little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
あけましておめでとうございます(大遅刻)
2020年内にもう少し投稿したいという願望が叶わなかったのに加えて今年の初夢が忙殺されるというなんとも現実味溢れた生々しい夢だったので、去年の夢を初夢として考えようと決意しました。
つまり今年の初夢はムーンナイトが書いている小説たちがランキングに載り、さらにアイカツ小説が増え、カテゴリーにアイカツシリーズが出来る夢ということです(暴論)
なんという欲張りセット…(衝撃)
最初の1つは叶えばもちろん嬉しいですが、後者2つは絶対に叶えたいですね。
今年も頑張ります!
間が開きすぎて話を忘れた人のための3行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・ツバサ先輩へ地味なダメージが蓄積
・闇と
・サツキ=チャン、カワイイ
side:ひな
昨日はまだ病院にいた時の感覚が抜けていなくて2段ベッドの木の枠組みに驚いてしまったけれど、視界に入るものが病院の白い天井ではないことにも慣れてきた。
「すぅー…」
横になったまま深く息を吸いつつ体の調子を確認したあと、体を起こしてアイカツモバイルを手に取る。3時…うん、いつも通りに起きたかな。
ベッドからお部屋のカーペットに足を下ろして立ち上がる。机に置いておいたウェアをとってそのままめぐるを起こさないようにバスルームへ。
コップに入れたお水を飲んでから顔を洗って着替えて髪を結ぶ。
今日は、アイドルになってから初めてのオーディション…集中して、そしてその経験も楽しむ。
「よし!」
そう小さく気合を入れて、ランニングをするために着替えてからお部屋を出た。
寮の外で1度立ち止まって深呼吸。外の空気が体の中に入ってきて、スッキリと意識が澄み渡っていく。
まずはランニングをして、お勉強をしたあとは雑誌を見ながらポージングのイメージ。朝ご飯を食べて少し経てばもうオーディションが始まる。
今日もたくさん成長できますように!
☆☆☆☆
1時間程度のランニングを終えて寮へ戻ってくる頃には暗かった空も
ふと、まだ
…今日はこのお花にしよう。
張られた水に浮かべたのは、濃い黄色が目を引くハナビシソウ。
ハナビシソウの花言葉は“成功”。結果がどうなったとしても、挑戦してよかったと思えるオーディションにしたいな。
お花を見て微笑んでから、私はお勉強に戻った。
☆☆☆☆
雑誌を見ながらポージングのイメージをより強く固めていく。
夜空先輩、本当に綺麗…自分も服も、お互いを
ポージングは勿論だけれど、ベストタイミングを合わせる技術の高さも
色々な事を考えながらページをめくる。
「あ…」
次のページには、
夜空先輩のポージングはお勉強になるけれど、お姉ちゃんのポージングは身長や体格が似ているからより参考になる。
小さい頃から1度も休止せずに芸能カツドウを続けてきたお姉ちゃんのポージングは見やすくわかりやすく、積み上げられてきたものが他の人とはひと味違う。
…やっぱり可愛いなぁ。とってもとっても可愛くて、優しくて、大好き。
──「ルナ、
──「うんうん、かわいいわぁ」
──「かわいいけど…ちょっと前も同じ会話してなかったか?」
昔、病院でお姉ちゃんの話をよくしていたことを思い出した。2人がひなのことよりひめちゃんのことを知っているかもと笑って呆れるくらい。お姉ちゃんが出演している番組がテレビで放送される時は3人で一緒に見て…懐かしいな。
「……んー…」
ベッドの上からめぐるの声が聞こえた。目が覚めたのかな?
「フンっ」
わっ!
…私が椅子に座り直して振り向くのと同時に腕を振り子のようにしながらめぐるが勢いよく起き上がって、びっくりした。
「ひな、おはよ!」
今日はすごく目覚めが良いみたい。
「おはようめぐる。しっかり眠れた?」
そう聞くと、めぐるはニカッと明るい笑顔を浮かべた。
「バッチリ!」
それと同時にお部屋の扉が開く音と、こちらに来る小さな足音が耳に届く。
「サツキちゃん、おはよう」
姿が見えたタイミングで声をかける。
昨日からサツキちゃんと呼ぶようになったのだけど、そのあと何度ももう1回と言われて名前を呼んだ。最後はずいっと顔を近付けられながら言われたから、なんだか少し恥ずかしかったなぁ。
「おはよう」
嬉しそうに挨拶を返してくれた。
「サツキおはよー」
ベッドの上からかけられた声にサツキちゃんが固まった。めぐるの方を見ると信じられないとばかりに目を見開く。
「おきてる…?」
「待ってあたしってそんなに起きてないかな?!」
思わずといった様子で突っ込んだめぐるとスッと見開いていた目を元に戻したサツキちゃん。今さっきの驚きは自分の感情をお芝居のように表面へ出したのかな。
「ん、起こしに来てる」
言われてみれば、確かにサツキちゃんが毎日起こしに来ていた気がする。
「そうじゃん…」
同じ考えに
「でも!今日のあたしはひと味違うのだよ、サツキくん!」
ロンドンの名探偵のような口調でフフンと得意げな顔をしためぐる。1つ1つの感情の動きが伝わりやすいし、バラエティー番組やクルクルと表情を変える必要があるコメディータッチなドラマに向いていそう。
「起きれて、えらい」
サツキちゃんがベッドの上のめぐるを見上げながらそう言った。
「えへ、ありがとーってなんか違う」
ふにゃっと笑ってお礼を言った後に微妙な表情を浮かべためぐるの顔とこれまでのやりとりがなんだか面白くて、思わず笑顔が
2人の会話にはずっと聞いていたくなる魅力があって、一緒にいるだけで楽しい。
「よし、とりあえずご飯食べに行こっか。準備してくるー」
一応段に足はかけているから大丈夫だと思う…でも怪我をしないかはちょっと心配。
何かを思い出したような表情を浮かべたサツキちゃんと目を合わせる。
「髪、サラサラ。ありがと」
お礼を言ったあと、フルフルと毛先を揺らすように左右を向いて髪を見せてくれた。
昨日丁寧に整えたからか
「どういたしまして♪」
私の髪はくるりとなっているから、あのまっすぐな髪質には憧れるなぁ。肩にかかった髪はさらりと重力に従って落ちていて綺麗…
そうやって羨ましいなと考えていたらサツキちゃんからじっと見つめられていることに気が付いた。
「どうしたの?」
私がそう聞くと自分の髪をするんと1
「ひなの髪、羨ましい」
その視線は私の髪に
お互い無い物ねだりになってしまっていたみたい。
その事を理解して、また2人で笑った。
☆☆☆☆
「「「ごちそうさまでした」」」
朝ご飯を食べ終えてから一緒に手を合わせる。
「美味しかったー!」
「うん♪」
伸びをしながらそう言っためぐるに言葉を返した。
今日の朝ご飯も2人は変わらないメニュー…サンドウィッチとおにぎりで、私はほんのり甘い黒糖パンにスクランブルエッグとグリーンサラダ、コンソメスープとナッツ入りヨーグルトがセットになっているモーニングメニューを頼んだ。黒糖パンは病院の朝ご飯に時々出てくるものに似ていて美味しかったなぁ。
この朝食セットはパンの種類を変えられるそうだから、次は別のものを食べてみよう。
「サツキは今日どーするの?」
トレーを片付けた所でめぐるがサツキちゃんに聞いた。
「
早乙女さんから誘われていたみたい。サツキちゃんを引っ張って行っていたし、面倒見が良いのかも?
「おぉ、サツキが誰かと2人でレッスンって感動する…」
「?」
サツキちゃんは小さく首を傾げていた。もしかして何か違ったのかな。
「どしたの?」
キョトンとして同じように首を傾げためぐる。
「2人じゃない。1年生全員」
それは思っていた以上かも。
「へ?え、えぇッ?!!」
めぐるは気が抜けたような声を出した後にかなり驚いていた。
「・・マジ?」
「ん…」
1年生全員ということは、昨日レッスンルームにいた人はほとんどいるよね。私がサツキちゃんを追いかけて出て行ったあと…あの嫌がらせも含めた色々なことについて早乙女さんが怒って、蓮見さん達はサツキちゃんがお昼ご飯も食べずにレッスンしていたことをみんなに伝えてくれたらしい。だから、私がレッスンルームに帰ってきた時にはサツキちゃんが謝られていた。
その後の稽古はそれまでよりも良い雰囲気で進んでいたし、今日も大丈夫だと思う。
「そっかぁ。レッスンファイト、サツキ!」
めぐるは自分のことのように嬉しそうな表情を浮かべながら言っていた。
「2人も」
サツキちゃんがそう言ってくれて、めぐると一緒に頷く。
それから正面玄関でサツキちゃんと別れて、私たちは美組のスタジオへ。オーディションを受けるのであろう子も道に増えてスタジオの受付が見えた所で自然と立ち止まる。
「オーディション、がんばろうね」
隣に立つめぐるからそう言われた。お互いまっすぐ前を見ているから、その表情は分からない。分からないけれど、きっと真剣な表情を浮かべている。
これから始まるオーディション。合格…つまりグランプリをとれるのは1人だけ。
私たちはトップアイドルを一緒に目指していく仲間だけれど、それと同時にライバル。
「うん」
それだけ返してから目を合わせて笑って、また歩き始めた。
☆☆☆☆
前の人達が撮影している音を聞きながら1度深呼吸。
申し込むのがギリギリだったからか私のエントリーナンバーは70番とかなりうしろの方で、控室にいる時間も長かった。というよりも、うしろには人がいないから私が最後みたい。
9時から始まったオーディションはすでに2時間以上が経過。撮影スタジオが1つで進んでいると考えると少し早めのペースなのかな。
──「撮影時間は1人2分までとします」
オーディションが始まる時に玉五郎先生から新しい条件が告げられた。周りの人は不安げな表情を浮かべていたけれど、落ち着いて考えれば4枚の写真を撮るのに2分もかからない。事前に頭の中でイメージは作ってあるし、大丈夫。
「次の人」
入り口で中の進行状況を見ていたスタッフさんから声をかけられた。
「はい」
扉を開けてくれた方にありがとうございますと軽く頭を下げてスタジオへ。
事前に説明されていた通りにカメラの前に立った。
「70番、白鳥ひなです。よろしくお願いします」
1度頭を下げて、不快に思われない程度の短さで頭を上げる。撮影の場合は礼が長すぎると良くないから。
スタジオ内にはカメラマンさんをはじめとしたスタッフの方々の他にも人がいた。
閉じた
「それでは1・2・3の
カメラマンさんの言葉に頷く。
カウントを始めるタイミングはこちらの準備が出来たら合わせてくれるみたい。
私がいま着ているのはオーディション用に全員分用意されていた白いノースリーブワンピース。シンプルな分、ポージングや表情で魅せ方は無限大に広がる。その可能性をどれだけ引き出せるかが大事なポイントになるよね。
最初の1枚は前を向いたままスカートを少し広げたポージング。
「1・2・3」
準備を終えたのを見たカメラマンさんがシャッターを切ってくれた。
こちらに向けてある画面に一瞬目をやって確認…うん、タイミングも大丈夫そう。
次は後ろを向いて…
「1・2・3」
合図に合わせて少し振り向いて髪で隠れていた後ろ部分を見せる。髪に
活動休止をしたあとも雑誌や写真集を見て知識を貯めていたし、あの頃より技術は上がっていると思いたいな。
3枚目は
「座るので、四角く撮っていただけますか?」
カメラを担当している方はこの前見学させてもらった夜空先輩の撮影の時もシャッターをきっていた方だから、こう言えばきっと伝わる。
「わかりました」
そう頷いてくれたのを確認して座ると、すぐに画角調整を終わらせてくれた。
「1・2・3」
画面上に映った写真を見て確認。よし、ちゃんとイメージ通りに出来てきた。まるで写真の
「次はどうしますか?」
私が口を開く前にカメラマンさんの方から聞いてくれた。最初の時よりも視線に熱がこもっていて、どこかワクワクとしているような雰囲気を浮かべている。
「動きをつけたいです。場所はこの位置、タイミングはシャッターに合わせます」
3枚は全てイメージ通りに撮れていたから、4枚目は挑戦。タイミングがズレてしまったら魅力が半減どころか激減してしまうと思うけれど、私はチャレンジしたい。
指定した場所から少しだけ下がった所に立つ。
「いきます」
程よく緊張を体に
「1・2──
左足に力を入れて1歩駆け出し右足で着地するように!
──3!」
少しの浮遊感と同時に切られたシャッター…画面へ顔を向けてどんな写真になったのかを見る。
うん、出来た!
「ありがとうございました!」
カメラマンさんも大きく頷いて、お疲れ様と言ってくれた。
☆☆☆☆
写真撮影が終わって、これからお昼休憩。13時にはウォーキング審査が始まるから遅くとも10分前には着替えて集合場所へ来るようにと言われた。
今が11時20分…お昼ご飯を食べる時間はありそう。
ワンピースから制服に着替え終えてひと息ついた。
ワンピースをかけたハンガーにはエントリーナンバーカードを忘れずに付けておく。こうしておけば私たちがお昼ご飯を食べている間にここからホールの控室へ運んでくれるらしいの。
これでよし、と。
そういえばスタジオには夜空先輩がいらっしゃらなかったけれど、ウォーキング審査から参加されるのかな。
めぐるは練習した通りにポージング出来たのかが心配…。
そう考えながら廊下に出て、歩いてくる誰かの気配に道をあけた。
「っ」
危うくぶつかる直前に体を
ぶつからなくてよかった…でも私、確かによけたと思ったのだけど…少し気が抜けていたのかも。気をつけないと。
そう思って謝ろうと振り返っ…
「ちょっと!!」
た所で聞こえためぐるの声にタイミングを逃してしまった。私が行こうとしていた方にめぐるもいたみたい。
呼び止められたことが分かったのか、私が危うくぶつかりそうになってしまった人も立ち止まってこちらを向く。
あれ…?
「今わざとぶつかろうとしなかった?」
怒ったような表情を浮かべためぐるが少し離れた所から問いかけた。サツキちゃんや私と話している時のコミカルな怒りとは違う、鋭くて怖い表情。
「いいえ?」
…残念だけど、私の気が抜けていたわけではなかったらしい。
「っ、ひなが避けてなかったら絶対ぶつかってた、危ないじゃん」
さっきよりも
言われた相手は静かに首を傾げているし、このまま状況が
私と仲が良いからそう見えただけ、とめぐるに言うことも出来るし、このままだと本当に平行線になってしまう。
「わ、私も見たよ!」
…!
めぐるの後ろから声が飛んできた。同じ歌組の、アイスグリーンの髪が綺麗な
柏崎さんもオーディションを受けていたみたい。
「結構危なかったと思う…」
眉を下げて心配そうに言った柏崎さんに対して不満げな空気が相手側から流れてきた。
「私は大丈夫、2人ともありがとう」
そう言うとその場にいる人の視線が私に集まる。
私はまっすぐ向き直って頭を下げた。
「ぶつかりそうになってしまって、すみませんでした。午前のオーディションがひと段落して気が抜けていたみたいで…」
「・・別にかまわないわ。次から気をつけて」
少し急いだように離れていく足音を聞いて頭を上げて、こっちに来てくれためぐる達の方を向く。
「ひな、いいの?明らかに悪いのあっちじゃん」
小さな声で問われた言葉に頷く。
「ぶつからなかったし、
3人とも気付いた様子がなかったけれど、玉五郎先生がこちらを見ていた。あまり大きなことになってしまうと良くないと思ったから。
「「先輩?!」」
驚いている様子の2人に私はもう1度頷く。
「え、このオーディションって1回も雑誌に載ったことないアイドル限定だよね?四ツ星の先輩たちの中にそんな人いるの?」
失礼ともとられかねない発言だけど、めぐるの気持ちも少しわかる。四ツ星学園はアイカツスタイルをはじめとした多くの雑誌とコネクションを持っていて、所属しているというだけである程度の信頼がおかれる。それにしたがって他の育成学校と比べてはるかにチャンスも多いし、ほとんどの生徒が2年生へ進級するまでにモデルデビューも果たせるから。
1年生全員とそれぞれの組に所属する先輩方のお名前を覚えているのにも関わらず、わからなかった。…つまりそれは。
「多分…組に所属していない先輩なのだと思う」
そっと伝えたことにめぐるはクエスチョンマークを浮かべていたけれど、柏崎さんはわかったみたい。
「研究生ってことかぁ」
各組に所属するための組分けオーディション。全員が希望の組に合格するわけじゃない。
生徒数自体が多いから、研究生としてアイカツをしていく人ももちろん出てくる。2年生へ進級する時に組分けオーディションで合格する人もいると前にお姉ちゃんから聞いたのだけど…あの先輩は違ったのかな…。
「え、マジ…」
ふと見ると、めぐるの顔色がどんどん悪くなっていた。
「めぐる?」
「ヤバい、先輩に対してめっちゃタメ口で話しちゃった…」
「そ、それは私もだよ。あとで見かけたら謝りに行かなくちゃ」
研究生の先輩方のお名前も覚えようかな…時間はかかってしまうかもしれないけれど、少なくとも中等部の人は今後関わることも増えるだろうし…。
「ってゆーか、もしかしてあたしたち無駄なことした…?」
すごく不安そうな表情でそう言っためぐるに慌てて首を振る。
「ううん!かばってくれて嬉しかった…ありがとう」
「ならいいんだけどー…」
めぐるの言葉を聞いて不安そうな表情を浮かべていた柏崎さんの方を向く。
「柏崎さんも」
「あっ、メイでいいよ?」
ローラちゃんやゆめちゃんと同じようにそう言われた。
「メイちゃん。さっきはどうもありがとう」
不安そうな表情から一転、メイちゃんはパッと笑顔を浮かべてくれた。
「どういたしまして!一時はどうなることかと思ったよぉ…」
私とメイちゃんは同じレッスンに参加したとはいえまだ話したことが無かったし、あの状況で声を上げるのはすごく勇気が必要だったと思う。嬉しいのと申し訳ないのとで泣き笑いのような笑顔を浮かべてしまった。
「そうだ!せっかくだし3人でお昼食べに行かない?」
「それいい!いいかな?」
シャキンと立ち直っためぐると私の方を向いたメイちゃんに笑顔を浮かべる。
「うん!私も行きたい♪」
☆☆☆☆
「それでは、審査結果を発表します」
ホールに夜空先輩の声が響く。
お昼休憩を挟んで午後1時から始まったウォーキング審査。
リラックスして練習していた通りに挑めたし、見に来ていた方達に一瞬目を合わせてのアピールも出来た。
頭ではちゃんとベストを尽くせたと思っているけれど、それでもやっぱり緊張する…!
思わず右手で左手をぎゅっと握った。
70人以上の人がいるとは思えない静寂がホールに流れる。
数秒が、本当に長い。
「グランプリは・・エントリーナンバー70番、白鳥ひなさん」
っ!!
"パチパチパチパチ"
思わず音がした方を向くと、少し離れた別の列にいためぐるが拍手をしてくれていた。
それからメイちゃんや他の人もどんどんと拍手をしてくれて…
「おめでとう」
気付かない内に私の前に来て微笑んでいた夜空先輩から小さいけれど確かな重さのあるトロフィーを受け取って、ようやく実感が湧いてきた。
私、グランプリをとれたんだ…!
「ありがとうございます!」
とってもとっても、嬉しい!
side:ひめ
ティーポットからコポコポと紅茶を注ぐ。
今はまだ大丈夫だけど、もう少し暑くなってきたら星々の
「あ!夜空たーん!」
どのお茶菓子から食べようかルンルンしながら目を輝かせていたゆずがぶんぶんと手を振る。
夜空が帰ってきたみたい。これで全員揃ったわね。
「おかえりなさい」
「お疲れ様」
私とツバサがそう言うと、たおやかにゆずへ手をふり返していた夜空が頬を
「えぇ、ただいま。みんなもお疲れさま♪」
そう言っていつもの席に座った夜空へ
「今日はウバをいれてみたの。渋みが濃いから、お茶菓子も合うようにしてみたわ」
今日出したお菓子はプチガトーショコラにツバサがお仕事でいただいたタルト。味が濃いものは紅茶に合いにくいとされているけど、個性の強いウバにはぴったり。
「ありがとうひめ。ん〜、いい香り♪」
全員が揃った所で
「夜空、オーディションはどうだった?」
タルトをパクリと口に運んだ後に紅茶を飲んでいるとツバサが夜空にそう聞いた。
アイカツスタイルのモデルオーディション、気になる話題に目を向ける。
「みんな可愛いかったわ。そうそうひめ、グランプリはひなちゃんよ」
ふんわりニコニコとしながら告げられた。
「まぁ…!」
そう、ひなちゃん。ひなちゃんがグランプリなのね。
いつも発売されたら時間を見つけて欠かさず購入してるけど、次号の
「すっごいゾ!」
ひなちゃんがグランプリ…自分のことのように嬉しい。
でも、それと同時に心配の気持ちも湧き上がる。
だってひなちゃんは…
「ひめ?」
ツバサからの問いかけに、少し下げていた視線を上げた。
「夜空、1つ聞きたいのだけど…」
「ひなちゃんのエントリーのことね?」
穏やかな夜空の言葉に頷く。
「玉五郎先生も私も、ひなちゃんのエントリーを認めた…だから大丈夫。オーディションの間も先生が見守ってくれていたわ」
応募条件はまだ1度も雑誌に載ったことのないアイドル、ひなちゃんは幼い頃、たくさんの雑誌にキッズモデルとして出ていた。
それはひなちゃんの中に経験値として息づいているし、オーディションにあの子が出ることを良しとしない人もいたはず。
「1度2年生の子と危ない瞬間があったみたいだけど、ひなちゃん自身が場を収めたそうよ。大きなトラブルには発展しなかったから、玉五郎先生も注意程度にとどめたみたい」
「そう…ありがとう夜空」
よかった…
思わず入れていた肩の力を、ほっと抜く。
「ふふっ。そうだ!ひめに見せたいものがあったのよ」
見せたいもの?
ポケットからモバイルを取り出して何か操作した夜空が画面を私の方に向けた。
「じゃ〜ん!」
これって…!
「ホームページ用の写真撮影をした時の、冬服姿のひなちゃん。一緒に写真を撮ったの♪」
自撮りモードを使っているのかこちらに腕を伸ばして笑顔を浮かべる夜空の隣。写っているのは、水色の冬服を着てはにかむひなちゃん。
「冬服も似合うな」
「うん、すっごくカワイイ!」
「そうなのよ〜♪とっても可愛かったわ」
3人の会話を聞きながら画面の中の妹を見つめる。
──「お姉ちゃん、私…お姉ちゃんが着ていた制服が着たいの!」
四ツ星にひなちゃんが合格した時に言われて
冬服はもちろん、夏服に至っては数日しか袖を通していなかったから綺麗な状態で渡せた。
「似合ってる」
思わず口から言葉が出る。
夏服も似合っていたけど、冬服もすごく似合っているわ。
「あとで送るわね」
あまりにもじっと見つめていたからか、うふふと笑顔を浮かべた夜空からそう言われた。
「ひなちゃんの写真といえば、ゆずもあるゾ!」
「本当?」
ゆずの言葉に思わず反応する。
「うん!えっとー、これ!」
ワクワクしながら写真を覗き込んで、私たち3人は
集合写真、のようだけど。
明らかに何人かはその場で力尽きていて、顔だけ起こしてカメラの方を向いている子や隣の子と支え合って立っている子…中央で輝くような笑顔を浮かべたゆずの隣に、ぺたんと床に座ってへにゃりとした笑顔を浮かべているひなちゃんがいた。
「ゆず、これは一体どういう状況なんだ?」
「みんなで踊ったあとに撮ったんだゾ☆」
キラリとピースをしたゆずに私たちは揃って納得の表情を浮かべる。
それは、こうなるわよね。
でもこんな笑顔を浮かべているひなちゃんは新鮮。可愛いわ。
「ツバサっちはなにか撮った?」
ゆず、夜空、私からの期待をこめたキラキラとした視線に、ツバサは慌てたような表情になった。
「あ、いや。私は撮ってないんだ」
すまない、としょんぼりしながら口にしたツバサ。
「大丈夫よ。それより、レッスンでのことを聞きたいわ」
今週は各組のレッスンに参加していたけど、舞組でのこと以外はまだ詳しく聞けていないから。
私は、私の知らないひなちゃんをもっと知りたいの。
side:夜空
「──と、こんな感じだな。ひなのおかげで劇組の1年生はいい方向に進み始めた。私は反省しないとだけど、感謝してる」
劇組ではそんなことがあったのね。
サツキちゃんがどこか浮いてしまっているのはなんとなく分かっていたけど、嫌がらせ…まだ完全に解決というわけではないでしょうけど、ツバサが時おり悩んでいたことが良い方向に向かい始めて嬉しいわ。
「はいはい!昨日は舞組でもみーんな気合が入ってたゾ。ひなちゃんに負けないーって!」
パァっと笑顔を浮かべながらそう言ったゆず。
ひなちゃんが舞組でゆずのダンスに最後の方までついていっていたのは、ゆずが興奮しながら話してくれたからよく覚えてるわ。
「美組もよ。自主レッスンをする子がここ数日ですごく多くなったの♪」
それぞれの組でひなちゃんは色々な経験をしたみたいね。
そしてひなちゃんの存在がまわりの子を引き寄せて、
「そうなのね」
ひめ、ひなちゃんのことになるといつもより少し身を乗り出して話を聞いていて新鮮だわ。それにすごく嬉しそう。
「ひなと言えば、アンナ先生が書類を提出しにいった時に色々話してくれたな。
そうだったのね〜
確かに、美組のレッスンでもバランスボールに難なく腰掛けて足も浮かせていたそうだし、
「ひなちゃんは昔から、私よりも運動神経が良いもの」
ひめよりも?
それってすごいことよね。ひめだって私たち3年生の中で1,2を争うくらい運動神経が良いのに。
ツバサの方を見たら、衝撃を受けた顔で固まっていたわ。
2年生どころか学園1の運動神経を持つゆずはというと…
「へぇー…!!」
目をキラキラとさせていたわ。
鬼ごっこがしたいって言い出しそうね。
「ゆず、ひなちゃんと鬼ごっこしてみたい!」
ほらやっぱり。前にもゆずが突発的に企画した鬼ごっこ大会があったけど、もし次があったら見学させてもらおうかしら。
あら、一昨日…?
「一昨日って、ひなちゃんが舞組のレッスンに出た日じゃないかしら?」
水曜日が美組で、木曜日が舞組、金曜日が劇組だったわよね。
それなら一昨日は舞組のレッスンに参加した日になるけど…
「え?確かにそうだな…つまりひなは、体力テストをした後、舞組でゆずのダンスについていったのか?」
「…多分、そうなるわね」
ツバサの推理にひめがゆっくり頷いたのを見る限り、そうらしいわね。
え〜…ひなちゃん、それは本当にすごいわ。
☆☆☆☆
ひとしきりひなちゃんの運動神経の話で盛り上がったわね。
たくさん話も出来たし、もうそろそろお開きかしら?
あ、そうそう。
「ひめは明日、顔を出すの?」
有莉ちゃんから聞いた明日予定されている集まり。
私はお仕事が終わったら少し遅れて参加するつもりなのだけど、ひめはどうなのか気になったわ。
「えぇ。お仕事が長引かなければ、だけど」
それは喜んでもらえそうね♪
「ゆずは最初から参加するゾ!ミッキーも!」
「私も参加出来そうかな。生徒会の仕事を早めに片付ければ間に合いそうだ」
それなら明日もこうやって話せるかもしれないわね。
それと、忘れないうちにひめに写真を送っておかないと。
さっき見せた写真と、もう1枚。
こっちのひなちゃんは本当に可愛く撮れたと思ってるわ。
ひめに見せるからと言って撮ったひなちゃんだけの写真。
それだけで数段階ひなちゃんの笑顔が増したの。本当にひめが大好きなのねって思ったわ。
真昼は…同じ状況になった時、どんな表情を浮かべるのかしら?
ハナビシソウのもう1つの花言葉は“私を拒絶しないで”
1と2が連続するこの年この日この時間に投稿したくなってしまって夜なべしました、ムーンナイトです。
2021年も1ヶ月が過ぎましたが、みなさまいかがお過ごしですか?
今年は昨年よりも投稿頻度とスピードをあげられるように頑張ります(決意)
今回出てきた研究生のくだりはムーンナイトの独自解釈を含んでいます。アニメ内で出てきた四ツ星学園の組織表や生徒数を見る限り全員が組に所属しているわけではなさそうかな、と…多分。
それともう1つ、話は変わりますがアイカツプラネットの放送がスタートしましたね。
ムーンナイトは時間がなく見れていないです…(悲しみ)
今(2021年2月12日現在)YouTubeの方で無料配信もしているっぽいので、まだの方はぜひ。
次の更新は27日!…を目標にしております!
お姉ちゃんもといひめ先輩のお誕生日です。
きっと絶対必ず投稿するんだッ…!
それでは、また!
(追記・ここで当時のムーンナイトは致命的な間違いを犯していました。ひめ先輩のお誕生日は