仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第一章/ライダー大戦⑤

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

バックルから電子音声が鳴り響いた瞬間、零を囲むように出現した九つのエンブレムが人型の残像となって零と一つになるように重なっていき、灰色の異形のスーツとなって零の身体に身に纏わられた。

 

 

更にバックルから飛び出したカード状のプレートが仮面に刺さったと同時に灰色だったスーツが鮮やかなマゼンタへと変わっていき、全ての変身を完了した零から放たれた衝撃波がオーロラの壁を砕き、破壊された壁の破片がワーム達に直撃して吹っ飛ばしていったのである。

 

 

スバル「え……れ、零……さん……?」

 

 

なのは「零君……どうして……」

 

 

変身した零の姿を見て、二人は驚愕のあまり呆然と立ち尽くしてしまう。何故ならその姿は、二人が夢の中で見た仮面の戦士と全く同じ姿……『仮面ライダーディケイド』そのものだったからだ。

 

 

一方で、ディケイドに変身した零はすぐさまなのはとスバルを囲んでいるワーム達へと挑み掛かろうとするが、ワーム達は突然目にも止まらぬ速さでその場から逃走してしまう。

 

 

ディケイド『チィッ……!ちょこまかと!』

 

 

一旦距離を取ってスピードで撹乱するつもりなのか、肉眼では捉え切れない速さで周囲を駆け巡るワーム達に舌打ちすると、ディケイドは逃げ遅れたサナギ体のワームの背中を蹴り飛ばしつつ即座に左腰に装着される本型のケース、ライドブッカーを開いて赤いカブトムシの仮面の戦士が描かれたカードを取り出し、腰に巻いたバックル……ディケイドライバーに装填してスライドさせていく。

 

 

『KAMENRIDE:KABUTO!』

 

 

鳴り響く電子音声と共にディケイドの姿が徐々に変わっていき、バックルにセットしたカードの戦士と同じ姿をした赤いカブトムシを連想させる仮面と青い複眼のライダー……仮面ライダーカブトに姿を変えていった。

 

 

なのは&スバル「「変わった?!」」

 

 

『!!』

 

 

―バゴォオオオオオオオオオオオオオンッッ!!―

 

 

カブトへと姿を変えたディケイドを見てなのはとスバルが驚愕する中、一体のワームが高速で移動しながら柱を破壊し無数の瓦礫をDカブトに向けて放つ。だが、Dカブトは冷静にもう一枚カードを取り出してバックルに装填し、スライドさせた。

 

 

『ATTACKRIDE:CLOCK UP!』

 

 

再び電子音声が響いた瞬間、突如周りの時間がスローモーションのように流れ始めた。

 

 

そしてDカブトは左腰に装着するライドブッカーを剣形態のソードモードに変形させて超速度で飛び出すと、空中でほぼ止まっている瓦礫を剣で弾きながら同じ時間の流れの中を駆けるワーム達の間を素早く駆け抜けライドブッカーで次々と斬り捨てていく。

 

 

―ザシュッ!ガギィッ!ズシャッ!―

 

 

Dカブト『ハァアッ!ハッ!ゼェエアアッ!』

 

 

『グガッ……ガァアアアアアアアアアアッ!!?』

 

 

ワーム達の動きを読んだ立ち回りで最後の一体を斬り裂き、Dカブトがスルリとライドブッカーの刃を撫でたと共に時間の流れが元に戻り、直後にワーム達は悲痛な断末魔を上げながら緑色の爆発を立て続けに起こし爆散していったのであった。

 

 

Dカブト『ふうっ……どうにか片付いたか……』

 

 

ライドブッカーを元の本型の形態にして左腰に戻しながらワーム達の撃破を確認し一息吐くDカブト。だが、直後にバックルが独りでに開らかれカブトのカードが飛び出し、カードを手にしたDカブトの姿がディケイドへと戻ってしまう。

 

 

ディケイド『……なんで今俺、このカードを選んだんだ?』

 

 

戦いの最中、何故かワームにはこのカードが有効だと身体が勝手に理解して動き、そのまま流れるように違和感なく戦えた自分に謎に感じるディケイドだが、バックルから弾かれたカブトのカードは突然その絵柄を失ってしまった。

 

 

ディケイド『ッ?!何だ、今の……?』

 

 

いきなり絵柄が消えたカブトのカードに驚きディケイドは疑問を感じながらも、未だに街のあちこちから巻き起こる爆発音を聞いて我に返り、ともかく急いでこの場を離れる為にカードを仕舞い、此処まで乗ってきたマシンディケイダーに搭乗して走らせなのはとスバルの前に止まった。

 

 

ディケイド『二人とも、来い……!此処を離れるぞ!』

 

 

なのは「……ディケイド……?」

 

 

零の声で喋り掛ける夢の中で見たディケイドの姿を見て、思わずその名前を口にするなのはにディケイドも仮面の下で目を見開いた。

 

 

ディケイド『なのは、お前……何でその名前を知ってるんだ?』

 

 

なのは「あ……そ、それは……」

 

 

夢の事を一人知らない零は、何故かディケイドの事を知っているなのはに訝しげにそう聞き返すも、なのはの方も夢の件をどう説明すればいいか迷い言い淀んでしまい、顔を俯かせるなのはを見てスバルが慌てて助け舟を出す。

 

 

スバル「と、ところで、これからどうするんですか?街は今も怪物だらけだし、安全な場所は何処にもないんじゃ……」

 

 

ディケイド『……かもな……ただ此処から近くに、俺の行き付けの写真館がある。六課とも連絡が付かない以上、一先ず其処に匿ってもらって六課と連絡が付かないか試す。お前らも休ませないといけないしな……』

 

 

此処までなりふり構わず全力で逃げてきたのを物語ってるかのように、服もボロボロで体中も擦り傷だらけのなのはとスバルを見てそう言うと、そのまま二人をディケイダーの後ろに乗せ、ディケイドは自身の行き付けであるという写真館に向けてマシンを発進させていった。

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

ディケイダーを走らせて少しだけ時間が経った後、目の前から突然またオーロラが現れ景色が変わり、今度は廃虚と化した何処かの街に飛ばされた。

 

 

其処にはあの怪物達に襲われて既に息を引き取り、辺り一面に大勢の人々の亡骸が無造作に転がる残酷な光景が広がっており、そんな惨い光景を目の当たりにしたなのはもスバルも、彼等を守る立場でありながら何も出来なかった自分の無力さと悔しさに駆られて悲しげに目を伏せ、思わず顔を逸らしてしまう。

 

 

そしてディケイドもそんな二人の様子を横目に何も言えず口を閉ざす中、自分達の近くに転がる亡骸の中に見覚えのある二人組……零が公園で出会った強面の男達の亡骸を見付けると共に、兄貴分の男の手に決して放すまいと、零が以前撮った彼の子供が笑顔で映る不出来な写真が握られているのに気付いた。

 

 

なのは「……零君……?」

 

 

ディケイド『…………。行くぞ』

 

 

ディケイドの様子が僅かに可笑しい事に気付き、なのはが思わず声を掛けるも、ディケイドは顔を逸らして短くそう言いながら再びディケイダーを走らせ、目的地である写真館に向かって再び走り出す。

 

 

──だがその時、死んだ人間の亡骸が突然灰となり、其処から二本の触手が飛び出してなのはをディケイダーから引きずり降ろしてしまう。

 

 

なのは「キャアァアッ?!」

 

 

スバル「なのはさんっ?!」

 

 

ディケイド『何?!くっ……!』

 

 

ディケイダーから引きずり降ろされたなのはに気付き、ディケイドは慌ててバイクを止めてなのはを連れ戻そうとするが、直後に人間の亡骸が崩れた灰から灰色の怪物……オルフェノク達が現れ、二人が辿り着くよりも早く倒れるなのはを捕らえてしまう。

 

 

なのは「い、いやっ……!!離してぇっ!!」

 

 

なのはは必死に抵抗して逃れようとするが、怪物の並外れた力の前ではその抵抗も虚しく、オルフェノク達はそのままなのはを無理矢理何処かへ連れていこうと歩き出していってしまう。

 

 

スバル「れ、零さんっ!早くしないとなのはさんがっ!」

 

 

ディケイド『分かっているっ!』

 

 

強引に連れて行かれようとしているなのはを指差して焦るスバルにそう答えながらディケイドはライドブッカーから素早くカードを一枚取り出し、バックルに装填してスライドさせた。

 

 

『KAMENRIDE:FAIZ!』

 

 

ディケイドライバーから電子音声が響くと共にバックルからディケイドの全身に掛けて赤いラインが駆け巡り、紅の閃光が眩く発光する。

 

 

そして光が晴れると、ディケイドの姿は全身に紅いラインが走る金色のΦの瞳が特徴的なライダー……ファイズへと変わっていった。

 

 

スバル「ま、また別の姿になった……?!」

 

 

驚愕するスバルの反応を余所に、Dファイズはオルフェノク達からディケイダーの方に振り返りながら新たにカードを一枚抜き取り、バックルにセットする。

 

 

『ATTACKRIDE:AUTO VAJIN!』

 

 

再度ドライバーから電子音声が響くと、次に変化が起きたのはディケイダーの方だった。

 

 

バイクの前に出現した巨大なΦの紋章をディケイダーが潜り抜けると同時に別の形状のマシンに変化し、更にマシンは変形しながらなのはの下へ飛翔しそのまま人型の戦闘マシンになると、片腕に装備する盾型のホイールからマシンガンを放ってオルフェノク達を蹴散らし、そのままなのはを救出して離れた場所に下ろした。

 

 

なのは「えっ、ロ、ロボット……?!」

 

 

スバル「なのはさんっ!」

 

 

戦闘マシン……オートバジンを見て驚きの声を上げながら慌てて離れるなのはの下にDファイズとスバルが駆け寄るが、今の騒ぎを聞き付けたのか廃墟の物陰から続々と他のオルフェノク達が姿を現し、敵の増援を前にDファイズはすぐにオートバジンから一本の剣、ファイズエッジを抜き取った。

 

 

Dファイズ『隠れてろ、二人ともッ!ハァアアッ!』

 

 

二人にそう言いながらDファイズはファイズエッジを手にオルフェノク達に向かって突っ込んでいき、オートバジンも二人を守るように立ち構えると、なのはとスバルは廃墟の影に身を隠していく。

 

 

Dファイズ『ぜぇええいッ!ハァアアッ!』

 

 

―ザシュンッ!バシュウッ!ギシュンッ!―

 

 

『ヌァアッ?!』

 

 

『ゥッ…オオオォッ……?!』

 

 

一方でDファイズはオルフェノク達の攻撃を掻い潜りながらファイズエッジによる一閃をカウンターで次々と叩き込んでいき、最後の一体を斬り裂いてファイズエッジの刃を撫でた瞬間、オルフェノク達は身体にΦの紋章を刻まれながら悲痛な叫びと共に青色の炎を噴き出し、そのまま灰となって消滅していった。

 

 

Dファイズ『ッ……終わったか……一先ずこれでっ―ドゴォオオンッ!!―ぐぉおおッ?!』

 

 

灰になったオルフェノク達を見下ろして一息吐こうとしたDファイズだが、背後から突然凄まじい勢いで何かに激突されてその場に倒れ込んでしまった。

 

 

突然の不意打ちに苦痛で顔を歪めながらもすぐさま目の前に視線を向けると、其処にはDファイズに激突した巨大な物体……異変発生の際にミッドの上空にも現れた巨大な怪物が空を舞う姿があり、更に怪物はそのまま遠くで辺りを無差別に破壊する妖怪のような姿をした異形の群れ……魔化魍と合流してこちらに向かってこようとしていた。

 

 

Dファイズ『チッ、次から次へと!だったらっ……―バシュウッ!―……っ?!』

 

 

何とか身を起こしてファイズエッジを手に魔化魍を迎え撃とうとするDファイズだが、いきなりバックルから強制的にファイズのカードが弾かれてディケイドの姿に戻ってしまい、驚きと共にファイズのカードを手に取ると、先程のカブトと同様にファイズの絵柄が消滅してしまう。

 

 

ディケイド『クソッ、またか……?!』

 

 

原因も分からず立て続けに絵柄が消えていくカードを見て思わず毒づきながらも、ディケイドはファイズのカードをしまって新たに鬼の戦士が描かれたカードを取り出し、ドライバーのバックルに投げ入れた後に両手でスライドさせた。

 

 

『KAMENRIDE:HIBIKI!』

 

 

電子音声と共にディケイドの全身が紫色の炎に包まれていき、炎が収まり消え去ると、ディケイドは鬼のような姿をしたライダー、響鬼へと姿を変えていった。

 

 

なのは「こ、今度は鬼っ……?」

 

 

スバル「な、何かもう、驚き過ぎて疲れてきたっ……」

 

 

此処に至るまでにあまりにも色々起こり過ぎたせいでいよいよキャパオーバーなのか、なのはもスバルも疲労困憊気味な中、響鬼に変身したディケイドは続けて新たなカードをドライバーにセットしていく。

 

 

『ATTACKRIDE:ONGKIBO REKKA!』

 

 

再度鳴り響く電子音声と共にD響鬼は一度両手を叩くように払いつつ後ろ腰に両手を回し、其処から二本の太鼓の撥のような武器、音撃棒烈火を巧みに手の中で回転させながら取り出し両手に構えると、先端に炎を宿した音撃棒烈火を振るって魔化魍達に火炎弾を振り撒いていく。

 

 

D響鬼(……何故だ……?力の扱い方も、立ち回りも自然と分かる……?俺は、戦い方を知っているっ……?)

 

 

初めて扱う筈の力をさも自分のモノのように使える自身の身体に疑問と違和感を抱きながらも、トドメに全方位に向けて音撃棒烈火から放った火炎弾の五月雨撃ちで残りの魔化魍達を全滅させるD響鬼。

 

 

それと同時に、ドライバーに装填されていた響鬼のカードがバックルから弾かれディケイドに戻り、響鬼のカードは今までのカードと同様に絵柄が消えてしまい、ディケイドも変身が解除され零に戻ってしまう。

 

 

なのは「終わった、の……?」

 

 

スバル「も、もう私、限界が近いかもっ……」

 

 

零が魔化魍達を撃退したのを見届けて安堵するものの、不可解な異常の連続と化け物達の絶え間ない襲撃になのはもスバルも体力的にも気力的にもいよいよ辛いのかその場に力なくしゃがみこんでしまうが、零はそんな二人の下へと駆け寄り、出来るだけ身体を労わりながら二人をゆっくりと立ち上がらせていく。

 

 

零「色々とキツイだろうが、もう少しだけ耐えてくれっ。写真館に着いて身体を休ませたら、六課への連絡手段を探して救援を──」

 

 

―ブォオオオオンッ!―

 

 

写真館に着きさえすれば治療と休息が取れ、きっと六課へ連絡する事も出来る筈と、その希望を元に零が二人を励まそうとしたその時、またもやオーロラが三人を潜り抜けて場所が変わってしまう。

 

 

なのは「ッ……こ、此処って……」

 

 

零「ミッド……戻ってこれたのか……?」

 

 

オーロラを潜り抜けた先に繋がっていたのは、三人が先程の場所に飛ばされる前に走っていたミッドのハイウェイの近く。

 

 

しかし三人が違う場所に飛ばされている間にも状況は更に深刻化しているのか、街の被害は先程よりも更に広範囲に広がっているのがひと目でわかり、悠長にしている時間はなさそうだと踏んだ零は二人をディケイダーに乗せ、先を急いでマシンを走らせていくのであった。

 

 

 

 


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