一頻り会話が終わると、女子たちは一緒にお風呂へと入った。
一人暮らし用の部屋、その風呂場となればかなり狭い。
それでも美雪が一緒に入りたいと駄々を超えたので渋々ながら4人は入ることにした。
美雪の提案に一番喜んだのは白井(もちろん狙いは御坂)だが、美雪の純粋な目を
見たがために、自分の欲望に絶望して大人しく、御坂を視姦することすらなく
お風呂に入った。奇跡だ。
その間、信乃は夕食の準備をしていた。
だが、予想よりも5人の女子のお風呂時間が長くて調理を完了して一人暇を
持て余すことになった。
その間に小烏丸(こがらすまる)メンバーのA・T(エア・トレック)データを見て
今後の訓練内容を考えることにした。
・・・
・・
・
「気持ち良かった♪」
「そうだね、雪姉ちゃんと一緒に入るなんて久しぶりだし」
「お姉様、わたくしとでしたらいつでも一緒に入ってビリリリリッ!?
お姉様の愛の鞭・・・・黒子は全部受け止めますの・・・・・(パタ)」
「まったく! あんたは!! 今日は大人しくしていたと思ったのにすぐこれ!?」
「落ち着いてくださいよ御坂さん。ん? どうしたの初春?
なにか落ち込んでいるように見えるけど」
「美雪さんの胸・・・・・身長は私と同じぐらいなのになんで・・・・」
「水着撮影と同じように落ち込んでますのね初春。
仕方ないですの。幼児体系の初春ですから」
「白井さ~~ん、ひどいです~(泣)」
「落ち込むことないわよ初春。私も似たようなもんだし」
「佐天さんはまだいいじゃないですか!!
膨らんでいるんですよ! 女性の形をしているんですよ!!
揉むことができるんですよ! 手のひらサイズは正義ですよ!!!
私なんて・・・・私なんて・・・」
「絶壁、ですの。小学生と何も変わりありませんわ」
「白井さんだけには言われたくないです!!」
「あら初春、少しO★HA☆NA★死 をしましょう」
「・・・・・ねえ皆、忘れている?
ここは信乃にーちゃんの部屋で、あそこに男がいるってことを/////」
「「「あ・・・///////」」」
お風呂場で女子タイムを満喫していたあまり、そういう事を忘れていた3人。
気付いていた美雪は恥ずかしくて途中から会話には参加せずにいた。
そして信乃からツンデレという名の羞恥心を教えられた御坂美琴だけが早急に
会話を打ち切る行動に出た。
顔を真っ赤にしてソファーに座っている信乃を見る5人。
だが信乃からは全く反応はなく、本ほどの大きさの端末から小烏丸の情報を見ていた。
「黒妻さんはパワータイプ・・・・ドントレスさんみたいな感じで・・・
でも、走り(ラン)をもう少し鍛えてから道系統の練習を始めた方が・・・」
「なんだろう・・・
入ってきたときに美雪さんが言っていた、女のプライドが粉砕するとか・・・
分かる気がする」
「ありがとう佐天さん」
佐天の肩をガッチリ掴み、美雪はホロ泣きをしていた。
「佐天さんも雪姉ちゃんも落ち込まないで!!
ほら! 信乃にーちゃんも何か言って!!」
「男(おれ)の前でそんな話はしないでね」
「全部聞いていたんかい!!? それなら反応してよね!!!」
「無視を通すほうが面白いと確信していたから(キリッ)」
「ドヤ顔で何言ってんのよ!? 面白いってだけで女子2人の心に傷をつけるな!!」
「なにを言っているの琴ちゃん? 俺はそういうキャラだよ?」
「そうだったねそうでしたね!! 表向きの顔が丁寧だから直ったと思ったら
よりひどくなっているのは気のせいですか!?」
「気のせいだ。それにしても琴ちゃんのツッコミの技術が上がっているのは
兄(ボケ)として嬉しい限りだよ」
「・・・・・もういいわよ・・・疲れたわ」
「えっと・・・」「・・・・」「・・・・なんですの今のは・・・」
「驚くのはしかたないよねみんな♪ あれが信乃の本当の姿です♪」
「普段の信乃にーちゃんが猫をかぶっているわけじゃないわよ。
あれはあれで信乃にーちゃんに間違いない。昔と一緒よ。
でも、プライベートで私達(かぞく)にはふざけた事をいうのよ!
ほんの偶(たま)にしかふざけないくせに! 内容がイライラする!!」
「琴ちゃん落ちついて」
「誰のせいよ!?」
「琴ちゃんの反応の良さに少し調子に乗っちゃったな。
ごめん、今から自重する」
悪びれもなく信乃は謝っていた。
「でも本当に前より嘘吐きがひどくなっている気がする。
悪い意味でも良い意味でも」
「旅していたときに師匠にあったから。教え直してもらった」
「師匠って、姫母さんが『師匠』って呼んでいた
個性があまりない男の人でしょ♪?」
「・・・・ひどい言いようだけど俺も同感だからスルーしておく。
その師匠で当っているよ。小さい時も遊びに来てくれた時に習っていたけど、
今度は間違いなく師弟関係として戯言を教えてもらったんだ」
「へ~♪」
「信乃さんとそのお母様が『師匠』とお呼びするぐらいですから、
それほどすごい人なのでしょうね」
「いや、全然すごくはない」
『え???』
謙遜と言った雰囲気は一切ない。
信乃は人に対して過大も過小の評価もしない。それは5人も知っている。
だからそのような評価をする人を『師匠』と呼ぶのかを不思議に思った。
「・・・・ではなぜ弟子入りしてますの?」
「ん~、弟子入りは間違いないけど、
どちらかと言えば師匠と呼んでいるだけとも言えるね。
師匠を『師匠』と呼ぶ理由は2つ。
1つ目は戯言の弟子入りをしたから。当然、師匠と呼ぶのは普通だな」
「「「戯言?」」」
美雪、御坂の2人を除いた3人が尋ねた。
「説明するのは難しいけど・・・簡単にいえば嘘のことだ。
師匠は舌先三寸口八丁ってぐらいしゃべるのが得意なんだ。
色々な事件に巻き込まれたことがあるけど、ほとんど口だけで
解決している。
逆にいえば戦わずして勝つ、または凌(しの)ぐ技術を師匠から学んだ」
「それで信乃さんは嘘をよく言うんですね」
「私達も頻繁に騙されちゃってますよね」
「嘘ではなく、≪戯言≫と言ってほしいね。
戯言遣いの弟子を自称しているからね。
2つ目の理由は・・・・実は師匠に弟子入りする前から師匠って呼んでいた。
だから今も昔も、あの人への呼び方は≪師匠≫のまま」
「なんで師匠って呼んでたの? すごいとも思ってなかったのに」
「ぶっちゃけると・・・
俺、あの人の本名知らない。
母上が師匠って呼んでいたから同じように呼んでるだけ」
『はぁ?』
またしても5人がユニゾンした。
これは唯一、戯言遣いと面識がある美雪も始めて知る事実であった。
「・・・・姫母さんから聞いてないの♪?」
「母上も師匠の本名は知らないんだよ。
一時的に師匠が母上の保護者にもなったことがあるらしいけど。
まったく持って非常識極まりないよ、母上は。(自分の事は棚に上げてます)
弟子入りした今も、分かっているのは苗字だけ。下の名前は依然不明のまま。
苗字の方は『イチガイ』っていうんだ」
「それってつーちゃんと同じ! まさか!!」
「佐天さん正解、そのまさかだよ。
師匠は位置外水の父親。
つーちゃんと知り合ったのも師匠が関わっているんだ。
ちなみにつーちゃんに師匠の本名を教えてって言ったことがあるけど
ダメだった」
「謎・・・としか言いようがないわね」
「初春、調べられるかな? 小烏丸の一員としてつーちゃんの
お父さんに会う機会があるかもしれないし!」
「ダメですよ佐天さん。面白半分でプライベートなことを調べようとしたら。
それに学園都市の人ではなさそうですし、難しいと思いますよ」
実際は難しいどころか、≪政治力の世界≫の一家、壱外(いちがい)を調べるなど
一般人の初春では絶対に不可能であるのだが、信乃はそのことを言わなかった。
「さて、話し疲れたし夕食でも食べますか」
ピュキーン! と効果音が鳴ったような顔で御坂は信乃を凝視した。
「夕食!? 信乃にーちゃんが作ったの!?」
「う、うん・・」
今にも噛みつきそうな勢いで信乃に迫ってきた。
あまりの迫力に信乃も若干引いてきた。
「み、御坂さん、落ち着いてくださいよ。どうしたんですか?」
「信乃にーちゃんがご飯作ったのよ!? 落ち着いていられますか!?」
「信乃さん、そんなに料理が下手なんですか?」
「逆よ!!」
「琴ちゃん落ち着いて♪ その反応怒っているように聞こえるよ♪」
「部屋に来たばかりの時、料理好きだって御坂さんがいってなかったっけ?」
「信乃さんのご飯はそんなにおいしいのですか?」
「たしか水着撮影のときには珍味カレーを披露してましたね」
「あれは材料が悪かったから珍味になったのよ!
むしろあの材料で食べられるもの作ったのよ、すごいしか思えないじゃない!
今度は正真正銘の、普通の料理よ!!」
「そうですね。イチゴとか摩り下ろしトウモロコシからあの味は奇跡ですね。
それなら期待しちゃいますよ」
「期待するのはいいけど覚悟した方がいいわよ。
うちのお母さん、プライド壊されたから」
「「「え?」」」
何気なしに言った御坂の一言に3人は固まってしまった。
「旅から戻ってから更に上手くなっているから琴ちゃんも覚悟が必要かもね♪」
「大丈夫! すでにいろいろ諦めているから!!」
「それは女としてどうなんだよ琴ちゃん」
御坂家と仲の良い信乃は、当然御坂美琴の母である美鈴にも料理を出したことがある。
信乃の料理を食べた美鈴はおいしさに頬を緩ませ、そして母親という立場として
自分よりも料理が上手いことに複雑な顔をした。
同時に料理を食べた美琴が「お母さんよりおいしい!」と無邪気に言った言葉が
美鈴の致命傷となったのであった。
しかし今では御坂母子ともに信乃の料理を食べるときは女のプライドを放棄すると
決めているから問題ではない。
「てか、ひどい言いようだな。もう二度とご飯つくらねぇぞ?」
「「ごめんなさい!!♪♪」」
「・・・見事な土下座・・・
さて、料理を盛り付けるか。3人共、食べるよね?」
信乃の言葉で3人は気付き、硬直から解放された。
「は、はい! 楽しみです!」
「そこまで言うのでしたら・・満足させてくださいですの」
「どうしよう・・・信乃さんの手料理は食べたいけど女のプライドが・・・」
純粋な初春、挑戦的な白井、恋する乙女の佐天が答えた。
そして一口目、3人のプライドは粉砕した。
ショックのまま無意識に2杯目に箸を進めた
自意識が戻ったときには3杯目を平らげた自分に気づいた。
そして再びショックを受けた、食べた量の多さに。
年頃の女の子にとっては食事量(カロリー)は大きな問題であった。
「あ、カロリーなら気にしなくていいぞ。
低カロリー且つ栄養バランス考えたメニューだから。
もちろんお米も特殊ブレンドで炭水化物も抑えてある」
(((お、お嫁さんに欲しい!!)))
と思いながら4杯目に進んだ。
結局5杯のご飯を食べ終えた3人。もう動けないと言った体勢で
満腹感に酔いしれていた。
そんな3人を残して御坂、美雪、信乃の3人は後片付けをしていた。
ちなみに御坂は何気なしに8杯完食、ぶっちぎりのトップだった。
「おいしかった~で~す~」
「ごちそうさまですわ。満足させていただきましたの」
「幸せ・・・・将来は主夫かな・・・ふふふ、私が稼がなきゃ」
「佐天さん、何を呟いているんですか?」
「ふふふ・・・」
「不気味です佐天さん! 戻ってきて下さい!!」
「はっ! 今の信乃さん聞いていた!?」
「? 信乃さんなら台所で食器を洗ってますけど・・・・」
「た、助かった」
「?」
「どうかした、佐天さん?」
「信乃さん!? なんでもないですなんでも!!」
丁度手を拭きながら台所から戻ってきた信乃に佐天は大きな声を出して否定した。
「それにしても良く食べましたね、4人とも。特に琴ちゃん」
「いやね~、お箸が止まんなくって」
「料理人、冥利に尽きるってことにしてやるよ。
それじゃ、俺は隣の部屋に行くよ。5人でパジャマパーティー楽しんでね」
「ん? 隣って?」
「寮の隣の部屋。俺、二部屋借りているんだ」
「豪勢ですわね。なぜわざわざそんなことをしてますの?」
「行ってみればわかるよ♪」
「ん~、本当は見せたくないけど・・・いっか。
案内しましょう、俺の工場(ファクトリー)に」
「すごい・・・・」
「・・・なにこれ」
「ここって今までいた部屋と同じ作りのはずでよね。雰囲気が全然違います」
初春同様、初めて見た4人は感嘆した。
部屋の隅々まで置かれているのは無数の工具と金属加工機器。
そして作業机の上にはまだ組み上がっていない機械 。
「A・T(エア・トレック)・・・・信乃さんが改造しているのは知っていたけど、
ここまでの道具が必要だなんて大変ですね」
「改造どころか丸ごと作れそうですね」
「つくってるよ、丸ごと」
「・・・・本当ですか?」
「真剣と書いてルビは真剣(マジ)です」
「「あははは・・・・」」
例によって苦笑いを浮かべたのは白井と初春。
残りの美雪・御坂・佐天は揃って
「別に信乃ならそれぐらいはするでしょ」といった顔であった。
「あれ?」
気が付いたのは佐天だった。
工具だらけの部屋の中心になぜか何も置かれていない空間がある。
幅は1メートル四方。白い布が敷かれ、円や三角形などの図、
辛うじて文字だとは認識できる筆記体が書かれ、描かれていた。
「魔法陣みたいに見えるけど・・・」
「へ~。
佐天さん、なんでそう思ったの?
魔法とかオカルトから一番縁がない学園都市にいるのに」
学園都市の人間はオカルトを否定しやすい。
否定するゆえにオカルトの知識もあまり持ち合わせていないはずだ。
「私、弟がいるんですよ。一緒にゲームしたときに魔法使いのキャラが
出してました。それに占いのサイトにも似たようなものをみました」
「なるほど」
「で、結局何で信乃にーちゃんの部屋にオカルトなものがあるの?」
「・・・・中国拳法の座禅修行で、特殊な場所で行うと集中力が桁外れに上がると
言われている。
そういったものに肖(あやか)って色々な模様が存在するらしいね」
「中国拳法といえば気孔ですもんね」
「そういえばこの前テレビでやっていた。気孔ってプラシーボ効果と似ているって。
思い込みだけど、かなり効果があるって」
「気孔は非科学的ですがプラシーボ効果のような精神に働きかけるのでしたら
集中力を上げるのには役に立つとも言えますの」
「A・Tのパーツって小さいから集中力必要そうですもんね!
この気孔の図に座って信乃さんは座禅とかしてるんですか?」
「A・Tの組み立ては集中力が大事だよな。うん、集中力は大事」
「へー、やっぱり効果あるんだ! 私もやってみようかな?
信乃さんとおそろい・・フフフ」
「ハイハイそこまでにしてくれ。女子は隣の部屋に戻って
女子会でもやってろ。俺は眠いんだよ」
「全く眠そうに見えないんですけど、信乃にーちゃん?」
「うるせ、すぐに出て行け」
「わかりましたよーだ!
みんな、こんな部屋なんてどうでもいいから早く行こう」
「待ってくださいよ御坂さん!」
「まぁ、わたくしもそれほど機械に興味があるわけではないですし」
「もうちょっと見ていたいけど・・・信乃さん明日ここに来ても「ダメ」
・・・ダメ?」
「ダメ。いくら小烏丸(なまか)の佐天さんでもあまり見せたくない」
「ぷ~! もういいですよーだ!」
佐天も頬を膨らませて出て行った。
4人は出て行った。
「信乃、私が気付いていないとでも思った♪?」
「・・・・何の事だ?」
片目を閉じて、肩をすくめておどけて返す。
「魔法陣の話だけど、信乃は一度も座禅に使っているとか
集中力を上げるために使っているとか言っていないよね♪」
「ま、所詮戯言だけど」
信乃は一度として、魔法陣ではないと否定していない。
中国拳法の修行方法を紹介し、A・Tの組み立てには集中力が必要だと言っただけ。
ついでに言えば中国拳法も体験したわけではなく、旅の途中で話に聞いただけの事を
話したに過ぎない。
「ほら、最年長お前も行けよ」
「信乃、一人で寂しくない♪? 添い寝してあげる♪?」
「殴ってもいいですか?」
「冗談だよ♪」
信乃をからかって美雪は隣の部屋に戻って行った。
「・・・・魔法陣だと一発で分かるとは思わなかったな」
信乃は右手で図や文字が書かれた布に触れた。
佐天の言った魔法陣というのは正解である。
正確にいえば魔法陣ではなく錬成陣。
信乃が2つしか使えない魔術の内の一つ、錬金術。
それを補助する作用があるのかこの錬成陣であった。
A・Tのパーツは専用の物が多い。
A・Tが生産されていない現代で作り出すには相当な人脈(コネクション)が
必要になる。また、パーツの材料も特殊で珍しいものが多い。材料そのものを
手に入れても、加工を他者に任せれば珍しい金属に引かれてワラワラと
金にしか興味が無い信用できない奴らが集まってくる。
だから信乃はA・Tの材料を金属の原石レベルから取り寄せ、後の加工は全て
錬金術を用いて自分の手で行っていた。
信乃の錬金術は、術速度が非常に遅いため戦闘に使う事が出来ない。
錬金術で罠にはめるため1メートルほど穴を作る、いわゆる落とし穴を
作るのでさえ30分も必要とする。
だが、錬金された物体の精度は高かった。
金属は純度が高ければよいという訳ではない。
ある程度の混じりものがある方が強度を増す金属がある。
最たる例が鋼だ。鉄の中に炭素を2%程含めることで強度が増す。
数量の不純物を均等に、適量に混ぜ合わせることは信乃の得意技であった。
そしてもう一つの魔術が解析魔術。
人間や物体の構造を把握する魔術。その把握能力により、A・Tの調律を行っている。
A・T全盛期では直接人間とA・Tの音を聞いて合わせることで調律をしていた。
信乃は諸事情により音を直接聞く方法を取らず、解析魔術を使って調律の代用をしている。
代用と言っても完全に調律した状態の90%以上、充分な結果をだすことができる。
錬金術でパーツを作り、解析魔術で調律をする。
すでに廃れたA・Tを信乃はこうして復活していた。
「さてと・・・・・怪我のせいで俺の音が色々ずれたし、調律をやり直しますか。
まずは炎の玉璽(レガリア)からだな」
作業机に座り、A・Tをいじり始めるのであった。
「ではでは! 第一回! パジャマパーティーを開催します!」
「「「「イェ~イ!!!♪」」」」
御坂の音頭に合わせて女子5人が乾杯した。
「んっんっ っは~! おいし~!」
「あー、佐天さん! 一気飲みは禁止ですよ!」
「みみっちーですわよ、初春。今日はお姉様とわたくしが
あの寮監から外泊許可を勝ち取った記念すべき日なんですのよ!
一気飲みの一度や二度!
んっんっんっ・・・・・ っア"~! ほら! 初春も!」
「あ、はい。んっんっんっ はー!」
『お~! (パチパチ)』
「じゃ! 次は御坂さんですよ?」
「私? んじゃ、ご期待の答えて んっんっプハァ!」
「さすが御坂さん! 期待を裏切らない飲みっぷり!」
「やだなぁ、こんなことで大げさな。ただの炭酸飲料だし」
「それでは最後に美雪お姉様! どうぞ!!」
「うん♪ んっんっんっ・・・・ゲホゲホッ!!」
「ちょっと美雪姉ちゃん大丈夫!? 炭酸苦手なのに一気飲みなんてするからよ!」
「こんな雰囲気なんて久しぶりだったし、ついノリで・・・ケホケホ!
それに炭酸が苦手だってことすっかり忘れていたの♪」
「忘れていたって・・・本当に天然なんだから」
「炭酸が入っていませんオレンジジュースもありますの。
美雪お姉様はこちらをどうぞ」
「白井さんありがとう♪」
「いえいえ、元はわたくしが美雪お姉様に一気飲みをお勧めした事が
原因でむせさせてしまったのです。申し訳ありませんわ」
「気にしなくていいのに♪」
「黒子、雪姉ちゃんをひどい目に合わせたらただじゃ済まさないわよ」
「御坂さんと美雪さん、仲良しですね」
「さすが姉妹です」
「そういえば美雪さんと御坂さんの苗字が違うのって、本当の兄弟じゃないからでしたっけ?」
「うん。私と雪姉ちゃん、信乃にーちゃんの全員が血縁関係ないよ」
「でも私は御坂家に養子で入っているから、琴ちゃんは戸籍上の姉妹なの♪」
「へーそうなんだ」
「鈴姉ちゃん、琴ちゃんのお母さんは信乃も養子に入れたいと
考えているみたいだけど、信乃が断ったんだ♪」
「あれだよ、本当の家族のことを誇りに思っているから、苗字は変えたくないとか
そんな理由を言っていたよ」
本当は一度両親を失っているから、また家族が消えてしまうのではないかという
信乃自身も上手く説明できない理由から断っていた。
美雪も美琴も、美鈴からの誘いを断るのを聞いていたので、理由は知っている。
だが、本人(しの)の希望により、苗字に誇りを持っている事を断った一番の理由にしていた。
「へー、信乃さんって家族思いなんですね」
「でも、なんで美雪さんだけ御坂さんの家に養子になっているんですか?
美雪さんは信乃さんと仲が良いですし、信乃さんが断るなら
一緒に断りそうですけど。
あ、ついでになんで苗字を≪西折≫に変えたのか聞きたいです!!」
「ちょっと初春! 質問をもう少し考えてから言いなさい!!」
「へ?」
「「・・・・・」」
初春以外が気まずい顔をしている。特に美琴と美雪は暗い表情だった。
「(ヒソ)忘れましたの!? 美雪お姉様が苗字を変えたきっかけは
信乃さんの飛行機事故ですの!!」
「あ・・」
4年前、当時の信乃が11歳の時。
信乃は飛行機事故に巻き込まれた。
救助隊が向かったが、生存者は一人もいない大きな事件であった。
信乃は事故直後に生きており墜落現場から離れた為に、
救助隊が生存を確認することができなかった。
他の事故者と同じように死亡者扱いとして美雪達には連絡が来ていた。
初春が美雪に初めて会った時、そういう話を聞いていた。
一緒に御坂家に養子に入ったことや苗字を変えた事を話したが、
事故の話のインパクトが強かったため初春は失念していた。
「ごめんなさい! その・・・ごめんなさい!!」
謝ることしかできない初春。
家族の死は触れてはいけない話題の代表である。
それに触れてしまった初春は、謝罪の気持ちに体が震えていた。
「別にいいよ・・・・今では信乃は無事に生きているし」
「ま、まぁ雪姉ちゃんが気にしないっているなら私は何も言わないけど・・」
『・・・・・』
沈黙。楽しかったパジャマパーティーが一瞬で静かになった。
「そうだね、丁度いい機会だし私がなんで≪小日向(こひなた)≫から≪西折(にしおり)≫に変えたのか
話そうっか。御坂家に養子になったことも含めてね」
美雪は静かに語り始めた。
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
それは信乃が出発する当日の事。
「信乃、いってらっしゃい♪」
「いってらっしゃい信乃にーちゃん」
「いってきます。美雪、俺がいないからって寂しくて夜泣くなよ。
琴ちゃん、久しぶりにここに泊るからってはしゃぎ過ぎるなよ」
「もう♪ 子供扱いしないでよ♪ でも寂しいことには違いないけどね♪」
「無理! もう雪姉ちゃんと一緒に遊べるのにはしゃがないなんてできない!」
「(大丈夫かこいつら?)・・・・たった1週間、離れるのがこんなに辛いなんて」
2人を放っておいたら大変なことになる。
『放っておいていいのか?』と言う意味で辛いと言った信乃だったが、
美雪には別の意味で脳内変換された。
「え・・・私と離れるのがそんなに嫌?」
「////ッ! 上目遣いで見るな!
確かに離れるのは嫌だけど! いや! 嫌じゃない!
別にお前と離れたって平気だ!」
「信乃にーちゃん、本音が漏れてるよ」
「/////うるさい!!」
「ふふふふ♪//////
あ、ネクタイ曲がっている。ちょっと動かないで」
「お、おう」
「(完全に夫婦だね、この2人。
いいな~、私も好きな人ができたらこんな風に・・)」
「これでよし♪ それじゃ、お土産を楽しみにしてるね♪」
「おう、適当に楽しみにしてろ」
「信乃にーちゃん、私も私も!」
「はいはい、忘れてないから安心しろ」
「出発する前に、いってきますのチューは?」
「え? いってきますの拳(グー)?」
「もう、恥ずかしがらなくてもいいのに♪」
「恥ずかしいに決まってんだろボケ! 2人きりだろうとそんなことしねーよ!
いいか琴ちゃん! 羞恥心ってのは大切だから覚えておけよ!」
「うん///// 今の雪姉ちゃんはやり過ぎだと思う」
「あーあ、琴ちゃんもすっかり信乃のツンデレに染まっちゃったね♪」
「「ツンデレ言うな!!」」
「はいはい、わかりましたわかりました♪
信乃、時間は大丈夫なの?」
「お、意外とギリギリだな。 そんじゃ、いってきます」
「「いってらっしゃい!♪」」
・・・
・・
・
その日の夕方、美雪と美琴は共に食事の準備をしていた。
リビングのTVの音をBGM代わりにおしゃべりを楽しんでいた。
『次に、明日の学園都市の天気です。
明日は第三学区に一時的に雨が振ります。他の学区は・・・え? はい!
ここで緊急ニュースが入りました!!
学園都市から本日午前9時発の飛行機に異常が発生して墜落したようです!!』
「え・・・・」
「この飛行機って、信乃にーちゃんの・・・」
『現在、救助隊が探索に当たっていますが、墜落したと思われる国は現在内戦中で
交渉などに手間取って・・・・・・ 』
もう、この後のニュースの内容は美雪と美琴の耳には入っていなかった。
数日の間、美雪は意地を張って「大丈夫だよ」と言い続けて救助隊の
結果を待っていた。
御坂美鈴もニュースを見て学園都市に駆けつけ、3人で一緒に待っていた。
だが、待っていた救助隊の結果は予想通りで理解したくない、受け入れたくない結果であった。
美雪達がいる信乃の部屋に、救助隊からの連絡人がやってきた。
「申し訳ありません。墜落した飛行機の状態はひどいもので、遺体の確認も
難しい状態でした。燃え残った遺留品を少し持ってきたのですが・・・・」
「そうですか・・・・・」
小さな箱に入っていたのは信乃の荷物の一部。
玄関先で美鈴が受け取っていた。
後ろには美雪と美琴がいる。
すぐ近くにいるので話は聞こえるはずだが、救助隊の話では全く何の反応もない。
「本当に申し訳ありません。お子さんを無事に救助することができずに・・」
「いえ、人間には限界と言うものがありますから、そんなこともありますよ」
「・・・それでは失礼いたします」
空気に耐えられず、荷物を持ってきた男は逃げるように立ち去って行った。
「雪ちゃん・・・・えっとね」
美鈴は何と声を掛けていいのか分からずにいた。
「・・・・・信乃・・・」
力が抜けたように、美雪はその場で座り込んだ。
「信乃にーちゃん、死んじゃったの?」
「・・・・・ええ、救助隊の人でも無理だったみたい。
飛行機に乗っていた人は全員・・・・」
「・・・・信乃・・・・・信乃・・・・・」
「雪ちゃん、気をしっかり持って。落ち込むと信乃も・・天国で」
「・・・ァ・・・ァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!!!?!?!」
「雪ちゃん!?」「雪姉ちゃん!?」
「アアアアrアアアァアアァァァアアaアア!!!!!!」
「雪ちゃん落ち着いて!! 美琴ちゃん救急車を呼んで! 早く!!」
「う、うん!!」
その後、救急隊員の鎮静剤により大人しくなった。
精神系の病院に運ばれ、様子を見ようということになったが
鎮静剤が切れると再び奇声を上げて暴れ出した。
医者も手を付けられず、鎮静剤を打つしか方法が無かった。
喉も大声のせいで3日目には潰れ、それでも声にならない悲鳴を
上げ続けた。
そんな状態が半月以上も続いていた。
医者がまともに処置を出来ないことに腹を立てた御坂美鈴は強硬手段に出た。
美琴も協力すると言ったが、不安定な美雪を小学生の美琴には見せられないと言って
美鈴は1人で病院に来た。
鎮静剤が切れて暴れている中、医者の停止も振り切って美鈴は美雪の部屋に入った。
半月前に見たときとまったく症状が変わらない錯乱状態。
素人の自分よりも専門家の医者に任せたようが良いと判断した自分に嫌気がさした。
だから、もう医者には頼らない。母親または姉として美雪を救うために
美鈴は脚を進めた。
「雪ちゃん」
「アァぁぁぁ・・・・・ぁ!!!」
「美雪!!!」
暴れる美雪を抑えるように正面から抱きしめた。
それでも暴れ続ける美雪。美鈴の呼びかけにも何も反応も示さない。
だけど美鈴は諦めずに抱きしめ続けた。
美雪が正気に戻るまでずっと・・・・・
暴れ続ける美雪を抱きしめ、暴れ疲れて意識を失うまでずっと美鈴は側にいた。
意識を失った後では呼びかけても意味がない。
眠っている今の内に美鈴も食事など休憩をとり、長期戦に挑み続けていた。
そして半月後、ようやく意識はあるが暴れない状態の美雪にまで落ち着いた。
落ち着いたと言っても、いつ暴れ出すか分からない危険な状態。
美鈴は焦らず、何も言わずにずっと美雪の背中をさすり続けた。
「鈴・・・ねぇ・・ちゃん」
「!? ・・・何、雪ちゃん?」
美雪が口を開いたのはさらに半月後のことだった。
その声は1月の間、声を出さずにいたのに枯れた状態。
最初の1ヵ月でどれほど喉を酷使して叫び続けたのか痛いほど感じられた。
正面から抱きしめ、美雪の口が美鈴の耳元にある状態だから聞きとれた、
それほど小さくか細い声だ。
「信乃・・・・本当に死んじゃったの?」
「・・・・・・・・・」
「そうだよね・・・・・・
私がこんなになっているのに側にいないってことは、そういうことだよね」
「・・・・・・・・ごめんね、私にはこれぐらいしかできなくて」
「信乃・・・・本当に死んじゃったの?」
最初と同じ質問。
現実を理解しても受け入れたくない、そんな気持ちが伝わる。
「ええ。だめ・・みたい」
「そっ・・・か・・・・
ヒック・・・・・信乃・・・信乃・・・」
信乃が死んでから初めて涙を流した。
錯乱し、暴れ、悲鳴をあげても、涙を流す事が無かった。
この涙は信乃の死を受け止め、そして深い悲しみに出た涙だった。
美雪の背中をさすり、美鈴は静かに言った。
「雪ちゃん・・・・
信乃の代わりなんてことは絶対に無理だろうけど、
それでも信乃の代わりに雪ちゃんを守りたいと私は思っている。
色々な方法を考えたけど、家族みたいに支えるのではなくて
家族として雪ちゃんを支える方法しか思いつかなかった」
「・・・・・鈴姉ちゃん」
「だから小日向(こひなた)美雪(みゆき)ちゃん、よかったら家の養子にならない?」
それは半年前、美鈴が信乃に対していった言葉であった。
国から見ると、美鈴と美雪は赤の他人である。
いくら助けたいと言っても、法律上では限界があった。
そして何より、家族を失った悲しみを埋める方法は家族を作る方法しか
思いつかなかった。
たとえ信乃との絆に及ばなくても、元々あった美鈴との絆が少し強くなる程度でも、
それでも家族としての絆が美雪には必要だと考えた。
「美雪ちゃん、私の本当の娘になってくれないかな?
美琴と、旦那の旅掛(たびかけ)さんも一緒に支えたいの」
「・・・・・ありがとう、鈴姉ちゃん・・・
うん。私、鈴姉ちゃんの娘に、琴ちゃんのお姉さんになる」
「そう、よかった・・・」
返事を聞いて安心し、美鈴は一層強く美雪を抱きしめた。
「でも、一つだけお願いがあるの」
「なに? 私にできることなら学園都市相手でもなんでもするわよ?」
「私の苗字、≪小日向≫でも≪御坂≫でもなく、≪西折≫にして欲しいの」
「それは・・・」
「私にとっては信乃との関係を切ることは絶対にできない。
例え私が他の人を好きになろうとも、絶対にできない。
だから、せめて苗字だけでも・・・・信乃を感じていたいの」
「・・・いいわ! 任せなさい! 法律ぐらい私が曲げてやるんだから!!」
こうして、美雪は御坂家の養子に入り、西折美雪として生きていくのであった。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「・・・と言う感じ」
「雪姉ちゃん、退院した後も大変だった・・・・
たまに発作のように思い出して暴れたりしたから。
暴れなくても大泣きするのはよくあったし」
「養子になって、親権限で半年は鈴姉ちゃんも学園都市に
滞在できたるようしてくれて面倒見てもらったな・・・・」
「うん。私も信乃にーちゃんが死んだ最初の1週間は泣き続けた。
思い出した時もお母さんにしがみついて泣いたな・・・」
「私達が落ち着いたのは1年ぐらい後だったよね」
「そうだね。思い出しても泣かなくなって、
雪姉ちゃんも暴れなくなったのはその辺りかな?」
「・・・・・ごめんなさい。軽い気持ちで聞いたりして」
『・・・・・・』
5人に沈黙が流れた。
美雪の過去を、特に信乃の飛行機事故のことを話せば気まずくなるのは分かっていた。
美雪と美琴も何故話したのか分からなかった。
『・・・・・』
「そ、そうですわ!」
「黒子?」
気まずい沈黙を破ったのは空気の読める子、白井黒子だった。
「美雪お姉様がお話をされたのです! 次はわたくしの番ですわ」
ゴソゴソと持ってきた鞄に手を入れて何かを探していた。
「白井さんの番って、どういうことですか?」
「今のはあれですのよね、美雪お姉様?
自分の少し恥ずかしい事を話しただけですのよね?」
「「「「え・・・?」」」」
「そうでしたら、ここはおしゃべりの場。
わたくしも少し恥ずかしいお話をさせていただきますの!」
「・・・そうね。そう! 今のは恥ずかしい事の暴露話!
ほら、雪姉ちゃんが1ヵ月以上もお母さんに抱きついて
泣き続けていたっている恥ずかしい話なのよ! ね! 雪姉ちゃん!!?」
「あ、うん・・・そうね♪
トークテーマが恥ずかしい事だってことで話したけど、恥ずかしすぎて
みんな引いちゃったんだね♪ ごめんごめん♪」
「トークテーマって、私が変なことを聞いたから「初春!」 ふぇ!?」
「違うでしょ! 今のは変な意味はないの! トークテーマだったの!!
(ボソ)ほら! 空気読んで! 白井さんがせっかく誤魔化したんだから」
「そそそそそうですね! 何言ってんだろう私! あははは」
「・・・・ありがとう、みんな♪」
「「「「/////か、かわいい」」」」
目じりには嬉しさの涙を浮かべた、
全開の笑顔に同姓全員の心を奪った美雪であった。
「ありましたの! では! わたくしが披露する少し恥ずかしいお話です!」
ささ、このデジタルカメラに収められたマル秘動画をご覧あそばせ!!」
再生画面に移された場所はデパートの服売り場。
見覚えがある。ほぼ間違いなくセブンスミストだ。
画面の中央に写っていたのは御坂美琴。周りをキョロキョロと見回しながら
1着の服を持つ。
そして周りに誰もいないこと確認して服を、パジャマを自分の体に合わせて鏡に立つ。
満足した顔。猫の肉球の模様のパジャマ、可愛らしいデザインのそれを
御坂はかなり気に入ったようだ。
だが、鏡に合わせるだけでは興奮は収まらなかった。
『フフフ、アハハ! これ可愛いじゃん! それ! ど~ん!
それもう1着ど~ん! アハハハ!』
「うわー、御坂さん・・・」
「パジャマ持ってくるくる回っている・・・・」
初春と佐天が若干引いたように呟いた。
「うぇーい!! 貸しなさい!!
いつどこでだれがどうやってこんなもの撮影したのよ!」
「お姉様。黒子のステルス能力を甘く見ては困りますのよ。
これがわたくしがお話しする少し恥ずかしいお話ですの」
「あんたの恥ずかしい話じゃなくて私の恥ずかしい話じゃないの!!
問 答 無 用 !!(ビリビリ)」
「ぬわーぃ! おおおおお姉様のあんな写真やこんな写真が入ったカメラがー!!」
「あのパジャマ、丁度今御坂さんが着てるのと同じだね」
「その、御坂さん! そのパジャマ似合っています!
肉球のデザインが可愛いですね!」
「そ、そう? もっと大人っぽいものがあればそっちのほうが
良かったんだけどね。セブンスミストにはこれぐらいしかなくてさ」
「琴ちゃん♪ 説得力皆無です♪」
「雪姉ちゃ~ん(泣)
あのね、違うのよ佐天さん初春さん! これはね! その! あれよ、あれ!」
美琴は必死に言い繕うとしていた。
そんな美琴を見ながら、美雪は静かに白井の隣へと移動した。
「ありがとう、白井さん♪ 私のせいで変な雰囲気だったの誤魔化してくれて♪」
「お礼を言われるほどの事ではありませんの」
「それともう一つ。
わざわざ美琴の映像(たからもの)を壊してまで、
楽しい雰囲気にしてくれてありがとう♪
本当にありがとうございます 」
「気付かれてましたのね・・・」
「うん♪ 普通に自分の恥ずかしい話をするよりも、効果絶大だったね♪
琴ちゃんの可愛いもの好きは隠しても隠しきれないものだし、初春さんと佐天さんも
薄々は気付いていたことだった♪
バレてもそれほど大きな影響はないよね♪
だから白井さんは映像を見せてくれた♪
結果は大成功♪ 琴ちゃん、本当に良い子と友達になったね♪」
「・・・わたくし、お姉様を敬愛していますの。
最初、お姉様は超能力者(レベル5)を鼻に掛けている気に食わない人だと
思ってましたわ。
私の知っている能力の高い人と言うのはほとんどがそうでしたから。
ですが、お姉様は違いました。強くても優しい。
そんなお姉様だからわたくしは敬愛した。
そしてお姉様を知れば知るほど、美雪お姉様の存在の大きさを感じますの。
強くても優しいお姉様になったのは、間違いなく美雪お姉様のおかげですわ。
だから美雪お姉様。 わたくしはあなたを一番尊敬していますの」
「・・・ありがと♪」
「黒子! あんたのせいで2人が信じちゃったじゃない!!
どうしてくれるのよ!!」
2人の会話に、佐天達の説得ができずに怒ってきた美琴が邪魔をしに入ってきた。
「信じるも何も、わたくしは真実を教えたに過ぎませんの」
「琴ちゃん、言いがかりだよ♪ 白井さんは嘘を言っていないじゃない♪
そうだ♪ 私の知っている琴ちゃんの恥ずかしい話、みんな聞きたい♪?」
「ちょ!? 雪姉ちゃん何言ってるの!?」
「「「聞きたいです(の)!!!」」」
「み、みんな何言ってんのよ!?」
「実はね♪
私達が最初に会った時も、琴ちゃんったらゲコ太のジュースを買おうとしていたの♪
琴ちゃんの第一印象からゲコ太だったの♪」
「やめて! お願いだからやめてーーー!」
こうしてパジャマパーティーは、美琴の恥ずかしい話大会に変わっていくのだった。
つづく