仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―風麺―
オルトリンデ「──うぅ……またもや敗れた……しかも七度……ある意味ラッキーセブンでちょっと縁起が良い……」
零「あの負けっぷりの後でポジティブに強過ぎだろこいつ……。メンタル鋼で出来てんのか?」
ユーノ「あはは……まあそういう部分もあって、僕ら揃って頭を抱えてた訳でさ……」
先の戦闘から約三十分後。変身解除まで追い込んだボロボロのオルトリンデを適当なロープでふん縛り、やっとの事で風麺の屋台の前まで引きずって戻ってくる事が出来た零達。
しなしなした顔で縛られ、肩を落としてがっくしと地面に座り込みながらもへこんでる様子も反省の素振りも一切見せないオルトリンデの図太さに零も引き気味に顔を引き攣らせ、ユーノも否定出来ず苦笑いを返すしかない中、オルトリンデを前後に挟んで何やらカチャカチャと音を立てながら作業をしていたクロノと優矢が、ふぅ…と安堵の息を漏らしてミューズギアを手に立ち上がった。
優矢「やっっと外せたぁ……!」
クロノ「流石に縛って座らせたままベルトを外すのは中々苦労したな……。ともかくこれでもう変身は出来ない。いい加減観念してもらうぞ、オルトリンデ」
オルトリンデ「ぅぅっ……これが所謂年貢の納め時なのですね……つまりはコレでこのオルトリンデはクロノさんに嫁入りするしかなくなった訳でっ……」
クロノ「そんな話をした覚えは一切ないのだがっっ!!」
零「図々しいの化身かコイツ……?おいどうすんだよクロノ……言い聞かせようにも此処まで話が通じねぇ相手だと流石にお手上げとしか言いようがないぞ……」
大輝「何を律儀に付き合ってるのやら……彼女は鳴滝さんの差し向けた刺客なんだろ?ならこの状態のまま何処か無人の世界にでも捨ててきてしまえよ。それで一先ず解決だろう?」
優矢「いやそんな捨て猫拾ってきたみたいな話じゃないんだから……」
クロノ「君の仲間は鬼か何かなのか零……流石に君の交友関係に異を唱えるぞ僕は……」
零「勝手にコイツを仲間認定するな侮辱罪で訴えるぞ」
大輝「不本意ながら右に同じくだ。……ああ。いっそ二人で訴えるかい?彼は提督だったようだし、俺と君とでならその分慰謝料もガッポリ貰えるだろ」
零「なんだ珍しくまともな事を言いやがって。明日は槍でも降るか?その悪知恵を次に活かせるよう普段からまともに生きろよコソ泥」
クロノ「なんでちょっと前向きそうなんだ!?言っとくが君らに払うモノなんて一文もないからな!!」
ユーノ「どうどうどう…皆、話がスゴい勢いで脱線してるから一旦落ち着こう…」
ガー!!と、不穏なやり取りを交わす零と大輝に怒鳴り気味にツッコミを入れるクロノにキリキリと痛み出す胃を抑えながらユーノが宥めに掛かる。
その様子に優矢も気の毒そうな目でユーノを向ける中、優矢の隣に座り込むオルトリンデはジーと零の顔を見据えたまま不満げに口先を尖らせていた。
オルトリンデ「やはり理解出来ません……何故貴方はこのような男を庇い立てすると言うのです?彼は世界の破壊者。貴方のような善人が真っ先に打ち倒すべき巨悪なのでは?」
零「…………」
大輝「おや、急に黙るじゃないか。図星を突かれて言い返す言葉も浮かばないのかな」
零「喧嘩なら後で買ってやるから今は黙ってろ」
ニヤニヤと、意地の悪い無駄に爽やかな笑みを浮かべる大輝の煽りを一蹴し、零は不快げに眉を顰めながら腕を組んだまま顔を逸らして舌打ちする。
クロノはそんな零の横顔をジッと見つめた後、やがてヤレヤレと首を振りながら困った表情をオルトリンデに向けていく。
クロノ「こういうところなんだよ、僕らが彼を放っておけないのが」
オルトリンデ「……?」
言葉の意味を理解出来ず、オルトリンデは訝しげに小首を傾げる。
彼女と同様の顔で零もクロノに目を向けると、クロノは肩先で零を指しながら話を続ける。
クロノ「自分に向けられる謗りには言い訳しない癖に、自分以外の誰かが同じ目に遭えば真っ先に身を張って庇う。なんなら自分からそいつの代わりに矢面に立とうとする。……こいつはそういう類の馬鹿なんだ。さっき君と戦った時、僕を助けたのだって彼が誰より速く駆け付けただろう?」
オルトリンデ「…………」
クロノ「そんな奴が世界を破壊する?このめんどくさがり屋が進んで自分からか?法螺を吹くにもしても、もっとリアリティのある内容に肉付けして欲しいものだ。確かに決して善人ではないし、どちらかと言えば悪人寄りではある男だが、彼の人となりを知れば何の理由もなしにそんな暴挙を犯す筈がない。それは僕とユーノが名誉に誓って保証する。……だからどうか、僕らの話を信じて貰えないだろうか?」
ユーノ「クロノ……」
零「………………」
膝を折り、目線を合わせて真剣な口調で根気強く説得を試みるクロノ。その瞳と暫し交差した後、オルトリンデはやがて溜め息を吐きながら目を伏せた。
オルトリンデ「成る程。理解しました。貴方の言葉に濁りはない。口先三寸で絆そうという邪な意志も感じられませんし、恩恵を与えられたとはいえ其れに報いて従うべき方ではなかったという事ですね。あらぬ因縁を付けてしまい申し訳ありませんでした、仮称世界の破壊者さん」
零「お…おお………いや待て、何か絶妙に誠意が篭ってなくないか今の謝罪…?」
クロノ「其処はあまり掘り下げない方がいい、長くなるぞ色々と。……と、とにかく、分かってくれたのなら何よりだ。彼は敵ではないし、君がこのベルトを使う必要もなくなったという訳だ。大人しく引き下がってくれるなっ?」
オルトリンデ「はい。私としましてもそちらはあまり重要事項ではないので、正当性を欠いているのであれば必要に拘る事もありません。……ですので、」
次の瞬間、バァアアンッッ!!と凄まじい勢いの破裂音と共にオルトリンデを縛り付けていたロープが粉々に弾け飛んだ。
あまりに急過ぎる事態に大輝以外の面々が思わずビクゥッ!と後退る中、ロープを無理矢理に引きちぎったオルトリンデが身を起こしてギラギラと輝く瞳をクロノに向けて叫ぶ。
オルトリンデ「ここからは私と貴方だけの
零「おい嘘だろこいつ全然懲りてねぇじゃねえか!?どうなってんだこの女!?」
クロノ「クソッ!良い話風に流しておけば誤魔化せるかと思ったが甘かったか…!」
オルトリンデ「いいえ、どうやら貴方の意思は固いと今回の件で理解出来たのでこれ以上の無理強いは致しません。貴方を婿養子として連れ帰るという当初の目的は諦めようと思います」
クロノ「な…なに…?そうなのか?なんだっ、そういう事ならまあ──」
オルトリンデ「代わりに貴方の子を産むという形で妥協しようかと思います!有り体にいえば貴方の種を小瓶に入れて町の皆に向けて掲げながら堂々とうちの名馬で凱旋しましょう!」
優矢「シンプル迷惑!!?」
クロノ「何故より最悪な方向にシフトアップするんだぁぁああ!!?可笑しいだろどう考えたってぇぇええ!!?」
大輝「いやぁ…凄いなぁ彼女。もう情欲が有り余り過ぎて瞳の奥にハートの形が見えるようじゃないか。もしや
ユーノ「フフ……盲目な恋は魔法のようだって、何かの本で読んだような気がするから多分そうかもしれないね……」
零「思考放棄で放心してる場合かユーノォ!!おい立てクロノ腰抜かしてる場合か!!お前にナニかあれば一緒にいた俺まで色々言われんだろ主にエイミィやフェイトからぁ!!」
オルトリンデ「そう不安がる必要はありませんよ天井のシミを数えていれば直ぐに終わる話です。え?ここ屋外じゃないかって?些細な違いですねとってもイージーな問題ですさあさあ出すもの出して下さいハリーアップ!」
クロノ「ひぃぃっ……ひぃいいいいいいっっ……!!」
もう滅茶苦茶が過ぎると、両手をパンパン鳴らしながら堂々と迫ってくるオルトリンデの圧に完全に押されてしまい、腰が抜けたクロノは最早かよわいいきものと化して零に全力で片腕を引っ張られてもその場から動けずにいる。そんな彼に、いよいよオルトリンデの魔の手が伸びる寸前……
「──ハイハイ。もうその辺で落ち着いて、ね」
―トンッ!―
オルトリンデ「あふん!?」
―ドシャアァッ!―
クロノ「……ぇ?」
零「な…何っ……?」
オルトリンデの身体がグラりと揺れて、いきなり目の前で前のめりに思いっきり倒れた。急に意識を失ってダウンしたオルトリンデを見て思考が追い付かず一瞬困惑する零達だが、彼女が立っていた場所の背後から手刀の構えを取る黒髪の女性……クロノとユーノの旅の同行者である小坂井ハルの姿が現れた。
零「先輩…!?あんたいつの間に…!?」
ハル「今ちょうど着いたところさ。みんな、無事──と聞きたかったところだが、見た感じちょっと出遅れてしまったかな…?」
クロノ「……い…いえ…ものすごく助かりました……危うく妻と子に対して不貞を働く事になるかとっ……」
ハル「……?」
はぁああああっっ……と、倒れるオルトリンデの身体から離れるように少し体をズラしながら一気に脱力して項垂れるクロノの有様に、此処までの経緯を知らないハルは小首を傾げて不思議そうにしつつ、彼と同様に脱力してる優矢に近づいてその手に握られるミューズギアを徐に手に取っていく。
ハル「まあともかく、二人とも五体満足そうで安心したよ。君達が彼女を引き付けてくれてる間にこっちも色々と駆け回ってね。彼女の世界の壁を超える力の出処を探ってたら、ツテのある情報屋からの知らせで案の定あの予言者さんの仕業だって分かったんだ。で、どうやらその力の要因になってるらしいこのベルト一式を回収しにきた」
大輝「なるほど…。あの人からすればそれで何時でも呼び出せる零への刺客にも使えるし、彼を擁護する貴方達への牽制として使う手駒としても色々ちょうど良かった訳だ」
零「…………何にも知らん状態でこのイカれた女と戦わされてたかもしれなかったと考えるとゾッとしないなっ……」
なんてヤバい奴に目を付けてくれたんだと、引き攣った表情で内心鳴滝へ恨み言を吐きつつ零が見下ろすオルトリンデに、ハルが腰を屈めて彼女の後頭部に手で触れていく。
ハル「彼女がこうなった原因は分かった。後は解決の目処なんだが、正直此処までクロノ君に執着が強いとは私も思わなくてねー……根本的な話、彼女の君や私達に関する記憶だけを消して元の世界へ送り返すのが無難だと思うんだけど、どうする?」
クロノ「どう、と言われましても……」
零「ってかサラッと言ってるが、あんた、記憶操作の類まで扱えるようになったのか…?」
ハル「いや、そこまで大層な事は流石に出来ないよ。私に出来るのはせいぜい一時的な認識の操作……暗示みたいなもの?だから、あくまでこの場での応急処置みたいなものさ。だからまた後日、その手の事に詳しそうなスペシャリストにまた記憶の書き換えを強固なものにしてもらうよう依頼するしかないんだが、うーん……あの人形さんのスケジュールってまだ空いてたかなぁ……」
優矢「…………(何か今一番聞きたくない奴の名前が出てきた気がするけど、うん、気のせいって事で聞き流しておこ……」
何やら頭を悩ませ、懐から取り出したスマホの画面と睨み合いを始めるハルの口からボソッとこぼれた心当たりしかない特徴からつい最近トラブルに合わせてくれた何処ぞの人形の顔が頭を過ぎり、全力で聞かなかったフリをして無表情で顔を逸らす優矢の隣で、ユーノが何処か縋るような目付きでクロノの顔を見た。
ユーノ「クロノ、正直僕はハルさんの言う通りにした方が良いと思うよ…?あれだけ説得を重ねても全然聞く耳持ってくれないし、君への想いをあの鳴滝って人が目を付けて利用してる現状も目に余る。これ以上彼女を巻き込まない為にも記憶は消した方が……」
零「俺も全面的にユーノに同意すんぞ。こんな危険物を下手に放置しておいたら何をし出かすか分かったもんじゃない。実際お前の手にも負えていないんだから素直にアドバイスに従っとけ」
此処まで巻き込まれたユーノもだが、先程までのオルトリンデの暴走っぷりを間近で見てた事もあってか零もわりと真面目な顔でガチめに助言を送る。ただクロノとしてはまだ何か思う所があるのか、二人からの提案にすぐには頷かず、倒れるオルトリンデを一瞥しながら苦々しげに口を開く。
クロノ「君達の言う事は最もだ。僕も今はそれしか他に方法を見出だせていないが……だからといって、彼女の記憶を本人の許可もなく弄るのはそれはそれで如何なものかと……」
零「お前なぁ、あんな目に遭わされてんのにこの期に及んでまだそんなっ」
クロノ「い、言わんとしてるのは分かってる!我ながら甘い事を言ってるとも思うさ!ただ、その……」
心底呆れた目を向ける零の視線に狼狽えつつも、クロノはもう一度オルトリンデの方を見て頬を掻いていく。
クロノ「せめて、記憶を消す前に彼女に何かしら告げるべきだと思うんだ……。彼女を此処まで追い立ててしまった原因は僕にも少なからず非がある。本意でなかったといえ君達を巻き込んでおきながら、解決を他人の手に委ねるのはどうにも心持ちが悪くてな……我が儘なのは理解しているが、そこをどうかっ……」
零「……………………………………………。はぁあああっっ……なァどーするよ、ユーノ……」
ユーノ「クロノの生真面目っぷりは筋金入りだからねぇ……はぁ……ああー、もうっ……」
ガシガシガシッと、あまりにも真っ直ぐな眼差しであくまでも真摯にオルトリンデと向き合うべきだと訴えるクロノの言葉に、零もユーノも二人揃って頭を乱雑に掻き、しかし何処か慣れた様子で項垂れながら溜め息を吐いた後、肩を竦めた二人は顔を上げてクロノの目を見る。
零「どうケジメを付けるにせよ、結局はこいつ次第ではあるしなぁ……ちっ……おいクロノ、せめてお前はこの女の前に出るな。どうせお前の顔を見た途端にさっきみたく暴走するのがオチだ。それ以外なら俺達も手ぇ貸す」
クロノ「は?い、いや待て、これ以上君達を巻き込む訳には……!」
ユーノ「もう散々巻き込まれてるのに今更でしょ……。君がこうなったら何言ってもテコでも動かないのは分かり切ってるし、だったらせめて無難に事が済ませられるように手伝うぐらいしかないだろ?……それで、実際の所どうする、零?」
零「会話自体はまあいいとして、直接顔を合わせてってのは絶対に避けるべきだな……幸い、別世界越しに通信する手段ってのもなくはない。クロノだけは此処に残して、俺とお前と先輩の三人でこの女に張り付いとけば何かあっても鎮圧はできるだろう。……多分……」
ユーノ「其処は嘘でもできるって言い切って欲しかったなぁ……」
零「さっきのアホみたいなバイタリティの高さを見せ付けられたらそりゃ口も濁るだろうよ……先輩、最悪俺達二人が沈んだ後でも一人でコイツを抑える事って出来るか?」
ハル「出来なくはないよ。ただそうなってくると周りの被害を考慮して場所も考えないとだ。彼女、変身しなくても相当強いからさ。出来るだけ無人の世界を選んで跳ぶしかない」
零「…………今から空手でゴリラと取っ組み合いしろと言われてるみたいで心底萎えるな……優矢、お前は先に写真館に戻ってどうにか上手いことなのは達を誤魔化しといてくれ。多分無傷じゃ帰れそうにない」
優矢「ああ、うん……そうなると誤魔化し方も考えなきゃだな……下手な伝え方したら俺、二度目のお説教を受けるハメになりそうだし……」
クロノ「ちょ、まっ…!だから待てと言っているだろう!?これは僕と彼女の問題だ!彼女とは僕が直接話す!ベルトも取り上げてもう変身も出来ないんだ、今の状態ならお互いに腰を落ち着けて話し合う事だって──!」
零「ああ。分かった分かった。お前の言い分も分かる。十分。ただな、ちょっと耳をすましてみてくれるか?」
クロノ「え?」
オルトリンデ「──むにゃ……ふふふふ……ひいひいおじいちゃんとおばあちゃんに墓前まで会いに来てくれるだなんて嬉しいですねぇ……おじいちゃんとおばあちゃんは、今でも天国で仲良くしてますよぉー……」
零「──さっきから寝言でブツブツお前との未来予想図を延々語ってたかと思えば、遂に頭ん中でお前と一緒に墓に入り始めたコイツと膝を突き合わせて話し合う気力、残ってんのか?」
クロノ「……………………………………………………………………………………………………………………………………。すまん。君達の胸を借してくれ…………」
優矢(ワァ……顔全部に皺が集中しまくっててスゴい事になってるぅ……)
◆◇◆
──その後、優矢を先に写真館に帰した零とユーノ、ハルは気絶したオルトリンデを連れて別世界へと転移し、ハルが持参している特殊な通信機を借りて、クロノの要望通りオルトリンデの記憶を消去する話を彼女本人にも伝える事となった。
結果はそうなってやはりというべきか否か、彼女から返ってきたのは全身全霊の拒否と抵抗。何故か取り上げられたベルトをハルが持っている事に瞬時に気付いたオルトリンデは、世界を超える力を持つミューズギアを取り返そうとノータイムでハルに襲い掛かった。
その暴走を止めようと画面越しに必死に説得を続けようとするクロノの声も一向に届く気配もなく、全力で羽交い締めに掛かる零の必死の拘束も虚しく、振り上げたオルトリンデの蹴りが顔面にめり込んだユーノの体がきりもみ回転しながら派手に吹っ飛んで眼鏡が割れ、
腰にガッシリと両腕を回された零は半径数百メートルの地面が陥没する勢いのジャーマン・スープレックスを頭から決められて意識を失いかけ、
しまいにはハルと大地に巨大なクレーターが出来るほどの拳の応酬を延々と繰り返し続けた挙げ句、最終的には実に腰の入ったハルとのクロスカウンターで漸く意識を刈り取る事ができ、その隙にハルの協力の元、もう問答無用でオルトリンデの頭の中からクロノに出会って以降の記憶を消去・その他の記憶を矛盾のないように何とか書き換える事が出来た。
その後は再び気を失ったオルトリンデをハルに一任し、彼女が元々いた世界の家まで送り届けてもらうように申し訳ながら頼む事となった。(それはそれとして、転移する直前のハルがミューズギアを手に「これは護身用にカリムさんかシャッハさんへの手土産にするか……」と漏らしてたのは気になるが
そうして……
◆◇◆
―風麺―
クロノ「──ほんっっっっっっとうに、二人には申し訳ない事をさせてしまったっ……!!」
午後八時、夜の風麺。オルトリンデの返還をハルに任せてボロボロの足を引きずりながら帰ってきた零とユーノを屋台の席の両端に座らせ、全力で謝罪して頭を下げるクロノの姿が其処にはあった。
しかし、あの大惨事から戻ってきたばかりの二人にはそちらを見る余裕もお詫びに出されてる食事に手を伸ばす食欲もなく、髪はボサボサ、顔中アザだらけ。
別途料金のおしぼりを注文して腫れた顔に押し付ける零はテーブルに頬杖を突き、ハイライトの消えた目で虚空を見つめながら薄い溜め息を吐き出した。
零「ある程度予想はしてたとは言え……本当に三人掛かりでも止められるのがギリギリになるとは思わなんだよ……」
ユーノ「最後辺りにはもうハルさんだけが最後の希望だったよね……まさか彼女、クロノにリベンジする為に彼処まで仕上げてきてたとは……」
零「寧ろあんな女に六度も勝ったコイツがなんなんだって気もしてきたぞ……お前、俺が知らない所で人間辞めでもしたか……?」
クロノ「至って普通の人間のつもりなんだが……それはそれとして、彼女のあの暴れっぷりは僕も今回が初見だよ……。いつもはもう少し淑女らしい戦い方をしてた筈だが……」
ユーノ「あー……つまり彼女、君の前だと女の子として見てもらいたいから猫をかぶった戦いをしてて、僕らの前だとその必要もないからアレだけ大暴れしてたと……」
零「おーおー……随分愛されてて羨ましいこったなぁ……」
クロノ「うぐ、ぅ……色々と訂正したい部分はあるが、全面的にこちらに非があるからなんとも言えないっ……!」
零「こんな軽口に一々クソ真面目に返すなよ。変わんねぇなぁコイツ……」
「はぁああっ……」と、疲れを滲ませた溜め息を吐きながらテーブルの上にお出しされた飲み物を何となしに口に運ぶ零だが、口内の傷の事をすっかり忘れてて痛みが走り、顔を歪めながら思わず吐き出そうになった飲み物を何とか飲み干した後、軽く舌打ちしながらコップを台の上に置いて不貞腐れるように再び頬杖を突くその姿を横目に見て、ユーノは割れたメガネの汚れをハンカチで拭いながら口を開く。
ユーノ「でも正直意外だったよね。何だかんだ零も手伝ってくれるかもって期待してたとこはあったけど、自分から色々提案してくれるとは思わなかったな。今日は虫の居所でも良かった?」
零「…………。別に。ただお前らとこうやって屋台に付き合うなんて機会、元の世界でもそうそうなかったんだ。たまには良いだろうと思ってた矢先に水を差されちゃそりゃ面白くもないだろ。それに、」
クロノ「…………?」
言い掛けて、零の目がクロノに向けられる。その視線とたまたま目が合ったクロノは訝しげな反応を浮かべるが、零は目線を逸らさずジト目でクロノの瞳をじーっと見つめ、
―こういうところなんだよ、僕らが彼を放っておけないのが―
零「──
ユーノ「……ああ。なるほど。そっか。そういう日ならそれは仕方ない。うん」
クロノ「?おい待て。なに二人だけで納得してるんだ?ちゃんと分かるように説明しぼぁ!?」
零「皆まで言えってかー?無粋な口はコイツかー?ああんっ?」
クロノ「ふぁ、ふぁめっ…!ふりはりねひふぉふふぁ!?ふぁんふぁんらいっらい!!?」
ユーノ「あっはははっ」
実に不機嫌そうな顔で注文した煮卵をクロノの口に突っ込む零と、そんな零の両腕を掴んで訳が分からないと抗議の声を上げるクロノ。そんな二人の見慣れたやり取りにユーノも思わず吹き出しつつ飲み物を口にするも、口元周りの傷にうっかり触れて「うっ!」となり、静かにドリンクを置きながらヤレヤレと肩を竦めるのだった。
◆◇◇
因みに、
零『───それはそれとして、悪いクロノ。傷の件をしつこく問い詰められて誤魔化し切れず、ついでにお前とあの女の事までバレた……』
フェイト『クゥーーロォーーノォーーーー???』
クロノ「う、ウワァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」
ユーノ「……はぁああっっ(無言で懐から胃薬を取り出す」
後日。珍しく光写真館の方から連絡が届いたかと思いきや、酷く気まずそうな表情をしたガーゼ姿の零を脇に、もの凄い笑顔のフェイトからオルトリンデとの一件について洗いざらい説明を要求され、色々とお説教を受ける羽目になったクロノなのであった。