仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
タートルとの戦いが終わってから数十分後。零は、滝とカツラと共に写真館への帰宅路を歩いていた。あの戦いが終わった後、零はヴィヴィッドを探してミッドのあらゆる場所に行ってみたのだが、それらしい人物を見つける事が出来ず、ただただあの男に言いたかった事や聞きたかった事を言えず内心ちょっとモヤモヤとしていた。
滝「…なぁ零、本当に良かったのか?お前が探してる奴なら捜索届けでも出せば、管理局の方で見つけてくれるんじゃ…」
零「いや、多分それは無理だろうな…俺が探している奴っていうのは色々と普通じゃない奴だ。多分もうこのミッドからは姿を消しているだろ…」
そう、恐らくヴィヴィッドはこのミッド…いや、このfirstの世界の何処にもいないだろう。魔界城の世界でも見たが、ヴィヴィッドは何故か次元を越えて他の世界に行く事が出来る能力を持っている。これだけ探しても見つからないのなら、恐らく既にヴィヴィッドは他の世界へと移動してしまっているのだろう。
零「まぁ、アイツの事はこっちの方で探すから、お前が気にする必要なんてないさ」
滝「そうか?ならいいんだけど」
そこで二人の会話が途切れ無言のまま写真館への帰宅路を歩いていく。暫くそんな状態が続いていると、零が目の前を歩くカツラの背中から目線を外し、隣を歩く滝を見つめながら口を開いた。
零「滝、少し聞いてもいいか?」
滝「ん?何だ?」
不意に話し掛けられ、滝は怪訝な表情で首を傾げるが、零は一瞬何か考え込むような顔を浮かべた後、目線を下げて少し重く感じる口をゆっくりと開けた。
零「お前は、多分さっきの戦いでちゃんと分かっているのかもしれないが…これからの戦いで、俺の時やあの怪人のような無茶は―――」
滝「分かってるよ」
と、零が滝に向けてなにかを伝えようとするが、その前に滝が零の言葉を遮る。それを聞いた零は滝に視線を戻すと、滝は先程と同じように何かふっ切れたような表情で話しを始めた。
滝「俺はさ、アイツ等に何時も負担を掛けないように今まで戦ってきた…今日も、六課の皆が立ち直れるまで、一人でも戦うつもりだったんだ…けど…お前と一緒に戦っていて気づいたよ…俺は…アイツ等に心配を掛けて、むしろアイツ等の負担を増やしていただけなんだって…」
零「………」
真剣な表情で話しを続ける滝の言葉に、零は黙って耳を傾けて歩き続ける。
滝「アイツ等には、本当に悪いなって思ってる…でも俺は、俺の生き方を変えるつもりはない…だけど、今までみたいな無茶もしない…お前にも…そしてはやて達にも約束する…約束するよ」
零「…そうか…それがお前の決めた…お前の中で出した答えなんだな…」
滝の言葉を聞き終えた零の表情は、何処か安心した様な、穏やかな表情を浮かべていた。
この男は…自分とは違う。決して自分のような間違いは犯さず、あの少女達に涙を流させたりはしないだろう。
そんな事を思い浮かべながら彼は夜空を仰ぎ、懐かしそうな、だが悲しげな顔を浮かべながら、何処か遠くを見つめながらあの日の事を思い浮かべていた。
◆◆◆
それは数年前、とある任務であの白い少女が重傷を負い、辛いリハビリを終えて現場に復帰してから一年後の冬に起きた、あの『忌まわしい事件』
とある異世界にて発見されたS級ロストロギア。
少年達は彼等の上司であるクロノ・ハラオウンと、騎士カリムの依頼でそのロストロギアを回収するSランクの危険な任務にあたっていた。
だがその時、あってはならない最悪の出来事が起きてしまったのだ。
――古代遺物の暴走。
暴走したロストロギアは止まる事を知らず辺りを無差別に破壊し始め、遂にその矛先が少年達に向けられた時、少年は身を呈し、少女達を、仲間達を護る為に無茶をしてしまったのだ。
少女達の制止の言葉も振り切り、命令にも背いて単独で突っ込んだ結果、古代遺物の暴走を何とか抑える事が出来た。
――だがその無茶の代償として……少年は重傷の怪我を負ってしまったのだ。
聖王教会の医療施設に運び込まれた時には既に虫の息であり、どんなに治療を施しても助かる見込みがなかった。
その時……少年の死は確定したも同然だったのだ。
『…嫌…嫌やっ…お願いやからっ…お願いやから目を開けてぇっ!!!』
『逝かないでよっ…お願いだからっ…お願いだから!私達を置いて逝かないでぇっ!!!』
病室の中で響くのは、少女達の悲痛な叫び声。
少年はゆっくりと瞼を閉じていく中で、少女達が流す涙を見て酷く心を痛めた。
少年はただ、この少女達に笑っていて欲しかっただけだった。誰にも泣いて欲しくなかっただけだった。
あの白い少女が重傷の怪我を負った時……いや、もっと言えばそれ以前、"運命の名を与えらた少女の姉"と"初代の祝福の風"を救えなかった時から、少年は自分の不甲斐なさと無力さを恨み、嘆き、そして呪ってきた。
そんな屈折した想いが白い少女の件で遂にタガが壊れ、それから少年は二度後悔しないように、誰も失わないようにと、自分の事など二の次に少女達を守る事だけを誓ったのだ。
……その選択が、逆に少女達に深い悲しみを与え、ただ自分が後悔するだけの結果になってしまうという事に気づかず。
そして、少年が瞼を閉じると共に、心電図が止んだ停止音だけが病室内に響き渡った。
『いや…いやぁっ……嫌ァあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!』
少女の悲痛な叫び。
無機質な停止音が鳴り響く病室内で少女達が少年の身体に縋りつき、泣き叫ぶ悲鳴が響き渡っていた──。
◆◆◆
滝「──零?どうしたんだ?急に黙ったりして」
零「…ん?…いや。何でもないさ」
滝「?」
微笑しながらそう答える零に、滝は不思議そうに首を傾げていた。
そうだ。自分が何も言わなくとも、この男はきっと自分のような後悔する生き方をしない。そう思った零は、それだけ言って他の事は何も口にしなかった。
そして、そんなやり取りをしている内に三人は目的地である光写真館の前に辿り着いた。
零「じゃあ、ここでお別れだな」
カツラ「もう行くのか?」
滝「世界や仲間を救う旅は、まだ途中で辞めるわけにはいかないもんな」
滝がそう言うと零はすこし笑いながら「あぁ」と小さく頷いた。
零「ま、本音を言えば滝やヅラとは気が合うから、まだこの世界にいたいんだけどな…」
滝「仲間を助けて世界を救ったらまた来ればいいさ。その時には、俺達も歓迎する」
零「…そうだな。そうするとしよう」
零はそう言って滝と握手を交わすと二人は機動六課へと向かっていき、零はそんな二人の後ろ姿をカメラに納め、光写真館の中に戻っていった。
◇◆◇
―光写真館―
零「ただいまぁ…今帰った「あ!黒月さん!」ぞ?」
扉を開けて撮影スタジアムに入ると、突然聞き慣れない声が耳に届き、いきなり零の目の前の見知らぬ女性がやってきた。
「良かったぁ!無事だったんですね!」
零「?あ…えっと…あっ、もしかして街で俺とカツラが助けた…?」
いきなりで驚き戸惑ったが、よく見るとその女性の顔は先程街で零とカツラが助けた女性だった。
「はい!あの時は有り難うございました!本当に、何とお礼を申し上げたら…」
零「あ…いや…別にいいぞ?俺は別に大した事はしていないし…」
などと頬を掻きながら困ったように話す零だが、女性は「いいえ…」と首を横に振り、なんといきなり零の手を握ってきた。
「黒月さんが来てくれなければ、私はあそこで死んでいたと思います!ですから、本当に本当に、本当に有り難うございます!!」
零「あ…あぁ…そ、そうか…それなら、俺も嬉しい…ぞ?うん」
目を輝かせながら力説する女性に対し、零は余りの迫力に数歩後退る。
零「そ、それより、早く帰った方がいいんじゃないか?こんな夜遅く、家族の方達もきっと心配してると思うから」
「あ、そうですね…では、また後日お礼を申し上げに来ますね!それでは、失礼します♪」
「あぁうん…出来ればもう来ないでな~…」とそんな事を願いながら零は愛想笑いで女性を見送った。これで漸く休める。そんな事を思って肩の力を抜いた矢先…
なのは「…ふ~ん…随分お楽しみだったみたいだね~…零君?」
――背後から聞こえてきたブリザードすら切り裂けそうなドスの効いた低い声。背後からゾクゾクと伝わって来る殺気に体中から冷や汗が流れ、ゆっくりと後ろに振り返るとそこには……何故か撮影スタジアムのテーブルの椅子に腰掛け、頬杖を突いて鋭い眼差しで零を睨み付けるなのはの姿があった。
零「…な…なのは?何故にそんな…ご…ご立腹になっておられるのでしょうか…?」
なのは「んん?別に怒ってなんかいないよ♪ただすこーーし、お話しを聞かせて欲しいな~って思ってるだけだから♪」
嘘だ。嘘をつけ。ならばその無駄に背後から漂う怒りの炎と額に浮かぶ青筋はなんだというのか。
なのは「さっきのあの女の人から聞いた話しなんだけどね?スッゴく興味深いお話しをいっぱい聞かせてくれたんだよ♪」
零「興味……深い?」
なのは「何でも?「怪物に襲われそうになったときにお姫様だっこしてくれた」とか「抱き抱えられたときに胸をガッシリと掴まれた」………とか?」
零「待て待て待て待て待て!?何だそれは!?俺はそんな事をした覚えはないぞ!?何かの誤解……待てよ?確か、あの子を抱えた時に何か柔らかいものを握ったような…あぁ、あれってあの子の胸だったのか…」
―…ブチィッ!―
零「……ブチ……?」
なるほどなー、などと呑気に顎に手を添えながら右手をわきわきさせる零の耳に、気のせいか何かがブチ切れたような幻聴?が聞こえ、振り向けば、椅子に座っていたなのはが前髪で顔を隠しながらまるで幽霊のようにユラユラと立ち上がっていた。
なのは「人があんなに心配してたっていうに…あんな大変な事がミッドで起きてたのに…どさくさに紛れて女の人の胸を触った挙句?しかも責任も取れない癖してまた女の子誑かして……」
零「お、おい……おい待て!!落ち着け!!誤解だっ!!あれは不可抗力だったんだぞっ!?大体誑かすとかなんだっ?!お、おい!お前等もコイツに何とか言ってくれっ!!」
ジリッと後退しながら、部屋の奥でこちらの様子を伺っている優矢達に助けを求めるが、
『……………』
全員が一斉にプイッ、と目を反らした。
零「無視ッ!?」
なのは「ちょーーっとそこに正座してみようかー?だいじょーぶ、抵抗さえしなければこっちも最低限優しくするよ♪」
零「片手をゴキゴキ鳴らしながら笑顔で言う台詞じゃないだろうがっ!!説得力って言葉を辞書で引いてこいやぁっ!!」
なのは「問答無用」
零「ま、待て、まてっ……ならせめてどの技で来るのかだけ教えろっ!!クラッチかっ?!ヘッドロックかっ?!や、やめっ、あ、ああその技か久々に出やがったちくしょおぉぉぉァあああああああああああああああああああああっっ!!!?」
◆◇◆
その頃、六課に向かっていた滝とカツラの耳に悲痛な悲鳴が届き、二人は同時に振り向いて写真館の方角を見た。
カツラ「今、写真館の方から悲鳴が…」
滝「零も苦労してるな…」
心中で合掌し、滝とカツラは零の無事を祈りながら六課へと帰って行っていったのだった。
◇◆◆
―光写真館―
優矢「…お~い零~?生きてるか~?」
零「…ウッセーよ…」
あれから数十分後。なのはからみっちり制裁を食らった零は現在ソファーでグッタリと倒れ込んでいた。
なのは「ほらヴィヴィオ?栄次郎さんとなのはママ特製のキャラメルミルクだよ~♪」
ヴィヴィオ「わ~い♪」
ウェンディ「あっ!私も欲しいッス!♪」
ノーヴェ「あ!?ウェンディてめぇ!勝手に取ってんじゃねぇよ!」
キバーラ「いいじゃない、そんな細かいことは♪私にもちょう~だ~い♪」
その一方、あちらの方ではなのはと栄次郎が作ったキャラメルミルクを皆で仲良く頂いてました。誰も零の方を見ようとはしません。なのはに至ってはガン無視です。はい。
ティアナ「…あ…あの…なのはさん?そろそろ零さんと仲直りした方がいいんじゃ…」
と、そんな二人を見兼ねたティアナが仲直りをする様に促しそれを聞いたなのはは零の方を見て「う~ん」と首を少し傾げると…
なのは「…うん、いいよ。零君が謝ってくれるならね?」
零「…はあ?何故俺が謝らないといけないんだ!大体いきなりブチ切れてきたのはお前の方だろ!?」
チンク「お前がそんな事をされるようなことするからだろう?」
セッテ「確かに。女性の胸を触るなんて言語道断です」
ディード「しかもあの人、身を呈して救ってくれた貴方に少なからずただの感謝以上の気持ちを抱いていたかに思えます。その辺についてはどうお考え……いえ、責任を持つおつもりで?」
零「ああ……?何の話だ?」
セイン「うわっ、サイテーっ」
ウェンディ「これは問答無用でギルティっスね」
零「何でだァっ!!」
ナンバーズ達は揃って完全になのは派となってしまっている。唯一頼りになりそうな優矢、スバル、ティアナ、ヴィータ、栄次郎は中立の立場にいる為に擁護は期待出来そうになく、無論ヴィヴィオ、キバーラは戦力外。完全に孤立無援の状態である。
零「くっ……わ……悪かったっ……」
なのは「うんうん、分かればいいんだよ。じゃあ、はいこれ」
渋々ながらも零が頭を下げると、なのはは笑顔でそう応えて零の目の前のテーブルに零の分のキャラメルミルクを乗せ、ヴィヴィオ達のいるテーブルに戻っていった。
零「くぅ…何故俺ばかりが…理不尽すぎるっ…」
優矢「あー…えと…ま、まぁ元気だせよ!なっ!…あ、そういえばさぁ?この世界では結局、零達の探してる仲間は見つからなかったよな?」
零「あ?…あぁ、そういえばそうだな…」
優矢の一言で、零は旅の目的の一つである仲間達の事を思い出した。このfirstの世界にいる間、行方不明である仲間を見つける事は出来なかった。ならば恐らく、ここではない別の世界に飛ばされたのだろうと零は考える。
零「まぁ、ここじゃないのならまた別の世界を探せばいいだろう。…それより優矢。悪いが俺の代わりに背景ロールを動かしてくれないか?俺は今こんなだし…」
優矢「え?お…おう、分かった」
ソファーでうなだれる零の要求に一瞬戸惑う優矢だが、すぐに気を取り直して背景ロールに近づき、言われた通りに背景ロールを操作していく。そして…
―ガラララララッ!パアァァァァァアンッ―
零「…これは…」
新たに現れた背景ロールに、零やなのは達は視線を移していく。現れた背景ロールに描かれていたのは、とある街中の空で、赤い龍が飛んでいるというものであった。
◆◇◆
その頃、その世界の街中にある一つ建物。街で人々が交差する中、その建物のガラスに一人の赤いライダーが異形の姿をした者達と戦う姿が写し出されていた。
第5章/firstの世界END