little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
本日はこの小説の主人公ひなちゃんのお誕生日。
ということで投稿します!
1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・め ず ら し く ほ の ぼ の
side:ひな
朝といっても、まだ日は出ていない暗い時間。
日記を書き終えた私はデスクライトの光のもとでスケッチブックにペンを走らせていた。
大体のシルエットを決めて、そこから頭の中のイメージを転写するようにドレスを描いていく。
ドレスのデザインスケッチは以前から好きで続けていたのだけど、四ツ星学園に来てからは出来ていなかったから少し久しぶり。
「…」
自分の描きたいものを自由に描いているから自然と笑顔が浮かぶ。
そういえば…このスケッチブックを全て使ったら予備がもうない気がする。まだページはあるけれどデザインスケッチをしていたらすぐに無くなってしまうし、近いうちに用意しておきたいな。
本館に学園の購買部があったはずだから、今度行ってみよう♪
本館の地図を頭に思い浮かべてから、私は止まっていた手を動かし始めた。
☆☆☆☆
しばらくデザインスケッチをしてから日課のランニング。
「アイ、カツ!アイ、カツ!」
デザインに集中しすぎて時間が押してしまったし、今日の夜はちょっと長くお勉強の時間を取ろうかな。
いつもより遅くなってしまったからか、走り始めて少しするともう日が出てきた。
今日は授業のあとに歌組のレッスン、それから…
「おーい白鳥!」
…?
少し遠くから呼びかけられた声に立ち止まって振り返る。
私たちが着ているものとはまた違うウェアにシューズ。
ダークブラウンの髪に遠目から見てもわかる青色の瞳。
私に声をかけたのは、四ツ星学園男子部が
先輩も朝のランニング中かな?
…初めてお会いするはずなのだけど、それにしては声が
「髪型変えたのか?…ん?」
ある程度近くまで来た所で立ち止まって私にそう聞いた後、違和感を感じたように首を傾げたすばる先輩。
もしかしてお姉ちゃんと間違われている?
それなら…
「気分転換に少しね」
目を
「おぉ、そうか。でもアイドルとしてのイメージは…」
声色から伝わってくるのは納得と心配。プロ意識の高さもそうだけれど、優しいということもそれだけで感じられた。
「ふふっ」
もう少し聞いていようと思っていたのだけど、つい笑顔が
「待てよ、やっぱ違くねーか?」
少し
目の前のすばる先輩は私が本当にお姉ちゃんなのか疑いの眼差しを向けていた。
「白鳥ひめの妹の白鳥ひなです。よろしくお願いします、すばる先輩」
自己紹介をしながらペコリと頭を下げて、笑顔を浮かべる。
「マジか…」
すばる先輩はというと、
「結構イタズラ好きなのな」
「ごめんなさい。姉と間違われていたようなので、つい」
私がそう言うと先輩は、あー、と口にしながら頭に手をやった。
「それについては謝る」
すまんと口にした先輩に対していえいえと答えてから少しお話をして、せっかくだからと一緒にランニングもさせていただくことになった。
☆☆☆☆
しばらく走りながら色々とお話。
話している間に似ているけれどお姉ちゃんとは違うと言われた。でもお姉ちゃんも以前すばる先輩にちょっとした
お姉ちゃん、どんなイタズラをしかけたのかな?
それと、先輩は私が小さい頃に主演を務めた『
アクションシーンが好きだったと教えてくれた。
私が演じたいろはは忍者の里で暮らす子という設定だったのだけど、最初は手裏剣を投げるフリをして後から他の人が投げた映像を組み合わせる程度のアクションしか予定されていなかったの。
修行シーンでの受け身だけは私がということで事前指導で教えていただいていたら、指導員の方が他の事も出来るんじゃないかと岡本監督に直接お話を持っていって、その結果盛り上がるアクションシーンがたっぷりと詰まったドラマが完成した。
…そういえば、1度本当に私がアクションシーンを全て自分でやっているのかと疑われた事もあったなぁ。その時はスタジオに用意された
そういう裏話を興味津々な表情を浮かべたすばる先輩に話していたら、あっという間に時間が過ぎていた。
「それじゃあな」
「はい♪」
男子部へと続く道で先輩と別れる。
振られた手に頭を下げて寮へ向けて走り出そうとした瞬間、強い視線を感じた。
嫌な感じではないけれど、腕がぞわりとするような…辺りを見回してその視線の元へと目を向ける。
「んぎぎぎぎ…」
木の
「……早乙女さん?」
「ッシャー!!」
「!?」
びっくりした…!
劇組のレッスンの時とはまた違った表情を浮かべている早乙女さんに恐る恐る声をかけたら、なにやら本物の猫のように
…えっと、何が起こったのかはよくわからないけれど、とりあえず寮に戻ろうかな。
☆☆☆☆
午後。初めて参加する月曜日の授業を終えて歌組のレッスンへ来た。
「めぐる、このテーブルは?」
隣にいるめぐるに問いかける。
レッスンルームのうしろの方には丸い形のホワイトテーブルがいくつか置かれていた。それと、なぜかティーセットも。
「ん?あ、そっか。ひなはひめトレ初めてだっけ?」
あぁ、なるほど。
お姉ちゃんが考えていたあのトレーニングなら、どうしてティーセットがあるのかも理解できた。
「簡単に言うとめっちゃキツいお茶会式空気椅子トレーニングかな。あとはまぁ、慣れるより習えって言うじゃん?」
あれ?それは言わない気が…
「めぐる、それを言うなら習うより慣れろじゃない?」
会話を聞いていたローラちゃんが思わずといった様子で突っ込んでいた。
「そうだっけ?サンキューローラ」
私がよく聞くのも習うより慣れろの方だから、多分ローラちゃんが合っていると思う。
「そーいうわけで、テーブルだけ使うから準備しよってこと」
うしろに寄せてあるこのテーブル達をレッスンルーム内に広げるみたい。
「うん、わかった♪」
それからめぐると一緒にいくつかテーブルを運んでいたら、入り口が騒がしくなった。
「ひめ先輩!」「お疲れ様です!」
お姉ちゃん?
レッスンに来てくれたみたい!
少し手が離せなかったから作業が終わってから目を向けると、みんなに囲まれているお姉ちゃんの姿が見えた。
「ひめ先輩、囲まれちゃったねー」
めぐるの言葉に思わず苦笑いを浮かべる。
直接会えるのは1週間ぶり。あの時はなぜだかお姉ちゃんがすごく疲れていて、私は大丈夫だからと強引に帰ってもらった。
アイカツTVで元気そうにしているのは見ていたし、昨日は声を聞けたから体調に問題がなさそうということも分かっている。でもやっぱり心配だったから、お姉ちゃんの姿が見れて少し安心した。
「Heyベイビー達、準備は終わったのかい?」
腰に手を当てて片眉を上げたアンナ先生の問いかけに、お姉ちゃんを囲んでいたみんなが焦った様子で戻ってくる。
「ふふっ」
次のテーブルをめぐると運び始めた時に聞こえたお姉ちゃんの声。きっと、みんなを
☆☆☆☆
「はいコレ!」
テーブルの準備が終わったところで、めぐるから抽選箱のようなものを差し出された。
「これは…?」
首を傾げると、先にその箱へ手を入れて何か取り出していたゆめちゃんがワクワクとした表情を浮かべながら口を開いた。
「マルが付いてたら、ひめ先輩と一緒のテーブルでひめトレできるんだよ!」
そのためのくじ引き、らしい。
箱の中には折り畳まれた紙が入っていて、それを1枚取るということも続けて説明してくれた。
「そうなんだ」
お姉ちゃんと一緒に…
チラリとお姉ちゃんの方を見る。
お姉ちゃんもたまたま私のことを見ていてくれたのか目が合って、ニコッと微笑んでくれた。
自分の頬がゆるむのを自覚しつつ、差し出された箱から紙を1枚取り出す。
「みんな取ったー?」
めぐるが最後にもう1度確認してから箱を置きに行って、スタタタと早足で戻ってきた。
「「せーのっ」」
ゆめちゃんとめぐるの声に合わせて、全員が
「あっ」
丸…
思わず声を上げた私の隣で思い切りよく紙を開いためぐるから、パァッと明るい雰囲気が広がった。
「やった!」
めぐるの紙にも丸がついていたみたい。
「ハズレたぁ…」
一方でゆめちゃんはハズレだったのか、がっくりと膝をつきながら落ち込んでいた。
「今日の当たりはめぐるとひなね、よかったじゃない」
私とめぐるの紙を覗いて確認したローラちゃんがウィンクしながらそう言ってくれた。
「ゆめ、ほら準備!」
私が頷くと今度は落ち込むゆめちゃんに声をかけたローラちゃん。
その声に、ゆめちゃんがピコーンと反応して笑顔を浮かべた。
「うん!今日も勝負しようね、ローラ!」
さっきまでの落ち込んだ雰囲気はもうなくて、ゆめちゃんは胸の前で2つの握りこぶしを作りながら気合を入れていた。
「おもしろいじゃない!負けないから!」
対するローラちゃんも勝気な笑みを浮かべてその勝負を受ける。
「ゆめとローラはいっつもあんな感じで勝負しててさー。今んとこローラの方がよく勝ってる感じ」
「そうなの」
めぐるの説明に頷いた。
ゆめちゃんとローラちゃん、お互いにいい刺激をもらえていそう。
「よしっ、あたし達も行こっか!Let'sひめトレ!」
そう言って、隣に立っためぐるはニカッと笑顔を浮かべながら私の方に左の手のひらを向ける。
「うん!」
考えるまでもなく応えるように自然と右手が動いて、パチンと手を合わせた音が私達の間に響いた。
side:ひめ
私が考えたレッスン、ひめトレ。
これは私が自分を徹底的に
「紅茶はいかが?」
そんな中で1人普段と変わらない微笑みを浮かべながら周りの様子を見ていた
ひなちゃん。1週間ぶりにようやく会えた。先週はレッスンに参加してもひなちゃんがいなくて、昨日あった歓迎会へは私が行けなかった。
だから今日のレッスンには絶対顔を出したかったの。
レッスンルームに着いてからはついついひなちゃんのことを見ていた。他の子たちが私の周りに集まる中でテーブルをめぐるちゃんと用意していた時も、恒例のくじ引きに戸惑っていた時も。くじを引く前には目が合って少し驚いたけど。
めぐるちゃんと一緒にひなちゃんの紙にも丸がついていたと分かった時はすごく嬉しかった。もちろん誰と一緒になってもその子の成長を見られるから嬉しいけど、やっぱりひなちゃんは特別。たった1人の妹だもの。
「いただきます♪」
嬉しそうな表情を浮かべたひなちゃんのカップを受け取ってティーポットから紅茶をそそぐ。
「めぐるちゃんは…」
顔を向けると、めぐるちゃんは膝に手を置きながら強張った笑顔を浮かべていた。
「すみません、ちょっと、遠慮させてもらいます」
歌組1年生の中ではローラちゃんと並んで実力者と言われているけど、まだひめトレでお茶を飲む余裕は無さそうね。
「わぁ、美味しい…」
私から受け取ったカップに口をつけたひなちゃんが顔を
「ちゃんと味は出ている?」
今日使ったのはダージリンのファーストフラッシュ。花や果実を思わせる香りと爽やかな風味がお気に入り。
普段のように
私の問いに微笑みを深くして頷いたひなちゃんを愛おしく思いながら口を開く。
「学園生活はどう?もう慣れたかしら?」
本当は歓迎会の時にこうお話ししたかったけど、それは出来なかった。
「お友達も出来て、レッスンでもたくさん学べて…とっても楽しいです」
学んだことを思い出していたのか少し目を
「ふふっ、それならよかった」
美組でも、舞組でも、劇組でも、先生やS4の予想を遥かに上回る成長スピードと実力を
それに…
「ツバサやゆず、夜空からそれぞれ色々聞いてるの。写真も見せてもらったわ」
それを聞いて、ひなちゃんは少し恥ずかしそうに笑った。
ゆずの
ツバサからも、劇組の記録用に幹部のありさちゃんが撮っていた写真の中でひなちゃんが写っていたものがあったと送られてきた。何か腕を動かしながら演技について説明するツバサをじっと見つめるひなちゃんの表情は、真剣そのものだったわ。
ツバサも夜空もゆずも、ひなちゃんと写った写真があるのよね。
「今度…あら?」
一緒に写真を撮ろうと言いたかったのに、周りの子たちがほとんどギブアップしていることに私は気付いてしまった。
side:ひな
「今度…あら?」
お話していたら、ふと気付いたように声を上げた
それにつられて私も周りを見渡すと、かなりの人が息を切らして倒れ込んでいた。
「くっ、げんかいっ」
ぷるぷると震えていためぐる。尻餅をついて、そのまま大の字を描くように床へ倒れた。
「大丈夫?」
脱力しながら倒れた時、少し大きな音がしたから心配…。
声をかけると、息を切らせながら手をひらひらと振って応えてくれた。
「2人だけになっちゃったわね」
え?
周りを見てみると、ゆめちゃんやローラちゃんもいつの間にか床へ倒れていた。ゆめちゃんが悔しそうな顔をしているから今回の勝負はローラちゃんが勝ったのかな。
チラリとローラちゃんの方を見る。得意げな表情を浮かべていたのに、私の方を見て驚きの表情に変わっていた。どんな反応をすればいいのか分からなくて曖昧に微笑む。
えっと、とりあえず。
「アンナ先生、どうすれば…」
レッスンルーム全体を見られる位置に立っていたアンナ先生に指示を
目を少し細めたアンナ先生が口を開いた。
「あとどれくらい続けられる?」
どれくらい、か。
一瞬考えたあとに視線を上げると、青緑色の瞳と視線がパチリと合った。
「レッスンが終わる頃までは、おそらく」
アンナ先生の方を向いてそう伝える。
毎日この空気椅子の状態で日記を書いたりお勉強をしているし、レッスン時間中は続けられると思う。
「OK、ひめトレはここまで!」
私の言葉を聞いたアンナ先生が素早く指示を出してくれたから、そのまま立ち上がる。
みんなが疲れたぁとそれぞれ口にしている中でそっと
「さすがね、ひなちゃん」
ともすれば周りの音に埋もれてしまうような小さな声だったけれど、私の耳にははっきりと聞こえた。
褒めてくれたことが嬉しくて、私は1人、笑顔を浮かべた。
☆☆☆☆
ひめトレのあと、みんなの体力が少し回復してからはまたレッスン。
今日もペアで最初に軽く体をほぐして、そのあとは4人組でメニューをこなしていた。
ペアになったのはめぐるで、さらにゆめちゃんやローラちゃんと4人でどんどん進めていく。
あれ…?
「ひな?」
私の動きが少し止まったからか、めぐるが声をかけてくれた。
今、頭の中に急に浮かんだのは・・
「真昼ちゃん…?」
ミルキーブラウンのウェーブヘアを
「え、真昼がどうかした?」
ローラちゃんの声に我に帰る。
「ううん。なんでもないの、急にごめんね」
無意識に口に出していたみたい。
急に真昼ちゃんのことが頭に浮かんできたからびっくりした。
「そういえば、最近真昼ちゃん見ないねって、小春ちゃんとも話してたんだぁ」
ゆめちゃんが思い出すように少し上を向きながらそう話す。
「真昼といえば…うん、今日の授業来てなかった!」
腕を組んでむむむ、と考えていためぐるが教えてくれた。
「あんまがんばりすぎてないといいけど」
私の反応やゆめちゃんとめぐるの言葉を聞いたからか、ローラちゃんが心配そうに呟いた。
「そうだね…」
真昼ちゃん…。
どうしてか、嫌な予感がまとわりつくように離れなかった。
☆☆☆☆
レッスンが終わってから図書館へ向かって、色々な本を読んだ。気になったドレス大全Ⅰという本も借りられたから、夜のお勉強が終わったら早速読み込もうかな。
まだ全ての棚を見れていないし、次に行く時は気になった本の位置を覚えながら棚を見てまわろう。
本館のエントランスへ向かう廊下を歩きながらふと視線を動かす。
あそこにいるのは…!
少し急いで歩いて大扉の近くへ。
「真昼ちゃん?」
やっぱり。真昼ちゃんが、エントランスと外に続く扉の
「…あ」
呼びかけにこちらを向いた真昼ちゃんは、少し経ってからようやく気付いたように声を上げた。
疲労、
どうしてこんな所で立ち止まっていたのか考えて、気が付く違和感。
「靴は…」
真昼ちゃんが身につけているのは紫色が基調のレッスンウェアに靴下。靴を
「保健室」
小さくボソリと口にした真昼ちゃん。
保健室、ということはどこか具合が…レッスン中に真昼ちゃんの姿が頭に浮かんで嫌な予感がまとわりついたことを思い出した。
「取りに行く?」
私の言葉に、真昼ちゃんは
「別に。そのまま帰る」
それは…!
「危ないよ、怪我をしてしまうかも」
いくら整備されていると言っても、寮までの道に尖ったものが落ちていないとは限らない。それに夏の日差しで道が暖められているから、
一瞬で色々な可能性が頭をよぎって真昼ちゃんに言葉をかけていた。
「…でも」
それでも戻りたくなさそうな真昼ちゃん。
保健室から靴を履かずにここまで来ることを、八重先生が許可するとは思えない。そもそも靴を履いていないということは、ベッドで横になっていたということだよね。
そこで
真昼ちゃんも飛び出してきたならそれなりの理由があったのだろうし、そこに戻りたくないというのは当然の流れなのかも。
「それなら、私が取りに行ってもいいかな?戻って来たら一緒に寮に帰ろう?」
それでも今の真昼ちゃんを放っておくことは出来ないし、かといって私が真昼ちゃんをお姫様抱っこして寮に戻れば変に注目されてしまうと思う。私は構わないけれど、その方法だと真昼ちゃんの靴は手元にないまま問題が解決しないし…。
だから、私が真昼ちゃんの靴を取りに行くことが1番良いと思ったの。
「…うん」
少し時間をおいてから真昼ちゃんは頷いてくれた。
「真昼ちゃん、人気の無い所に移動しておく?」
本館のエントランスということもあって、さっきから段々と注目が集まってきているから。
「いい。ここにいる」
俯いたまま短くそう言った真昼ちゃん。周りの状況がどうでもいいくらい、心に余裕がないのだと思う。
いま私に出来ることは、出来るだけ急いで、より早く戻ってくること。
「わかった。それじゃあ行ってくるね、すぐに戻って来るから」
真昼ちゃんにそう伝えてから、私は
☆☆☆☆
走っているとは思われないギリギリの速さで歩く。
はじめてのステージで倒れてしまってお世話になった保健室の扉が見えてきた。
少し深めの呼吸を1度してから3回ノック。
「失礼します」
保健室へ入ると、八重先生は丁度ベッドの周りを仕切るカーテンを閉めた所だった。
「あら、どうしたの?」
サッと一瞬で私の全身を見ながら、そう言われた。怪我や病気ではないともう分かっているみたい。
「体調不良ではないのですが、頼まれごとを…」
数歩保健室の中へ入りながらその先を言おうとして、立ち止まる。
先生の机の横に真昼ちゃんのものらしき靴を見つけた。
でもそれはいい。私が思わず立ち止まった原因は別にあって…。
カーテンの向こうから、夜空先輩の気配がする。
保健室に入った時に感じた、集中しないと分からない程度に漂っていたあの香りも、多分夜空先輩のもの。
「探し物はこちら?」
立ち止まった私を気にせず靴を手に取った八重先生がこちらを向いた。紫のラインが入ったレッスンシューズ。
「はい。そうだと思います」
「靴を履かないまま出て行ったのは1人だけだから間違いないでしょうね」
まだ本当に真昼ちゃんの物か分からなかったけれど、八重先生が教えてくれた。
「届けてもらえる?」
「はい」
差し出された靴を両手で受け取る。
めぐるやゆめちゃん、ローラちゃんが言っていたこと、小春ちゃんの心配そうな顔が
「とどけたら、一緒に寮へ帰ります」
先生だけではなくて、そこにいるであろう夜空先輩にも聞こえるよう言葉にする。
八重先生が頷いたのと同時に、夜空先輩の気配をさっきよりも強く感じた。
☆☆☆☆
保健室から急いでエントランスへ向かう。
「ねぇさっきのって真昼さん?」
「何してるんだろう?」
向こうから来てすれ違った子達の会話の中には、真昼ちゃんのことが多く含まれていた。早く戻らないと…!
エントランスが見えてきた所で、頬に手を当てて険しい顔をしていた真昼ちゃんは私に気付いてくれた。
「先生から」
そばに行ってから靴を渡す。
夜空先輩には会っていないし、多分今の真昼ちゃんに夜空先輩の話題は出さない方がいい。
「…」
無言で靴を受け取った真昼ちゃんは、暗い顔のまま足を入れた。
立ち上がった真昼ちゃんを見て思わず手を伸ばしかけて、止まる。
余計なことかもしれない…でも、真昼ちゃんが泣きたいのに泣けないような顔をしていたから。
一瞬
「…!」
驚いた表情を浮かべた真昼ちゃん。それでも、私の手を振り払ったり離したりすることはなかった。
「寮まで歩けそう?」
さっきも思った、もしかして過労で倒れてしまったのではないかということ。そうだったら、本当に私が抱いて帰った方がいいかも。
「平気」
上げた顔をまた俯かせながら、真昼ちゃんは私の手を握ってそう言った。
平気というならそれに
でもいつもよりはゆっくりと、私は真昼ちゃんの手を引いて歩き始めた。
☆☆☆☆
「靴、ごめん」
しばらく無言で寮へ歩き続けていると、真昼ちゃんからポツリと漏れた言葉が耳に届いた。
「ううん。靴がないと、歩きにくいもの」
私の言葉に頷いた真昼ちゃんは、俯いて何かを悩んだような雰囲気を浮かべたあとに口を開いた。
「その、手…」
その言葉を聞いた瞬間に、本館からずっと繋いだままだった手をパッと離す。
「ごめんなさい、ずっと握ったままで…!」
私の言葉に真昼ちゃんはあっと何かを言いかけて、色々考えるようにしたあと、また黙ってしまった。
どうしよう…。ただでさえ調子が悪そうなのに、私が手を繋いでいて嫌な気持ちにさせてしまったかもしれない。
心臓が嫌な
☆☆☆☆
あのまま特に会話もなく、寮のお部屋前までたどり着いた。
「真昼ちゃん、夜ご飯は…」
真昼ちゃんがお部屋に入る前に、さっきから気になっていたことを聞く。
「部屋で何か食べるから」
キッチンには軽い料理が作れる設備があるし、冷蔵庫の中に何かあれば食べられるよね。
「ご飯と一緒に水分も摂ってね」
少しほっとしながら1歩引いて見送るように立つ。
それに対して頷いた真昼ちゃんは、ドアに手をかけてゆっくりと視線を動かした。
「…手は、嫌じゃなかったから。ここまでありがとう」
…!
「うん。またね」
手を振った私に頷いてお部屋へ入った真昼ちゃんを見送ったあと、安心と嬉しさからほっと息を吐いた。
やっと、原作らしいシーンが出たなって思いました(しみじみ)
みなさまどうもこんにちは、ムーンナイトです。
ひなちゃんが頭に舞い降りてきてから誕生日も3回目、ここまで細々ながら投稿を続けてこられたこと、感謝でいっぱいです。
いつも読んでくださるみなさんのおかげでムーンナイトは日々頑張れています。ありがとうございます!
これからも、そして今年は昨年よりももっと頑張りますので、よろしくお願いします!
そして今回、お誕生日ということで何か出来ないかと考え、めぐるちゃんとサツキちゃんのイメージ画を頑張って作成してみました…!
ひなちゃんのイメージ画の時と同じく、今日中の投稿を予定(重要)している活動報告の方に貼り付けようと思います。
投稿ができ次第こちらにリンクを貼りますが恐らく夜中の投稿になってしまいますので、また明日にでも覗いていただければと思います。
【活動報告その2】
↑こちらその活動報告でございます(深々)
物語の感想や評価など、送っていただけたら大変喜びます(小声)
それでは、また!