の意向により、急遽開催された記録検証という名の公開処刑。過去の自分の自覚してなかった一字一句をまざまざと見せ付けられ、桜井優矢の大絶叫が写真館から耐える間もなくずっと木霊していたのであった──。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

―クウガの世界―

 

 

ドール「──ヴぁああああ……まさか、此処までしんどい依頼になるとは思いませんでしたなぁ……」

 

 

あの(優矢にとっての)惨劇から数日後。

 

 

写真館から解放されたドールはシナシナした顔と重い足取りで、ある人との待ち合わせの為に優矢が旅に出てからのクウガの世界を訪れていた。

 

 

人形が足を向けて歩く先は、とある学校の通学路にも使われている並木道。その内の一本の木の下で……

 

 

やまと「──遅いわね……。あと少し遅れてたらこのまま学校に行こうとしてた所よ」

 

 

気だるそうに背中を木に預け、ジト目で近付いてくるドールを睨む少女……クウガの世界にて、優矢の相棒をしていたやまとが待ち合わせていた。

 

 

ドール「やー、これでもけっこー色々あったんですよー…?おたくのご依頼通り優矢さんの近況調べたりとか、それ知られたくないからバレないようにやってくれとか注文付けるもんだから無駄に苦労をですナー」

 

 

やまと「御託はいいわ。時間もないし。それで、例のは?」

 

 

ドール「ワーイ興味ねーって明らさまな態度ー。んじゃあハイ。これ約束の依頼の品ね」

 

 

疲れた様子でドールが差し出したのは、たった一枚の写真。

 

 

其処には撮影スタジオに椅子を五つ横に並べ、何故だか全員黒いサングラスを掛けて『圧』を放つなのは達と、そんな彼女達の前に立たされて今のドールのように憔悴し切った表情を浮かべる優矢、そしてそんな異様な光景をソファーに腰掛けながら「ワァア……」と引いた顔で見つめる零が居合わせているという何ともカオスな場面が写っており、やまとはその写真を眺めてクスリと笑った。

 

 

やまと「相変わらず、楽しそうな旅を続けてそうね。あの人」

 

 

ドール「どーすかねー。それの時とか、過去に色々知り合いの女の子とのやり取りが日の下に晒されてこってり絞られちゃってましたからねー。零さんみたいになったらどうするの!?というかある意味零さんよりタチ悪いから!なーんて」

 

 

やまと「そうなの?……ふーん。そっ」

 

 

両手を使ってジェスチャーしながら、当時のワンシーンを再現するドールの話を聞いてやまとは少し興味深そうな反応を見せ、写真を一瞬もう一度眺めた後、そのまま何も言わずに踵を返して学校のある方角へと爪先を向け歩き出した。

 

 

ドール「おや?もういいんで?」

 

 

やまと「ええ。知りたい事は今ので大体わかったし。あのディケイドがいる内は何にも心配はいらなそうって、確信も得たもの」

 

 

ドール「ほほう。その心は?」

 

 

首を傾げて問うと、やまとが足を止めて振り返り、受け取った写真をソッと口元に当てる。

 

 

頬に差した、仄かな赤をまるで隠すように。

 

 

やまと「見る目のない人にあの人の良さは分からないもの。変な虫が付くこともなく、旅から戻ってきたばかりのあの人に、この世界の誰よりも先にいの一番に言ってみせるわ。──『おかえりなさい』、ってね」

 

 

 

 

 

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