仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―海鳴大学病院―
真也の口から、今現在の麻衣の状態を聞かされたなのは達が動揺を抱えたまま足を運んだ先は、海鳴大学病院。
以前はやてが患者として通っていたこの病院の個室の一つに真也と恭平に案内して連れて来られ、ベッドの上に横たわる人物の姿を目の当たりにしたなのはとフェイトの瞳が激しく揺れる。
なのは「麻衣、ちゃん……」
麻衣「──────────」
見間違う筈がない。沢山の機械に繋がれ、ベッドの上に呼吸器を付けて眠るのは、なのは達と零の旧友である睦月麻衣。
この目で直接確かめるまで半信半疑だった麻衣の痛ましい姿を実際に目にするも、なのはとフェイトが目の前の現実をすぐには呑み込めず扉の入り口の前で呆然と立ち尽くす中、真也は静かにベッドの傍まで歩み寄り、花束を手に麻衣の顔を優しげな眼差しで覗き込んだ。
真也「よ、麻衣。今日はサプライズでお客様が来てくれたんだが、誰だと思う?なんと、あの高町達だ。お前の好きな八神も一緒だぜ。嬉しいだろ?」
麻衣「──────」
真也の穏やかな声色と対照的に、部屋の中は重い沈黙に包まれていた。なのはとフェイトは言葉を失ったまま立ち尽くしている。アリサとすずかも俯き、かける言葉が見つからない様子だ。そんな中、真也は花束をテーブルの上に置いてから麻衣の手をそっと握り、声をかけ続ける。
真也「街で偶然会ったんだ。サプライズだなんて言ってよ。相変わらずいい性格してるよなぁ、コイツら?」
真也は麻衣の手を握ったまま穏やかな眼差しを彼女に向けているが、その眼差しの奥には微かな陰りが見え隠れしている。彼はなのはとフェイトの方へ視線を移し、どこか申し訳なさそうに微笑んだ。
真也「黙っててごめんな。麻衣のことを心配させると思って、言えなかったんだ」
フェイトは震える声で尋ねる。
フェイト「いったい……なにがあったの……?」
恭平が重々しい口調で答える。
恭平「交通事故だ。一年くらい前の雨の日、信号無視のトラックが真正面から突っ込んできて……家族でドライブ中だった麻衣が巻き込まれたらしい。両親がそん時に咄嗟に麻衣をかばったって話だが、そん時にまぁ、二人共さ……」
なのは「……そん、な……」
首筋を摩りながら気まずげに目を逸らし、言葉を濁す恭平の口から聞かされた麻衣の痛ましい過去になのはの表情が更に暗くなる。
真也「医者が言うには、今の麻衣は脳までやられて回復の見込みはほぼ無し……まぁ、所謂植物人間状態って奴でさ……んでまぁ、ほら…麻衣って他にまともな身寄りとかなかったろ?親戚連中からも、こんな状態の麻衣を面倒見られないってタライ回しにされ続けて、結局この街に戻される形で病院に移されてよ。……そんなこいつの為に、お前が代わりに後見人になってくれたって聞いたぜ、八神」
なのは「……え?」
フェイト「はやて…?」
思わぬ名前が真也の口から飛び出し、なのはとフェイトの視線が弾かれたようにはやてに向けられる。はやては二人の反応に何処か居心地が悪そうに頬を掻きながら苦笑すると、ベッドの傍にまで歩み寄り、麻衣の手の上に自身の手を重ね合わせた。
はやて「最初に連絡があったんは、すずかちゃんからやったな……。麻衣ちゃんが意識不明になって、私が昔お世話になった病院に運び込まれたて聞いた時は、今すぐにでも海鳴市に帰省しよって思っとったんやけど……丁度その時、私らもどうしても留学先から離れられない事情があって、すずかちゃんとアリサちゃんにも協力を仰いで、麻衣ちゃんの保護を頼んどったんよ……」
なのは(離れられなかった事情って、もしかして……)
フェイト(機動六課の発足に、スカリエッティの事件の対処に追われてたから……?)
だとするなら、はやてが自分達に麻衣の事を黙っていたのも少なからず納得出来る。あの当時は彼女も部隊長として立ち上げたばかりの部隊を軌道に乗せるだけでも大変だったというのに、ほぼ同時進行でスカリエッティ達の事件を追うのになのは達も零も多忙な日々を送っていた為、自分達に要らぬ負担を掛けまいと麻衣の一件を黙っていた事は分かる。
しかしその上で、そんな大事を自分達を蚊帳の外に追いやって黙っていたはやてに、なのはもフェイトも大きく不満を膨らませる中、はやてはそんな彼女達の突き刺すような視線を肌で感じ取り、苦笑いを浮かべながら二人の方に振り返ると、真也と恭平に話を聞かれぬように二人の傍に近付き小声で話し出す。
はやて(黙ってた事はごめん……麻衣ちゃんの事は、機動六課の解散後に二人や零君にも共有するつもりで……ミッドの医療技術なら、もしかしたら麻衣ちゃんを今の状態から治療出来るかもしれへんって思ってたんよ……)
フェイト(麻衣をミッドにって…はやて、もしかして…)
なのは(まさか麻衣ちゃんを、ミッドに招き入れるつもりで…?)
はやての意図を察してなのはが聞き返すと、はやては控え目に小さく頷き、麻衣の方へと振り向きつつ小声で続きを話す。
はやて(ほんまやったらなのはちゃん達みたいに、養子縁組で私らで引き取ろうて思ってたんやけど……。ただあん時、私らも沢山の人達の力を借りて六課を発足したから、色んな所から目ぇ付けられとったやろ?そんなタイミングで麻衣ちゃんの事までってなったら、な……)
なのは(それ、は……)
仮にその件が職権乱用と受け取られ、はやてや彼女を支持するクロノ達に反感を抱く者たちに知られれば、例え治療が果たせたとしても、その後の麻衣にも危害が及ぶ可能性がある。
そう語るはやてに、なのはとフェイトも彼女の葛藤を察してそれ以上は何も言えず押し黙ってしまう中、遠巻きになのは達の様子を眺めていた恭平が頭の上に疑問符を浮かべながら小首を傾げた。
恭平「んだよ?そっちでなんかコソコソしたりして」
フェイト「えっ…あ、う、ううん……!えと、その…」
はやて「あはは…その、私、麻衣ちゃんのこと二人にはずっと隠しとったから、結構カンカンでな?ちょっとその弁明を……」
真也「あー……ここに来る前の二人の反応からしてそうかなって思っちゃったいたけど、やっぱそうだったか……八神、それからそっちの二人も。簡単に話せる内容じゃねえのはそうだけど、事が事なんだからちゃんと説明しといてやれよ。高町達が怒るのも無理ねえぞ?」
アリサ「それは、まぁ…うん……そう、よね……」
すずか「ごめんね、二人共……。悪いのははやてちゃんだけじゃないの。麻衣ちゃんの件はどうしても重苦しい話になっちゃうって思ってたから、私達も中々切り出せなくて……」
なのは&フェイト「「…………」」
真也の口から咎める口調で諭され、はやてだけでなく、アリサとすずかもなのはとフェイトに向かって申し訳なそうに頭を下げる。
一方で、なのはとフェイトも顔を見合せてどう言葉を返すべきかと困ったように眉を顰めると、不意にポンっと、事の成り行きを見守っていた恭平が両手の合わせて音を鳴らした。
恭平「まーまー。せっかくこうして懐かしい面子で麻衣に会いに来れたんだ。あんま辛気クセーこと話ってっと、麻衣の奴が可哀想だろ?そーゆーのは後にして、今は皆でコイツを見舞ってやろうぜ。な?」
なのは「…………そう、だね……。うん、ごめん皆。私もちょっと気が動転してたみたい……」
フェイト「私も…ごめんね、はやて。アリサとすずかも…」
はやて「ううん…元はと言えば私が悪いんやから、二人が謝る事やないよ」
すずか「は、はやてちゃんだけのせいじゃないよ!片棒を担いだのは私達だって一緒なんだし…!」
アリサ「まぁ、そうね…だから一旦、ここは痛み分けっていうか、ね?お互い様だったって事で区切りを付けましょ。……あんまりこの子の前で喧嘩するのは、どうしても気が引けるし……」
そう言ってアリサの視線は、皆の話し声で起きる様子が一向にないベッドの上の麻衣に向けられる。
その姿になのは達も悲しげに眉を下げて胸の奥に痛みを覚える中、麻衣の傍らの椅子に座る真也のポケットから携帯の着信音が鳴り、真也は携帯を取り出し耳元に当てた。
真也「なんだ?…………。ああ、そうか。わかった……今から向かうわ」
すずか「?真也君、どうかした?」
真也「あー……すまん。悪りぃけど俺、先に帰るわ。ちょっと用事出来ちまってさ」
なのは「用事?」
何やらバツが悪そうな顔で荷物を纏め始める真也に、なのは達が不思議そうに反応を返す。
真也はそんな彼女等から顔を背けると、首筋を摩りながら歯切れ悪く答えた。
真也「この間会った、新しい検事さんからこれから話せないかって連絡来てさ。……今度の裁判の事でって、俺の話聞きたいんだってよ」
フェイト「……ぁ……」
はやて「……もしかして、瑠璃ちゃんの件の……?」
真也「ん……あぁ……やっぱさ、どうしたって納得出来ねぇだろ……?あの犯人の野郎に相応の報いを与えてやらなきゃって……俺にしか、やれねぇから……」
何処となく自分の感情を押し殺すように語る真也だが、無意識なのか、その唇がギリッと噛み締められる。
明らかに無理をしていると一目で分かるその様子から、真也の事情を知るなのは達はお互いに気まずげに顔を見合わせると、そんな中ですずかが控え目に挙手をした。
すずか「わ、私達も着いていこうかっ?味方は一人でも多い方がいいだろうし、何か手伝える事があるなら……!」
真也「……サンキュー月村。けど、裁判やる度にお前やバニングスには何度も助けられてきたし、今回は俺一人で大丈夫だよ。何より高町達が久方ぶりに戻ってきてんだ。こんな辛気くせぇ事に首突っ込むより、コイツらと一緒に里帰りを楽しんでこい。な?」
すずか「っ……真也くん……」
腰に両手を当てて、困ったように眉を下げて笑う真也の表情は明らかに疲れが見られ、すずかは胸の奥にチクリと針を刺すような痛みを覚えてそれ以上は何も言えなくなってしまう。
なのは達も同様なのか、真也の気遣いを無下にするような発言しか今は頭の中に思い付かず、皆が口を噤んで重苦しい空気が流れる。その重たい空気に真也も頭を掻いて苦笑し、頭を掻いてた手を軽く上げて軽快に笑う。
真也「まー心配すんなって!俺ァこの通り元気だからよ!何事にも諦めず、1歩1歩……!この諦めの悪さは零やお前達から学んだんだ。だから絶対、今度こそ勝ってみせる!安心しててくれや!」
フェイト「…………うん。わかった…」
なのは「何かあったらまた連絡して。私達も力になる。……瑠璃ちゃんの事件、許せないのは、私達も一緒だから」
真也「……応よ。サンキューな。んじゃ、ちょっくら行ってくるぜ!恭平、俺の代わりにコイツらのこと頼んだ!」
恭平「あいよ。……気をつけてな」
なのは達からの激励に笑顔で返し、真也は荷物を担いで病室を後にしていった。
真也が出ていった病室の扉を、なのは達は心配と不安が入り交じった複雑げな眼差しで見つめていく。
なのは「真也君…わかりやすいぐらい空元気だったね…」
アリサ「そりゃ無理もないわよ……。こんだけ訴訟起こしても、向こうは汚いお金の力でのらりくらり逃れて……私だって、何度犯人のヤツの腹わた裂いてやりたいって思ったことかっ」
フェイト(……瑠璃の件……もしミッドでの一件が落ち着いたら、私達の方でも事件の手掛かりや証拠探しを何か手伝えられないかな……)
真也の実の妹、荒井 瑠璃。
彼女に纏わる事件、そして彼の事情を知る一同は何も出来ない今の現状に歯がゆさを覚えて、皆が悔しげに顔を俯かせる中、なのはと手を繋いで皆の会話を黙って聞いていたヴィヴィオがふとなのはから離れ、ベッドの上に眠る麻衣の顔を覗き込み、首を傾げた。
ヴィヴィオ「……お姉ちゃん?」
麻衣「───────」
◆◇◆
真也「───ああ……あぁ分かってるよ。そんな催促しなくても今そっちに向かってる。高町達も今んとこ怪しんでる様子はねえよ。あぁ」
一方その頃。なのは達と別れて病院を後にした真也は、携帯で誰かと通話しながら早足気味に並木道を歩き、何処かに向かっている最中にあった。
そして通話の向こうの誰かに対して苛立ちを顕わに一言二言返した後、通話を切った携帯を仕舞い、真也は歩みを早めてそのまま走り出し掛けた、その前に……
「───つまんない猿芝居だねぇ。ま、そんなのにまんまと騙されるなのはさん達もなのはさん達だけど」
真也「…っ!てめぇは……」
真也の前に、フラりと物陰から姿を現した何者かがその行く手を遮るように立ち塞がる。
飄々とした佇まいと、人をコケにするような薄ら笑いを真也に向ける青年……海道大輝の登場に、真也も急ブレーキで足を止め、敵意を隠そうともしない目付きで大輝を鋭く睨み付けた。
真也「コソ泥……テメェまでこの世界に来てやがったか……」
大輝「勿論。俺にも情報のツテって奴があってね。どうやらこの世界には、君達の下から盗まれたお宝が眠っているらしいじゃないか?そんなの聞かされたら、是非とも手に入れてみたいと思うのも無理はないだろ?」
真也「ハッ、普通の泥棒じゃ飽き足らずに、今度は火事場泥棒までやろうってか?笑わせんなよカスが。こっちは今テメェの相手なんかしてやる時間なんざねえんだよっ」
ケラケラと笑う大輝とは対照に不快感を露わに吐き捨て、真也は上着を翻して腰に予め巻いていたオーガドライバーを露出させつつ、懐から取り出したオーガフォンを開いて素早く変身コードを入力していく。
対する大輝は笑みを消すと、胸ポケットから取り出したカードを掲げ、手の中で回転させながら取り出したディエンドライバーにカードを装填してスライドさせつつ、銃口を変身の構えを取る真也に向けていく。
『Standing by……』
『KAMENRIDE──』
真也/大輝「「変身っ!」」
『Complete!』
『DI-END!』
二つの電子音声が重なり、大輝が引き金を引いたディエンドライバーの銃口から放たれた無数のプレートが真也に襲い掛かるも、一足早くオーガに変身をし終えた真也が片腕でプレートを払い除ける。
しかしプレートはそのまま大輝の元に全て戻るように仮面に収まり、ディエンドに変身すると共に再びドライバーから発砲を続けるが、オーガは迫る銃弾を躱しつつオーガストランザーを展開し、そのまま正面からディエンドに斬り掛かり、ディエンドのドライバーと鍔迫り合いになって戦闘を開始していくのであった。