little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
2020年、あけましておめでとうございます(激遅挨拶)
ネズミ年ですね。
ねずみといえばマウス、マウスといえばmっ…おっと誰か来たようだ。
間が空いて話が分からなくなった人のための、3行で分かったりしなくもない前回のあらすじ!
・
・ホットサンド食べたい。
・めぐるちゃんは明るい。
side:ひな
「──そこまで」
1人で使うには広い教室に響いた声を聞いて、手の中にあったシャープペンシルを置く。文字を書いている途中で前屈みになっていた姿勢を真っ直ぐに伸ばしてから、ゆっくりと息を吐き出す。
窓の外から響く
四ツ星学園の音って、こんなにたくさん溢れているんだ…
テスト中は休憩時間でもこの音たちが聞こえなくなるくらいに集中していたし、病院はここよりも音が少なかったから新鮮。
「お疲れ様。これで終わりになります。テストは採点をしたあと、担任の先生を通して返却します」
よし、テストは終了。
答案を回収してくれた試験監督の先生にお礼を言ってから席を立つ。
朝ご飯、しっかりと食べておいて良かった。かなり頭を使ったから、もしも量を少なめにしていたらテストの途中で集中が切れていたと思う。今日はお昼ご飯を食べる時間があるから良いけれど…今度ラムネを買っておこうかな?
「テストはどうだった?白鳥」
教室を出ると、扉のすぐ側にアンナ先生が立っていた。テストが終わった時に近付いて来ていたのはアンナ先生だったみたい。
「アンナ先生!社会のテストで
国語数学理科の3教科はそれぞれ
やっぱり、習っていないと分からない所は難しいな…めぐるが終わるけど終わらないテストと言っていた意味がよく分かった。
「ノー・プロブレム!躓いたなら、乗り越えればいい。ロックにな!」
落ち込んでいた私に、指をパチンとならしながらアンナ先生はそう言ってくれた。
躓いたら乗り越える…そうだよね。
これからは授業にも参加するし、分からなかった所も解るようになるはず。
「はい!」
そうしたらきっと、もっと楽しい。
☆☆☆☆
──「レッスンは2時からだ。来る前にランチを済ませておくように!」
そう言ってアンナ先生はカフェテリアまで案内してくれた。
朝ご飯の時はめぐるに連れられて外に面しているガラス扉から入ったし、中からの行き方はよく知らなかったからありがたかった。食堂と呼ばれることも多いけれど、カフェテリアの方が正式名称だということも教えてもらった。
モバイルをレジ端末に当ててお会計を済ませてから、カウンターでランチを受け取る。カルボナーラセット、とっても美味しそう♪
トレーを持ったまま少し見渡すと丁度空いている席を見つけた。うん、あそこにしようかな。
スープを
今が11時40分。レッスンは14時からだから、どんなに遅くとも13時にはカフェテリアを出ないと。レッスンウェアを取りにお部屋に戻らないといけないから、その分も考えて……
「…?」
頭の中で予定を組み立てながら席の側まで来た時、すぐ近くに誰かの気配を感じた。
「あ…」
向こうの子も何か考えながらこちらに来ていたみたい。同じタイミングで顔を上げて、目が合った。
瞳も、マゼンダからサーモンピンク、クリームイエローと色の変化がはっきりと分かる
それに・・・
「どうぞ」
そんな言葉と同時に、視線が伏せるようにして
考え事の方に寄っていた意識が引き戻された。
「っ、待ってください!」
来た方向に戻ろうと体の向きを変えたその子に、持っていたトレーをテーブルに置きながら慌てて声をかける。
本当なら、目が合った時すぐに声を出すべきだったけれど…
「え?」
エトワールファッションショーの新人ファッションモデルコンテストでグランプリを受賞した新星で、この間行われた
香澄さんには思わず見つめてしまう魅力があって、そのせいで声を出せなかったくらい。体の中のエネルギーに驚いたのもあるけれど…
私に引き止められた香澄さんが振り返る。
「一緒にお昼ご飯、食べませんか?」
香澄さんの表情が、引き止められて驚いたものから困惑したものに変わった。
「えっと…」
どう返事をしたら良いのか分からないような、そんな表情。
…流石に言葉が足りなかったよね。
それに、初対面の人に言われても困るようなことを言ってしまった気がする…!
でも、カフェテリアを見てみても他に空いている席は無いし…2階の方は…、それも空いていなさそう。
とりあえずお話しないと!
「急にごめんなさい。他に席も空いていないようなので…」
左手を胸の中心に軽く当てながら話す。緊張していたり不安になったりする時には、昔からこうして手を胸の少し上辺りに当てていた。自分でも無意識に出てしまう癖だから気を付けた方がいいかも。
「あ、確かに…」
私の言葉を聞いてカフェテリア内を見渡した香澄さんが呟く。
「どうでしょう?香澄さんさえ良ければ、ですが」
カフェテリアの外で食べるという選択肢もあるから、無理にとは言えない。
内心不安に思いながら待っていると、少しのあいだ考えていた香澄さんがふわりと微笑んだ。
「それじゃあ、ご一緒させてもらおうかな」
☆☆☆☆
「ひなはひめ先輩と仲良いの?」
少しばかり唐突に真昼ちゃんから聞かれた。
お昼を食べ始めた頃は香澄さんと呼んでいたけれど、違和感があるから下の名前で呼んで欲しいと言われたの。それなら私も、ということで下の名前で呼ぶようにしてもらった。
白鳥だと、お姉ちゃんと混ざってしまうだろうし。
「うん、良いと思う。…真昼ちゃんは?」
混ざってしまうのは多分、真昼ちゃんも一緒。
S4の夜空先輩と、M4の
夜空先輩はS4ということもあってたくさんステージを見たり番組を見たりしているけれど、朝陽先輩についてはあまり詳しくない。これからはM4の先輩方や男子部のアイドルについてもちゃんとお勉強しよう。
それよりも、夜空先輩との仲は聞かない方がよかったかもしれない…。真昼ちゃんの表情から楽しそうな色が抜けてしまったから。
「・・良くはないかな。前はずっと一緒だったけど、今は違う」
眉根を寄せて、手元を
「そっか…」
真昼ちゃんの色は複雑で
ずっと一緒だったと言っていたし、夜空先輩が四ツ星学園に入学するまでは、きっといつも一緒に過ごしていたのだと思う。置いていかれたような気持ちになっているのかな…でもそうしたら夜空先輩は、真昼ちゃんが四ツ星学園に入ってきてくれて嬉しいと考えていそう。
「ごめん、暗い感じになっちゃって」
2人のことを考えていたら、ハッとして顔を上げた真昼ちゃんにそう言われた。
「ううん、大丈夫」
お姉ちゃんとの仲について聞かれた時、真昼ちゃんの色の中に少しマイナスな感情が含まれていたのをあまり気にせず私が聞いてしまったのも原因の1つだから。
「ありがと。兄さんとはそこそこなんだけどね」
そう言って眉を下げて、困ったような笑顔を浮かべた真昼ちゃん。
「ふふっ」
そういえば…昨日夜空先輩にお姉ちゃんのことをお願いしたあとに私が寝ているお姉ちゃんを見た一瞬だけ、夜空先輩が今の真昼ちゃんと似た表情をしていた。
困ったような、寂しいような、少しの
☆☆☆☆
「「ごちそうさまでした」」
カルボナーラ、クリーミーでとっても美味しかったな。セットでつけた人参のマリネもさっぱりとしていて相性が良かったし、オニオンスープは玉ねぎが飴色になるまでしっかり調理されていて飲みやすかった♪
人参のマリネは材料もなんとなく分かったし、機会があれば作ってみようかな?
「そうだ。ひなってルームメイトいる?」
思い出したように真昼ちゃんに聞かれた。
「うん。樹神めぐるちゃんと一緒だよ」
めぐるがルームメイトでよかった。もし違う人だったら、こうして下の名前で呼ぶことにまだ戸惑っていたと思うし…
「あぁ、だからか」
えっと…?
「どうかしたの?」
私の疑問に視線を左上に向けながら真昼ちゃんが口を開いた。
「めぐるとはクラスが一緒なんだけど…今日は珍しく授業中に何もせず上の空で、汝鳥さんに
授業中…ということは、汝鳥さんに引き
真昼ちゃんの珍しいというのは、上の空が珍しいのか、何もしていなかったことが珍しいのか、どちらなのだろう。
「心配だー、とか、テスト大丈夫かなー、とか言ってて…ひなのことを言ってたなら納得かな」
なるほど、別れる前も私がびっくりするくらい励ましてくれたものね。
「ふふっ、そんなことがあったんだ」
嬉しいのもあるけれど、そうやって汝鳥さんに突かれる所までがあまりにも簡単に想像出来て少し笑ってしまった。
真昼ちゃんもその光景を思い出したのかクスクスと笑っていた。
「そうなの。ひなは歌組に入ったんだよね、このあとレッスン?」
そう言われて時計を見ると、12時45分になっていた。
「うん♪2時からだけれど、色々確認したいことがあるからそろそろ出ないと。真昼ちゃんは?」
食べ終わったトレーを先に片付けてしまうようで、真昼ちゃんは私と同じタイミングで立ち上がった。
「私はここで打ち合わせがあるから」
少しだけ声が硬くなっているから、もしかして夜空先輩との打ち合わせなのかな。真昼ちゃんは夏フェスの美組代表に選ばれていたし、多分合っていると思う。
「それじゃあまた今度だね」
ごちそうさまでしたと言いながらトレーを返却する。
「うん。また」
真昼ちゃんも同じようにトレーの返却を済ませた。
「お昼ご飯、一緒に食べてくれてありがとう。真昼ちゃん」
最後にそう言うと、頷きながら笑顔を浮かべてくれた真昼ちゃん。自然な笑顔はとっても可愛かった。
☆☆☆☆
「あら、白鳥さん」
レッスンウェアを取りにお部屋に戻って寮を出たあと。本館正面にある大扉の前を通った時に名前を呼ばれた。
声がした方に顔を向けると、いらっしゃったのは歌組幹部の
「有莉先輩!お疲れさまです」
クリップボードを手にした有莉先輩の元へ行く。幹部のお仕事かな?エントランスで何かチェックをしていたみたい。
「お疲れさま。これからレッスン?」
にこやかに返事を返してくれた有莉先輩はチラリと私が持っているスクールバッグを見て言った。
「はい。はじめてのレッスンです♪」
昨日もステージ前にレッスンをしたけれど、歌組の生徒としては今日がはじめてのレッスンだからこう言っていいはず。
私の言葉を聞いた有莉先輩は、わぁっと顔を輝かせた。
「それは楽しみね!今日はアンナ先生の指導だけど、私達幹部がレッスンを担当することも多いから、その時はよろしくね」
先生からはもちろんだけれど、先輩から学べることもとても多いはず。今から楽しみだし、それに加えて幹部の先輩方はアイドルのお仕事と幹部生としてのお仕事をしっかり両立させている。尊敬するなぁ…
「はい!よろしくお願いします」
もう1つ有莉先輩に言いたいことがあったのを思い出した。
「それと有莉先輩、昨日はドレスメイクについて教えていただいてありがとうございました」
昨日、寝てしまっていたのをアンナ先生に起こしてもらったあと、ステージで着るスクールドレスをデザインするためにドレスメイクルームへ連れて行ってもらった。
そこには有莉先輩がいて、自己紹介を済ませたあとドレスメイク講座を開いてくれたの。そのあとドレスメイクシステムの操作方法も教えてもらいながら完成したのが私のスクールドレス、ホワイトスカイスターコーデ。
自分でも満足のいく思い描いた通りのスクールドレスが出来た。
「どういたしまして!お役に立てて良かったわ。それにしても、初めてのドレスメイクであんなにレベルの高いスクールドレスをデザインするなんて、驚いちゃった」
クリップボードを胸の前で抱えるように持ち直した有莉先輩が少し身を乗り出すようにしてそう言った。ドレスが出来上がった時もたくさん褒めてくれて、嬉しかったな。
「ありがとうございます。有莉先輩が分かりやすく説明して下さったお陰でもあるんです」
どれだけ頭の中に作りたい物があったとしても、それを作れる知識や技術がなければ物は作れない。
あの時は思っていたよりも時間が無くて…有莉先輩のドレスメイク講座を受けられてなかったら、きっと納得のいくドレスは完成しなかったから。
ふふっと嬉しそうに笑った有莉先輩がアイカツモバイルを見てハッと焦った表情になった。
「引き止めちゃってごめんなさい、レッスンもうすぐじゃない?大丈夫?」
ポケットのアイカツモバイルを取り出して時間を見ると、13:35分。思っていたよりも時間が押していて驚いた。
「本当ですね、そろそろ失礼します」
「何か分からない事があったら、いつでも聞きに来てね」
そう手を振って送り出してくれる有莉先輩に頭を下げる。
「はい、ありがとうございました!」
☆☆☆☆
有莉先輩と別れて歌組のスタジオへ行き、制服からレッスンウェアに着替えたあとにアンナ先生と合流をした。
他の人はもうレッスンルームに集まっているみたい。わいわいと話し声が漏れ聞こえている扉をバーンと開けて、アンナ先生は入っていった。
入らずに外で待っているとすぐにお部屋の中は静かになる。
「ベイビーたち!ニューフェイスを紹介するぜ!」
ニカッとした笑顔でこちらを向いたアンナ先生の顔を見て、レッスンルームに入っていく。
雰囲気が色々な形に揺らめいていた。なんだか懐かしいな。昔、お仕事をしていた頃も時々同じような空気になっていたのを思い出した。
「はじめまして、白鳥ひなです。これからどうぞよろしくお願いします」
レッスン前だし
お辞儀をして元に戻ると、パチパチと拍手をしてくれた。
「昨日の集会に出ていたベイビーたちは分かってると思うが、白鳥は今日が初めてのレッスンだ。色々教えること、ヨロシク!」
「「「「はい」」」」
私の自己紹介に頷いたアンナ先生が言葉を繋いで、みんなが揃った返事をする。
「それじゃあ、まずは各自ペアを組んでストレッチ!」
そうアンナ先生が言うと、みんなは広いお部屋の場所が取れる所に
「白鳥は…」
「先生!あたしとやってもいいですか!」
アンナ先生が視線を私の方に向けた瞬間に声が上がった。満面の笑みで手をあげているめぐるが言ったみたい。
「オーケー、任せたよ」
アンナ先生の言葉にめぐるは嬉しそうに目を輝かせる。
「はい!」
そのまま手を下ろして駆け寄って来てくれた。
「ひな〜!」
お仕事は無事に終わったみたい。13時までお仕事と言っていたから、もしかしたらいないかなと思っていた。
「よろしくね、めぐる」
めぐるに取られた手を握り返しながら言う。
「こっちこそ!えへへ、間に合ってよかったぁ…」
ふにゃりと笑っためぐるの顔を見て、自然と笑顔が浮かんだ。
「お仕事お疲れさま」
「ありがと!ひなの最初のレッスンは絶対一緒に参加したくて、終わって超猛ダッシュしてきた!」
・・嬉しいけれど、心配のような。
「あだっ!い、いひゃいですせんせい!」
側で聞いていたアンナ先生が呆れながら手刀を頭に落としていたから、私からは言わなくても大丈夫かな…?
「めぐる。ストレッチって、具体的には何をするの?」
うー、と言いながら頭を両手で押さえているめぐるに聞くと、最後に自分でポンと頭を押さえてから立ち直った。
「んっとね、まずは柔軟から始めてストレッチかな。体ほぐしながらやらないとケガしちゃうじゃん?」
「なるほど」
レッスン前にダッシュして来ためぐるは特に…
それはともかく、確かに柔軟は大事だよね。康二先生も体を長く動かす時はよくほぐしてから行いましょうと言っていた。
肩寄せ、肩回しから始めて、ゆっくりと体をほぐしながらストレッチをしていく。
開脚しているめぐるの背中を押していると、アンナ先生から声がかかった。
「次、2ペアで1組!簡単なストレッチと発声練習、レッツスタート!」
2ペアで1組ということは、4人組?
「もう時間か。さ、誰と組もっか?」
そうだなぁ、と口を開こうとした時、タタッと軽い足音が聞こえた。
「あ、あのっ!一緒にやりませんかっ?」
掛けられた声にそちらを向く。そこにいたのは先にかけて桃色のグラデーションがかかっている黄色の髪をツインテールにまとめた、ピンクのリボンが特徴的な虹野ゆめさん。緊張しているのか、少し硬い笑顔で私の方を見ていた。
入院中にアイカツモバイルで見ていたけど、本当に虹みたいな子だなぁ。
なんとなく、色が七色にキラキラしている。でもどうしてだろう…一瞬1年生の頃のお姉ちゃんと重なって見えた気がした。
「私はもちろん。めぐるはどう?」
隣で不思議そうに虹野さんを見ているめぐるに聞いてみる。
「うん、ひなが良いならあたしもオッケー」
それを聞くと、虹野さんの顔がぱあっと輝いた。きっと、こっちが本当の笑顔。とっても素敵だと思う。
「…っていうかゆめ、え、なんで敬語?」
普段は敬語ではないみたいだから、めぐるがさっきから不思議そうな表情をしていたのはこれが理由かな?
「だって、なんか緊張しちゃって…ローラ、ローラ!良いって!」
めぐるの疑問に少しむずがゆいような表情で答えたあとに大きく声をかけた虹野さんに応えて、女の子が1人来た。
クールタイプを示す青色が
合っているかな?あとで確認してみよう。
「ゆめ、そんなに騒がなくても聞こえ・・・」
桜庭さんは、私のことを見て固まってしまった。
「ローラ?」
「おーい、だいじょぶー?」
虹野さんが不思議そうに声をかけてめぐるが顔の前でひらひらと手を振ると、ハッと気が付いたようだった。
「よろしくお願いします」
私がそう言うと、ふーんという表情を浮かべた桜庭さん。
少し…ううん。かなり警戒されている気がする。嫌だったのかな?あまり好意的とは言えない色をまとっているし…
「面白いじゃない。よろしく!」
少し心配していると、腰に片手を当てて私を見据えたままそう言った桜庭さん。あまり警戒の色は変わらず。それでも険悪な空気にならなくてよかった…
「まず、自己紹介をした方がいい?」
一応さっきもしたけれど、面と向かってお話をするのは初めてだし…
私が言うと、虹野さんが頷いた。
「そうね。相手の事、ちゃんと知っておきたいし」
桜庭さんもそう言ってくれたから、2人に向けて自己紹介をする。
「改めまして、白鳥ひなです。お花を見たり紅茶を淹れたりすることが好きです。よろしくお願いします」
軽い自己紹介だけれど、これくらいで良いはず。レッスン中だしね。
「あの、ひめ先輩って…」
虹野さんに聞かれた。
「お姉ちゃんなの」
隠すことでもないからすぐに答える。
私がそう言うと、虹野さんが予想が当たったと嬉しそうな顔。桜庭さんはやっぱりと言う顔をした。…苦々しげな色が少しだけ見えてしまったけれど。
「これからよろしく、虹野さん、桜庭さん」
2人とも、何だか驚いてるみたい。
桜庭さんはさっきの表情も吹き飛んで目を見開いている。
もしかして名前、間違えてしまったかな…?
「名前、何で知ってるんですか⁉︎」
まだ若干硬い虹野さんが私に聞いた。…良かった、少なくともお名前は間違っていなかったみたい。
それとめぐるは敬語を使う虹野さんに慣れていなさすぎるのか、小さく肩を震わせながらずっと笑っていた。
「?何でと言われても…。虹野さんのファーストライブも見ていたし、桜庭さんは学年でもトップクラスの実力の持ち主でしょう?四ツ星学園のサイトにもプロフィールが
私が言い終わる前に、虹野さんの目がキラキラと輝いた。
「ファーストライブ見てくれたの⁉︎」
ずいっと顔を近づけてくる虹野さん。
少しびっくりした…でも、硬くなってたのがなくなって敬語でもなくなってくれたから、それはそれで良かったのかも。
「本当は見に来たかったのだけど…。会場には行けなかったから、アイカツモバイルで見たの。シトラスティータイムコーデ、とっても可愛かった♪」
それに、あのオーラ。
あの虹のオーラは今まで見た中で2番目に大きかった。
1番はお姉ちゃんのオーラだけれど、それでもあの時のオーラの強さはかなりのものだったと思う。
そんなことを考えてると、目の前の虹野さんがくねくねとしているのに気が付いた。…どうかしたのかな?
「えへへ〜♡あ、もしかしたら・・・いやぁ、そんな。でも私でよければ!」
何か楽しそうに言っているけれど…どうしよう。
桜庭さんを見ると、またかと言いたげな顔をしていた。隣にいるめぐるも面白そうに眺めながら同じような表情をしている。
「えっと…」
「ローラ、説明よろしくー」
助けを求めてめぐるを見ると、めぐるはそのまま桜庭さんに話題を投げてしまった。
めぐるの言葉に合わせて動いた私の視線を受けて桜庭さんがふぅっと息を吐いた。
「ゆめね、妄想大好きだから始めると止まらないの。特にひめ先輩絡みだと、本当にすぐ妄想しちゃう」
えっと、お姉ちゃん?
ここでお姉ちゃんが出てくるの…?
「どうしてひめ先輩絡みだとすぐに妄想を?」
私がそう聞くと、桜庭さんは説明し慣れた顔で話してくれた。
「ゆめ、ひめ先輩のことが好き過ぎて大変なの。前に密着したあとからさらに拍車がかかっててさ。多分、外見がパッと見ひめ先輩に似てるからつい妄想しちゃったんじゃない?」
なるほど…お姉ちゃんのことが大好きなんだ。
それで私の外見がお姉ちゃんに似ているからつい妄想してしまった、ということらしい。
そこまでは良いのだけど、密着??
ん〜。お姉ちゃんに密着…白鳥ひめに密着…そうだ!番組でやっていた企画!アシスタントは虹野さんだったよね。
放送された番組を見る限りあの日は確か結構な雨だったけれど、お姉ちゃん、大丈夫だったのかな…
と、そこまで考えたところで思考に沈みそうになった意識を元に戻す。
「そうなの…どうしたら戻って来る?」
「んー、どうだろ。今は妄想の中のひめ先輩と喋ってる感じだから、余程のことがない限り戻って来ないよ?」
えっと、妄想の中のお姉ちゃんと喋っているの…?
「手刀落とそっか?」
私が混乱していると、そんなことを言いつつ右手をスッとあげためぐる。それは確かに余程のことに分類されるだろうけれど、虹野さんが痛そう…!
「それは最後に取っとこうよ」
桜庭さん、手刀自体は止めないの…?
どうしよう。このままだと虹野さんがめぐるの手刀をくらうことになってしまう。
でもレッスンもしたいし…そうだ!
「私が真似をすれば、戻って来てくれるかな?」
外見は似ているのだし大丈夫かな、と思いついた。
「ひめ先輩の?」
めぐるの言葉に頷く。
桜庭さんは
「まぁ、確かに似てるし…。お願いしていい?早くゆめを妄想世界から連れ戻さないとレッスン出来なくなっちゃうから」
やっぱりそこは気にするよね。今が休み時間だったらいくらでも妄想に浸らせてあげたかったのだけど…
騙すようなことしてしまってごめんね。
一瞬だけ目を閉じて、昔からしていたように頭の中のスイッチを切り替える。
私がなるのは、お姉ちゃん。
さぁ。いつもの仕草、言葉遣い、思い出して。
「ゆめちゃん、一緒にレッスンしましょう?」
顔を覗きながら言うと、虹野さんは戻って来てくれ
「ひ、ひひひめ先輩⁉︎‼︎どうしてここに⁉︎」
ていなかった。
「わた、私でよければっ!ぜひ!」
手を掴まれて、ぐいっと顔が近づく。
あ、これはまだ戻って来ていないな…伝えた言葉もいけなかったかも。私だってお姉ちゃんにそう言ってもらえたらとっても嬉しいし…。
ただ、でも…!
「さ、桜庭さん。めぐる」
虹野さんが何だかこわい…!
どれだけお姉ちゃんのことが好きなの⁉︎
それは嬉しいけれど…。とても嬉しいけれど…!
「ほーら!ゆめ!目の前よく見て!」
桜庭さんが虹野さんに声を掛けると、虹野さんが私のことをよく見た。
目と目がばっちりと合って3秒。
瞳の色はお姉ちゃんと私で違うし気づいてくれるかな…?
「わぁっ!」
良かった、気づいてくれたみたい。
ばっと手を離した虹野さんのお顔が真っ赤になっていた。
「騙すようなことをしてごめんなさい。戻って来てくれた?」
私がそう言うと、虹野さんはコクコクと頷く。
「さ、一件落着。レッスンやろ!」
めぐるの掛け声で虹野さんも元に戻って、おーっと声を上げた。
「まずは残りの柔軟して、そのあと発声練習ね」
桜庭さんがテキパキと体をほぐしていく。
私も始めよう♪
先ずは首の運動からかな。
右、左、前、後。
首をゆっくりまわしていく。
足のストレッチをしてから、まだしていなかった開脚。
脚を広げてからそのまま前に倒れる。
「わぁ〜、柔らかいね!」
隣でアキレス腱を伸ばしていた虹野さんに驚かれた。
「そうかな?」
私の身体は生まれつき柔らかい方だった。
眠い時に柔軟運動をして開脚していていると、つい前に倒れたまま
昔、それで寝てしまって…眠っている間に体勢を変えていたみたいで、お家に帰って来たお姉ちゃんがひなちゃんが倒れてる、と勘違いしてしまったこともあった。目を覚ました時、ホッとしたお姉ちゃんに苦しいほど思いっきり抱き締められて目を白黒させた思い出がある。
そんなことを思い出しながら一通りの柔軟を終わらせて、今度は虹野さんの柔軟を手伝う。
「う〜〜!」
さっき私もやった、開脚をしながら前に倒れる動き。
背中を押していたら、虹野さんが
「大丈夫?」
「っはあー!うん、中々体が柔らかくならなくて。どうやったらあんなに柔らかくなるの?」
体を元に戻しながら虹野さんが言う。
ん〜、私は元々だからなぁ…。
でも、柔らかくする方法ならいくらでもある。
「毎日柔軟を続けていれば柔らかくなるよ♪お風呂上がりにするのがオススメだけれど、まずは息を吐きながら前に倒れてみて?」
「?分かった」
ふーっと息を吐きながら前に倒れ始めたのを確認して、背中のある点を押さえながら虹野さんの背中を押す。
さっきよりもよく伸びた体に驚いたみたい。
「わわっ!え?今すごい伸びた!」
「ふふっ。息を吐きながら倒れると、より前にいけるの」
すごいすごいと虹野さんがはしゃいでる。
「ありがとう!」
「どういたしまして。虹野さん」
そう返すと、虹野さんの動きがぴたっと止まった。
どうしたのかな?
「ゆめでいいよ!」
「え?」
思わず面食らってしまった。
虹野さんは笑顔のまま続けた。
「虹野さんって、何だかむず痒くて…えへへ」
「あぁ、それ私も。ローラでいいから」
下の名前か…流石めぐる。昨日言われた通りになった。
チラリと視線を動かすと、グッと親指を上げてニカッと笑うめぐるが見えた。
「それなら私も下の名前で呼んで欲しいな」
「うん、よろしくね!ひなちゃん!」
「よろしく、ひな」
順応性が高いなぁ…私も2人のことを呼ばなくちゃ。
「こちらこそよろしく。えっと、…ゆめちゃん、ローラちゃん」
真昼ちゃんの時もだったけれど、あまり名前で呼ぶ事に慣れてないから何だか恥ずかしい…。
「「・・・。」」
?
2人とも、私を見たまま固まってしまった。
私、何か悪い事をしてしまったのかな…?
もしかして…。
「呼び方…、ダメだった…?」
やっぱりいきなりはいけなかったのかな。まだ今は苗字のまま呼んで、あとから名前で呼び始めた方が良かった…?
「全然っ!大丈夫!!」
にじ…ゆめちゃんが私の手を取って言ってくれた。
「ほんとう…?」
不安になってもう1度聞いてしまう。
「うん!」
良かった…
私のアイカツ。
最初は少しだけ不安もあったけれど、みんなのおかげで楽しくやっていけそうです♪
………(土下座待機)
…虹野ゆめさんお誕生日おめでとうございます(震え声)
…そしてお姉ちゃん…本作のメインキャラと言っても差し支えない白鳥ひめさんのお誕生日当日に投稿出来なかったこと、どうかお許し下さい(小声)
新年から順に説明いたしますと、
1月・オリンピックイヤー開幕おぉ忙しくなるな。
2月・コロナウイルス…これ大変な事になりそうだ更に忙しくなるな。
2月27日・ぁああ休みが無いいぃ…はっ今日お姉ちゃんの誕生日投稿無理いいぁああ
3月3日・意地でも!意地でも今日!投稿するんだッ!!
ということでこんな時間帯での投稿となりました。
コロナウイルスの影響で小中高が一斉に休校になり、デマの影響でトイレットペーパーの売り切れが相次ぐなど世の中が混乱していますが、皆さまいかがお過ごしですか?
ムーンナイトは日頃の貯蓄癖が幸いして困る物はありませんが、マスクや消毒液が手に入らないとよく聞きます。
【うがい・手洗い】だけでもかなり効果があるそうなので、貯めてあるものが無くなった際にはよりしっかりと取り組もうと思います。
さて、17
物語が展開していくこれからが楽しみです。
次の投稿ですが、ムーンナイトが忙殺されない限り3月18日を予定しております。
なぜかというとですね、この物語の主人公であるひなちゃんの誕生日だからです。いつか白鳥ひな生誕祭とかやってみたいです…
それでは、またぁ