little Angel story〜1人の少女の物語〜   作:ムーンナイト

7 / 31

1行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・お姉ちゃんプチパニック
 


7page 原石を磨いて

 side:響 アンナ

 

 白鳥ひな。

 日本において圧倒的な知名度を誇るアイドルすぎるアイドル・白鳥ひめの妹であり、公開はされていないが入学試験では筆記実技共にトップ通過。

 そして数年前まで芸能カツドウで抜きん出た活躍をしていたためにこの時点でファンも多い…。

 

 これは一波乱(ひとはらん)ありそうだな。

 いや、一波乱で済めば大したものか。

 

 さっきレッスンを見たが、レベルが高く覚えも早かった。

 アタシがダンスの細かい振りや癖を指摘し指導すると、乾いた砂が水を吸うかのように吸収し自分のものにしていった。

 はじめに特に何もアドバイスをせずとりあえず通してみるかと通した時でさえまぁまぁの技量(ぎりょう)を持っていたのに、それは本当に原石の状態だったと理解させられた。

 みるみるうちに増していった輝き。

 それを見ていて確信した事がある。それは、あの子はきっと一年経たずでS4と並ぶトップアイドルになる。と言う事。

 

 あのS4と並ぶだなんて我ながら変な確信だが。その為にもアタシは、きちんと導いてやらないとな。

 

 …そろそろ良い時間だろう。

 上の白鳥(白鳥ひめ)がまだやれますと無茶をして倒れかけた時、無理矢理止めに入った事があるのを思い出した。

 下の白鳥(白鳥ひな)はきちんと休んでるといいが。

 

「白鳥ー、入るぞー!」

 

 ハイテンションモードに切り替えて、いくぜ!ベイビー‼︎

 

「なっ…⁉︎」

 

 バーンッと扉を開け、入って早々出鼻を(くじ)かれた。

 白鳥は奥の壁に背を預けていた。だが動きがない。

 

「大丈夫か⁉︎白と…」

 

 大きな声を出してはいけない。

 思わずそう考えてしまうぜ、これは。

 

 白鳥は眠っていただけ。

 壁に背を預け足は崩れた姉さん座りの様な姿勢。首は少し(かたむ)いていたが、ただ目を(つむ)っているだけだと錯覚する程に自然体で白鳥は眠っていた。

 

 ただ…

 

「顔色が…」

 

 悪い。かなり悪い。

 元の色が白いと青白く見えるなんて事もあるが、白鳥の肌色はそう見える事が少ない日本人には珍しい白さだ。それがこう見えるという事は、そういう事なのだろう。

 

 アタシがいない間に何があったんだ?

 

 あの事か…?

 もしくは姉と同じ体質なのか。

 

 まぁそれでも、そろそろ起こさないと間に合わないからな。

 もう一度テンションを切り替える。

 

「白鳥ー!起きろーー‼︎」

 

 私が起こしてやるぜ!ベイビー‼︎

 

 

 

 side:ひな

 

「白鳥ー!起きろーー‼︎」

 

 ──アンナ先生の、声…?

 どうして起きてと言っているのかな。一体誰に…。

 

 ん…()()……?

 

 ………私⁉︎

 

「・・・」

 

 背中に当たっている硬い感触に戸惑いを感じながらゆっくりと目を開ける。

 

「おはよう。白鳥!」

 

 目の前には、ニイッと笑顔を浮かべるアンナ先生。

 腰に手を当てて上半身を軽く折っている状態で、私が先生を見上げる形になっていた。

 

「おはよう、ございます?あの、先生」

 

 背中の硬い感触の正体は壁だったみたい。えっと、少し質問をさせて下さい。

 

「何だ?」

 

 床に座っているし、さっき目を開けた。つまりどちらか。

 

「私、()()()()()()()?」

 

 確かめる様にそう聞くと、アンナ先生は軽く眉をつり上げた。

 

「…?あぁ、ぐっすり」

 

 よかった。

 急に体の感覚が無くなったから、気を失ってしまったのかと思った。

 

「それで、白鳥」

 

 ニコニコとしたまま、どこか探るような声色でアンナ先生に呼びかけられる。自然と背筋が伸びた。

 

「はい」

 

「どういう経緯(けいい)で寝るに(いた)ったんだ?」

 

 先生、怒っていないよね?

 ううん…休めと言われていたとはいえレッスン中に寝てしまっていたのだし、怒られても仕方がないのだと思う。

 

「あの…実は、私もよく分からなくて」

 

 でも、答えたくても分からない。

 

「と言うと?」

 

 少し眼を細めたアンナ先生。

 

「最初は練習をしていたのですが…休憩を取ろうとここに座った時に、急に体の感覚が無くなってしまって…」

 

 自分で言っているのに、状況がよく分からなくて混乱する。

 

…………成る程。この子も同じか

 

 睡眠不足ということは無いし、どうして寝てしまったのだろう…。それにアンナ先生が何か言っていたことも聞き逃してしまった。

 

「…あっ!」

 

 寝ている間に(ゆる)んだのか、髪を結んでいたリボンがスルリと解けた。

 頭の上で髪の毛をハーフアップにしてまとめる髪型。さっきツバサ先輩が私とお姉ちゃんを間違えた要因の1つはここにあると思う。

 ──()()()から、私はお姉ちゃんと同じ髪型にしていたから。

 

 …でも。

 

「先生」

 

 手の中にあるパステルブルーのリボンを見たあと、アンナ先生へと向き直る。

 

「どうした?」

 

 私は…

 

「私はまだ、四ツ星学園のアイドルとしてはデビューしていませんよね」

 

 お姉ちゃんを追いかけるばかりではなくて…

 

「ん?あぁ。初登校に加えて初ステージが今日だからな。それがどうかしたのかい?」

 

 隣に立ちたい。だからいつまでもお姉ちゃんを真似していてはダメ。私は私らしく。

 シュルッとリボンで髪の毛を上げて、ポニーテールの要領で結んだ。

 立ち上がってその間なにも言わないでいてくれたアンナ先生にお礼を言った後、もう1度口を開く。

 

「私は私らしくしたいと思ったんです」

 

 お姉ちゃんとお揃いの髪型にする前は、ずっとこの髪型だったから。やっぱりこの髪型が1番落ち着く。

 一瞬だけ鏡に視線を向けて、変な所はないか確認して完了。

 

 これが私。アイドルの白鳥ひな。

 

「なかなか似合ってるじゃないか!」

 

 アンナ先生がニッとしながら褒めてくれた。

 

「ありがとうございます!」

 

 仕切り直しとばかりに、先生がカツッとヒールを鳴らす。

 

「さて白鳥、組み分けテストの準備はいいか!」

 

「はい!」

 

 まず受けるのは筆記テスト。その後、集会でのステージ審査。

 

 私の初ステージはどんなステージになるのかな。どれだけ楽しいのだろう。

 最初の筆記テストの点数によってはその時点で不合格になると聞いたけれど、出来る努力はしてきたからきっと大丈夫。

 

 あぁ…ワクワクする気持ちが止まらない。

 

 本当に、楽しみ。

 

 

 

 side:ひめ

 

 楽しみだわ。

 実力テストの結果発表。

 私達はお忍びのような形で幹部生以外の子には知らせずに上の席から見ることになっている。

 何人の子が私達に気付くかしら?

 

 

 ──着替えは完了。

 

 真紅(しんく)の制服に袖を通して、乱れがないか確認。…大丈夫。

 

 夜空達のいるリビングに戻りましょうか。

 

「おかえりなさい。ひめ」

 

 戻って来ると、夜空が机にお菓子の用意をしてくれていた。

 

「えぇ、ただいま。今日のお茶はな〜に?」

 

 机の上のクッキーを1度見て問いかける。

 

「ふふ♪()ずはこれ」

 

 綺麗な封筒を手渡された。

 手紙?誰からかしら?

 

お姉ちゃんへ ひなより

 

 ひなちゃん?

 

「キッチンにこの箱と一緒に置いてあったの。読んでみたら?」

 

 私を椅子に座るように(うなが)した後、夜空は微笑みながら椅子に腰掛けた。まだお茶を出すわけではないみたいね。

 

「そうするわ」

 

 何が書いてあるのかしら。

 手紙を見ながら椅子を引いて座る。

 淡いパステルカラーの封筒を開けると、中から手紙が出て来た。

 

お姉ちゃんへ

もう体調は大丈夫? 私はこれからアンナ先生の所に行かなければいけないので、お手紙を書きました。

アイスティーを作らせて貰ったので、よかったら先輩方と飲んでね♪

お口に合うといいのだけど…。

四ツ星学園での私物の持ち込みは、どれくらい許可されているのかな…?

把握していなかったので、紅茶の葉っぱ、お姉ちゃん達に使ってほしいの。茶葉は小箱に入れておきました。

最近突発的な低気圧や雨が多いから、体調に気を付けて。あまり無茶もしないでね?

私は、早くお姉ちゃんの隣に立てるように、一生懸命アイカツ!がんばります。

お姉ちゃん、これからもよろしくね。

白鳥ひめ先輩、これからよろしくお願いします。

 

ひなより

 

 ひなちゃん…

 私も、貴方(あなた)がここまで来るのを待ってる。どんなにかかっても、待ってるわ。姉としても、先輩としても。

 

『── Dear My, Little sister

早くここまで来て欲しいけれど、ほんの少しだけ…まだ、来て欲しくないという気持ちがあるの。どんなにかかってもなんてカッコよく思ってみても、あなたはきっとすぐに追い付いてくれるから…それまで私に、どんな素敵な姿を見せてくれるのかしら。とっても楽しみだけど、少し怖いわ。

…怖いとか、来て欲しくないとか思ってしまったけど…、やっぱり私は、ひなちゃんの事が大好き。

1人しかいない私の大事な妹だもの。たった1人の、可愛い妹。世界中の何にも変えられない、大切な大切な、私の宝物。

どうか、ひなちゃんのアイカツに満開の光の花が咲きますように────』

 

「読み終わった?」

 

 夜空からかけられた声で現実に引き戻される。

 

「えぇ」

 

 さっきの心のお手紙は、誰にも言わない内緒のお手紙。

 ふふっ、私だけの秘密♪

 

 夜空はいつの間にかキッチンに移動していた。

 

「アイスティー、飲みましょうか」

 

 そう言って、グラスの乗ったトレーを持って来てくれる。

 普通に歩いているように見えるのに、アイスティーの水面が(ほとん)ど揺れていない。日々のレッスンって、こういう所でも活かされるのね。

 

「え〜っと。これがひめのよ。それで、これがツバサの。そして、これが私ね」

 

 ・・・?

 アイスティーの色が違う…?

 

「種類が違うのかしら?」

 

 首をかしげる。

 

「そうなんじゃないか?ほら、グラスひとつひとつにカードが付いてる」

 

 ツバサが隣の椅子に腰掛けながら指摘してくれた。

 

 カード、カード…これね。

 

お姉ちゃん Galle セイロン島南部で取れた茶葉。花のような香りが特徴

 

 丸みを帯びた綺麗な文字でそう書いてあった。これはひなちゃんの字ね。右下には私とひなちゃんの好きなお花も挿絵(さしえ)として描いてある。

 フレームはハートの模様を描く綺麗な植物にレースで作られたような細かくて可愛らしい蝶々が止まっているもの。…でもこのカード、元はただの白いカードのはず。

 本当に、ひなちゃんの描くカードは、言われなければ手描きだと分からないレベルの高さ。売られているものより素敵なんだもの。

 絵を描くことも大好きだったひなちゃんが小さい頃からカードに模様を描いていたのを見ていた私は分かるけど、夜空もツバサも気付いてないでしょうね。挿絵(さしえ)のワンポイントくらいは手書きだと気付くかもしれないわ。

 

 何はともあれ、久し振りのひなちゃんが淹れてくれたアイスティー。早速飲もうかしら。

 グラスを傾けて中身を口に運ぶ。

 

「……まぁ」

 

 コクリと1口飲んだあと、思わず言葉が漏れた。

 紅茶が素敵な味なのはもちろん、ふわっとお花のような香りがしてとっても美味しい…

 

 夜空もツバサも同じだったみたい。

 

「すごいわね。とっても美味しいわ」

 

 グラスの中の赤橙色を見つめながらそう言った夜空。目が少し開いているから、驚いたみたいね。今はもう分かるけれど、最初の頃は彼女が驚いても分からない事があった。コロコロと表情が変わったりもするから他の子や後輩達は皆気付かないけれど、夜空は負の感情を表に出さない。驚いたりするのも他の人と比べて薄い。周りに誰かが居る時は特にね。S4になってからはそれが顕著(けんちょ)

 色々と溜め込んでないと良いのだけど…。

 

「あぁ。美味しいな」

 

 頭を少し振って考えを飛ばす。

 ひなちゃんの事を褒められると、何だか自分の事みたいに嬉しい。

 そういえば、ひなちゃんが茶葉を入れた箱…これの事よね?

 1度開けてみま「みーんな──っ‼︎」

 

 ・・あら?




ラッキー、セブンっ!
昨日出先の自動販売機でおしるこを買ったところ、7777が出てもう1本貰えました。ココアにしました。
そして物語も7page。とてもホクホク顔です。

こうもラッキーが続くと嬉しいですね。今月どころか、来月の分の運も使い果たしたのではないかと心配になって来ました。

もしかすると明日は更新がないかもしれません。その時はムーンナイト書き上がらなかったんやな、と思ってください。

では、また次の後書きで。

(2019年9月・文章整形や加筆を行いました。手紙の文面にフォントというものを初めて使ってみました…!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。