little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・お姉ちゃんを訪ねて
※今回、体調不良の描写があります。
苦手だという方には、薄目で読む事を。
無理ですという方には、ブラウザバックボタンを押す事を推奨いたします。
side:ひな
ツバサ先輩がお姉ちゃんのお部屋の扉をノックしてから少し。ふたりで耳を澄ませても、中からの反応は無かった。
「ひめ?入るぞ」
眉をひそめたツバサ先輩が扉をかちゃりと開ける。
「お姉ちゃん?」
私がそう呼びかけるのと同時に、ツバサ先輩は2歩お部屋の中へと進む。扉から覗いても見える範囲にお姉ちゃんの姿はなかった。はじめて見たお姉ちゃんのお部屋はとても可愛らしかったけれど、心配の気持ちが勝る。
集中してみてもこの広いお部屋の中に人の気配は無し。
「ひめ?一体どこに…?」
お部屋の中を見渡すツバサ先輩を横目に、お姉ちゃんの行動を1つ1つ予想していく。
最初は私との電話から、それから・・・そうだ。
深く考え始めて間もなく、頭の中に答えが浮かんできた。
「ツバサ先輩。紅茶をいれられる所は他にありますか?」
言葉を聞いたツバサ先輩も何か思い至ったようで、こちらに来たあとに早足でどこかへ歩き出した。
「こっちだ」
☆☆☆☆
着いたのはリビングのように広いお部屋。その奥にはキッチンもあるようで、カウンターには作りかけの紅茶が置いてあった。
紅茶の茶葉が入れられたガラスのティーポット。あんなに
どうしてあのまま放置しているのかな…?
まるでお茶をいれる途中で作業を止めてしまったみたいな…。それにこの音…。
まさか…!
ツバサ先輩の横を抜けるようにしてキッチンの方へと回る。
…そこには、滝のように汗を流して力無く戸棚に体を預けている大好きな
「お姉ちゃん!!!!」
大きな声を出してしまったけれど今はそこまで考える余裕がなかった。ぐったりとしているお姉ちゃんへ駆け寄って腕に手を置くと、少し反応してくれた。
「ひめ⁉︎」
ツバサ先輩が側に来てくれる気配を感じながら、お姉ちゃんを支えるようにして抱き起こす。
「しっかりして…!」
声をかけると、お姉ちゃんはうっすらと
「・・ひな、ちゃん…?」
症状は…酷い頭痛、めまい、それに
「うん、そうだよ」
こちらに伸ばすかのようにぴくりと動いたお姉ちゃんの手をそっと握りながら答える。
「よかっ、た」
苦しそうなのにホッとしたような表情をして視線を少し
「あ、ツバ…サおかえ、り」
「ひめ!喋らなくていい‼︎」
体がとても冷たくて…着ている部屋着が汗で濡れて、余計にお姉ちゃんの体を冷たくしていた。あまりにも冷たくて、弱々しくて、思わず私はお姉ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「ひな、ちゃん…?」
怖かった。こうして抱きしめておかないと、お姉ちゃんがどこかへ消えてしまいそうで怖かった。
時々こういうことがあった。お姉ちゃんの側にいると、こんな恐ろしい感情に支配された。2年前、お姉ちゃんが四ツ星学園に入ってから感じるようになって…その時はもっともっと怖かったけれど、最近は減っていたのに。
怖い、怖いよ。お姉ちゃん…!
「・・・・・」
こんなに辛そうなお姉ちゃんを久し振りに見て、心が乱される。
お願い、治って…。
お姉ちゃんの苦しみを取り除いて…。
お願い…、お願い…!
どれだけ
「──えず、こっちのソファに。床の上だと冷えてしまう」
…あぁ、そうだった。
1点の事を思い過ぎて働かなくなっていた頭に喝を入れて体を動かす。今は私がしっかりしないと…!
「お姉ちゃん、体を動かすね」
私が耳元でそう言うと、お姉ちゃんは苦しそうな表情をしながらも頷いてくれた。さっきから喋ることも辛そうで…。出来ることなら本当に代わりたかった。
頭を首の所に預けてもらいながら背中と足の下に手を入れてお姫様抱っこの要領で抱き上げる。
「大丈夫か?」
ツバサ先輩が声をかけてくれた。
いつの間にか、先輩はソファのクッションを横になれるように整えてくれていたみたい。
「全然平気です。…とっても軽いですから」
お姉ちゃん、軽すぎるよ。
いつもは優しく頼もしくみんなの前にいるはずのお姉ちゃんだけれど、今はすごく弱々しかった。
ソファにお姉ちゃんを寝かせたあと、私はツバサ先輩に聞く。
「ツバサ先輩。少しキッチンをお借りしてもよろしいですか?」
考えるような雰囲気を表情は変えないまま一瞬
「あぁ、構わない」
お姉ちゃんの手に私の手を重ねて早く治りますようにと願ったあと、荷物から小箱を取り出してキッチンへ向かう。
体調が悪い時には紅茶を飲む。小さな頃お母さんにいれ方を教えてもらった。それ以降は自分の具合が少し悪い時に練習としていれて。そのうちにどれだけ美味しい紅茶をいれられるかを知りたくなって、たくさんお勉強をして…。
美味しい紅茶をいれられれば、お姉ちゃんがそれだけ元気になってくれる。そのことがすごく嬉しくて、本を色々読んだり、お料理番組のお仕事で一緒になった方達にも聞いたり…。お姉ちゃんの具合が悪い時は、幼いながらに背伸びをして一生懸命作ったりもしていた。
どうしてか送る荷物に入れずに手で持ってきた紅茶の茶葉。なんとなく持ってきていてよかった。
四ツ星学園での私物の持ち込みはどこまで許可されているのだっけ…?かなり広い範囲まで許可されていた気もするけれど、このセットだけはお姉ちゃん達に使ってもらおうかな。
温かい紅茶を淹れてもいいけれど、もしかしたらすぐには飲めないかもしれないし…うん、アイスティーにしよう。
そんなことを考えながら、グラスが入っているのを見つけた下の戸棚を開けるためにしゃがむ。
普段とは違う胸の鼓動を感じた瞬間、痛みが走った。
「つっ…!」
ツキンと走ったその痛みに、思わず声を上げそうになる。
とっさに
「どうかしたのか?」
ツバサ先輩の声が聞こえて、ゆっくりと立ち上がる。
お姉ちゃんも少し目を開けて心配そうにこちらを見ていた。…よかった。さっきよりは頭痛や目眩が軽くなっているみたい。
だからこそ、バレてはいけない。悟らせてはいけない。特に今は、お姉ちゃんの具合が悪い今は、心配をかけるわけにいかない。
「ごめんなさい、戸棚に手をぶつけてしまって…」
大丈夫…。痛くない。大丈夫。
「怪我はしてないか?」
心配そうな顔をしたツバサ先輩。
「はい。大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
私がそう言うと、ツバサ先輩は頷いてお姉ちゃんの方に向き直る。
2人で何か話していたけれど、よく聞こえなかった。いつもならこれくらいの距離、普通に聞こえるのに…。
やっぱり、体の具合は良くない…か。
…さて、早く切り替えてアイスティーをいれないと。
side:ツバサ
紅茶を
そう言われ、私はキッチンに急いだ。キッチンといっても簡単な調理場だが。
キッチンに繋がる、私達がリビングと呼んでる場所に入る。電気はついていたがひめはいないようだった。
別の所を探そうかと考えた時、ひなが風のように隣を通り過ぎてキッチンに向かった。あまりに速く自然だったため気付くのが遅れたが、少し遅れて私もキッチンに向かう。
「お姉ちゃん!!!!」
素早くカウンターの裏に回ったひなが一瞬硬直し大きく声を出した後、その先へ駆け寄っていく。
そこには戸棚にもたれかかって荒い息を吐くひめがいた。
「ひめ⁉︎」
私が慌てて側に行く間にひながひめを支え起こす。
ひめの額には玉のような汗が浮かび、その肌を流れていた。
「しっかりして…!」
必死な表情を浮かべたひなが声を掛ける。
すると、ひめの目が少しだけ開き、ひなの事を視認した。
「・・ひな、ちゃん…?」
そう言ったひめの声は予想以上に弱々しく、思わず自分の手をきつく握りしめる。
「うん、そうだよ」
ひなの声も、どこか震えているように聞こえた。
「よかっ、た」
安心したような表情を浮かべたひめ。その後、その目が少し泳ぎ私を見た。
「あ、ツバ…サおかえ、り」
喋ることも辛そうなのに…!
「ひめ!喋らなくていい‼︎」
思わずひめの事を強く静止してしまった。ひなが泣きそうになりながらひめの事を抱きしめる。
「ひな、ちゃん…?」
本人は
時々、今ここでひめを繋ぎ止めておかないとこのまま儚く消えてしまうのではないかと思う時がある。そんなことありえないと思いつつもその時はとても恐ろしくて、頭の中がパニックになりかける。
私でさえそうなのだから、妹であるひなの感じる恐怖はその比ではないだろう。
ひなは何かを祈っているようにひめを抱き締めていた。ぎゅっと強く抱き締めているものの、優しく。
…とにかく、まずはひめを寝かせた方が良い。
ソファの上のクッションを動かし姿勢を楽に出来る位置に変えながら、ひなに声をかける。
「取り敢えず、こっちのソファに。床の上だと冷えてしまう」
そう伝えると、ひなはぎこちなく動き出した。見えたその顔が先程泣きそうになっていた時よりもしっかりとしていたので安心した。
ひめを運ぶのは大丈夫だろうかと思ってそちらに向かうと、何事かを
「大丈夫か?」
思わず声を掛ける。こっちから見ると、ひめと同じ位かもしくはそれ以上に華奢なひなが抱き上げているから心配になる。
「全然平気です。…とっても軽いですから」
辛そうにしているひめの顔を見ながら少し悲しそうにひなが言った。
確かにひめは軽いが…姉妹だと他にも何か思う事があるのだろうか。
そのままひめをソファに運び寝かせると、ひなはこちらを向いた。
「ツバサ先輩。少しキッチンをお借りしてもよろしいですか?」
この状況で流石に変なことはしないだろう。
「あぁ、構わない」
ひなはひめの手に自分の手を重ねた後、鞄から何やら小箱を取り出してキッチンに向かった。
私はひめを見ておくことにするか。
綺麗な額を流れる汗を
するとひめは少し目を開け、口を動かした。
『ありがとう』
声を出すのもまだ辛いようだった。でも、倒れ込んでいた先程よりは大分落ち着いている。
私は
「つっ…!」
その音と声にふぅふぅと息を吐いていたひめが目を開き、心配そうにそちらを見やる。
「どうかしたのか?」
声を掛けると、ひなはゆっくりと立ち上がりこちらを向いた。
「ごめんなさい、戸棚に手をぶつけてしまって…」
そう言いながら苦笑してぶつけたのであろう手を胸の前でさする。
「怪我はしてないか?」
音が少し重かったからな。もし怪我をしたのなら、救急箱を…。
「はい。大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
ニコリとしたひなは一礼すると作業に戻っていった。言葉通り、怪我はしていないようだな。
ひめの方に目を戻すと、
「どうしたんだ?」
私がそう聞くと、ひなの方を見つめたままひめは口を開いた。
「ひな、ちゃん…」
喋れる位には回復したみたいだ。
それにしても…。
「白鳥がどうかしたのか?」
そう言うと、ひめは瞳をぱちくりとさせた。
「私はどうも、してないわよ?」
こんな時でもひめの天然さは健在だったか。少しキョトンとしているひめを見て、苦笑しながら言う。
「ごめん。ひめじゃなくて、ひなの方だ」
言葉を聞いたひめの目に納得の色が浮かんだ。
「でも、紛らわ…しいわ」
「そうだな、これからはひなって呼ぶようにするよ。あ、でも他の1年生がいたりする時は白鳥と呼ぶ」
そう言うと、ひめはコクリと頷いた。
「それで、ひながどうかしたのか?」
改めてひめに問う。
「・・いいえ。何でも、ない…」
そう言うと、ひめは再び目を閉じた。
やはり疲れているのだろう。
ソファを背もたれにして、行儀は良くないが床に座った。
何故だか、随分と気持ちが落ち着いている。
眠らないように、しないと・な・・。
1pageを見直してみました。記念すべき初投稿のはずが、前書きも後書きも鍋の事ばかりコメントしていて驚いたムーンナイトです。
1pageでもお伝えした通り、この作品は、アイカツシリーズ原作の物語が少ない事に気付いたムーンナイトが「読みたいが…読む物少ない、書くしかない(五七五)」という圧倒的矛盾思考に気付かず書き始めた物語となっております。
誤字脱字報告、感想・評価等、ご気軽によろしくお願いします。
因みに今のマイブームは数の子です(無駄情報)
お正月に食べるおせちは特別感があって美味しいですね。
今日は14:00頃にまた投稿します…多分。
↓お姫様抱っこシーン(体調不良描写あり)
【挿絵表示】
(2019年8月・文章整形を行いました。
(2022年2月・挿絵を挿入しました。