little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・ひなちゃんが倒れた(過去話)
side:ひな
「これで、よし」
アイスティーをいれ終わった。全部いい感じ♪
グラス2つをトレーにのせて、お姉ちゃん達の所へ持っていこうと顔を上げる。
「…あれ?」
お姉ちゃんもだけれど、ツバサ先輩もソファに寄りかかった姿勢のまま寝てしまっていた。起きていた時の格好良い雰囲気とは違う少しあどけない表情をしていて、なんだかほんわかする。
とりあえず、アイスティーは冷蔵庫に入れさせてもらおうかな。まだのせていなかった残りのグラスもトレーにのせた。
トレーに乗っているアイスティーは今のせたグラスを合わせて4つ。お姉ちゃん、ツバサ先輩、夜空先輩、そしてゆず先輩の分。先輩方をイメージしたフレームとワンポイント、それからそれぞれの紅茶の名前を書いたカードを
氷が溶けたら味が変わってしまうけれど元々少し濃くいれていたから大丈夫。
お姉ちゃんには持っていたレターセットでお手紙を書いて、茶葉が入っている小箱と一緒にキッチンに置かせてもらった。
これからアンナ先生の所へ行かないといけないけれど、お姉ちゃんが心配。ツバサ先輩も寝てしまっているし…。
「どうしよう…」
1人でう〜んと唇の下に手をあてて考えていると、うしろからコツコツと足音が聞こえてきた。
「ただいま〜。あら?」
足音とその声に振り返る。今日はうしろから声が聞こえることが多いような…。
振り返った先には、月の美組のトップ・S4の
美組のトップだけあって、本当に綺麗…。
「
夜空先輩がちょいっと少し首を
「初めまして。白鳥ひなです。いつも姉がお世話になっています」
私がそう言うと夜空先輩はまぁ、と目を開いた。さっきは少しだけ警戒されている様だったけれど、もう大丈夫みたい。
「そう、あなたが・・・」
夜空先輩はそのままコツコツと私の目の前まで来ると、口元に笑みを浮かべながらするっと私の頬を撫でた。
くすぐったい。どうして頬を撫でられているのか分からないけれど何だか気持ちが良くて目を閉じた。
少しして目を開けると、すぐ近くにあった夜空先輩の濃い紫色の瞳と視線がぱちっとあう。
びっくりしている…?気のせいかな…?
「ふふ、ごめんなさい。香澄 夜空です。よろしくね♪…それにしても」
なぜか謝ったあと、夜空先輩はうしろで寝ているお姉ちゃんとツバサ先輩に目を向けた。
「これは…どういう状況かしら?」
お姉ちゃんに対しては心配そうな視線を向けていたから、夜空先輩が気になっているのはツバサ先輩が寝ていることかな。
「えっと、姉の具合が悪くて少し
そのツバサ先輩はスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
「そう…。ひめは分かるけど、ツバサまで寝てるなんて、思いもしなかったわ」
クスクスと楽しそうに笑いながら夜空先輩が言う。
あ、そうだ…。
「あの、夜空先輩」
ツバサ先輩を見ながら楽しそうにしている夜空先輩に声をかけると、顔を私の方に向けてくれた。
「なあに?」
「私、これからアンナ先生の所へ行かなくてはならないんです。姉のこと、お願いしてもよろしいですか?」
夜空先輩にならお姉ちゃんのことを任せても安心だから。
ツバサ先輩ももちろんだけれど、今は寝てしまっているし…。
「まかせて頂戴。ツバサの事も見ておくわ♪」
綺麗なウィンクと一緒に、任せなさいと胸に手を当てて答えてくれた。とっても頼もしい。
「ありがとうございます。では、失礼します」
入り口の方へ何歩か進んだあと、アイスティーのことを思い出した。
振り返った私を不思議そうに見ている夜空先輩の前まで少しだけ急いで戻る。
「さっき夜空先輩やゆず先輩の分もアイスティーをいれさせてもらったんです。もしよければですが、先輩方に飲んでいただけたら嬉しいです」
そう言うと夜空先輩は、まぁ、と嬉しそうにしてくれた。
「アイスティーは冷蔵庫の中に?」
「はい」
勝手にグラスを使ってしまって大丈夫だったかな…そこだけが心配。
「ありがとう。あとで皆でいただくわね♪」
でも、すごく嬉しい。
「はい、ありがとうございます!」
夜空先輩のありがとう、とっても気持ちがこもっていて好きだなぁ。
最後にお姉ちゃんの方を見る。
まだ少し苦しそうだったけれど、この分だとすぐに良くなるはず。
お姉ちゃん。
私のおまじないが、早く効きますように。
side:夜空
「ただいま〜。あら?」
お仕事が終わって館に帰って来たら、少し珍しい光景に出くわしたわ。
えっと、見た感じだと…。
ひめが寝ていてツバサも寝ていて、もう1人ひめがいるって所かしら?
ちょっとどころじゃない位おかしいわね。
私の声に振り返った子はひめ…ではなかったわ。似ているけれど、違うもの。
「貴方は…?」
それでも、まだ名乗られていないから誰かは分からないわ。
制服を着てるから大丈夫だとは思うけど、一応ね。不審者かどうか確かめなきゃ。もしかしたら、朝陽が前に言っていたドッペルゲンガーかも知れないし。
「初めまして。白鳥ひなです。いつも姉がお世話になっています」
可愛らしく頭を下げてご挨拶された。
「そう、あなたが・・・」
この子がひなちゃん。
4年くらい前までよくテレビに映ったり雑誌に載っていたりしてたわよね。
子役としてたくさん活躍していた子が中学生くらいになると、『劣化』という少し嫌な単語が使われたりもするけれど、ひなちゃんはその逆。前はとにかく可愛らしいというイメージがすごく強かったけど、今は可愛さとあどけなさに美しさが加わっているわ。どこか残っている幼さとはっとなる美しさが共存していて、見る人みんなを
希望は多分歌組でしょうけど、美組に来ないかしら?
そういえば、館に妹が来る事になったのって連絡をさっきひめからもらってたわ。落ち着いてる事が多いひめにしたら珍しく文面からも分かるくらいに喜色満面だったわね。
一瞬でも不審者かと思っちゃってごめんなさいって心の中で謝っておくわ。
…ひなちゃんの眼の色、とっても綺麗。
金色と銀色がキラキラしている青緑色。不思議な色の組み合わせねぇ…ひめの眼の色より明るくて薄い青緑色と、部屋の光を取り込んで輝くダイヤモンドのような銀色、それに瞳孔の周りの金色も淡く光っているみたい。髪の毛もサラっとしてるのにクルッとしていて可愛い♪どんな感じなのかしら?瞳ももっとよく見たいし、出来たら髪も触ってみたいわ。
そのままひなちゃんに近づいて、指でその頬を撫でてみる。ひめとおんなじ、綺麗なお肌。
ふんわりすべすべ♪
でも、ひめよりももっと純潔さが際立っているわね。赤ちゃんの肌のようにきめ細やかで、とっても柔らかい。
あら?
触れてみたいのもあったけど、もっと瞳を見てみたいからこうしたのに。ひなちゃんは気持ち良さそうに目を閉じちゃったわ。私はお肌を見ればその人がどんな人なのか分かるから、つい癖でやりがちなのだけど。いきなり目の前に来てそんな事されたら、普通は何をするか見ているか、何か想像するか、警戒するか…目を
──「っ!!よっ夜空っ!いきなり、なな何を⁉︎‼︎」
顔が真っ赤で、それはそれで珍しくて可愛かったわ。
──「夜空たん。ゆずにはリリエンヌがいるんだゾ」
リリィちゃんにも怒られちゃいそうね。別に取ったりはしないのに、ゆずの口から発せられたふざけずに真面目な顔で言った言葉第1弾よ。
──「頬に何か付いていたの?」
これが1年生の時ね。ひめはやっぱり天然だと思うわ。
でも、この時少し警戒の色も浮かべてたし、この言葉もわざとだったりするのかしら。
──「夜空。私にそういう事をするのは構わないけど、来年四ツ星に入って来る私の妹には…絶対にダメよ?」
そしてこっちが3年生になる直前。
ん〜、あら?
ひなちゃんがあまりにも可愛くて思わずいつも通りにしちゃったけど、ひめには内緒にしておこうかしら。
うん。そうしましょう。
お肌を見るために無意識にしてしまうこの癖、良くないって顔を赤く染めたツバサにも注意されちゃったから、これからは少し気を付けた方が良いわね。
でも、ひめがひなちゃんを包んでおきたい理由が何となく分かったわ。
純粋すぎるもの。
今だって、何の警戒もせずに…撫でる手の方にふにゅりと頬を寄せてくれているのは無意識なのかしら。…いつか善人を装った悪い人に騙されないか心配になってきたわ。
多分、このまま私がもっと顔を近づけても目を
本当にいいわ、ひめとはまた違う魅力や可愛さがあるもの。いつまでも見ていられそう♡
だけど、恐らくひめが世界で1番大切にしてるであろうこの子に変なことなんて出来ないわ。
ひめが怒ると本当に怖いんだもの。
何より、目の前にいる真っ白で綺麗な天使の羽を他の色に染められない。染めちゃいけない気がするの。
そんな事を考えていたら、ひなちゃんとぱっちり目が合ったわ。
よし。目の保養もできたし私も挨拶しなくっちゃ。
「ふふ、ごめんなさい。香澄 夜空です。よろしくね♪…それにしても」
触れていなかったけど、さっきから後ろの状況も気になって仕方がないわ…。
ツバサまで寝ているなんて見たことがないんだもの。
「これは…どういう状況かしら?」
私がそう聞くと、ひなちゃんが手振りを交えながら説明してくれた。
「えっと、姉の具合が悪くて少し介抱した後、私がアイスティーを作ったのですが…。その間にツバサ先輩も寝てしまったみたいで…」
ひめが少し苦しそうなのは案の定そういう事だったのね。雨もひどいし。
ツバサの方はスヤスヤと気持ちよさそう。
「そう…。ひめは分かるけど、ツバサまで寝ているなんて、思いもしなかったわ」
あんなに安らかな顔で一体どんな夢を見ているのやら。後で聞いておくとしましょうか。
今から楽しみだわ。
「あの、夜空先輩」
しげしげと観察していると、ひなちゃんに声をかけられた。
「なあに?」
「私、これからアンナ先生の所へ行かなくてはならないんです。姉のこと、お願いしてもよろしいですか?」
確か、ひなちゃんは休学扱いだった
授業もあるから、早く行った方が良いかも。
この後はあの発表もあるし…。
「まかせて頂戴。ツバサの事も見ておくわ♪」
ど〜んとこい!なんてね♪
「ありがとうございます。では、失礼します」
しっかり頭を下げて数歩あるいたひなちゃんが、パッと振り返ったわ。どうしたのかしら?
少し早足でこっちに来る姿も可愛い♪
「さっき夜空先輩やゆず先輩の分もアイスティーをいれさせてもらったんです。もしよければですが、先輩方に飲んで頂けたら嬉しいです」
ひなちゃんの紅茶。ひめから聞いたことあるわ。
すごく美味しいのよって。
「アイスティーは冷蔵庫の中に?」
ゆずは泊りがけで仕事だから、もしかしたら飲めないかもしれないけど…
「はい」
せっかく
このことは言わなくていいわ。
「ありがとう。あとで皆でいただくわね♪」
パッと花が咲いたような笑顔を浮かべてくれたわ。
やっぱり美組に勧誘できないかしら…考えておくべきよね。
「はい、ありがとうございます!」
そう言うと、ひなちゃんはもう1度ひめの方を見て少し安心したような優しい笑顔を浮かべた後、お辞儀をして今度こそ出て行った。
本当に、ひめのことが大好きなのね。
はぁ、真昼もこれくらい私とコミュニケーションを取ってくれたらいいのになぁ。お姉ちゃん、とっても寂しいわ。
…それはそうと、疲れて帰ってきた筈なのに大分身体が落ち着いてるわね…。どうしてかしら?
side:ひな
学園の廊下を歩きながら着ている制服に変な所が無いか確認する。クリーム色がベースになっているこの夏服は肌触りがよくてとっても着やすいし、早く冬服も着てみたいな。
えっと、学園長室に来てと言われていたのだけど。入って大丈夫かな…?
“コンコンコン”
制服をもう1度整えたあと、部屋の扉をノック。
「入りたまえ」
「失礼します」
学園長室に入ると、机の奥の椅子に学園長先生が座っていて、机の前にはアンナ先生が立っていた。
「ハロー!白鳥!」
ウィンクをしながらアンナ先生はそう言ってくれた。
「こんにちは、アンナ先生。お初にお目にかかります、学園長先生。白鳥ひなです。お手紙にも書かせていただきましたが、この度休学期間が終わりましたので、ご挨拶に参りました」
アンナ先生にお辞儀をしたあと、学園長先生にも頭を下げる。
「あぁ。手紙は受け取った。休学が明けて何よりだ。そして早速だが、君は歌組希望という事で良いのだな?」
「はい」
そう手紙にも書いたから、間違いない。
何度かお手紙のやり取りもして頂いていたけれど、字は人を表すというのは本当だったみたい。
「分かった。・・・だが、簡単には認められない」
キリッと開いた金色の
そうだろうとは思っていたから。
花の歌組…4組ある組の中でここ数年は特に強い人気を誇り、組決めオーディションでは脱落者が続出している。そんな中に遅れたからといってすんなり入れるとは思っていない。というより、もしもそうだったのなら抗議をするところだった。
それに本来なら研究生課程から始めるのに、最初に組分けのオーディションをしてもらえるのだから。
「先日、1年生に実力テストが実施された。今日の夕方にはその結果発表がある。そこで君にはステージを披露してもらい、観客満足度が75%を超えたら歌組加入を認めよう。そして歌う歌だが、これも私から指定させてもらう」
75%…
「学園長!ファーストステージで75%なんて…!それに、歌も指定⁉︎」
アンナ先生が学園長先生に抗議の声をあげる。驚いているのも大きいけれど、怒りの感情もその声の中に含まれていた。
確かに珍しいのかな。
セルフプロデュースが基本の四ツ星学園で、歌の指定。分からないけれど、75%という数値も高いのかもしれない。
それでも。
「構いません、アンナ先生。歌います」
「白鳥⁉︎」
私は歌う。どんな条件だろうと。
「歌組に入れなければ、私にはその実力が無かったということです。私はどの曲を歌うのでしょうか?」
そう。アイドルは最終的に、実力が全て。
1年生の時点でS4になったお姉ちゃんのこともずっと見てきた。だからこそ、今はそう思う。
「この間、白鳥ひめの代わりにファーストライブを行なった者のフィナーレと同じ曲だ」
あぁ、虹野さんだ。
虹のオーラを持っている子。
毛先に向けて黄色からピンク色になっているグラデーションの髪にリボンが特徴的な、歌組の1年生。
4月の初めにあったお披露目ステージでも1年生とは思えないステージを披露して、お姉ちゃん達S4の先輩方から大注目されていた。
早くお話してみたいなぁ。
でも、まずはライブ!
フィナーレを飾ったのはあの曲。しっかり集中しないと。
「わかりました」
そう言うと学園長先生がほぅ、と驚きと感心を
もしかして私、試されていた?
「疑うわけではないが、どの曲か分かっているだろうな?」
それだと疑われている気が…。
でも、私だって休学していた分、思い付く限りの努力はしている。お勉強もアイカツのことも、時間が許す限り学んできた。
「スタートラインです。おね…ひめ先輩の代わりにファーストライブを行なった人は、歌組1年生の虹野ゆめさん。シトラスティータイムコーデが虹野さんにぴったりでした」
そう言うと、今度こそ学園長先生は納得してくれたようだった。
それにお姉ちゃんではなくて、白鳥ひめ先輩。ここはしっかりしておかないと。
「あぁ、その通りだ。では、残り数時間だがアンナ先生から指導を受けてくれたまえ。君がどれ程のステージをするのか、よく見ておこう」
なんだかんだと言っていても、学園長先生は優しい。
私に用意する時間をくれる。
「はい。ありがとうございます。では、…?」
失礼しましたと言いかけて。
学園長先生の机にある花を見て思わず止まってしまった。
青い
とっても栽培が難しい薔薇で、今現在売られているのはほんの僅かなお花屋さん。確か完全に種から育てているお花屋さんは2件だけだったはず。MiracleFlowerというお店とどこかの薔薇園だったかな…。
いつか見てみたいとは思っていたけれど、まさかこんな所で見られるなんて…。
「白鳥?」
アンナ先生が心配そうに私を見る。
いけない。思わずぼーっとしてしまった。
「すみません、大丈夫です。学園長先生、その『青龍』とっても綺麗ですね。失礼します」
アンナ先生に
ステージ、楽しみだな。
予約投稿・・だと・・っ?!
そんな便利なものがあると知って、昨日7分くらい画面の前でそわそわスタンバイしていた自分はなんだったのかと目から涙とウロコが流れ出た、9:32分でございます。
気付かなければ25分くらい時計をチラチラ確認しながらそわそわと過ごす所でした。活用出来そうな時はどんどんしていきたいです。
そして書いていて思ったのですが、ムーンナイトはシリアスが好きなんでしょうか…?
お正月なので時間があり、筆が乗っています。乗りにノっています。
18時頃にもう1話投稿しますので、よろしければ覗いてみてください。
(2019年8月・文章整形等を行いました。