little Angel story〜1人の少女の物語〜   作:ムーンナイト

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ひょ、評価バーに色が・・・
ウレシイ…ウレシイ…

1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・マイナスイオン系アイドル小春ちゃん初登場。
 


20page 初めての授業

 side:ひな

 

「じゃあ今日は美組(うつくしぐみ)に行くってこと?」

 

 朝ご飯を食べに本館のカフェテリアへと向かう途中。私の今日の予定を知っためぐるは疑問符を浮かべた。

 

「そう。組分け前に受けるはずだった各分野のレッスンの代わりに、今日からほかの組をまわるの」

 

 私が組分けは歌組のテストを受けたいと事前にお手紙で伝えていたのも理由の1つらしいのだけど、本来なら研究生の間に受けるレッスンを組分けテストのあとに行うとアンナ先生から教えていただいた時は驚いた。基礎レッスンは大切なもので、皆それを受けた上で組分けテストに(のぞ)んでいるから。だから、アンナ先生にテストのことを教えていただいたあとは病院で出来ることをしてきた。発声をしたりダンスに必要な体の動かし方をもう1度学び直したり、バランスボードを使って体幹トレーニングをしてみたり。

 

「へぇ〜」

 

 理由を聞いためぐるが、なるほど…と納得したように頷く。

 

「…」

 

 その隣で汝鳥さんは少しだけ首を傾げながらこちらを見ていた。

 疑問、期待…浮かんでいるのはその表情。えっと確か…

 

「劇組のレッスンは明後日(あさって)受ける予定だよ」

 

 今日は美組、明日は舞組、そして明後日は劇組のレッスンへ参加をしてそれぞれの基礎を学ぶという予定になっている。

 

 私の答えを聞いた汝鳥さんは嬉しそうな表情を浮かべて口を開いた。

 

「待ってる」

 

 劇組の、色々な人の演技を見ることが出来るレッスン、とっても楽しみだな。

 

「うん♪」

 

 汝鳥さんに返事をして歩き出す。

 初めての授業にも参加をするし、今日もまた充実した1日になりそう♪

 

 朝ご飯を食べ終わって少ししたら、まずは職員室へ向かわないと。アンナ先生が教室に連れて行ってくださるから………うん?

 

「ひな?どーかした?」

 

 立ち止まった私にめぐるが不思議そうな顔をした。

 

 見られている…というよりは、興味を向けられている気がする。

 ワクワクとして、でもしっかりと観察をしているような…丁度視線の先にある木の上からだと思う。動物でもなさそうだし、気配自体ははっきりとしている。そうなると多分…

 

「…おはようございます、ゆず先輩」

 

 木の上に向かってそう口に出す。

 

「ん、ん??」

 

 めぐるが私の視線の先をチラリと見て戸惑ったように声を上げる。それと同時にガサガサと葉っぱが揺れて、…ゆず先輩が落ちてきた。

 

「とうっ、おっはようー!」

 

 綺麗に着地をしたあと飛ぶように立ち上がって輝く笑顔を浮かべたのは、舞組S4の二階堂ゆず先輩。

 

 かなりの高さから飛び降りているはずなのに、すごいなぁ。何というか…バネのような体をしているみたい。

 

「へっ?!あ、おはようございます!」

 

「おはようございます」

 

 ゆず先輩の登場の仕方が予想外だったのか目を丸くしたままほぼ反射的に挨拶をしためぐると、一瞬(きょ)をつかれた表情を浮かべたあとめぐるを見て落ち着いたのか頭を下げながら挨拶をする汝鳥さん。

 

 足が地面に着いた時のエネルギーの逃し方とそのあとの利用法なら、私にも出来るかもしれない。今度練習してみよう。

 

「うん、おはよう!静かにしてる時に気付かれたのは2回目だゾ!さすがひなちゃん!」

 

 そう言って嬉しそうにするゆず先輩。…もしかして1回目はお姉ちゃんだったりして。

 そういえば、保健室で別れたあとは大丈夫だったのかな…緊急の連絡は来ていないから大丈夫だと思うけれどやっぱり心配。でも、お姉ちゃんは忙しいだろうし…何より連絡を送ってお仕事の邪魔をしてしまったらと思うと私からは送れない。

 

 そんなことを考えていたら、いつの間にかゆず先輩のお顔が目の前にあった。えっと…?

 

「くんくんっ…ひめちゃんとそっくりな匂いがする!でもちょっと違うね」

 

 首元からお顔を離したゆず先輩にそう言われた。ゆず先輩が感じている匂いは、私が見る色のようなものなのかな。

 

 お姉ちゃんとそっくり…

 

「ふふっ」

 

 嬉しくて思わず笑みが溢れた。

 

「いれてくれたアイスティーすっごく美味しかったゾ、どうもありがとう!」

 

 一昨日淹れたアイスティー、飲んでいただけたんだ。美味しいと言ってもらえるのはやっぱり嬉しいな。

 

「こちらこそありがとうございます。とっても嬉しいです」

 

 思ったままにそう伝えるとゆず先輩は弾けるような笑顔で頷いた。

 

 …私がお礼を言った時から背後に舞組幹部の(かつら)ミキ先輩が立っていらっしゃること、まだ気付いていないみたい。

 

「おはようございます、ゆず様」

 

 晴れやかな笑顔を浮かべた桂先輩が口を開くと、ゆず先輩は一瞬で額にひと筋の冷や汗を流した。

 

「あっミッキー!おはよ」

 

 言葉を(さえぎ)るようにガシッとゆず先輩の腕を捕まえた桂先輩。

 

「あと少しで出発のお時間なのにと来てみれば…さぁ、行きますよ!」

 

 そのままジタバタと暴れるゆず先輩をかなり速いスピードで連れて行ってしまった。…どこか似たような光景を昨日の朝にも見た気がするなぁ。

 

「もうちょっとお話したかったのにぃー!!」

 

 そんなゆず先輩の叫びが遠くから聞こえて、めぐるが(われ)に帰ったように口を開く。

 

「ゆず先輩もだけどさ、桂先輩もすごって思った」

 

 確かに…。

 

「そうだね」

 

 ゆず先輩に気づかれず近付くのは、かなり難しいと思う。でもそれだけゆず先輩が桂先輩の事を信頼しているということだよね。それに出発の時間…お仕事の時間だったとしたら、申し訳ないことをしてしまった。

 

「まっとりあえず、あたし達は朝ご飯食べに行こっか!」

 

 空気を切り替えるようなめぐるの声。

 

「うん」

 

 まずは朝ご飯を食べて、それから授業。…テストも返却されるのかな?

 

 

 

 side:響 アンナ

 

 こっちの申請は明日まで、来週の夏フェス前日までには白鳥と桜庭の打ち合わせが出来るようスケジュール確認と調整を…

 

「響先生、よろしいですか?」

 

 横からそっとかけられた声に思考を打ち切る。

 

「はい」

 

「白鳥さんのテスト結果です。授業についても相談する必要があるかもしれませんね」

 

 そう言いながら渡された大きな封筒から、まず点数表を取り出す。

 白鳥は一体どれくらい…

 

『国語 391』

『数学 400』

『理科 397』

『社会 277』

 

「………」

 

 目を(つむ)り、眉間に指先を当ててからもう一度見る。変化無し。

 

「社会科の点数だけが他と比べて低いのは公民問題で(つまず)いているからで、歴史や地理は満点と言っていいでしょう」

 

 なるほど。

 他…国語理科も群を抜いて高得点だが、数学に(いた)っては満点。文句無しの学年一位だ。

 英語はテストしてないが、似たような点数になるのが目に見えた。

 

 さて、一枚目のテストはオール満点。唯一合計点数が低い原因の公民は三年生の授業でしか学べない。…となると。

 

「授業は、上の学年のクラスに参加させるべきでしょうか」

 

 そう口に出す。

 

「学力の向上という点だけで見ればそうするのが得策です。ですが、クラスメイトとの関わりというのは、人間関係を築き上げる上で大切なものになります」

 

「……」

 

 クラスメイトとの関わりか。確かに、それは大切なものになる。

 学園内での寮生活という限られた空間において、同じ組の仲間(ライバル)だけでなくクラスメイトという別の繋がりを持つのは、アイドルを続ける上で思いがけない支えになる事が多い。

 

「仕事が入り始めれば、きっと白鳥さんは忙しくなるでしょう。どう判断するのかは、担任である響先生にお任せします」

 

 さてどうするか。

 

 アタシがそうした方が良いと言えば、白鳥はクラスメイトと別行動だとしても上の学年に混ざって授業を受けるだろう。

 本人の学力を伸ばすにはそれが最善…だがそれでいいのか?

 

 この問題の対応は本当に人によって分かれるだろうな。

 桃子なら、生徒のやりたいようにやらせる。目の前の先生なら、まずその生徒に合ったプランを提示(ていじ)する。

 

 アタシはどうする?

 自分の中に問いかければ、迷いなく答えが浮かんできた。

 

「…本人にも希望を聞き、その上で一緒に考えます」

 

 アタシ一人では決めない。白鳥はきっと、自分なりに考えて希望を出すだろうしな。

 

「そうですか。何にせよ、方針が決まったらまた知らせてください」

 

 個別指導も行なっている先生には、授業プランの相談もすることになるかもしれない。制度として存在している個別授業を受けるのも一つの手だろう。

 

「分かりました、そうします」

 

 そう言いながら目を見て頷く。

 

「頑張って。応援していますよ、響さん」

 

 去り際に優しくかけられた言葉。

 それは、アタシが教師を目指すと決めて一から全て学び直すために頼った時から変わらない、元担任としての言葉だった。アタシにとっては力が湧いてくるワードだ。

 

「ありがとうございます」

 

 アタシは、まだまだ未熟者。

 それでも先生と呼び(した)ってくれる生徒がいる。

 

「失礼します、歌組1年の白鳥ひなです。響先生はいらっしゃいますか?」

 

 そんなベイビーが一人でもいる限り、アタシはきっと、先生であり続ける。

 

 

 

 side:ひな

 

 汝鳥さんお勧めの朝ご飯として和食を食べたあと、職員室に向かってアンナ先生と合流をした。

 テストもその時に返却してもらったのだけど、やっぱり社会の点数が低かった。他の教科とは100点以上の差が付いていて悔しい…。

 だけど数学では満点を取れていたから、その点は嬉しいな♪

 

 そしてアンナ先生から、授業クラスをどうしたいかと聞かれた。本来の1年生のクラスで勉強をするか、主に公民の授業を受けるために3年生のクラスで勉強をするか。

 

 分からない部分を学びたいなら3年生と一緒に勉強した方が良い。一方クラスメイトと一緒に授業を受けることで得られるモノもある。

 思いつくメリットとデメリットを説明してくれたアンナ先生に、今日はみんなと一緒に授業を受けたいと伝えた。

 四ツ星学園には単元別に個別授業を受けられる制度もあって、必要ならばそれを使えると教えてもらったから。

 

 それと、基本的にセルフプロデュースとされているから、理解出来ると判断した授業には出ないということも出来るらしい。授業へ出ていない生徒は、テストで点を取って尚且(なおか)つ理解度が高ければ問題無いと先生は言っていた。

 

 何はともあれ、まずは授業。教室までアンナ先生に連れてきてもらって、扉の前で1度待機。

 

「ヘーイエブリバディ!ニュークラスメイト!!」

 

 アンナ先生のギターを聞きながら教室に入っていく。

 空気が様々な色に揺れているのを感じた。昨日、歌組でもあったような…

 

「白鳥の席は1列目の真ん中、自由席の時は好きに座れベイビー。それじゃ」

 

 私の席を言うと、そのままアンナ先生は教室を出て行ってしまった。

 えっと、とりあえず席に着こうかな。

 

「白鳥さん!一緒のクラスだったんだ、おはよう!」

 

 1番前のアンナ先生に言われた席に近付くと、声をかけてくれた子がいた。

 グリーンの髪の毛に、頭に付けた4つのお花飾りが可愛らしい女の子。

 

花畑(はなばたけ)さん。おはよう」

 

 昨日の夜お友達になった花畑ナナさん。私が予想外に速かったらしく、ランニングを終えてお風呂から出た所でもまだショックを受けていためぐるに話しかけた人が花畑さんだった。そこで私も一緒にお話させてもらって、楽しかったな。

 

 挨拶を返しながら席に荷物を置くと、隣の子と目があった。

 

「元の席で座ってると隣がいつも空いてて気になってたの。よろしくね」

 

 微笑んでそう言ってくれた。

 切り揃えられた前髪と、右側でサイドテールに(まと)められた髪。まっすぐで綺麗だなぁ。

 

「こちらこそよろしくお願いします、青山(あおやま)さん」

 

 お名前は、青山ちはるさん。

 美組に所属しているはず。

 

「あれ?私の名前…」

 

「みんなの名前、覚えてるからじゃない?」

 

 不思議そうに首を傾げた青山さんに答える声がうしろから聞こえて振り返る。

 

「ローラちゃん、ゆめちゃんも」

 

 そこには強気な笑顔を浮かべたローラちゃんと嬉しそうな笑顔を浮かべたゆめちゃんが立っていた。

 

「おはよ、ひな」

 

「ひなちゃんおはよう!クラスも一緒だなんて嬉しい!」

 

「ふふっ、私も!」

 

 握り拳を作って上下に振りながら喜びを表現してくれるゆめちゃんを見ていると、私の方まで笑顔が溢れてくる。

 

「ねーねー、名前覚えてるってどういうこと?」

 

 丁度近くの席に座ろうとしていた菅野(すがの)さんがローラちゃんに聞いた。

 

「そのまんま。でしょ?」

 

 そう言ってウィンクをしたローラちゃん。もしかして、私が言えるようにしてくれたのかな。

 よし、がんばらないと。

 

「うん!だからね、早くみんなと仲良くなれたら…とっても嬉しいな」

 

 少し言葉を選んでいて間が空いてしまったけれど、大丈夫だったみたい。みんなが話しかけてくれた。

 

「こちらこそ」「私の名前ってわかる?」「よ、よろしくね…!」「これからよろしく!」「ステージすごかったよねー!」「よろしく」

 

 …嬉しい。

 

「ちょっと、そんな同時に話したら…」

 

 ローラちゃんが困ったような、ちょっと呆れたような表情を浮かべてそう言ってくれたけれど、大丈夫。

 

蓮見(はすみ)さん、これからよろしく。分かるよ御堂(みどう)さん♪音羽(おとは)さんよろしくね。野々宮(ののみや)さん、こちらこそ。ありがとう貝山(かいやま)さん♪沙浄(さじょう)さんも、よろしくね」

 

 みんな分かったから。それぞれ顔を見ながら返事をした。

 

「す、すごい…」

 

「うん、やっぱりヤバいわ」

 

 少し引きつったような笑顔を浮かべて驚いているゆめちゃんと、納得したように真顔でそう言ったローラちゃん。

 …もしかして、何かしてしまった?!

 

 ☆☆☆☆

 

「──というように、負の数を代入(だいにゅう)する時は、かっこをつけてから代入することを心がけて」

 

 教壇(きょうだん)に立って黒板に書いた式を示している先生の声を聞きながらノートを取る。

 

 これは例えば…『X=−3 のとき 5X+2』という問題が出たら、

『5×(-3)+2』ということになる。

 式の掛け算の中にある(マイナス)の数が奇数だったらマイナス、偶数だったらプラスに…と、こんな感じかな。

 

「ここまで大丈夫ですか?」

 

 先生の視線が教室を見渡したあと私の元で止まった。今日初めて授業に参加をするから、気にかけてくださっているみたい。

 

 大丈夫、という意図を込めて頷くと、先生は安心したように微笑んだ。

 

「それでは次の問題です──」

 

 ☆☆☆☆

 

「ふぅ…」

 

 午前の授業が終わった。

 

 ノートは、いい感じに纏められたと思う。授業用と自習用、2つともしっかり書けたから。

 各教科の進んでいる場所も分かったし、ちゃんと復習と予習をしておかないと。そうしたら少なくとも週に1度は授業に出席せずにいても大丈夫そうかな。

 

「すごいね白鳥さん、私、普通についていくので手一杯だったのに…」

 

 パラパラと自習用ノートをめくって訂正部分はないかと確認していると、青山さんが羨ましそうな表情を浮かべてそう言った。

 

「コツを掴んだら青山さんも出来るようになるよ」

 

 授業中もポイントを付箋(ふせん)に書いて付けていたし、その書く対象をノートに変えられればきっと出来るはず。

 

「そうかな。うん、がんばるね、ありがとう」

 

「ちはるー、お昼行こ!」

 

 青山さんは貝山さんと仲が良いみたい。

 

「少し待って!…よかったら今度、まとめ方を見せてもらってもいい?」

 

「もちろん」

 

 席を立った青山さんに頷いて、手を振ってくれた貝山さんに手を振り返す。

 私もそろそろ移動しようかな。

 

「ひなちゃん、一緒にランチ行かない?」

 

 丁度ノートや筆記用具をしまい終えたとき、ゆめちゃんに声をかけられた。

 

「うん、喜んで♪」

 

 ゆめちゃんやローラちゃんと一緒に廊下に出る。

 昨日テストが終わった時はまだ授業中だったから、みんなが廊下にいるのをこうやって見るのは初めてだけれど・・活気があるなぁ…

 

 そう思って廊下を見渡していたら、誰かがフラフラとしながら勢いよく抱きついてきた。誰かとは言っても、雰囲気で誰かは分かったからバランスを崩さないように受け止める。

 

「ひないたあぁ…ひなぁ…」

 

 予想以上に生気が抜けていた。

 

「め、めぐる?どうしたの、大丈夫?」

 

 何かあったのかな…?とりあえずよしよしと頭を撫でる。

 

「うっうぅ…やっと午前の授業終わった、べんきょー難しいよぉ…」

 

 なるほど…確かにめぐる、朝ご飯の時に最近勉強が難しいと言っていた。

 もうすぐ期末テストもあるし、テスト対策のお勉強を一緒にした方が良いかも。

 

「めぐるもランチ、一緒にどう?」

 

「ランチ!」

 

 ローラちゃんがそう声をかけると、めぐるはシャキンと元気になった。もう撫でなくて大丈夫そう。

 

 汝鳥さんが言っていたご飯は活力という言葉。今のめぐるにぴったり。

 

 …そういえば。

 

「めぐる、汝鳥さんと一緒ではないの?」

 

 2人はクラスも同じだから一緒にいると思ったのだけど…?

 

「うん、サツキは劇組のスタジオで食べるって。定期公演近くなってきたからレッスンしたいって言ってた」

 

 定期公演…回数こそ少ないけれど劇組の公演は見たことがある。演技を極める女優育成クラスというだけあって、どの回も迫力のあるお芝居だった。

 

「そうなんだ」

 

 それに、ツバサ先輩が舞台に立つようになってからはミュージカルの評価も高いと聞いている。

 歌とダンスとお芝居が複雑に絡み合うミュージカル。見てみたいな。

 

「ゆめちゃーん、一緒にランチ…もう約束しちゃった?」

 

 別の方から駆け寄ってきた小春ちゃんが、言葉の途中で不安そうな顔を浮かべた。

 

「ううん!小春ちゃんも一緒に食べよ」

 

 ゆめちゃんがそう言うとパァっと嬉しそうな笑顔を浮かべた小春ちゃん。

 

「うん!」

 

 その頷きを確認して、めぐるが息を吸い込んだ。

 

「それじゃあ…」

 

 途中でゆめちゃんに目配せをして、その視線を受けたゆめちゃんも頷いて呼吸を合わせる。

 

「「しゅっぱーつっ!」」

 

 うん、息ぴったり。

 

 ☆☆☆☆

 

「そろそろS4TVの時間だ!」

 

 2階席でお昼ご飯を食べていたら、向かいに座っていたゆめちゃんがモバイルで時間を見て声を上げた。

 

「あ、ホントだ。ほいっと」

 

 めぐるがみんなに見えるような位置で画面を起動する。

 映し出されたのは、オープニングのロゴマーク。

 

《はい、ということで始まりました。S4プレゼンツ・キラキラするのがお仕事です!司会は──》

 

「ちょうど始まったね」

 

 小春ちゃんの言葉に頷く。

 

《私たち、輝く四ツ星!S4です♪》

 

 言葉に合わせてポーズを取った先輩方。夜空先輩と手を繋いでハートを作っているお姉ちゃんを見る。

 

 よかった…元気そう。

 

《みんな、AIKATSU!STYLEモデルオーディションには申し込んでくれた?》

 

 画面の中の夜空先輩がにこやかに首を傾げた。

 

「モデルオーディション…?」

 

 何かあるのかな?

 

「あそっか、ひな知らないよね」

 

 隣に座っているめぐるが顔を私の方へ向けて言った言葉に頷く。

 

「あのね。夜空先輩がメインモデルを務めるアイカツスタイルガールズで、まだ1度も雑誌に()ったことのないアイドル限定のオーディションがあるんだ」

 

 スクールバッグの中から雑誌を取り出した小春ちゃんが説明をしてくれた。1年生を中心にたくさんの応募がありそう。

 

 モデルとしてまだ1度も雑誌に載ったことのない()()()()ということが応募資格らしい。

 

「合格したらなんと、次のAIKATSU!STYLE girls(アイカツスタイルガールズ)の表紙裏を飾れるんだよ!」

 

 目をキラキラさせながら補足をしてくれたゆめちゃん。

 

「すごいね」

 

 表紙裏…表紙には(おと)るけれど、雑誌の中ではかなり注目される所。

 アイドルやモデルとしての大きなチャンスが掴めるかもしれない、という事だよね。

 

「締め切り今日までじゃなかった?」

 

「確かね。ひなはエントリーしないの?」

 

 自分の向かいに座っているローラちゃんの問いに答えてから、めぐるが私を見た。

 

「私は…」

 

 オーディションは気になるけれど、まだ基礎レッスンも受けていないし…

 

 映し出されている画面に目を向けると、夜空先輩が最後にと口を開いた所だった。

 

《オーディションは、受けてみること自体が自分の経験になります。今日の夜、日付けが変わるまで応募を受け付けているから、ぜひチャレンジしてみてね》

 

 受けてみること自体が、自分の経験に…

 

「…夜まで少し考えてみるね」

 

 日付けが変わるまでエントリーは出来るみたいだから、もう少し考えようと思う。このあと美組のレッスンを受けたら何か掴めるかもしれないし…。

 

「オッケ、ちょーど美組のレッスンにも参加するもんね」

 

「うん」

 

 同じことを考えていためぐるに頷くと、小春ちゃんが不思議そうな顔をした。

 

「ひなちゃん、美組に来るの?」

 

「組分け前の基礎レッスンを受けていないから、今日だけ美組で学ぶの」

 

 私がそう答えると、少しのあいだ考えるような動きをした小春ちゃんの頭の上にパッと電球が浮かんだ。

 

「それなら一緒に行かない?そしたら美組のスタジオも案内出来るし…どうかな?」

 

 最後は少し不安げな表情になりながらそう提案してくれた。

 

「わぁ、ありがとう小春ちゃん」

 

 小春ちゃんと一緒、嬉しいな。

 スタジオが違うと色々と分からないこともあるだろうし、小春ちゃんが案内をしてくれたらすごく心強い。

 

「うん!」

 

 明るく頷いてくれた小春ちゃん。

 その隣…私の向かいに座っているゆめちゃんが不思議な雰囲気を浮かべていた。

 

「私が…専属…ぅえへへへぇ…」

 

 緩んだ笑顔も可愛らしいけれど、心ここにあらずという感じ。

 

「ゆめちゃん…?」

 

 専属…?もしかしてゆめちゃん、どこかの雑誌の専属モデルになったのかな。

 

「あー大丈夫、もうちょっとしたら戻ってくるよ」

 

 少し心配になって声をかけると、ゆめちゃんの隣に座っているローラちゃんがこともなげにそう言った。

 

 もしかして…昨日のレッスン中にもしていた妄想?

 雑誌の表紙裏を飾れると私に教えてくれてからずっと静かになっていたし、その時からゆめちゃんの頭の中ではドラマが繰り広げられていたのかも。少し見てみたいな。

 ゆめちゃんの妄想の中身を想像して思わず笑みを溢す。

 

 気になるオーディションに、美組のレッスン。午後も考えることや学ぶことがたくさんありそう♪





前回から1ヶ月以内の投稿ヨッシャー。
次の投稿も早くしたいです(気合)

あのですね、文章力向上を目指して他の方の小説をもっと読もうと女主人公のタグ検索をかけたのです。
そこでなんとなく平均評価が高い順に並び替えたのですが、2000件以上の小説がある中で1番上にこの物語が来ていて、目が飛び出ました。
慌てて確認すると評価バーに色がついていました。
色々夢かと思い手の甲を思いっきりつねってみました。痛かったです。ちょっとつねる程度にしておけばよかったと後悔しました。

読んでもらえるだけでも嬉しいのに評価までしていただけて、本当に本当に嬉しいです。

ありがとうございます!
これからも精進します!

…話は変わり、みなさま最近いかがお過ごしですか?どうしても動かなければいけない方を除き不要不急の外出を控えちゃんと引きこもっておられますでしょうか。

ムーンナイトは運動不足になってはいけないとハードめなエクササイズやトレーニングに手を出し、無事全身筋肉痛になりました。
そして、移動に時間がとられなくなった分、物語を書く時間が増えて嬉しいです。
ちょこちょこ物語を訂正したり付け足したりもしてるので、お時間がある読者様はこれを機にステイホームしながら最初から読み直してみてください(強引)
もっと色々な方に物語を読んでいただければ、その分アイカツシリーズ原作の小説が増えて(願望)、ゆくゆくはカテゴリーに『アイカツシリーズ』が出来る(野望)…執筆頑張ります。もっと広がれ、アイカツの輪ァ。

それでは、また次の後書きで!


(4月・サブタイトルを最初の授業から初めての授業に変更しました。
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