とある碧空の暴風族   作:七の名

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Trick32_私にもA・Tを教えてください!!!

 

 

 

「そう、チーム名はすでに決まっている。

 

 

 チーム名は  小烏丸(こがらすまる) よ!」

 

「はぁ!?」

 

クロムの決めたチーム名に

唯一、その名前に聞き覚えがある信乃だけが、素っ頓狂な叫びをあげた。

 

「ちょっとクロムさん! それ恐れ多いですって!!

 よりにもよって最強の|A・T(エア・トレック)チームの名前なんて

 名乗れないですよ!!!」

 

「へ? そうなの?」

 

「そうだよ琴ちゃん!

 

 ≪小烏丸≫って言ったらA・Tの全盛時代に、メンバー全員が中学生でありながら

 結成から一年足らずで頂点に君臨した伝説級のチームだよ!!

 

 そんなの名乗ったらイッキさんに申し訳ないよ!!」

 

「すごいチームなのはわかりますけど、昔の中学生相手に

 そこまで過剰に反応することはないはないんじゃないですか?」

 

佐天の言うことはもっともだ。

 

たかが昔のチームが名乗っていただけ。

むしろ最強チームから名前を貰ったのなら縁起がいい。

 

だが、『しのっぷ』を前世を持つ信乃にとっては、憧れの先輩達である。

ゆえに名乗ることが恐れ多い。

 

「それが嫌なら≪ジェネシス≫か≪|眠りの森(スリーピングフォレスト)≫に

 するわよ?」

 

「クロムさん・・・・そのチョイスに悪意を感じるのですが・・・」

 

「別にそんなつもりはないわよ。私はただ信乃の反応を楽しんでるだけだから」

 

「むしろ純度100%の悪意しかない!?」

 

「ま、今言ったのは冗談だけど。

 

 で、どうするの? 私はこの3つ以外は認めないわよ」

 

「僕は≪小烏丸≫でいい」「僕もぉ・・・」「新入りに異論な~し」

 

宗像、位置外、黒妻からは賛成意見が出た。

 

「あんただけよ?」

 

「うっ・・・・でも・・・」

 

「なら取引しましょう」

 

クロムはメモリーチップを取り出して信乃に見せた。

 

「この中には≪小烏丸≫、≪ジェネシス≫、その他のトップクラスの

 バトル映像があるわ」

 

「・・あれ? それって俺が個人的に超絶シーカーに依頼したはずのものでは?」

 

半笑いで固まった信乃。驚きのあまり一人称が「俺」になっている。

 

「まぁ、貴重な映像よね。どこかの誰かが頼んだ内容を超絶凄腕犯罪者シーカーが

 一年以上もかけてようやく見つけたものらしいわよ。

 百年以上前のとても貴重な映像らしいわね。

 恐らく、もう一度手に入れるには同じ時間だけ必要とするかもしれないわ。

 

 私は友さんを経由して誰かに渡すように言われたんだけど・・・

 どうしましょう? チーム名が思い通りにいかないショックで手先の感覚が・・」

 

「それは取引じゃなくて脅しって言うんだよ!!」

 

「返事は?」

 

「あぁ・・・はい、了解しました。≪小烏丸≫って素晴らしいですね・・・・はぁ」

 

「よろしい」

 

勝誇った顔でメモリーを投げ渡した。

 

「友さん経由ってことは、つーちゃん。あなたがクロムさんに渡したんですか?」

 

「は、はいぃ・・・・・」

 

「あとで覚えてろ」

 

「ひいいぃぃーー!!」

 

「信乃。僕にも見せてくれ」

 

「俺も見たい。よく知らないが、A・T関連の映像があるんだろ?」

 

位置外がガクブルの中、宗像と黒妻がメモリーチップに興味を示してきた。

 

「それじゃ、時間があるときに上映会でもしますか?」

 

「≪小烏丸≫の練習拠点は風紀委員の練習施設の近くに専用で借りておいたわ。

 あと、信乃は風紀委員も並行でやってもらうから・・・・・

 

 そうね。チーム全員を風紀委員(ジャッジメント)にして177支部に配属させる。

 ミーティングなんかはそこで勝手にやってね」

 

「それは一気に3人の人間を特別風紀委員にするってことですよね?

 職権乱用ではないですか?」

 

「そうよ」

 

「即答したよ! いっそ清々しい!!」

 

「ということで、うちのメンバーの受け入れ、よろしくね固法さん」

 

「え、あ、はい」

 

反論する余地もなく、うなずくしかできなかった。

 

そして、その日は解散となった。

 

 

 

***************************************

 

翌日

 

「え~、今日から177支部に追加の配属がされることになりました」

 

神理楽(ルール)の3人、もとい≪小烏丸≫の宗像、黒妻、位置外の3人は

固法により風紀委員177支部のメンバーに紹介されていた。

 

さすがに一度に一つの支部に、3人の配属は不審に思われるということで、

 

「3人はボディーガード育成で優秀な神理楽(かみりらく)高校の人たちよ。

 

 正式な風紀委員としての配属ではなく、実際の人を守る立場の仕事に

 関わる実習、言いかえれば職場体験のようなものでここにきています。

 

 風紀委員のテストは受けていないけど、実力は確かよ。

 わからない事があったら優しく教えてあげてね」

 

「「「「「はい」」」」」

 

事情を知らない、信乃と初春、白井以外の風紀委員メンバーは疑わずにこの事を信じた。

 

「それで、彼らの指導担当は信乃くんにお願いするわ。

 

 配属されて半年も経っていないけど、彼は充分に仕事をしてくれるし、

 同じ学校だから馴染みやすいと思うわ。よろしく頼むわね」

 

「了解しました」

 

事前に用意された嘘その2で、≪小烏丸≫の全員がまとまって行動できるようになった。

 

「報告は以上よ。それでは仕事に戻って」

 

皆それぞれの仕事へと戻って行った。

 

 

 

 

「さて、≪小烏丸≫の第一回 作戦会議(ブリーディング)を開始します」

 

場所は風紀委員177支部の中にある会議室。

 

参加メンバーは≪小烏丸≫の4人。そして風紀委員の初春と固法。

面白そうだから参加してきた御坂と佐天。合計8人だ。

 

昨日は話を聞いていた美雪は、忙しいということで本日は欠席である。

 

≪小烏丸≫以外の人は参加させるつもりはなかったのだが、クロムの計らいで

情報を完全隠蔽してメンバー以外が勝手に巻き込まれるよりも目の届く範囲で

参加させた方がいいということになり、≪小烏丸≫仮メンバーにした。

 

作戦会議の司会進行は、暫定的にリーダーとなった信乃が務めている。

 

「まず、≪小烏丸≫の目的を再度確認します。

 

 1.常盤台中学の警護、および敵が来た際の迎撃

 

 こちらはみなさんに話した通り、先日、謎の人物が常盤台を襲撃しました。

 犯人の目的が不明確であるのと同時に、裏で糸を引いている人間がいると予想。

 再び襲撃があるので、それに備えての防衛がこのチームの結成理由です」

 

一度ここで話を切り、全員が理解しているかを顔を見て判断する。

誰一人として疑問を持った顔をしていないので、信乃は話を続けた。

 

「ただ、この警護をすることに問題が発生しました。

 

 襲撃されたとはいえ、数ある学校の中から常盤台中学を守るためだけに

 特別チームを作るのは無理がありました。

 

 いくら学園統括理事といえど、たった1つの学校に危機がある“可能性”だけでは

 警備強化をしてくれないみたいです」

 

「え、それじゃどうするのよ?」

 

「心配には及びませんよ御坂さん。たった1つの学校を守ることに問題があれば、

 複数の学校を守ることにしました。

 

 実際は常盤台中学を守るために作られたチームですが、表向きの警護対象は

 常盤台中学を含む、『学舎の園の警護』となります。

 

 それによって≪小烏丸≫全員が、バラバラに学舎の園のどこかに配置されます。

 

 私は偶然にも常盤台中学の修理員として既に入っているので、他のメンバーは

 クロムさんが用意する仮の役職として潜入警護します」

 

「理事長には頑張って、もう少しまともな処遇にしてほしい。

 一応は世界の4分の1を支配している人だからな」

 

「この学園都市は例外ですよぉ・・・・表と、そして財力と政治力が

 混ざった特別地帯ぃ・・・ER3なんて比じゃないくらいにぃ・・・

 境界線が曖昧になっているんですぅ・・・」

 

「世界の4分の1とか、財力やら政治力やら、何言ってますの?」

 

表の世界以外を知っている宗像と水の言葉に白井が質問してきた。

 

「それは後々話していきます。今は作戦会議を続けますよ。続いての目的ですが

 

 2.“アイツ”の動向について捜査。さらに捕獲または処分すること」

 

信乃が白井の質問を誤魔化して話を続ける。

 

“アイツ”とは“ハラザキ”のことだ。ここにいる全員に間違っても名前を

口にしないよう説明したので、“アイツ”と言っている。

 

「処分って、いくらなんでもひどすぎじゃないかしら?」

 

当然、この目的に固法が口をはさむ。

 

「処分っていうのは、アイツが危険すぎる存在だからこのように言っているだけです。

 私達全員が処分しようとは考えていませんよ。

 

 ですが、始めから捕獲だけを考えて相手できるような甘い相手ではありません。

 せめて目的の中だけでも制約なしにしているだけです。

 

 私達は処分なんてするつもりはありません」

 

「だから殺す」

 

「バカは放っておいて次にいきます。

 

 3.氏神クロムから出される、風紀委員だけでは解決できない事件を処理する。

 

 これは言ってみれば何でも屋というところですね。おまけみたいな目的なので、

 それほどは気にしないでいいですよ。

 

 以上の3つが≪小烏丸≫の目的です」

 

「つまり、私達の学校を守りながらアイツについて調べる。ってことでいいのよね」

 

御坂が目的を簡単すぎるほどにまとめて言った。

 

「はい。うちのメンバー以外の皆さんにも協力をお願いします。

 常盤台にいる御坂さんと白井さんは、襲撃があった場合の生徒の安全確保。

 

 風紀委員の固法さんと初春さんには、アイツと思われる不審者がいた場合の通報。

 

 佐天さんは都市伝説が好きと聞きましたので、その中で面白そうなものを

 報告してください。

 

 アイツやその仲間は、都市伝説と考えてもいいほど異常な奴らですから、

 表に出てくる情報よりも頼りになる場合があります。

 

 それではお願いします」

 

全員が頷いた。

 

「これで作戦会議を終了します。細かい内容は後々に決めていきます。

 今日は解散としましょう。

 

 配属されたばかりの3人は、今日の風紀委員の仕事は終わりです。

 

 ですが、この後にA・Tの練習をするので、このまま≪小烏丸≫は

 まとまって行きましょうか。

 

 丁度、私の本日の仕事はありませんし、全員で行きましょう。

 固法さん、大丈夫ですよね?」

 

「いいわよ。それじゃ、私達はこのまま残って風紀委員の仕事に戻るわ」

 

固法の返事に白井と初春も「そうですね、わたしたちもこのままで」と頷く。

 

御坂と佐天は何も言わなかったが、信乃達と一緒に立ち上がったのを見ると、

付いてくるつもりだ。

 

練習に向かうために立ち上がった信乃だが、途中で立ち止まり

 

「あ、出発前に渡しておきますね。はい、これ」

 

黒妻に持ち歩いていた、黒いスポーツバックを渡した。

 

「お、A・Tか!! 昨日話したのにもうできたのか?」

 

入っていたのは黒を基調としてデザインされたA・T。

信乃が使っていたものよりも重量感を感じさせるのが、拳を使って戦う

黒妻のパワーのイメージにも合っていた。

 

そのA・Tを見て、一部のメンバーが羨ましそうな顔をしていた。

 

「パーツは元々自分用の予備があったのでそれを適当に合わせて作りました。

 一応最終確認をしたいので少し背中を貸してください」

 

「ん? なにするんだ」

 

疑問に思いながらも素直に信乃に背中を向けた。

 

信乃は黒妻の背中に手を置き、目を閉じて意識を集中させる。

 

「トレ・・・・ン」

 

誰も聞き取れない小さな声で、魔術の詠唱をする。

 

「はい、問題なし。音も組み上げたA・Tとずれが無いみたいだし、

 そのまま使っても大丈夫ですよ」

 

「音? なんか関係があんのか?」

 

「先日説明した|閃律の道(リィーン・ロード)って覚えていますか?

 あれってA・Tの音に使用者の音を合わせる作業をするんですよ。

 音があっていれば使いやすくなりますし、ずれていれば怪我したりA・Tが

 壊れたりしまうんです。

 

 本物の音の確認方法は別の方法をとるんですが、その方法は嫌ですし

 代わりにした今の方が成功率が高い自信がありますから安心してください」

 

信乃にはBLの趣味は一切ない。もし昔の閃律の道(リィーン・ロード)の

方法で調律すれば、男同士が裸で×××な状態になる必要がある。

 

だが信乃が使ったのは魔術。それも解析魔術だ。

これを使えば自分の皮膚の間隔を通さずに直接相手の音を“解析”して理解できる。

 

ちなみに宗像のA・Tも信乃が製作・調律をしたものだ。

 

「そんなんでわかるもんなのか?」

 

「私が旅の世界で飛び回って手に入れた特技の一つですよ」

 

正確には世界を回る前に身に付けた魔術なのだが。

 

「A・Tを使うのに慣れると、個人の癖が出てきてズレも大きくなります。

 定期的にメンテナンスと一緒に調律もしますよ」

 

「おう、頼むぜ!」

 

「それじゃ、行きますか。 佐天さんはどうします? 風紀委員じゃないから

 残る必要はないですが」

 

「あの・・・信乃さんにお願いがあるんですが・・・・・」

 

佐天が言いにくそうにモジモジとしている。

 

「なんですか? 私にできることであれば聞きますよ」

 

「あの・・・・・えっと・・・・」

 

優しく促してもなかなか言えない。恥ずかしそうに口を動かすだけだ。

 

それでも信乃は急かさずに笑顔で待った。

 

 

 

一度大きく深呼吸をして、佐天は決心をして言った。

 

「信乃さん!! 私にもA・Tを教えてください!!!」

 

 

 

つづく

 

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