little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
ムーンナイトの
特別編!ゆりちゃんの、3行で分かる前回のあらすじ講座!
・香澄さんが登場
・虹野さんが登場
・桜庭さんが登場
そして私、歌組幹部の芦田有莉も登場したわ。
これからよろしくね!
side:ローラ
小春とも合流して、カフェテリアに続く廊下を3人で歩く。
晩ご飯、なににしようかな、とか・・・
………集中出来ない。
出来るわけないじゃない。
頭の中に、嫌でも昨日からのことが思い浮かんでくる。
────「ねぇねぇ、あのライブの子、歌組に入って来るんでしょ?どんな子なんだろ」
「ステージで着てたのってスクールドレス?!ブランドドレスかと思ってた…!」
「白鳥って
「歌もダンスも超実力派って感じだったし、やっぱそうだよね!」
「なんにせよ、すごかった〜」
あの集会が終わったあとのホールは、いつもより数段騒がしかった。
…そんなこと話してないでみんな早く帰ればいいのに。
「ねえローラ!!楽しみだね!」
隣で呑気にはしゃいでいるゆめに思わずイラッとした気持ちがこみ上げる。
やめてよ。ゆめ、私の気持ち考えて言ってくれる?…そんな言葉は、結局八つ当たりでしかない。反射的に出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。
集会後にゆめと小春の部屋で喋ってた時も、ご褒美のランチ1ヶ月無料券は任せといて!なんて
確かにステージは、ほんとにすごかった。響き渡った歌声。ドレスの輝きに飲まれずに、それどころか動きでドレスをもっと輝かせてた。ダンスも上手だったし。
夜空先輩が言ってたドレスの使命。あのドレスは、ひなと一緒に輝く使命を背負ってるんだってすぐに分かった。
・・・だからこそ、悔しかった。
一生懸命アイカツして、歌組1年生の中で1番になって、代表に選ばれて、あんなに嬉しかったのに。あんなに誇らしかったのに。
…こえられた。私のステージよりも、あのステージの方が絶対に良かった。
ダンスも、ドレスも…歌も。
スクールドレスだなんて思えない輝き。
悔しいってことさえ思わずに、ただ圧倒されてた自分に腹が立った。
だから初めは、ひなに会うのがちょっと怖くて、結構嫌だった。
☆☆☆★
「間に合っったあぁ!!」
レッスンが始まる少し前。
突然の大声にそっちを見たら、案の定めぐるがいた。
「あっ、めぐるちゃん!お疲れ〜」
「ありがと!ゆめもおつかれー」
隣にいたゆめが声をかけると、めぐるは何事もなかったかのようにひらひらと手を振りながらこっちに来た。
間に合った、って…仕事が終わり次第レッスンに来たってことだけど、めぐるが?
それくらいまで仕事があったらいつも15分だけ遅刻してその分ゆっくりきっちりお昼食べてくるあのめぐるが、急いだ?
それだけでも私の中では大事件だった。
「珍しいじゃない、めぐるが仕事終わりに間に合うなんて。そんなにレッスン出たかったの?」
めぐるの事だからきっと気まぐれかと思ってたけど。
「もち!今日のレッスンだけは絶対遅刻しないで出たかったからね!」
…気まぐれじゃなかった。
「へぇ」
比較的テンション高めなマイペース
「今日のレッスン、何かあるの?」
心の中で、何か嫌な予感がしてた。
「始まったらわかるよ。マジで楽しみ!」
★★★★
「よし、声かけてくるっ」
あっ、待ってゆめ。
ペアになってストレッチをしている間もチラチラとひな達の方を見ていたゆめは4人グループになれってアンナ先生の指示を聞いてすぐ、静止の声も出させないスピードでタタタッと駆けて行った。
めぐるが始まったらわかると言った意味、本当に始まったらすぐわかった。それは私にとって楽しみどころか暗い気持ちが溢れ出て仕方なくなるようなことだったけど。
「────ローラ、ローラ!良いって!」
そして嬉しそうな声色のゆめに呼ばれて行った先に、ひなはいた。
「ゆめ、そんなに騒がなくても聞こえ・・・」
私、2人と組みたいわけじゃないんだけど。正直言えば
その時の私は、ゆめに呼ばれた時そんな苦い考えを噛み砕きながらそばに行っていた。
そのせいなのか、何気なく視線を動かした瞬間、後悔した。
あの赤い制服を着たひなの姿が思い浮かんだから。なんでよ。S4になるのは私でしょ。自分でそう決めてるじゃない。
「ローラ?」
「おーい、だいじょぶー?」
思わず固まってたけど、めぐるが目の前で手を振ってくれたおかげで何とか再起動出来た。
★★★★
「まず、自己紹介をした方がいい?」
4人になってから改めてひなが口を開く。外見を裏切らないすごく綺麗で可愛らしい、軽やかな声。
「そうね。相手の事、ちゃんと知っておきたいし」
その時、私の心の中は臨戦態勢だった。
「改めまして、白鳥ひなです。お花を見たり紅茶を淹れたりすることが好きです。よろしくお願いします」
「あの、ひめ先輩って…」
ゆめが私の聞きたくて聞きたくない事を聞く。
「お姉ちゃんなの」
やっぱり。
ひなはひめ先輩の妹だった。それは元々知ってはいたけど。歌の才能にダンスの才能、ひめ先輩の妹なんだからそれくらい持っていて当然なんだろうな。
表情が苦々しく変わりそうだったけど、押し殺した。
どこか嬉しそうな表情を浮かべてるひな。
その時、改めて間近でひなを見た。ひめ先輩に似てると思ってたけど、結構違った。
まるで神さまが考えたみたいに凄く整った顔立ち。…もう顔が芸術品レベルなんだけど。
滑らかで染みひとつ見えない白い肌に、ポニーテールにまとめられた毛先がカールしているミルキーブロンドのふんわりと広がる髪。ひなが首を傾けたり動いたりするとそれに合わせてふわりふわりと毛先も動いていて、触れ心地が良さそうだった。
柔らかい笑顔。気を付けてないと見入っちゃいそうな、長いまつ毛に縁取られた柔らかい瞳。金色と青緑色と銀色の瞳なんて見たことない。なんというか、色の感じは真昼の目の色の変化にパターン違いで似てる気もするけど、でもどっかで見たことあるような…。
「これからよろしく、虹野さん、桜庭さん」
名前を呼ばれた時は、考えてたことが全部吹っ飛ぶぐらい驚いた。
「名前、何で知ってるんですか⁉︎」
ゆめがまた、私の聞きたいことを聞いた。あとめぐるは笑いすぎ。気持ちは分かるけど。
「?何でと言われても…。虹野さんのファーストライブも見ていたし、桜庭さんは学年でもトップクラスの実力の持ち主でしょう?四ツ星学園のサイトにもプロフィールが
学年でも、トップクラスの実力の持ち主。ひなの言葉がズシンと響く。
「ファーストライブ見てくれたの⁉︎」
ゆめにいたっては軽く言葉を遮って目をキラキラさせながら嬉しそうにしてた。
「本当は見に来たかったのだけど…。会場には行けなかったから、アイカツモバイルで見たの。シトラスティータイムコーデ、とっても可愛かった♪」
ほんとに、見ててくれたんだ。
そのあとも私はひなを見続けた。
そこにいたひなは、雲の上のよく分からない人なんかじゃなかった。
戸惑った表情もするし、びっくりしたりもする。私達と変わらない女の子だった。
反応とかほんとに可愛くて、いつの間にか暖かい気持ちでこれから仲良くやって行こうと思えていた。
・・・だけど。
ゆめを妄想の世界から引っ張り出すためにしたひめ先輩の演技。元々姉妹だからって言うのもあっただろうけど、本当にひめ先輩がいるのかと思うほどの演技力をひなは持ってた。それを思い出す度に、仲良くしたいって気持ちにまで雲がかかった。
…結局、そのあとの発声や、ダンスの時間まで。
全部、こえられた。
★★★☆
「やっぱり才能…なのかな」
あんなに軽々と、まるで天使のような笑顔でこえられたら…。
どれだけ努力してても、普通は勝てるライブでゾーンに入ったゆめに負けるかもしれない。それでも、勝つ気で頑張って行こうって思えた。って言うか実力は絶対私の方が上だし。
…だけど、死ぬ程努力してもひなには勝てないんじゃないかって昨日のライブや今日のレッスンを見て思った。私らしくもないけど、でも…
「?ローラ?どうかしたの?」
気付いたら、一緒にいたゆめと小春がこっちを心配そうに見てた。
「っ、別に。ちょっと忘れ物したっぽいから取ってくる。先行ってて!」
☆☆☆☆
──逃げてきちゃった。
忘れ物なんて、何もないのに。でもあの場にはいたくなくて、本館からスタジオまで戻ってきた。
…?電気付いてる?
もうレッスン終わって時間経ってるのに、誰だろ。
流れてるのはアイカツ☆ステップ?
扉が少しだけ開いてたから、そこから中を
「!」
そこには、ひなとめぐるがいた。
レッスンの時に浮かべていた笑顔からは想像もつかないような真剣な顔をしているひなと、その隣で口を動かして説明しながら、鏡の方を向いてスローテンポで踊るめぐる。
1歩下がりながらそれに見ていたひなが表情を和らげて確認するように踊って、それが出来たら2人で並んでもう1度同じ部分を踊る。
何度も何度も色々な所を繰り返し練習して、その度にひなは輝きを増していた。
"カタッ"
やばっ!!
音立った!
すごい小さな音だったしすぐ隠れようとしたけど、その前に振り返ったひなと目があう。耳良すぎじゃない⁈
side:ひな
初めてのレッスン、楽しかったな。みんなと一緒に出来ることがこんなに楽しいだなんて知らなかった。
まだまだ、もっとレッスンがしたい…!
ピアノの
「アンナ先生。この後ここのレッスンルームは使用出来ますか?」
私がそう言うとアンナ先生は不思議そうな表情を浮かべた。
「ん?出来るけど…」
何がしたいのか、と続きを
「自主レッスンをしたいんです」
より良い発声の仕方、音を伸ばす時に大切な体の中の空気の流れと、息の吸い方。
今日だけでも、こんなにたくさん知れた。1人だと出来なかった、見て聞いて学ぶこと。
腕を組んで視線を少し左に向けながら何か考えていたアンナ先生がため息を吐いた。
「オーケー。今日はもう使う予定も無いし、使用を許可する」
よかった…
「ありがとうございます!」
まずは色々な事を1回に1つずつ意識しながら発声をして、それから曲の振り付けも確認したいかな。
「But!無茶はしないように。分かったか?」
頭の中で何をしたいか考えていたら、手の甲を下にするような形でビシッと指を差されながら言われた。
「はい」
言外に昨日倒れたのだからあまりやりすぎないこと、と言われているようで、少し耳が痛い…
「出る時はライトをオフ。何かあったら職員室にカモン、出来なかったら電話。オーケー?」
先生の顔には心配の色も浮かんでいた。やっぱりひとまずの目標として、しっかりと体力をつけたい。ステージが終わったあとも立っていられるくらいにしないと。
「オーケーです。ありがとうございます」
昔、映画の劇中歌を壇上で歌った時には倒れたりもしなかったのに…。アイドルとしてのステージでは歌に加えてダンスもあるし、比べてはいけないのかもしれないけれど。
それとも
「ひな〜」
うん?
呼ばれた方に視線を向けると、扉の側にめぐるが立っていた。
「めぐる?どうかしたの?」
レッスンが終わったから、もう着替えに出ていると思っていたのだけど…?
「あれ、着替えないの?」
待っていてくれたみたい。めぐるは私の問いに問いを返すような形でキョトンとした表情を浮かべていた。
「時間もあるから自主レッスンをしようかと思って」
まだまだ体力は残っているし。
「へぇー…」
元々丸い目を更に丸くさせためぐるは何かを考えるように目を閉じ腕を組んだ。
「あのさ、あたしも一緒にやっていい?」
ふむふむと頷いてから目を開けてそう言っためぐる。一緒に、というとレッスンを?
「もちろん。時間は大丈夫?」
このあと何か予定が入っていたらその時間に1度区切りをつけないと。
「空き時間だし、サツキもまだレッスンっぽいからねー」
そう言いながら、んーっと手を上に伸ばしためぐるはニカッと笑顔を浮かべた。
「それに、2人でやった方が楽しいっしょ!」
それは、確かに。
見ているだけで自然と笑顔になれるような、そんなめぐるの笑顔。素敵だな…それに、すごく嬉しい。
「うん!ありがとう!」
☆☆☆☆
レッスンルームの
吸って、吐いて、息を体の中で回すイメージを持ちながら整える。足を少し開いて重心は真っ直ぐ…体を上に伸ばすように意識しながらしっかりと床を踏んで、指の先まで神経を行き渡らせる。
よし。
2拍かけて均等に息を吸って。
「あ────────────────」
8拍の間、音の高さと大きさと太さを変えることなく綺麗に伸ばす。このレッスンルームに大きく響かせるように…
出来た!
「すぅっ、はぁ…」
ゆっくり呼吸をして息を整える。あの条件で8拍だと、かなり息がギリギリだった。それでも最後まで震えずに音を伸ばすことが出来たから、体と息の使い方は少し自分のものに出来たはず。
「すっごい!!ひなすごい!!やったじゃん!」
音を伸ばす間、ぐっと静かに見守りつつがんばれと気を飛ばしてくれていためぐるに抱きつかれた。
発声練習をしたいと私が言ったら、ずっと付き合ってくれためぐる。私が伸ばす音を聞いてここがこうだった、ここはこうだったと思ったことを全部言ってくれたお陰でどんどん上達しているのが自分でも分かった。
少しの間すごいすごいと言いながら自分のことのように喜んでくれていためぐるが体を離す。
「めっっちゃキレイな音だった!!」
元からキラキラとしている瞳をもっと輝かせて、グーの形に握った手を体の前で細かく上下に振りながらそう言ってくれた。
「ありがとう、めぐる!」
めぐるがそう言ってくれて嬉しい、出来るようになって嬉しい。とっても楽しい。
私、ここ最近の中で1番の笑顔を浮かべていると思う。
その後めぐるが突然顔を
「平気!だいじょぶ!(うっわっ、何この笑顔天使じゃん…不意打ちはズルいって…)」
嘘ではなさそうだったし、大丈夫かな…?
☆☆☆☆
少し休憩を挟んだあと、めぐるの発案でアイカツ☆ステップの振り付けを教えてもらうことになった。他の子たちはお披露目ステージの課題曲だったからもう全員が覚えているし、私も早く練習しないと。
「それじゃ、行っくよー」
めぐるが最初のポーズで止まったのを確認してから、スピーカーに接続してあるプレイヤーに向けてリモコンのボタンを押す。
イントロが流れ出した瞬間、閉じていた瞳をパッと開いてめぐるが踊り出した。
「くるくる、はーんたいっ、まえぎゅっ、くーびっ!」
リズムに合わせて振り付けを口に出しながら踊っていくめぐる。踊りながら口に出すと覚えやすいんだ、と言っていた。
「いちっにっさんっでくーるりんぱ!みーぎ、ひだり、おっきーく!いち、にー、さん、しー、ろっっかいでパッ!」
確かに、こうやって動きを見ながら聴いているとすぐに覚えられそう。めぐるがとっても楽しそうに踊っているのもあると思うけれど。
次はもう1度繰り返しなんだ…最後の少し違う部分は覚えておかないと…。
「キラ、キラ、キラ、ぎゅっ!いちばんぼーしっ、うんうん、みーぎ、ひだりっ、くーるーっぱ!」
すごい。何も知らずにそれだけで聞くと何を言っているのかさっぱり分からないのに、ダンスを見ながら聞くとするりと頭に入って来る…
☆☆☆☆
「くるくるよーんかい、はーんたいで、ぎゅっとん、ぱっ!!」
最後のポーズは右足を後ろ、左足を前…と。うん、かなり覚えられた♪
「って、ダンスはこんな感じ!どうだった?だいじょぶそう?」
ポーズを解いて勢いよく私の方を見ためぐるが心配そうに首を傾げた。
「うん。めぐるの言葉が分かりやすくて、大まかな動きは覚えられたよ」
あとは自分で踊って細かなところまで覚えていこう。めぐるは心配そうな顔から一転して、パッと嬉しそうに顔を輝かせていた。
「よかった!前にサツキともダンスの練習したんだけどさ、くるくるとかぴょんとか…えっと、なんていうんだっけアレ…」
くるくるとか、ぴょん…?
「
「そうそれ!ぎおんが多すぎて難しいって言われたんだぁ…うー」
その時のことを思い出したのかガックリと
「人それぞれに合った覚え方があるものね。私は擬音が動きとぴったりだったから覚えられそう♪」
私の言葉を聞いためぐるは嬉しそうにふにゃりとした笑顔を浮かべた。
「えへへ。ありがと、ひな」
それに…
「それにめぐるのダンス、すごく上手だったから」
1つ1つの動作というか、振り付けを完全に自分の物にした上で分かりやすく丁寧に踊ってくれた。そう簡単に出来ることではないと思う。
「好きだからねー。…あっそうだ!」
えっと、急になにか嫌な予感というか変な予感が…
「ひな、次ひながやってみて!」
いきなり??
☆☆☆☆
1度めぐるの擬音を思い出して口にしながら通したあと。今度は振りの細かな所を教えてもらっていた。
めぐるが踊る所をじっと見つめる。
「セルフプロデュース!の、ここのぐるぐるは、くる、くる、ぐる、くるっ、とんって感じ」
なるほど、3回目を少しだけ大きく回せば良いみたい。確かに動きに緩急が付くよね。
1.2.3.4.5っと♪
「そうそう、一緒にやってみよ!せーのっ」
説明の時には
めぐるが踊る時は体の動きを覚えられるようにしっかりと見て、私の番になった時は覚えた動きを体に染み込ませる。
よし、かなり細かい所まで出来るようになった。頭だけではなくて体でも振り付けを覚えたし、次は…
"カタッ"
「え?」
人がいないと思っていた扉の方から聞こえた音に思わず声を上げて振り返る。
少し開いていた扉から見えたのは、焦った顔をしているローラちゃんだった。
side:ローラ
「ろ、ローラちゃん?」
ちょっと驚かせちゃったらしい。…それと同時に、ひなの声に振り返っためぐるが私を見つけて全身でビクッてなったせいで吹きそうになった。いや、ビビりすぎじゃない?
とりあえずもう隠れられるような状況じゃないか。
「あ、うん。なんか、覗いちゃっててごめん」
私が諦めて部屋に入りながらそう言うと、ひなは首を振った。
「私こそ、気付かなくてごめんなさい。1つのことに集中すると周りが見えなくなってしまう癖があって…」
直したいのだけど…、と苦笑いしながらひなは床に置いてあるペットボトルを手に取った。
「え、ちょっと待ってひな、あたし全然気付いてなかったんだけど。じゅーぶん、今のままでいいから、直さなくていいから!」
ギョッとしてひなの肩に手を置きながら必死になるめぐる。その気持ちは分かる。
「でも…。わかった、今のままでいるね」
少し眉を下げていたけどめぐるの必死すぎる顔を見てなのかひなは頷いた。
レッスンが終わった時には確かほんの少ししか減ってなかったペットボトルの水。もうほとんど無くなっていて、ひなとめぐるがどれだけレッスンをしていたのか簡単に想像出来た。
「レッスンが終わってから、ずっと練習してたの?」
それでも、口から疑問がホロリと出た。
「もちろん。他には発声をしたりもしていたけれど…」
「そっちは主にひながね。あたしはダンス以外あんまりしてないよ」
さも当たり前のように…。
こんな事、当たり前じゃないって。
歌組に入れたんだよ?
憧れのレッスンに参加したんだよ?
普通、それくらいで今日は頑張ったと思って休むでしょ。
ちょっと見ただけで覚えちゃう才能も、それを動きに出せる才能も持ってるんだから、こんなにする必要ないじゃない。
どうして、なんでよ…
「あのね、ローラちゃん」
いきなり声をかけられて、ばっと顔を上げる。
ひなは鏡に映る自分を見てた。それに釣られて私も目をそっちに向ける。
鏡に映ってる私は、難しい顔をしてて。…いつのまにこんな怖い顔になってたんだろ。ていうか、私この顔でひな達と話してたの?
スイッと視線を動かして鏡の中のひなを見る。鏡越しにひなも私を見てて、目があった。
「私、みんなよりアイカツを始めるのが3ヶ月も遅かったでしょう?だから早く追いつきたくて、早く並びたくてレッスンをしていたの」
そんなの…
「ひなはもう十分みんなのレベルに並んでると思うけど」
ていうかもう追い越されてる人もいるし。
感情のまま思わずそう言い放つと、ひなはそんなこと気にもかけずに微笑んだ。
「それなら、早く追いつきたくて、早くひめ先輩に並びたくてレッスンをしていたと言ったら?」
「!!」
「そう。まだまだ追いついていない。みんなよりスタートダッシュが遅かったぶん、私は憧れの…S4のひめ先輩から遠いの。だからレッスンをするのかな」
ふふっと笑ったひなを見て。
私もいつのまにか笑顔になってた。
…なんだ。
私達と同じじゃない。
S4に憧れて、ひめ先輩に憧れて。
ひめ先輩の妹だから当たり前って、特別な目で見てた。
やっぱり才能なんだって決めつけてた。何も見ようとしてなかった。
ひなにイライラしてたのは、私がただ悔しがって、羨ましくて、
もう、そんなことやめよう。
「おもしろいじゃない。でも、先にひめ先輩に追いつくのは私!次のS4にも、私がなるから!」
ビシッとひなを指し、言い切った。
そんな私の宣言に少し戸惑った表情を見せたひな。
ここはS4宣言する所じゃない?
「えぇっと…」
ちょっと締まらない空気になって、視線を泳がせる。
静かにしてためぐるがひなの腕をつんつんと突いた。
「ひなひな、ここはひなの宣言をぶつける所だよ。ローラの恒例行事」
なっ、恒例行事っ?!
確かに結構やってる気がするけど、言葉にされると恥ずかしいじゃない!!
「…私も」
言うだけ言ってちょっと離れるめぐるに心の中で叫んでたら、言葉が聞こえた。外していた視線をひなに戻す。
「絶対に負けない。誰よりも、ローラよりも早く、ひめ先輩に並んでみせる」
ひなから感じた。
静かな、でもとてもとても強い意志。
ぱちぱちと拍手するめぐるにひながちょっと恥ずかしそうな笑いを浮かべると、一気に
「私の宣言は、こんな感じかな」
あったかいな。心があったかい。
よく分かんないけど、今はこれで良いと思えた。
「うん、いい宣言だった」
はぁ、なんか安心したらお腹空いてきたかも。
そう言えばひな達はもう晩ご飯食べて…ずっとレッスンしてたんだから食べてないか。
「ねぇ、一緒にご飯食べに行かない?」
小春にもひなを紹介────
──ぐうぅうぅうぅ
レッスンルームに気の抜けた音が響く。
ちょっとっ、このタイミングで鳴らなくてもいいじゃない!!
私のお腹────っ!!!!
万が一の場合も考え、今回のpageであらぬ誤解のないよう申し上げておきますと、ムーンナイトはローラちゃんの事を嫌ってなどおりません。ひたむきに努力出来る素晴らしい子だと思っています。
大好きです(ニコォ)
ふっふっふ。執筆時間を睡眠時間から削り出したムーンナイトに、死角はないっ!!・・・睡魔?知りませんね、死角など無いに等しいのでいないと思います。どこからでもかかって来るが良いですよ(慢心)
ちなみに言うと、のほほんとした、口がアルファベットのキューの形をした睡魔なんですが…ふむ、いないのでムーンナイトの勝ちですねコレは。
…(*´Q`*)
ということで、無事に投稿することが出来ました。
本日3月18日はこの物語の主人公・白鳥ひなちゃんのお誕生日となっております。
ハーメルンでアイカツシリーズの小説が少ない事に気付いたムーンナイトが悶々としていた時に、突然舞い降りてきた子がひなちゃんです。
これからもひなちゃんとムーンナイトの文才の成長を祈り見守ってくださいますよう、お願い申し上げます。
そしてお誕生日ということで、ひなちゃんのイメージ画を頑張って作成しました。
本当はここに載せるつもりだったのですが文章が長くなりそうでしたので、今日中の投稿を予定(重要)している活動報告の方に貼り付けようと思います。
2点にまとめて要約すると、
・誰か!!読者様の中に絵師様はいらっしゃいませんか!?(急募)
・物語へのリンクの貼り方分からないです助けて下さい(´・ω・`)
以上です。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=234475&uid=262178
追記・リンク、貼れました…!!(圧倒的達成感)
クリックをすれば活動報告へ飛べます!恐らく!
とりあえず飛んでみていただければ嬉しいです。…そして何か不備がありましたら教えて下さい(土下座)
それでは、またぁ