little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・お肌を見ればなんでも分かる
side:諸星
今日は白鳥ひな…あの白鳥ひめの妹が初登校という形で復学する。
入学試験の結果を見たが、白鳥ひなが加入する事で一学年が大いに揺れる事を
何度か手紙のやり取りをしたが、本当に中学一年生になりたての少女が書いているのか疑わしくなる程、文脈等もしっかりとしていた。
今回はアンナ先生が手紙を預かってきたが、中々に興味深い。
自らの事についても包み隠さず事細かに書いてあり、その内容は本人のマメで素直であろう性格をよく表していた。
文章も毎度の
だがそれにしても、これは…。
──コンコンコン
「学園長、響です。
と、来たか。
「あぁ」
手紙を置き、返答する。
その者はガチャリと扉を開けてカツカツと入ってきながら口を開いた。
「手紙はもうお読みになられましたか?」
元歌組S4、そして現在は歌組の担任教師をしている。
響先生の真面目モードの存在はまだ
この真面目モードの時に怒らせたら本当にこわ・・うむ。
「あぁ。響先生はまだ読んでいなかったな」
そう言いながら白鳥ひなからの手紙を手渡す。
そうだな…読み始める前に聞いておこう。
「入院中に君が見た白鳥ひなは、どんな人物だった?」
そう問うと響先生は少し思案顔を浮かべたがすぐに答えを出した。
「とても話し上手の聞き上手で、お見舞いに行った時はいつの間にか時間が経っていました。・・笑顔が多くて、側にいると暖かい気持ちになれる…そんな子でしたね」
中々良い評価だ。
中々というより、かなり良い評価なのではないだろうか。
手に持つ手紙を読むように
読み始めはいつもの表情だったが、段々と険しい顔になり、そして最後の一文を読んだ時には大きく息を飲んでいた。
「学園長・・。これは…!」
手紙に書かれていたことはわざわざ言わなくとも、いつかは分かることだ。
「セルフプロデュースだ。私は彼女の意見を尊重しようと決めた。君も、そうしてくれ」
やはり心配もあるのだろう。
「分かりました」
──コンコンコン
話がまとまった所で、丁度よく部屋の扉がノックされる。
おそらく彼女だろう。良いタイミングだ。
「入りたまえ」
そう声を掛けると、その少女は入ってきた。
「失礼します」
驚いたな。入試の際に登録されていた写真には目を通していたが、ここまで姉に似ているとは。…いや、姉と似ていて、それでいて全く異なる輝きを放っている。
背中に流れるミルキーブロンドの髪は一歩歩くごとにふわりと波打ち、歩き方一つをとっても自然体でありながら洗練されている。顔にはこちらが見惚れるような淡い微笑みを浮かべており、申し分のない満点だった。
白鳥ひめが
初めて白鳥ひめと対面した時より強いかも分からない衝撃を受ける。
そして何より、彼女の瞳に目を奪われた。
姉に似た明るい宝石のような青緑色と煌めく銀の色彩が輝き、金のリングが光を放っている。そしてその大きな瞳は慈愛の相に満ちていた。
「ハロー!白鳥!」
おっと、少し熱くなってしまったな。
しっかりとハイテンションモードに切り替わった"アンナ先生"が挨拶をする。
「こんにちは、アンナ先生。お初にお目にかかります、学園長先生。白鳥ひなです。お手紙にも書かせていただきましたが、この度休学期間が終わりましたので、ご挨拶に参りました」
顔に浮かべた笑みを嬉しそうに
「あぁ。手紙は受け取った。休学が明けて何よりだ。そして早速だが、君は歌組希望という事で良いのだな?」
出来るだけ早くしなければ発表に間に合わなくなってしまうからな。
本来ならば研究生課程を経てから組分けテストを行うが、彼女の入試での成績等を含めて職員会議で
「はい」
しっかりと頷いたのを確認し、言葉を出す。
「分かった。・・・だが、簡単には認められない」
そう言うと、私の目を真っ直ぐに見つめたまま彼女はコクリと頷いた。
驚きの表情をするかと思っていたが…。
少なくとも彼女以前の、理由は様々だが同じ様に休学していたりした生徒達は
取り敢えず、彼女はその生徒達とは違うと言うことか。
「先日、一年生に実力テストが実施された。今日の夕方にはその結果発表がある。そこで君にはステージを披露してもらい、観客満足度が75%を超えたら歌組加入を認めよう。そして歌う歌だが、これも私から指定させてもらう」
観客満足度75%。
少し熱くなってかなり高く設定してしまった。
「学園長!ファーストステージで75%なんて…!それに、歌も指定⁉︎」
アンナ先生に
彼女の背面に燃え盛る赤い炎が見える。それと同時に頭が冷えてきた。流石に高すぎたか…。
50%に下げようと口を開こうとするも、彼女が先に口を開いた。
「構いません、アンナ先生。歌います」
歌う、と彼女は宣言した。
「白鳥⁉︎」
アンナ先生は驚きが隠せないようだな。
大丈夫、私もだ。表情筋を
75%など、初めてのステージで早々出せるものではない。虹野のあのステージでも58%なのだ。
近年で言えば、初のステージで
「歌組に入れなければ、私にはその実力が無かったということです。私はどの歌を歌うのでしょうか?」
そうか。彼女は白鳥ひめの妹だ。
実力という壁を、他の一年生よりもしっかりと
「この間、白鳥ひめの代わりにファーストライブを行なった者のフィナーレと同じ曲だ」
彼女の知識がどこまであるのか、つい試してしまった。
「分かりました」
ほぅ。
即答して見せたか。
「疑うわけではないが、どの曲か分かっているだろうな?」
実際には、余りにも答えるスピードが速すぎて疑っているのだが。
「スタートラインです。おね…ひめ先輩の代わりにファーストライブを行なった人は、歌組一年生の虹野ゆめさん。シトラスティータイムコーデが虹野さんにぴったりでした」
まさか、
先程から驚かされてばかりだったが、彼女が入院中もしっかりと勉学に励んでいた事が分かった。アンナ先生から常々聞いてはいたが、
そして、彼女なりのこだわりと言えるであろう意識を見受けることができた。姉である白鳥ひめの事をひめ先輩と呼び、普段の姉とは区別をつけたからだ。
「あぁ、その通りだ。では、残り数時間だがアンナ先生から指導を受けてくれたまえ。君がどれ程のステージをするのか、よく見ておこう」
アンナ先生の方にアイコンタクトで了承を取りながら伝える。しっかりと頷いてくれた。
「はい。ありがとうございます。では、…?」
失礼しましたと言いかけたのであろう彼女の動きが止まった。
その目線の先には青薔薇。
私の好きな品種なのだが、『育てるのも難しいのよ〜』と楽しそうに言いながらあの人が納品してくれている。
「白鳥?」
数秒の時が流れ、流石に心配になったのかアンナ先生が声を掛ける。
一度
「すみません、大丈夫です。学園長先生、その『青龍』とっても綺麗ですね。失礼します」
そう言って、彼女はアンナ先生に
ふむ、『青龍』…。
この薔薇の名前だ。
希少性が高い為に余り知られていないこの薔薇を知っているとは中々に博識の様だな。
それはさておき…、虹野の事もあるが、今年は以前にも増して忙しくなりそうだ。
side:夜空
ひなちゃんが出て行ってから、1時間半くらい経ったわ。そろそろツバサの方は起きるかしら?
「・・・・ん、あれ?私…」
あら、本当に起きたわね。
もうちょっと寝顔を眺めていたかったわ。いつもはキリッとしているのに、眠っている時はあどけないんだもの。
「おはよう、眠りのお姫様♪」
私の言葉にツバサが首を傾けてくる。
「ん〜?眠りのお姫様はひめだろう?」
うつらうつらしながらトロンとした目で見られた。まだちょっと寝ぼけているみたい。
可愛い♡
「それより、なんで床に…」
手で床を確かめる様に触りながら、後ろを向いたツバサ。
ひめの事を見て全部思い出したようね。
「・・寝ない様にしてたのに…」
目は覚めたみたいで良かったわ。
ガクッとなった後、ふっと真面目な顔になって見つめられた。
「なぁ〜に?」
「…おかえり。夜空」
ものすごく真面目な顔をして何を言うのかと思っていたら、おかえり…ねぇ。
ツバサらしいわ。
「えぇ。ただいま♪」
立ち上がって制服を正したツバサ。ちょっと首を傾げて頭の上にクエスチョンマークを浮かべた後、今度は電球がピコンと
「夜空、ひなを見なかったか?ひめに似ていて違う子なんだが」
ひなちゃんが出て行った時、ツバサはスヤスヤと眠っていたものね。
「見たわよ。1時間半くらい前にアンナ先生に用事があると言って行っちゃったわ」
私がそう言うと、納得したようにあぁ、と頷いた。
「そうか。まぁ、直ぐに会うことになるか」
ツバサは生徒会長として、寮の見回りや指導もしてるものね。
「それで…。今日のひめはどんな感じだったの?」
私が1番聞きたかったのは、これ。
ひめは雨の日に具合が悪くなるけれど、その度合いは日によって違うの。
それによってひめの疲れの大きさがわかったりもするのよね。
「あぁ。ここ最近の中で1番悪かった。だけど、ひながひめを介抱した後は、良くなっていた気がする」
やっぱりひなちゃんが鍵になるわけね。
「ひなと話した時…よく分からないけど、気持ちが落ち着いてリラックス出来たんだ。多分、ひめはその要素がずっと強いんだと思う」
なるほど。
そう言われれば確かに私も、ひなちゃんと話した後は何だか落ち着いてたわ。
疲れも少し消えていたし、マイナスイオンでも放ってたりするのかしら。…ん〜、ありえそうね。
「そう。なら、これからひめの具合が悪い時にはひなちゃんに来てもらったらどうかしら?」
ひなちゃんもひめの事が大好きみたいだし、これなら一石二鳥だわ。
「そうだな。今度ひなに言ってみるよ」
「よろしくね」
「私は次の撮影の台本を読んでおくけど、夜空はどうする?」
手元の台本を指しながら、ツバサに聞かれる。
そうね〜。
「私はもう少しお姫様の寝顔を見ておくわ♪」
「そうか」
そう言って、椅子に腰掛けたツバサ。
私はソファの背の方に回ってひめをみる。
うん、さっきよりはずいぶん顔色が良いわね。
無理をするのは1年生の時から変わってないわ。
本当に、目が離せないんだから。
☆☆☆☆
「ん、んん…」
「ひめ?」
突然、ひめの綺麗な
「どうかしたのか?」
「夢を見てるみたい」
「あぁ、そうか」
そう言いながらツバサが台本を置いてこちらに来た。
心配よね。
「んん…」
苦しそうにして、顔を横にするひめ。
具合が悪くて寝ている時、ひめが苦しそうにするのはあまり珍しくないわ。どんな夢を見ているのかはいくら聞いても教えてくれないけれど、辛いということは分かる。
ねぇ、可愛いお姫様。
「ひめ、大丈夫よ〜」
ひめの綺麗な髪をふわりと撫でながら私は言う。
例え声が届いていなくとも、私は呼びかけるわ。
それが、私にできることだもの。
「すぅ…」
しばらく撫で続けていると、ひめの額のしわがゆっくりと溶けていった。よかったわ。
「夜空はすごいな」
ツバサがひめの事を見ながら私に言う。
「そうかしら?私はできる事をしているだけよ?」
できない事だって沢山あるもの。
だからせめて、出来る事はしてあげたいわ。
「そうか」
そう言いながら、ツバサは再び台本に目を落とす。
貴方には簡単で、私には難しい事。
大きく力強く相手に語り掛ける事を始めとして他にも色々思い浮かぶけど、ツバサはツバサ。私は私ね♪
そうねぇ。それじゃあ、スケジュールの確認でもしておこうかしら?
side:ツバサ
──あのステージを見て、私はひめに勝てないと思った。八千草先生にはこの間、劇組に来ないかとも言われた。
────
「・・・・ん、あれ?私…。」
ここは…?
「おはよう、眠りのお姫様♪」
夜空の声だ。
それにしても、眠りの姫?
「ん〜?眠りのお姫様はひめだろう?」
まだ少し眠いな。
何か夢を見てた気もするけど、忘れてしまった。
「それより、なんで床に…」
そう言いながら振り返る。
そこには、ソファに横になって眠るひめが居た。
その姿を見て私は一瞬で理解する。
「・・寝ない様にしてたのに…」
ひめを守ると勝手に決意しておきながら、一緒に寝てしまうなんて…。
あぁ、それと。
「なぁ〜に?」
まだ言ってなかった言葉があった。
これは絶対に言っておかないとな。
「…おかえり。夜空」
そう言うと、夜空は何故か間の抜けた顔をした後に、笑顔になって返してくれた。
「えぇ。ただいま♪」
立ち上がって制服を整えながら部屋を見渡す。
ん…?
確か私は…。
そうだ!ひながいないじゃないか!
「夜空、ひなを見なかったか?ひめに似ていて違う子なんだが」
夜空は何か知ってそうだな。
「見たわよ。1時間半くらい前にアンナ先生に用事があると言って行っちゃったわ」
成る程。
それにしても、何故私は眠ってしまったんだろうか。
普段はこんな事無いのに…。
「そうか。まぁ、直ぐに会うことにはなるか」
最初の指導はアンナ先生に任せるとして、寮の案内等は私の仕事だからな。
きっとすぐに会うだろう。
「それで…。今日のひめはどんな感じだったの?」
雨の日の体調の悪さがその時々の疲れの度合いにも比例していることに気付いたのは夜空だ。
だから夜空にとってはこれが1番大事なことなのだろうな。
「あぁ。ここ最近の中で一番悪かった。だけど、ひながひめを介抱した後は、良くなってた気がする」
思い返してみれば、倒れてしまう程に具合が悪かったのに、ひなが介抱した後には大分落ち着いていた。
・・そうか。
私が眠ってしまったのは、ひめへの心配で高まっていた気持ちが安らかになって…、かなり体がリラックスしていたからか。
そうなったのは確か、ひなと話していた時やひなと一緒にいた時だ。
「ひなと話した時…よく分からないけど、気持ちが落ち着いてリラックス出来たんだ。多分、ひめはその要素がずっと強いんだと思う」
ひめが落ち着いたのがひなのおかげだとしたら…。
「そう。なら、これからひめの具合が悪い時にはひなちゃんに来てもらったらどうかしら?」
夜空も同じ考えのようだった。
「そうだな。今度ひなに言ってみるよ」
「よろしくね」
そう言えば、次の撮影の台本、少し変更があったんだったな。
ひめが起きるまでまだ少し時間もあるだろうし、今のうちに読み込んでおこう。
「私は次の撮影の台本を読んでおくけど、夜空はどうする?」
私がそう言うと夜空は、ん〜。と考える仕草をした。
出会った時からだが、夜空はいちいち仕草が絵になっていた。
3年生になってからさらに磨きがかかってるな。
可愛いと言うより美しいの方が似合う。流石、美組のトップを務めるだけあると思う。
「私はもう少しお姫様の寝顔を見ておくわ♪」
ウィンクをしながら言われた。
「そうか」
近くにあった椅子に座り、台本を読み始める。
夜空はすすっとソファの後ろに回った。
…そう言えば、体の疲れも取れているな。少し寝たからなのか?
☆☆☆☆
「ん、んん…」
「ひめ?」
暫く台本を読んでいると、ひめの声と、夜空の
「どうかしたのか?」
どうしたのだろうか?
一旦台本を置いてひめの所へ行く。
「夢を見てるみたい」
「あぁ、そうか」
ひめの夢はどんなものなのだろうか。
ひめの具合が悪く、こうして寝ている時に側にいると時々綺麗な額にしわが寄せ、苦しそうな表情をする。
悪夢を見ているのか前に聞いてみたが、笑顔で誤魔化されてしまった。
大丈夫よ、と言ったひめの顔が頭から離れない。
そう言えば…あの顔、さっき…?
「んん…」
ひめが苦しそうな表情をして、顔を横にする。
「ひめ、大丈夫よ〜」
そんなひめの頭を、夜空がゆっくりと撫でる。
暫く夜空が撫で続けているとひめの表情が
「すぅ…」
寝息も穏やかになり、夜空はひめの頭から手を離す。
「夜空はすごいな」
私は…、ひめが苦しんでいても、何も出来ないのに。
「そうかしら?私はできる事をしているだけよ?」
その出来る事が私には出来ない。
夜空にあって私に無いもの…。
沢山思い浮かびすぎて、思わず失笑してしまいそうになる。
「そうか」
台本を手に取り、再び
だが、先程までとは違い、いくら読んでも内容は頭に入ってこなかった。
学園長視点からのスタートでした。
同じ場面でも視点によって全く違う捉え方や考えになるのは興味深いです。
そして書いていて確信しました。
ムーンナイトはシリアスが好きなようです。
というより、書いていたらシリアスになっています。なぜでしょうか。謎です。
とりあえずシリアスタグを追加しておきました。
今後ともこのストーリーを、優しく、時に暖かく見守ってもらえれば幸いです。
(2019年8月・文章整形や加筆を行いました。