little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
次の投稿も早くしたいと言ったな。あれは気合だ(血涙)
間が開きすぎて話を忘れた人のための3行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・気配察知ひなちゃん
・高得点ひなちゃん
・ぅえへへへぇ
side:ひな
小春ちゃんに案内をしてもらいつつスタジオへ来た私を待っていたのは、美組の担当コーチである
ご挨拶をしてレッスンウェアに着替えてから、早速レッスン開始。
今しているのはバランスボールトレーニング…美組で取り入れられている、インナーマッスルを
背筋を伸ばしながら軽く腰を落として、右足の裏側と左足の膝で水色のバランスボールを強く挟み込んだままキープ。股関節のインナーマッスルを意識して…
「あと10秒」
空気イスをしている時とはまた違う筋肉を使っているし、思っていたよりも難しい…!
「はい、そこまで。一旦休憩を挟むわよ」
開いた扇子を口元に当てながら玉五郎先生が言った言葉に力を抜いて、1度立ち上がる。
「「「はい」」」
みんなと一緒に返事をしてから、ぽよんとボールに腰掛けて足を浮かせた。
「ふぅ…」
病院のトレーニングではボールよりもボードを使うことが多かったから、バランスの取り方も慣れていたものと違った。
さっきまでのレッスンはインナーマッスルのトレーニングがよく出来るし、康二先生に伝えて病院でも取り入れてもらおうかな?ボールを使って遊ぶような感覚で
「お疲れさま、ひなちゃん」
浮かせた足をボールにぽよぽよと当てながら考えていたら、タオルを顔に当てて汗を
「ありがとう。小春ちゃんもお疲れさま」
そう言ってから
美組には、歌組とはまた違った雰囲気…シャープで洗練された空気が流れているような気がする。レッスンルームのつくりも全体的なカラーも違うから、それは当たり前なのかもしれないけれど。
──バランスボールを片付けて戻ってくると、小春ちゃんが視線を横に動かしながら少しだけ首を
「小春ちゃん?」
隣から声をかけると、パッと私の方を向いた小春ちゃん。
「ごめんねひなちゃん、なに?」
何か探していたのかな。
何かというより誰か…
そういえば。
「もしかして、真昼ちゃんを探していた?」
私が聞くと小春ちゃんは目を丸くした。
「そう!どうしてわかったの?」
驚いた表情の小春ちゃんに口を開く。
「私も気になっていたから。美組のレッスンで会えると思っていたのだけど、いないみたい」
話をしながら改めてレッスンルームの中を見渡してみるけれど、やっぱり真昼ちゃんはいない。
昨日カフェテリアでお話をしていた時に、たくさんレッスンしなきゃ…と言っていたから会えると思っていた。
「夏フェスに向けて、特訓してるんだと思う」
前を向いたまま真剣な表情を浮かべた小春ちゃんが教えてくれた。
「あぁ、それで…」
特訓…それならレッスンに来ていないのにも納得がいく。
昨日は私と別れたあとに夜空先輩との打ち合わせもあっただろうし、基礎レッスンをするよりも夏フェスに向けての特訓をした方が真昼ちゃんにとっては身になるのかも。
そこまで考えてふと小春ちゃんを見ると、さっきまでとは違う心配そうな表情を浮かべていた。
「でも真昼ちゃん、また笑顔を忘れちゃってた」
笑顔を忘れる…?それに…
「また…前にもあったことなの?」
そう聞くと、うしろの壁に少し体重を預けながら小春ちゃんは頷いた。
「この間、ロマンスキスの新作ドレスオーディションに真昼ちゃんが合格した時もそうだったの。でもその時はステージの前にゆめちゃんのケーキを食べて笑ってくれて…」
真昼ちゃんのデザインしたブレーズロータスコーデが最優秀ドレスに選ばれた、ロマンスキスの新作ドレスオーディション。発表の時はランチさんと呼ばれていたけれど、妹だから選ばれたと思われたくなくてそのお名前にしたのかな。
「うん」
だけど、アイカツモバイルで見たステージではキラキラとした笑顔を浮かべていたから知らなかった。
笑顔を思い出せたのは、ゆめちゃんのケーキ?
「あっ、ゆめちゃんのケーキっていうのは、差し入れで持って行った手作りケーキのことなの。ゆめちゃんの実家は洋菓子屋さんだから」
ちょうど気になった所を小春ちゃんが説明してくれた。
お家が洋菓子屋さん、素敵だな。スイーツの甘い匂いが漂ってきてついつい食べすぎてしまいそう。
それに、ゆめちゃんの手作りケーキかぁ…
「すごい、とっても美味しそう」
機会があれば私も食べてみたいな。
「それでね、昨日夜空先輩のお仕事を見たらしいんだけど、真昼ちゃんの顔からまた笑顔がなくなっちゃってて…」
「そうだったんだ」
夜空先輩のお仕事を見た…今はあまり仲がよくないお姉ちゃんのお仕事を見せてもらったということだよね。
もしも実力を見せてもらおうという気持ちで行っていたとしたら、きっと少なからずショックを受けてしまう。
S4は正真正銘のトップアイドル。
例え自分の知るお姉ちゃんだったとしても、その事実に変わりはないから。…だからこそ、知らなかった
「もっと頑張らなくちゃって言ってた…」
もっと…、笑顔を忘れてしまった真昼ちゃんがそう言っていたのなら。
「心配だね」
「うん…」
私の言葉に小春ちゃんは小さく頷いた。
「はい、次はペットボトル・ウォーキングをやるわよ」
レッスンルームに玉五郎先生の声が響く。ペットボトルウォーキング…?ペットボトルを頭に乗せて歩いたりポージングをしたりするレッスン、と雑誌に書いてあったような…。
「準備しなきゃっ」
慌てた様子の小春ちゃんと一緒にペットボトルが置いてある場所まで行く。
「聞いてくれてありがとう。はい、ペットボトル」
小春ちゃんは私の分も取ってくれた。レッスンで使うのは500mlのものみたい。
「ありがとう、小春ちゃん」
お礼を言って受け取ってから玉五郎先生のもとへ移動。
「これはモデルウォークの練習よ」
視線で私を呼んだ玉五郎先生はレッスンの内容を簡単に説明してくれた。
「この水入りペットボトルを頭に乗せて、まっすぐ、そして美しく歩いてちょうだい」
まっすぐ、美しく歩く…
「はい」
バランスボードに乗りながら水入りペットボトルを頭に乗せてみたことはあるけれど、歩くとなるとまた違うはず。特に歩き出しと止まる時…美しく歩かないといけないから、その点も注意。
「最初はゆっくりでいいわ。前の人との
優しくそう言ってくれた玉五郎先生に頷く。
「わかりました」
☆☆☆☆
私が美組の子と変わらない速さでウォーキングが出来るようになってから少し。
今度はレッスンルームをランウェイに見立てて1人ずつウォーキングをすることになった。
「──次、青山さん!」
玉五郎先生の声に青山さんが進み出る。
「はい!」
青山さんはペットボトルを頭に乗せてから歩き出した。
1本のラインの上を歩くように…先生が指定していた位置まで歩いたらターン。
ターンする直前、青山さんの軸がずれた。
「あっ」
そんな声の直後、ペットボトルが床へと落下した音が響く。
「ターンする直前の重心移動が課題ね。もっと練習した方がいいわ」
前の人たちと同じように、先生が課題である部分を言葉に出した。
「はい」
真剣な表情の中に少しだけ悔しそうな色を浮かべた青山さんが頷く。
「それじゃあ次、七倉さん」
スタートの位置に視線を戻すと、小春ちゃんがペットボトルを頭に乗せて立っていた。
「はいっ」
歩き出した小春ちゃんをじっと見つめる。
円になってウォーキングをしていた時にも思ったけれど、今レッスンをしている人の中だと小春ちゃんが1番自然体で無駄がない。
手の動きは小さく、前ではなくて体の後ろ側に引く。上半身は床と垂直に。
キュッと音を立てて小春ちゃんがハーフターンをした。
「はいポージング!」
先生の声と同時に練習したポージングをとる小春ちゃん。今のターン、軸がまっすぐで綺麗だったな。
「うん。ブレのないターンだったわ」
「ありがとうございますっ!」
玉五郎先生もどことなく嬉しそうな
ペットボトルを手に持って戻ってきた小春ちゃんに声をかける。
「お疲れさま。小春ちゃん、とっても綺麗だった」
私がそう言うと、小春ちゃんは小さく微笑んだ。
「ありがとう。でも真昼ちゃんや夜空先輩はもっと綺麗だから、まだまだだよ」
嫌味のない、心の底からそう思っていることが伝わってくる。素直にそう思えて口に出せるところも小春ちゃんの魅力なのだと思う。
小春ちゃんは、一緒に話していて心地がいいな。
…?
ふんわりと漂ってきた香りに少し首を傾げる。
優しくて甘い、この香りは…
「いい匂い…あっ!」
クンクンと鼻を動かしたあとにレッスンルームの入り口の方を向いて、嬉しそうな声をあげた小春ちゃん。つられてそちらを見る。
「夜空先輩!」
小春ちゃんの声の通り、そこには夜空先輩が微笑みを浮かべて立っていた。
☆☆☆☆
お仕事が予定よりも早く終わったと教えてくれた夜空先輩が、私の前にペットボトルウォーキングをしてくれることになった。
玉五郎先生からの提案を夜空先輩が
「あのペットボトルは…?」
夜空先輩が手にしているのは、多分2Lのペットボトル。
驚いて思わず口に出してしまった。
「夜空先輩や真昼ちゃんはいつもあれを使ってレッスンしてるの。私も時々チャレンジしてるんだ」
真昼ちゃんや小春ちゃんも?
美組のみんなが目指しているのはあのペットボトルだと、続けて小春ちゃんが教えてくれた。
「ではよろしく」
「はい♪」
玉五郎先生の声に答えた夜空先輩が、頭の上にペットボトルを置いて歩きだす。
その瞬間、レッスンルームがランウェイに変わった。
まるで天井から吊られているかのようにまっすぐ伸びた体の軸。先の方まで神経が行き渡されていることが分かる指先。踏み出される足は長く、美しく。
なんて綺麗…
思わずただ見惚れてしまいそうになった思考を引き締める。
歌組に所属している私がこんな間近で夜空先輩のレッスンを見ることが出来るのは、きっと今だけ。
だから学ぶ。色々な観点から、様々な視点から。
頭の中に流れてくる情報をそれぞれに記憶しつつ、私は夜空先輩のウォーキングを見続けた。
☆☆☆☆
「では、白鳥さん」
一瞬だけ閉じていた
「はい」
頭の上にペットボトルを乗せて少し。大丈夫。今日学んだことが、どうすれば良いのかを教えてくれるから。
小春ちゃんのように、夜空先輩のように、最初の1歩を踏み出した。
「ワン、トゥー。ワン、トゥー」
玉五郎先生の声に合わせてウォーキング。
軽やかに、自然に。
骨盤を立てて
「はい、そこでターン!」
軸は細くしっかりと。ピンと張ったピアノ線を思い描いてターン。
右足でしっかり止まるのと同時に直前の流れを利用して最初のポーズ。
「ポージング!」
ペットボトルに気をつけながら両手を素早く頭の後ろに、ピタッと止まる。
・・出来た…?
「なかなかやるわね」
出来ていたみたい…!
ペットボトルを手に移してからお辞儀をした。
「ありがとうございます!」
☆☆☆☆
美組のレッスンが終わり、着替えをするために更衣室へ向かう。小春ちゃんや青山さん、他の人も今日はこのまま自主レッスンをすると言っていた。
レッスンを受けていた人のほとんどが残っていたけれど、美組の人はいつもみんなで自主レッスンをしているのかな。美しさに関することを徹底的に追求する組、最初にご挨拶をした時も玉五郎先生はそうおっしゃっていたし…
色々考えているうちに、更衣室に着いた。
使わせてもらっているロッカーの扉を開けて、ハンガーにかけておいた
レッスンウェアを脱いで着替えを始めた。
冬服を持ってきた理由は、学園のホームページに載せる写真を撮るため。他のみんなは年度の始めに撮ったものを載せているから、それと合わせるために私も冬服で撮影することになった。
…着たかった冬服がこんなに早く着れるとは思っていなかったから、なんだか不思議な気分。
1つだけ言うなら、とっても嬉しい♪
side:夜空
「あら♪」
廊下を歩いていたら、なんと冬服を着たひなちゃんが更衣室から出てきたわ。…夏服も可愛かったけど、冬服もすごく似合うわね。
「夜空先輩」
表情を明るくさせて私の方へ来てくれたわ。
それにしても、どうして冬服なのかしら?思いつくものと言えば…
「ホームページ用の写真撮影?」
「はい」
やっぱり♪
復学したばかりだからまだ撮ってなかったのね。
それと…
「さっきのウォーキング、すごくよかったわ」
ウォーキングもターンも、レッスンが初めてとは思えないくらい上手だったもの。玉五郎先生も感心していらっしゃったわ。
「ありがとうございます」
ぱっと嬉しそうに輝いた笑顔が素敵ね。思わず目が引きつけられちゃう。
「美組のみんなも、ひなちゃんを見てやる気が出たみたい。自主レッスンに気合いが入ってたもの♪」
レッスンが終わったらドレスメイクをしに行ったりカフェテリアへ行ったり…あれだけの人数が自主レッスンに残るのは珍しくて驚いたわ。
あとでもう1度顔を出そうかしら?
私の言葉にちょっと目を丸くさせたあと、ひなちゃんはふにゃっとした柔らかい笑顔を浮かべてくれた。この笑顔、ひめがリラックスしてる時に見せてくれる笑顔に似てるわね。
あと、似てると言えば。
「その冬服…」
なんだか懐かしい感じがするの。
「はい。お姉ちゃんが着ていたものです」
なるほど、それで…
嬉しそうにちょこっとスカートに触れるひなちゃんも可愛いわ。
「もしかして夏服も?」
頷いてくれたわね。
…と言っても、ひめが夏服を着ていたのは数日もなかった気がするわ。7月に入ってすぐ行われたS4戦で勝利してからはずっとS4の制服だもの。
「夜空先輩はこれからお仕事ですか?」
『夜空のファッションタイムです』とのコラボ企画の時に置いてもらうための等身大パネルの撮影だけど、いいことを思いついたわ。
「スタジオでパネル用の撮影をするの。ひなちゃん、撮影の前に見学していく?」
同じような時間に合わせてきたということは、玉五郎先生もそのつもりでしょうし。
「いいのですか?」
「えぇ、もちろん♪」
驚いた表情のひなちゃんにそう言うと、瞳がキラッと輝いたわ。
「ありがとうございます!」
さて、私も頑張らなくちゃね♪
side:ひな
夜空先輩の撮影を見学させてもらったあと、私はアイドルとなって初めての撮影に挑んでいた。
ホームページに載せる写真は2枚。証明写真のように肩から上を写した顔写真と、好きなポーズをとった全身写真。1枚目の写真は撮れたから、続けて2枚目の撮影に入った。
「それじゃあ撮ります!3.2.1…」
カウントに合わせてポーズをしたまま止まる。
表情は柔らかく、眼は少し
シャッター音とフラッシュ。カメラマンさんがカメラを顔から離したのを確認してお辞儀をした。
「白鳥さん」
いらっしゃいと玉五郎先生に呼ばれてそちらに向かう。
撮った写真が映し出されているパソコンの画面を、夜空先輩がじっと
「う〜ん…」
どう、だったのかな。
不安になっていると、夜空先輩の隣に立って画面を見ていた玉五郎先生が口を開いた。
「いい写真だけど、それだけね」
見せてもらった画面に映っているのは、柔らかい笑顔を浮かべた私。いい写真…そう言っていただけたのは嬉しいけれど、ただそれだけ。
玉五郎先生や夜空先輩は、何かが違うと感じている。一体何が…
「計算されたポーズに表情。どれもモデル撮影には必要なことよ」
画面から目を離して、玉五郎先生の方を向く。
「でも、何より大切なのは想い。動かない写真に命を吹き込めるかどうかが、モデルとトップモデルの線を分けることになるわ」
写真に命を…
確かに見学をさせてもらった時に見た夜空先輩の写真には、動かないはずなのに動きがあった。矛盾しているようでしていない、そんな写真。
玉五郎先生の言葉を
「自分が何を伝えたいのかを考えてみて?ホームページに載せる写真では、服を
…そっか。
私がポーズをとった時は、自分と一緒に着ている制服も意識したものになっていた。物心つく前からしていたモデルのお仕事では、自分と一緒に、もしくはそれ以上にお洋服を魅せることが大切だったから。
でも、今は違う。
この写真の主役は、
「もう1度、やらせてください」
玉五郎先生の目を見つめたあとに頭を下げる。もっとしっかり、私の想いを乗せたいから。
「この撮影のチャンスは皆3回。いいわよ」
っ!
「ありがとうございます」
玉五郎先生にそう言ってから移動して、さっきと同じようにカメラマンさんへ頭を下げる。
「よろしくお願いします」
私を映すカメラのレンズ。この向こうに、たくさんの人たちがいる。
伝えたい、想いが大切。
心を込めて…前より成長した私を、これから成長する私を見てほしい。
「では撮ります!3.2──」
見て!
私のアイカツは、私の人生は、こんなにも幸せで・・・
「1──」
こんなにも、楽しい!!
side:夜空
ふんわりとした柔らかい微笑みに、大事なポイントが押さえられたお手本のようなポーズ。
「う〜ん…」
画面に映されたひなちゃんの写真は、確かにいいものと言えるけど…
「いい写真だけど、それだけね」
バッサリと言っているように聞こえるけど、玉五郎先生から最初にいい写真と言われるなんて…ちょっと
だからこそ
隣に来たひなちゃんの表情をチラッと見ると、かなり真剣な表情で自分の写真を見ていたわ。
見ているというよりも、観察と言った方が近いかしら?
「計算されたポーズに表情。どれもモデル撮影には必要なことよ」
この点だけで言えばひなちゃんは相当レベルが高いわね。
ひめもそうだけど…小さい頃から撮られていたからか迷いがなくてポーズも表情も正確。ファッション雑誌の撮影はポンポンとテンポよく進むタイプね。
「でも、何より大切なのは想い。動かない写真に命を吹き込めるかどうかが、モデルとトップモデルの線を分けることになるわ」
今のひなちゃんの写真に足りないと感じたのはこれ。
柔らかい表情にポイントが押さえられたポーズなら、誰だって努力を積み重ねればたどり着けてしまう。1年生でこのレベルまで達しているのはすごいことだけど、それだけではいつか埋もれてしまうわ。
ん〜。そうねぇ、私から言えることは…
「自分が何を伝えたいのかを考えてみて?ホームページに載せる写真では、服を魅せる必要はないんだから」
さっきのポーズは、服も魅せるようなポーズだったわ。
芸能カツドウの経験がある子を除けば基本的に初めての撮影になるから、1年生は自分をアピールするフレッシュで初々しい表情やポージングの子が多いのよね。
多分ひなちゃんはキッズモデルとして活躍していた頃の感覚を忘れていなくて、自分と一緒に服も魅せるということを無意識にしてしまってるんじゃないかしら?
「もう1度、やらせてください」
あの顔…何か掴めたみたい。
「この撮影のチャンスは皆3回。いいわよ」
4月に少しだけ見れた1年生の撮影、ワタワタと慌てている子や自信満々の子までみんな可愛かった♪
「ありがとうございます」
タイミングが合わなくてラストチャンスの3回目まで頑張ってる子も多かったわね。歌組のゆめちゃんもそのタイプだったわ。
「よろしくお願いします」
レンズを見たあと目を
「では撮ります!──」
──カウントダウンにフラッシュ。撮られた写真が画面に映し出される前に分かった。
「化けたわね」
玉五郎先生の声と同時に映し出された写真は予想通り、見た人の目を惹きつけて離さない魅力が爆発。
幸せで楽しいという感情が溢れるくらいに伝わってくる表情とポーズ、躍動感のある髪に輝く瞳…まさに命が吹き込まれているとしか言えない写真が出来上がってるわ。
こんな写真を見せられたら、ますます美組に勧誘したくなっちゃう!
「玉五郎先生、夜空先輩。どうでしたか…?」
写真を見に来たひなちゃんに
「合格よ」
文句なしの、ね♪
「えぇ。命が吹き込まれてるわ」
玉五郎先生の後に続いて私がそう言うと、ひなちゃんは今までで1番の笑顔を浮かべてくれたわ。
なんて可愛いの…!!
今の笑顔、ひめにも見せたかったわね。モバイルで写真を撮っておくべきだったかしら?
side:ひな
撮影も無事に終わったあと、私はめぐるや汝鳥さんと合流してカフェテリアで晩ご飯を食べていた。
「うっわぁ…早くホームページにアップされないかな。めっちゃ見たい」
今日あったことを話すと、興味津々な表情を浮かべてそう言っためぐる。
「楽しみ」
汝鳥さんもほわほわと楽しそうな雰囲気を浮かべてそう言ってくれた。
撮影が終わったあとに夜空先輩が冬服を着た私の写真を撮ってくれたのだけど…先にあの写真を見てほしいから、ホームページにアップされるまでは秘密にしておこうかな。
「明日は舞組だよね?」
「うん」
めぐるの問いかけに頷く。
「サツキは明日も劇組でお昼食べる感じ?」
めぐるはそう言いながら隣に座る汝鳥さんへ視線を移した。
「…ん」
頷きながら口の中にご飯を運んだ汝鳥さん。…何か引っかかるような、そんな
「汝鳥さん?」
でもそれが何か分からない。
「?」
汝鳥さんはもぐもぐと小さく口を動かしながら私を不思議そうに見ていた。
「ううん。なんでもないの、ごめんね」
もしかしたら、気のせいだったのかも。
☆☆☆☆
「んー!お腹いっぱい!」
寮へと歩く帰り道。めぐるがぐぐーっと伸びをした。
「ランニング」
確かにたくさん食べていたから、心配になるのも分かるなぁ。
「うん、それはだいじょぶ!サツキも走る?」
めぐるがそう聞くと、汝鳥さんは1度首を横に振った。
「台本読む」
劇組の定期公演が近いのだっけ?
今日も授業のあとからずっとレッスンをしていたみたい。
「オッケー」
道の両端に立てられた七夕の笹は色鮮やかで飾り付けも綺麗だから、つい視線がいく。
同じように笹を見ていためぐるが、そうだと呟いた。
「ひなは短冊書いた?」
「うん、昨日書いたよ。2人は?」
質問に答えてからそう聞くと、ニカッとした笑顔を浮かべためぐる。
「こっちにあるよ!えっと…ほら!」
手で示された短冊が2つ。
「どっちか分かる?」
そうめぐるに聞かれるけれど、これは…
「めぐるはこっち?」
外れそうにない予想をそのまま言葉に出して右側の短冊に視線を向ける。
「うーん、やっぱわかっちゃうよね。大きくこれ書いたらいっぱいになっちゃってさー」
その短冊には大きく『S4‼︎』とだけ書かれていた。短冊がその3つでいっぱいになるくらいに堂々と書かれていて…文字のバランスはいいけれど、めぐるらしいというか何というか。
「性格出てる」
そんな汝鳥さんの短冊は、中心に『たくさん学べますように。』と書かれていた。めぐるの文字と比べると線が細くて、汝鳥さんの文字だと見てすぐに分かった。
「サツキそれ褒めてる?」
「ん」
めぐるが浮かべた疑問にすぐ頷き返した汝鳥さん。
「ならいっかー…って、絶対ちょっとバカにしたのもあったでしょ?!」
そんな追求をされた汝鳥さんは一瞬だけ視線を泳がせたあと、めぐるを見てニコリと微笑んだ。
「笑顔で誤魔化してもムダだからー!!」
すごく可愛い笑顔だったけれど、めぐるは誤魔化されなかったみたい。
「ふふっ」
ぷんぷんとしているめぐるを横目に他の人の短冊も見ていく。色々なお願いがあるみたいだけれど、やっぱりアイカツに関係したことが多いかな。
『S4のツアーチケット当たりますように。』『オーディション合格出来ますように』『富士山登頂』『すばるきゅんLOVE♡♡』
…富士山登頂?
☆☆☆☆
夜。めぐるが寝てから日記を書いていた私は、アイカツモバイルを持ってそっとバルコニーへ出た。
画面には、
ランニングを終えたあとにめぐるから教えてもらったのだけど、このオーディションは応募資格を満たしていれば学年問わず申し込みが出来るらしい。
2年生にもなると1回は雑誌に載ったことがあるだろうし実質1年生のオーディションだよね、とめぐるは言っていた。
審査をするのは雑誌の編集長を始めとしたAIKATSU!STYLE関係者の方と専属モデルである夜空先輩で、他にも原石を見つけるためにオーディションを
そして、めぐるもこのオーディションにエントリーしていると教えてくれた。
ゆめちゃんは四ツ星映画祭の特集で、ローラちゃんは香花堂の新しいキャンペーンガールとして、小春ちゃんはモデルとしてそれぞれ雑誌に載ったことがあるみたい。
エントリー出来ないと知った時のゆめちゃん、むすっと悔しそうに頬を膨らませながらジュースを飲んでいたそう。少し見たかったな。
私は、名前や必要事項は記入したものの…まだエントリーボタンを押せないでいた。
──「ひなちゃんはモデルオーディションにエントリーしないの?」
撮影のあと、そう聞いてくれた夜空先輩と玉五郎先生に思いきって相談をした。
オーディションには興味があること、それでもキッズモデルとして幼い頃から色々な雑誌に載せてもらっていた経験のある私がエントリーをしていいのか迷っていること。
──「応募資格はまだ1度も雑誌に載ったことのない
玉五郎先生が言ってくれた言葉を頭の中で繰り返す。
受けてみること自体が、自分の経験になる…だよね。
挑戦、してみたいな。
「よし」
すうっと大きく息を吸い込んでから、私はオーディションのエントリーボタンを押した。
次の投稿こそ早くします(迫真フラグ)
皆さまお久しぶりです。
この物語の投稿開始から1年と半年、今年も現実に小説内の日付が追いつかれ追い越されたことに衝撃を隠せないムーンナイトでございます。
…まさかまだ3日間しか物語内の時間が進んでないのに今更気付いたとか口が裂けても言えません。
今回1万字超えと長くなってしまいましたが、もしかするとこれからは毎話これくらいのボリュームになるかもと考えています。
出来るだけ皆さまに読んでいただきやすいよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
それではまた、次の後書きで!