little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
Q. 投稿予約を28日8時15分にしていたせいで27日の朝投稿出来ていなかったミスに加えて、
A.
1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・モデルオーディショングランプリゲットォ!
side:ひな
「個人的には17が良いと思うんだけど。これ」
「でもそれだと文字入れした時になぁ…」
画面に映し出されている写真を見つつ、スタッフさんの会話を頷きながら聞く。
朝から学園のスタジオで始まった
水分補給を手早くしてメイクを直してもらった後、私も写真を見せてもらっていたの。
「…」
どれもイメージした通りにブレなく撮れているのだけど、これだと思うようなものはなかった。
今日着ているのは、立体的なフリルと散りばめられたお花のデザインが可愛いリボンブルーフラワーコーデ。
ノースリーブのトップスに制服と同じようなボックスプリーツのミニスカート、チョーカーと同じカラーで合わせられたパンプス…水色や青、クリーム色でまとめられた全体をキュートに引き締めるピンクのリボン。…私はまだ、このコーデの魅力を十分に引き出せていないのかもしれない。
ポージングや表情、もっと魅力を伝えられるような…
ふと、視線を感じて顔を上げる。
うしろを向くと玉五郎先生がいらっしゃって少しびっくりした。
「おはようございます、玉五郎先生」
そう言って頭を下げる。
「撮影はどう?ある程度は進んでいるようだけど」
「はい。これだと思うものがまだないのですが…」
私の言葉を聞いた玉五郎先生は、画面にサッと目を走らせた。
「なるほどね」
先生が何を写真から読み取ったのかは分からないけれど、その
「ページモデルとしての仕事だったら、申し分ない出来よ。でも…」
表紙裏を飾るには不十分。
言葉にはされなかったけれど伝わった。
どうすれば…。
暗い考えになりかけているのを感じて視線を前に向けて大きく深呼吸。
さっきまで、気付かず視界が
「うーん、この子は抜いた方がいいかな…」
…?
スタジオの
撮影で使ったお花のブーケについて言っていたみたい。
「あ、もう撮影始まります?」
クルリと振り向いた方からそう聞かれて首を横に振る。
「何をされているのか、気になってしまって。ご迷惑でしたか…?」
不安になって私が聞くと、いえいえと言ってくれた。
「この子…この花の元気がないように見えて、どうしようか考えていたんです。抜いてしまうのもバランスが崩れて微妙というか、まぁそんな感じです」
あなたの撮影用にと編集長が今朝届けてくれたブーケ。
真っ白なバラとその周りを飾るカスミソウがとっても素敵なの。
スタッフさんがこの子と呼んでいたのは周りよりも小さめのバラ。たしかに少し元気がなさそう…。
「持ち方を工夫してもらえば見えないし、いちいち気にしなくていいとは思うんですけど。気になってしまうんです」
今から水切りするわけにもいかないし、と残念そうにしていた。
「撮影再開しまーす!」
スタジオ内に響いた声の方へ私達は同時に顔を向けた。
「それでは、はい。どうぞ」
スッと差し出されたブーケを慌てて受け取る。
お花をまとめる白いサテンのリボンがひらりと揺れた。
「ありがとうございます」
一礼してからカメラの前へ移動。
「すみません、ちょっと調整するので待っててください」
「わかりました」
カメラマンさんからの言葉に頷いて返す。
手元のブーケに視線を落とすと、さっきのバラに自然と目がいっていた。やっぱり花びらがくたっとしている…1度認識すると気になってしまうよね。
願うようにブーケを持ちながらそっと目を閉じて小さく息を吸った。
「…〜♪ 〜〜♪」
歌には不思議な力がある。
人だけではなくて、全てのものに力を与えることが出来る。
小さな頃、映画のお仕事でお世話になったボーカルレッスンの先生がそう教えてくれた。
なにより私は、歌うことが好き。
好きなことをすると自然と笑顔が浮かぶし、楽しくて幸せな気持ちになる。
「…そのまま」
作業が終わった気配を感じてカメラマンさんの方を向くと、そんな言葉と一緒にシャッターが切られた。
大丈夫だったのかな。
…でも、この気持ちをそのまま届けられたら嬉しいから、今は変にポージングや表情を意識せずに撮ってもらおう。
そう決めてカメラを見つめた私の手には、魅力いっぱいに咲き誇る白いブーケがあった。
☆☆☆☆
「これにて撮影終了となります!」
スタッフさん達の温かい拍手に包まれて頭を下げる。
休憩を取ったあとの写真は数こそ少ないものの、その質が格段に上がっているのを自分でも感じるくらい良いものになっていた。
「何かを輝かせたいのなら、まずは自分が輝くこと。アイドルとしての基本が身についたかしら?」
最後まで撮影を見ていてくださった玉五郎先生からそう聞かれる。
「はい」
冬服で撮影した時も思ってしまっていた、着ている服を1番に輝かせるということ。
言ってしまえば、私は昔と同じ感覚でお仕事に挑もうとしていた。
今の私はアイドル。
その認識が心のどこかで出来ていなかった。
服も自分も主役になっていい。私が主役になっていい。自由に羽ばたいていい。
その事に本当の意味で気がついた
「…これが、アイドル」
ぽつりと声に出す。
今すぐ走り出したいくらいにワクワクドキドキとした気持ちが溢れて止まらない。
「いい顔ね」
口元に笑みを浮かべて玉五郎先生は目を細めた。
「はいっ」
アイドルって、楽しい…!
☆☆☆☆
制服に着替えて、帰り
「白鳥さん」
「水切りしておきました。すごいですね、こんなに元気になってる」
感心したような表情を浮かべてしげしげとお花を見つめるスタッフさん。
私が着替えている間に保水処理までしてくださったようで、
「
ブーケを私に差し出しながら自己紹介をしてくれた。
「ありがとうございます。白鳥ひなです」
両手でブーケを受け取りつつ私も自己紹介。
今は、ということは以前は別のところでお仕事をされていたのかな?
「下のお名前で呼んでもいいですか?」
四ツ星学園所属ということはお姉ちゃんとも関わりがあるだろうし、苗字だと被ってしまうよね。
はい、と答えると清瀬さんはニコリと笑顔を浮かべた。
「それでは、ひなさん。今後も関わりが増えそうな予感がします。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げられて、私も慌ててお辞儀を返す。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
少し独特なテンポの持ち主である清瀬さんだけれど、これから関わることが増えるかもしれないと、なんとなく私もそう感じた。
☆☆☆☆
「ということで、おでかけしよう!」
ブーケをお部屋の花瓶に飾ったあと、お昼まで図書館でお勉強…と言っても四ツ星学園の図書館は本当にたくさんの本があって、見て回るだけで時間が過ぎてしまったけれど。
読みたい本も色々あったから時間がある時は図書館に行こうかなと考えていたら、合流して一緒にお昼ご飯を食べためぐるが急に立ち上がってそう言った。
「どこかに用事があるの?」
「ううん、ない!」
ということで、がどういうことかわからなくて聞くとすぐに晴れやかな笑顔を浮かべて返しためぐる。
「こんないい天気なのに、出かけない理由がなくない?ひなにとってせっかくの初週末だし!」
そういえば…私が学園に来てから初めての日曜日だった。1日1日が濃厚な1週間だったなぁ。
「それもそうだね」
めぐるの言う通りいいお天気だし、お出かけするのもいいかも。
「お茶、いきたい」
隣に座っているサツキちゃんも乗り気みたい。
「いーじゃん!きらきら市の案内も兼ねよっかな、どう?」
ピンと立てた右手の人差し指を首と一緒に傾けながらめぐるに提案された。
私がきらきら市で詳しい所と言えば少し離れた場所にあるきらきら病院くらいだから、案内をしてくれるのは嬉しいな。
それに、3人でお出かけ・・
「楽しそう♪」
私がそう言うとめぐるはパッと嬉しそうな表情を浮かべた。
「よっし、準備しよー!」
その声に合わせて、おー、と3人で手をあげた。
☆☆☆☆
準備を終えて話しながら廊下を歩く。入り口の近くまで来た時、入ってすぐの場所に小春ちゃんが立っていることに気がついた。
「あっ!」
私が気付くのと同じくらいに小春ちゃんもこちらに気が付いたようで、控えめに手を振ってくれる。
「小春、おつかれ〜」
めぐるがひらひらと手を振りながら挨拶。
小春ちゃん、何をしているのかな?
「ひなちゃっ」
うん?
歩いて来た廊下とは別の方から聞こえた声にそちらを向いても、誰もいない。
今の声は…ゆめちゃん?
名前を呼ばれたと思ったのだけど、なんだか不自然に途切れていたような…。
「ひな?どーかした?」
首を傾げているとさっきよりも少し高い声のめぐるにそう聞かれた。
「ううん。ゆめちゃんの声が聞こえた気がしたのだけど…」
気のせい、かな。
視界の端にサラリとした髪が揺れて、そちらを見る。おろしていた髪を出かけるからとポニーテールにまとめたサツキちゃん、小春ちゃんの横にあるテーブルが気になるみたい。
来ないのかと雰囲気で聞かれたから歩いていく。
「あのね、
えへへ、と照れたように笑いながら事情を説明してくれた。
「3人ともよかったらどうぞ、味も色々あるよ♪」
ニコッと微笑みながら手で
「わっ、めっちゃある!」
「本当…」
色とりどりの飴が並べられていた。
丸い飴玉にひとつひとつの形が可愛いドロップ、フルーツ柄の金太郎飴にのど飴、トローチもあるみたい。
小春ちゃん、飴が好きなんだなぁ。
なんだか昔お仕事で行った飴専門店を思い出してワクワクする♪
サツキちゃんはゆっくりと視線を動かしながら飴を選んでいた。…選んでいるというよりは、目的のものを探しているような雰囲気。
「はい」
そんなサツキちゃんに小春ちゃんが飴を1つ手のひらに乗せて差し出した。
「ウルトラミント味、前めぐるちゃんから教えてもらったの。ハイパーミントと、スーパーミントもあるよ」
どこからともなく小春ちゃんが取り出した追加の飴も、どれもミント味…めぐるから聞いたということは、サツキちゃんはミント味が好きなのかな。
飴を見て嬉しそうな雰囲気を浮かべているから、やっぱりそうみたい。
「…これ」
少し迷ってからサツキちゃんが受け取ったのは最初に出してくれていたウルトラミント味。
「ありがと」
「うん!」
サツキちゃんがお礼を言うと、小春ちゃんはすごく嬉しそうに頷いていた。
私もそろそろ選ばないと…あっ!
「あたしコレがいいな。しゅわしゅわキャンディーのソーダ味」
めぐるが丸いポップな包装の飴を手に取ったのを見てから、とある飴を指差して小春ちゃんの方を向く。
「ハニーレモン、もらってもいい?」
黄色とオレンジのパッケージがなんだか落ち着く飴。お母さんがよく持ち歩いていて、小さい頃から好きだったの。
「もちろん♪」
小春ちゃんは大きく頷いてそう言ってくれた。
「サンキュー小春!」
「ありがとう、小春ちゃん」
それぞれお礼を言って私も飴を手に取る。
そろそろ出よっか、とめぐるに言われて扉の方へ足を向けた。
「それじゃあまたあとでね!」
うん、と頷きかけて止まる。
あとで?
会う予定は無かったと思うけれど…もしかして、私たちが帰ってくるまで小春ちゃんはここにいるのかな?そうだとしたら長時間で大変そう・・
私が少し首を傾げていたら、小春ちゃんは何やら焦ったような雰囲気で冷や汗を浮かべていた。
「とっとにかくいこ!日がくれちゃうって!」
わわっ!
「ん」
めぐるに背中を押されながらサツキちゃんに手を引っ張られて玄関へ。
「えっと、いってきます!」
とりあえず最後に振り返って小春ちゃんにそう言って、私は寮の外へと踏み出した。
side:ローラ
エントランスホールの扉が閉まった。
めぐる達の声が玄関から離れるのを待つ。
「よし」
小さくつぶやいて、バシッと覆っていたゆめの口から静かに手を離した。
「ぷはぁー…」
息を吐いてほっと緩んだゆめをジト目で見る。
「ゆめ、今ひなに会ったらまずいって」
色々持ってる今ひなに会っちゃったらなんて説明すればいいかわからない。
「ごめーん」
眉をハの字にしながら言ったゆめと小春の所に行って声をかける。
「小春、順調?」
「うん。来てくれる人、結構多いみたい」
この辺りを通る人に片っ端から声かけてみるって聞いた時はそんなのできるのか半信半疑だったけど、さすが小春。アメと顔の広さを上手く
「いいじゃん」
有莉先輩がひめ先輩たちS4にも声をかけてくれたし、楽しくなりそうじゃない?
「さっきは危なかったね。めぐるちゃんとサツキちゃんが誤魔化してくれてよかったぁ…」
苦笑いしながら一息吐く小春。
たしかに色々危なかった。
ゆめがひなを見つけた瞬間何も考えずに声かけようとしたから口をふさいで物陰で息を
ホント、2人がいなかったらヤバかった。
「まっ、とりあえず私たちは飾り付けとかしてくるから、小春もよろしく」
定期的にめぐるから連絡が来ることになってる。他の準備のことも考えたら早めに終わらせといた方がいいだろうし。
「うん!」
「またあとでね、小春ちゃん!」
おもしろくなってきたじゃない!
side:ひな
「〜♪」
みんなで
「どうしたの?ひな」
「ご機嫌」
アイカツ☆ステップの音程で少しハミングしていたら、めぐるとサツキちゃんからそう言われた。
どうしたのかと言ったら、やっぱり。
「青空が青くて、ふふっ」
寮を出た時から思っていたのだけど、空が本当に青く澄み渡っていて綺麗なの。
でも言葉にすると、青い空が青いと当たり前なことを言っているようになってしまった。
私の言葉を聞いて2人も空を見上げる。
「ホントだ!きれいだね、今日の空!」
弾けるような笑顔でめぐるはそう言って、サツキちゃんはかざすように空へ手を伸ばした。
「ん、きれい」
伝わってよかったと微笑みながら頷く。
「おっと忘れるとこだった」
3人で空を見上げていたら、めぐるがごそごそとバッグの中を探り始めた。
「ジャーン!」
取り出したのは…
「メガネ?」
目が悪いというわけでも無さそうだし、
「メガネ最強だから!」
そう言って赤い縁取りのメガネをスチャッと装着しためぐる。
何が最強なのかは分からないけれど、似合っていて可愛い♪
☆☆☆☆
お喋りをしながらウィンドウショッピングをしたり本屋さんに寄ってそれぞれ気になる本を見たあと、3人でお茶をしに来た。
「ここ!前ゆめ達と来たんだよねー」
そう言ってめぐるが案内してくれたのは真っ白な
お店のそばにはテーブルや椅子が出されていて、買ったものをそこで食べられるみたい。
「サツキとはまだ来たことなかったよね?」
めぐるの問いにコクリとサツキちゃんが頷く。
「ここのマフィン、めっっちゃ美味しいよ!あの夜空先輩もよく買ってるんだって」
「夜空先輩が?そうなんだ」
前にめぐるが来た時は夜空先輩だけではなくて、朝陽先輩や真昼ちゃんも同じタイミングで買いに来ていたらしい。きょうだい全員が揃っていて、とっても豪華だったと教えてくれた。
確かにその3人が揃う場面はすごく豪華かも。私も見てみたいな。
お店に入るとふんわりとした甘い香りが鼻をくすぐって、たくさんのマフィンが並べられているショーケースが目に映った。
オーソドックスなプレーンマフィンにチョコマフィン、ラズベリー、抹茶…色々な味があるみたい。1つ1つをそれぞれ見ていく。
えっと、これはカレー味?どんな味なのか気になるけれど、また次の機会にしておこうかな。
他には…
「わぁ♪」
このデコレーションマフィン、可愛い!
私やお姉ちゃんがつけているリボンのようなデコレーションがされているの。
「ひな決まったー?」
色々なマフィンに目移りしていたからかいつの間にか時間が経っていて、お会計を済ませためぐるに声をかけられた。
「うん、すぐ行くね」
めぐるには先に席に行っていてもらう。
サツキちゃんもちょうどお金を払ってトレーを受け取っていた。
「いらっしゃいませ」
ニコリと対応を終えた店員さんに声をかけられた。
「水色リボンのデコレーションマフィンを1つと、アイスティーをお願いします」
「かしこまりました」
テラス席で食べると伝えた後にお金を払って少し待つ。
マフィンはなんだか、ドレスに似ているよね。デザインをするとしたらパフスリーブに…あっ、バルーンスカートをデコレーションされたマフィンに見立てたら可愛いかも♪
「お待たせいたしました。お飲み物は席へお持ちいたしますので、少々お待ちください」
店員さんの声に意識を戻す。
「ありがとうございます」
マフィンが乗った優しい色合いのトレーを受け取ってテラス席へ。
「ごめんね、お待たせ」
先に来ていた2人にそう言いながら椅子をひいて腰掛ける。
「いいっていいって。ひな、なにマフィンにした?」
「私はこのデコレーションマフィン♪2人は?」
「あたしはキャラメルバナナ!もっちりしてて美味しいって話題になってて、めっちゃ気になってたんだー」
そういいながらモバイルで投稿を見せてくれた。
それぞれみんな好きな味があるようだけど、どれも全部美味しいと書かれている。食べるのが楽しみ♪
「サツキちゃんは…」
なんだかすごい色をしているけれど、多分・・
「チョコミント」
あ、やっぱり。
ミント色の生地にチョコレートが混ざっているのだけど、見た目のインパクトがすごく大きかった。
「お飲み物をお持ちしました」
丸いトレーにグラス2つとカップ1つを乗せてやってきた店員さんにありがとうございますとお礼を言う。
私がアイスティーでめぐるはレモンソーダ、サツキちゃんはアールグレイを頼んでいた。
さっき店内で見ていたのだけど、飲み物は全て注文を受けてからいれているみたい。
「サツキ猫舌なのに、だいじょぶ?」
めぐるが心配そうにサツキちゃんへ言った。サツキちゃん、猫舌なんだ。熱いのでお気をつけくださいと言われていたよね。
「ん、さます」
サツキちゃんがソーサーへ置いたカップからふわりと湯気が立ち上って、まるで日差しに溶けるかのように消えていく。
3人全員がそれを綺麗と感じたようで、笑顔を浮かべて顔を見合わせた瞬間にまた笑ってしまった。
☆☆☆☆
マフィンカフェでお茶をしたあとは立ち寄った雑貨屋さんでお買い物をしたり、公園のベンチで日向ぼっこをしたり…。
あっという間に夕方になって、行きと同じように電車を使って学園の近くまで帰ってきた。
「んー!マジで楽しかったね、お出かけ!」
夕日に照らされている道を歩きながら、ぐっと伸びをして笑顔を浮かべためぐる。
「ん」
「うん♪」
サツキちゃんと一緒に答えて肩にかけていたバッグから小袋を取り出す。
雑貨屋さんで買ったのは、3人お揃いのチャーム。付いているキラキラとした宝石が色違いなの。
バッグチャームとして使えるから、持っているバッグのどれかにつけたいな。インテリアとして机に飾っておくのもいいかもしれないけれど。
「あたし達の初めてのお出かけ記念の
「稽古も、アイカツも」
「うん、私もがんばる!」
1週間前はまだ1人で病院にいたなんて少し信じられない。それくらい濃密だったし、全てが新鮮で、すごく楽しかった。
お喋りをして、笑い合いながら寮へ帰ってお部屋に荷物を置く。サツキちゃんも荷物を置きに行くようで、そこで別れた。
とりあえず私服から制服へ着替えたところで…
「あっひな、ちょっとそこ立って?うん、そうそうサンキュー。目、つぶってくれる?つぶった?よし、ほいっと」
急に目隠しをされた。
☆☆☆☆
「段差ないからそのままだよー」
しっかりと目隠しをされて何も見えない中、握っためぐるの手と耳から聞こえる音だけを頼りに進んでいく。
「め、めぐる…どこまで行くの?」
耳から聞こえる音と言っても、タオルで目隠しをされた時に耳も
耳がちゃんと聞こえていれば音の反響で大体の空間把握が出来たのに…。
「あとちょっとで着くよ」
着く…?
離れないようにめぐるの手を握り直してそのまま少し。
床の材質が変わったのを感じた。
…あれ、もしかして人の多いところに来たかな。
「ひな、ここに立って。まだ取んないでね」
「う、うん」
返事をしたら、めぐるの手が離れていってしまった。
何も見えない中で頼りが無くなると不安だなぁ。
「よし、目隠しとっていーよー!」
頭の後ろにあるタオルの結び目を
“パーン!”
「!」
光を眩しく感じながら目を開けた瞬間に、キラキラとしたテープが視界を埋めた。
「「「「ようこそ、四ツ星学園へ!」」」」
えっ?
ここは…?それにこんなにたくさん・・
「ひなが四ツ星に来てから、1週間!」
戸惑っていたら、ちょうど正面に立っていためぐるが口を開いた。
「私たちは新入生歓迎パーティーを開いてもらったけど、ひなはまだだったでしょ?」
その隣にいるのはローラちゃん。
「だからひなちゃんのための歓迎パーティーをしようと思って、こっそり準備してたんだ!」
クラッカーを見せながら、ゆめちゃんが教えてくれた。
さっきの音はみんなが持っているクラッカーの音だったみたい。
「危うくバレちゃいそうだったけどね」
ゆめちゃんの隣でホッとしたような表情を浮かべているのは小春ちゃん。
…じゃあ、お出かけする時のあの声も。
「ツバサっちと、ゆずもいるゾ!」
バッと手を上げてそう教えてくれたのはゆず先輩。
「生徒会長としても歓迎する。あらためて、ようこそ!」
1歩前に進み出たツバサ先輩がそう言うと、集まってくれている人たちから次々にようこそという声と拍手があがった。
ゆず先輩とツバサ先輩だけではなくて、有莉先輩や桂先輩、ありさ先輩も。
それにクラスのみんなや歌組の子、桃井さんや宮小路さん、他にもこの1週間で仲良くなった子や一緒にレッスンをした人たちが来てくれていた。
「驚いた?」
私が言葉を出せずにいると、めぐるの隣にいたサツキちゃんがこちらに来て私の手を取りながらそう聞いた。
握られた手を思わずキュッと握り返す。
「うん、すごくびっくりした…!だけど」
1度言葉を切って周りを見渡す。
ここは小さなカフェテリアのようなコミュニティラウンジで、奥の壁には手作りの垂れ幕がかかっていた。
『ようこそ四ツ星学園へ‼︎ ☆白鳥ひなちゃん歓迎パーティー☆』
ソワソワと落ち着かないようなめぐるを始めとして、こんなにたくさんの人が集まってくれている。
そのことが本当に…!
「それ以上に、とっても嬉しいっ!」
ラウンジに、わぁっと歓声が広がった。
side:夜空
「ありがとうございました♪」
学園まで送り届けてくれた運転手さんにしっかりお礼を言ってからクルリと反転。
さてと、四ツ星寮へ急がなくちゃ。
少し早足で歩いていたらモバイルに連絡が来たわ。
ひめから…さっき私がこれから向かうわねと送っておいたからかしら。
『お疲れさま夜空。もう着いた?』
本当は歩きながらモバイルを操作したらいけないけど、ちょっとだけ。
『今さっき学園に着いて向かってるところよ。ひめはお仕事どう(・・?)』
それから寮に着いて扉を開けたあたりで返信が来たわ。
ちょっと止まろうかしら。
えっと、なになに〜?
『それがまだ終わっていないの。長引きそう。』
あら…
『歓迎パーティーには間に合いそう?』
ひめが長引きそうと言ったら大抵長引くし、場合によっては厳しいかもしれないわね。
『分からないわ。でも絶対間に合わせてみせる。』
ひめ…
そうよね、だって
『終わったり何かあったりしたら連絡ちょうだい♪待ってるわね〜 | ´ ∀ `● )』
これでよし、と。
もしもひめが間に合わなかった時のためにも、ひなちゃんやみんなの写真を撮っておこうかしら?
side:ひな
私がサプライズを受けてから少し。
「みんなお疲れさま〜。乾杯前に間に合ったみたいね♪」
「夜空先輩!」
「ふふっ、四ツ星学園へようこそ♪ひなちゃん。ひめから連絡があってね、お仕事が長引いてるみたいだけど、絶対間に合わせるって言ってたわ」
嬉しいお知らせと共に夜空先輩も駆けつけてくれて、本格的に歓迎パーティーがスタート。
四ツ星学園で何かパーティーをする時はビュッフェスタイルになることが多いらしく、テーブルにたくさんのお料理が並べられていた。
みんなと話しながら少しずつ食べていって、その間にめぐる達から色々なことを教えてもらった。
この歓迎パーティーはめぐるとゆめちゃんが中心となって計画してくれたこと。
有莉先輩が他の幹部生やS4の先輩方にお話してくれたこと。
それと思っていた通りお出かけ前に聞こえた不自然な声はゆめちゃんで、飾り付け用のアイテムを持ったまま私に話しかけようとしてローラちゃんに慌てて口を塞がれて隠れていたこと。
小春ちゃんがあそこで飴を配っていたのはパーティーに参加しないかと色々な人に声をかけてくれていたからだということ。
お出かけの最中に時々めぐるがモバイルをいじっていたのはお互いにどんな状況かローラちゃんと連絡しあっていたからということ。
「真昼ちゃんにも声かけたかったんだけど、会えなくて…」
たまたま2人になった時、小春ちゃんからはそんなことを教えてもらった。
「そうなんだ」
真昼ちゃん、私も水曜日にお昼ご飯を一緒に食べて以降はお部屋も近いのに見かけていないし…。
「ごめんねっ、歓迎パーティーなのに暗い顔しちゃった…!」
慌てた様子の小春ちゃんに首を振る。
「ううん、大丈夫。心配だよね…」
「うん…」
私の言葉に、小春ちゃんはこっくりと頷いた。
☆☆☆☆
デザートにゆず先輩特製のトロピカルパフェが登場して、パーティーは大盛り上がりのまま終わろうとしていた。
お姉ちゃんは、まだ。
みんなに歓迎してもらえたのはもちろん嬉しかったけれど、やっぱりお姉ちゃんにもいてほしかったな…って、ダメダメ。
「ひな、考えごと?」
めぐるの言葉に微笑む。
「嬉しくて、覚えていたいからみんなのことを見ていたの」
お仕事が長引くのは仕方がないし、こんなにたくさんの人にパーティーをしてもらったのだから。
「そっかぁ。楽しいのってあっという間だもんね」
めぐると2人で笑顔を浮かべる。
ツバサ先輩と桂先輩がキッチンの使い方についてゆず先輩にお話していたり、そこから逃げたゆず先輩に盾にされた有莉先輩がまぁまぁと
めぐるの言った通り、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
「ひなちゃん、ちょっといいかしら?」
さっきまで小春ちゃんと話していた夜空先輩にそう聞かれた。
「はい」
返事をすると、そのまま夜空先輩の手にあったモバイルを差し出される。
「ひめと繋がってるわ」
っ!
「あの、少しお借りしてもよろしいですか?」
思わずそう聞くと、夜空先輩はにっこりと笑った。
「えぇ♪そのつもりで来たんだもの」
はいどうぞと渡された夜空先輩のモバイルを受け取ってそっと耳に当てる。
《もしもし、ひなちゃん?》
優しい声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん…!」
《パーティーに行けなくてごめんなさい。今お仕事が終わったの、間に合わせたかったんだけど…》
少しトーンの低い、しょんぼりとした声が聞こえる。
もうすぐパーティーが終わると夜空先輩から聞いたのかな。お姉ちゃんが今いる場所からは終わるまでに間に合わないのだと思う。
「ううん。お姉ちゃんの声を聞けただけで嬉しいから」
さっき感じた寂しさが嬉しさに変わる。落とさないように両手で支えたモバイルから、お姉ちゃんが微笑んで笑った声が届いた。
《でもどうしても伝えたくて、夜空にお願いしたの》
「うん」
ドキドキとしている鼓動を呼吸で抑えつつ、頷いてお姉ちゃんの言葉を待つ。
《ひなちゃん、四ツ星学園へ…この世界へようこそ》
力強い、大好きな声が胸を打った。
アイドルの世界。
お姉ちゃんがその
あるライブを見てから今までにないくらい胸がときめいて、アイドルになりたいと願った。
入院中もずっとずっと恋をするように憧れて、やっと飛び込むことができた。
もちろん、キラキラとした華々しいだけの世界ではないことも分かっている。
それでも、やっぱり──
「うんっ!」
私は、この世界が、大好き!
Q. 失踪するの?
A. しない(鋼の意志)
ひなちゃんのブーケに使われていた白いカスミソウの花言葉は「清らかな心」「幸福」
白いバラの花言葉は「純粋」「無邪気」そして「新たな始まり」を意味します。
…はい、ということで、一瞬衝撃で心が折れかけました。
なんとか持ち直しましたが申し訳なさすぎて投稿が遅れさらに申し訳ない気持ちが溢れ出てる負のスパイラルムーンナイトです。
前話の後書きからひめ先輩のお誕生日を間違えていてしまい本当にすみませんでした(土下座)
今日は帰宅して落ち着くまで端末を見れなかったことが原因で、まず投稿できていない事に気が付いたのが深夜0時5分。
その時点で割とショッキングな上に乱れた心を癒すため白鳥ひめ生誕祭2021で検索したところ致命的すぎる日付けに気が付きズタボロにされました…
申し訳ない、大変申し訳ないです…(スライディング土下座)
今回は珍しくシリアス無しの完全ほのぼの回だったのに…後書きで色々語ろうと思っていたのに…ぐはっ。
とりあえず1つだけ補足を…サツキちゃんのポニーテールですが、「魔王城でおやすみ」というアニメの主人公・スヤリス姫のポニーテール姿がイメージにかなり近いです。髪の長さはスヤリス姫よりも短めですが。
そして次の投稿は、ひなちゃんのお誕生日である3月18日を予定しています。
3月18日。自分で生み出したオリジナルキャラクターの誕生日まで間違えたりしませんので。ご安心ください。ふふふふふ。
過ぎてしまった時間はどれだけ悔やんでも戻らないということで、今後同じような間違いを起こさないよう気をつけながら、気持ちを切り替えていきます!
それでは、また!