問題児達に妖狐が混じっているそうですよ?   作:せーじゅん

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はい、ガルドとのギフトゲームです。
途中からプレイヤー側に視点が切り替わります。結果はほぼ原作通りですが、耀に重点を置いた展開となります。
楽しんで頂けたら幸いです。


第6話

ーギフトゲーム当日ー

 

 

「ふむ、来たようだぞ」

 

ここはフォレス・ガロ居住区からやや離れた高台。ゲームの舞台がよく見えるここで私とレティシアは観戦を行う予定だ。

 

「まったく化物じみた視力をしているな。目を凝らしても私には良くわからないよ」

 

私もギフトを手に入れて身体能力等の基本スペックは相当上がったのだが、ポツリと点が見えるだけで人とは判別できない。

持ってきた双眼鏡を目にあてる。

 

「あれは…黒ウサギ達か!?」

「なんだ、知ってたのか?」

 

レティシアが驚いた顔で私をみてくる。

 

「ああ、私がこの世界に来たときに一緒だったんだ。しかしまさかなあ」

 

いや、考えてみればヒントはあった。気づかなかった己の思慮不足だ。

 

「ふむ。では一葉からみてあの者たちはどうなのだ?」

「あー。耀と飛鳥、あの女の子二人だが、良く分からない。一緒だったのは短い時間だったしギフトも見ることができなかったから。ただ……」

「ただ?」

「金髪の学ラン、逆巻十六夜は強い。今の貴女なら太刀打ち出来ないほどだよ」

「ふふ、そうか。うん、それは良いな。しかしそれだとガルドでは役不足としかいえないな。どうしたものか」

 

それもそうだ。十六夜がこのゲームに参加すれば彼一人で容易くクリアしてしまうだろう。しかし、

 

「十六夜はこのゲームに参加しないだろう。彼には何かしらポリシーがあるらしいから」

 

昨日の飛鳥と十六夜のやり取りを思いだしそうレティシアにつげる。

 

「しかしその規格外の少年と時を同じくして呼び出されたとなると、あの二人にとってもガルドは敵でないかもしれんな」

 

そう思案するレティシア。ここは私が一肌脱ごう。

 

「レティシア、私がギフトを使おう。多少はマシになるはずだ」

 

そういってギフトを発動させる。

 

狐憑き(fox haunt)

 

これは私より霊格の低い者に乗り移り、支配すると言うギフトである。本来は完全に意識を奪って操るものだが、黒ウサギ達とのギフトゲームでやったように意識の誘導の様なこともできる。その場合は本来の性質とは多少異なる『狐狗狸さん(deriver of correct)』となるのだがそれは置いといて。

私はガルドの肉体を乗っ取った。

(さて、お手並み拝見といくか)

 

 

 

 

 

「駄目ね。ヒントらしいヒントは見つからないし、武器らしい武器も見つからないわ」

 

ふぅ、と溜め息をつく飛鳥。そこに一番高い木に登り索敵していた耀が降りてくる。

 

「もしかしたらガルド自信がその役割を担っているのかも知れない」

 

虎穴に入らずんば虎児を得ず。まさにその通りなのだが、武器がなければ一方的に攻められてしまう。リスクの低い一撃離脱をねらうなら、耀の力に頼るしかない。

 

「気が乗らないけれど、方針を変えましょう。まずは春日部さんの力でガルドを探して」

「もう見つけてる」

 

ジンと飛鳥は耀に目を向ける。

耀はレンガの残骸が残る街路を指し、

 

「本拠の中にいる。影が見えただけだけど、目で確認した」

 

彼女の目は普段とは違い、猛禽類を彷彿させるような金の瞳で本拠を見つめている。鳥の視力を以てすれば造作もない距離だったのだろう。

 

「流石ね、春日部さん。すばらしいわ」

 

そう飛鳥は耀を称賛し、三人は警戒しつつ本拠の館に足を進めた。侵入を阻むように道を侵食している木々はまるで命じられたかのように絡み合っている。

 

(これだけの量を鬼化させるなんて……まさか彼女が……?)

ジンは一人だけこのような芸当ができる人物を知っている。

レティシア。元魔王で仲間であった人。ジンの予想は正しいが、こんなところに来るはずがないと彼はその考えを振り払う。

 

「見て。館まで飲み込まれているわよ」

 

“フォレス・ガロ”の本拠地に着く。虎の紋様を施された扉は無惨に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。豪華な外観は塗装もろともツタに蝕まれて剥ぎ取られていた。

 

「ガルドは二回にいた。入っても大丈夫」

 

内装もやはり酷いものだった。家具は打ち倒され、カーペットはズタズタに破れている。

三人はいっそうこの舞台への疑問を深めた。

 

「この奇妙な森の舞台は……本当に彼が作ったものなの?」

「……分かりません。“主催者(ホスト)”側の人間はガルドだけに縛られていますが、舞台を作るのは代理を頼めますから」

「代理を頼むにしても、罠の一つもなかったわよ?」

 

そう呟いた飛鳥に耀も同意する。

 

「森は虎のテリトリー。有利な舞台を用意したのは奇襲のため……でもなかった。そうだったなら私がもっと早く感知したから。それに本拠を破壊する必要もない」

 

そう、それが一番の疑問だった。この豪奢な本拠はガルドの野望の象徴とも言えるだろう。その本拠を意味もなくこんな無惨な姿にするだろうか。

三人は今までとは違う緊張感の中で散策を開始する。

瓦礫を掘り返し隅々まで調べるが、ヒントらしい物も武具らしい物も見つからなかった。

もしかしたら一本の針かも知れないし、持ち上げるのが不可能な鉄の塊である可能性もある。そんな不利な状況のなかゲームに挑んでいるのである。たとえ勝負には関係のない違和感であっても、慎重に事を運ぶのに越したことはないだろう。

後日、全くの杞憂であったことに三人とも溜め息を漏らすのだが。

 

「二階に上がるけど、ジン君。貴方は此処で待っていなさい」

「どうしてですか!?僕だってギフトを持っています。足手まといには」

「そうじゃないわ。上で何が起こるか分からないからよ。だから二手に分かれて、私達はゲームクリアのヒントを探してくる。貴方にはこの退路を守ってほしいの」

 

理に適った回答だが、ジンはそれでも不満だった。しかし退路の重要性は彼にも分かっている。ジンはしぶしぶ階下で待つことにした。

 

飛鳥と耀は根に阻まれた階段を物音立てずにゆっくり進む。階段を上った先にあった最後の扉の両脇に立って二人は機を窺う。意を決した二人が勢い良く飛び込むと中から、

 

「グ……」

「………GUUOOOOOoooo!!!」

 

格子を、ランプを、そして二人の髪を震わせる咆哮をあげて、虎の怪物が白銀の十字剣を背に立ち塞がった。

 

 

 

 

目にも留まらぬ突進を仕掛ける虎を受け止めたのは、飛鳥を庇った耀だった。

体を捻ってガルドを投げ飛ばした耀は、階段に突き飛ばした飛鳥に向かって叫ぶ。

 

「逃げて!」

 

後の言葉は続かない。ガルドの姿は先日のワータイガーではなく、赤い瞳を光らせる虎の怪物そのものとなって三人を待ち構えていた。階段を守っていたジンはガルドの野望の姿を見るや否や、彼の身に何が起こったのか理解する。

 

「鬼、しかも吸血種!やっぱり彼女が」

「つべこべ言わずに逃げるわよ!」

 

飛鳥はジンの襟を掴んで階段から飛び降りる。

標的を逃がさないようにガルドが追いかけようとするが、

 

「貴方の相手は私」

 

耀がガルドの首を蹴り抜く。本棚に吹き飛んだガルドを横目に耀は十字剣に向かい、それを引き抜く。

 

「飛鳥には悪いけど此処で終わらせてもらう」

 

起き上がってきたガルドにそういって剣を構える。そこで耀はガルドの変化に気付いた。

 

(動きが穏やかになった?それに目の色も強く…)

 

そんなことを考えていると地面を踏切り虎が襲いかかってきた。耀はそれを飛び越えて避ける。

 

(余計なことを考えてもしょうがない。剣は手にいれたんだからこっちの攻撃も通るはず)

 

頭を切り替えて剣を振るう。端から見ていかにも素人だと分かる剣捌きである。大振りで隙も大きい。

しかし耀は人間離れした身体能力を持っている。普通なら剣に体を持っていかれる様な振り方でも力で強引にひるがえし、あり得ない速さで連撃を放つ。鬼化したとはいえ、十分に巨虎を捉えられるものである、はずなのだが…

 

避ける。避ける。避ける。

 

体勢を低くし、バックステップや横っ飛びを使い、時にはその爪で剣を受け流して虎は耀の攻撃を避ける。

 

(どういうこと?)

 

耀は疑問を抱いていた。このゲームでのファーストコンタクトはガルドの突進だった。いかにも獣といった攻撃でそこに理性は感じられず、この程度なら問題なく勝てると踏んで耀は剣を手に入れても退却しなかったのだ。

しかし目の前の虎には確実に理性が見受けられる。明らかに一度引いて味方と合流した方が無難だ。

しかし、

 

(ここまで来たら逃げるなんて考えられない)

 

普段はおっとりマイペースを貫いており、まったりとした印象を受ける耀だが、なかなか負けず嫌いな一面も持っている。確かに致命打は打てていないが、虎の方も防戦一方なのだ。ここで退くという選択肢は彼女には無かった。

 

何合か打ち合ったあと、耀は身を翻し窓から飛び降りた。虎もそれに続くとそこには剣を構える耀の姿があった。逃げたわけでは無かったらしい。

虎が爪を振るい耀に襲いかかる。が、彼女はそれを受け流し…

 

()()()()()()()()

 

彼女のギフト“生命の目録(ゲノム・ツリー)”は友となった種の特有のギフトを得るという性質を持つ。彼女は昨日、幻獣グリフォンと心を通わせ彼らの持つ“風を操る”ギフトを手にいれたのだ。今回の砂嵐はそれを応用したものである。

習得したギフトを一日でこのレベルまで使いこなせる所を見るに、かなりの才能の持ち主だ。汎用性のあるギフトを所持しているということもあり、ほぼすべての種類のギフトゲームに対応できるだろう。

 

その耀はグリフォンのギフトを使い、舞い上がる。超音波を使い虎の正確な位置を把握した耀は、虎の死角に回り込んだ。

 

(これで終わり)

 

足の裏に空気を圧縮し、弾丸の様なスピードで虎に襲いかかった。その突きは虎の喉元を確実に捉えている。砂で視覚、嗅覚、聴覚、触覚を封じ込めているため耀の攻撃を察知できるはずはなかった。なかったはずなのだが…

十字剣の切っ先は虚空を切った。虎が体をずらし、耀の攻撃を避けたのだ。

 

(どうして!?)

 

戸惑う耀。その驚愕が攻撃後の隙をさらに大きくする。

結果、振り抜かれた虎の腕に耀は吹き飛ばされた。

 

「ぐっ、うぅぅぅ」

 

地面に打ち付けられた耀。戦えないこともないが状況はかなりの不利になっている。

 

「……ッハァハァハァ」

 

荒い呼吸をする耀に虎は悠々と近づいてくる。

 

(こうなったら一か八か、正面から一騎討ちを狙う!)

 

頭に血が昇っている耀は退却という選択肢を思い付かなかった。非常に不味い状況だろう。一騎討ちは下手をすれば致命傷を受けるのだから。

 

「ンッ!!」

 

耀は地面を蹴り虎に突進する。対して虎は動かなかった。直線的な攻撃は引き付けて良ければ最大の攻撃のチャンスである。耀の攻撃を避けた後、一撃を叩き込むつもりだろう。こうなると耀には最悪である。しかし、

 

『木々たちよ、()()()()()!』

 

凛とした声が一喝、鬼種化した植物が一斉に虎へ枝を伸ばした。

不意の攻撃に虎は反応できずに拘束される。動きの止まった虎に耀の剣が一閃する。

 

「GEEEEEYAAAAAaaaa!!!」

 

断末魔と共に虎の体は消え去った。

 

 

 

 

 

 

鬼種化したガルドを倒し一段落の一行。だが耀の戦いは終わっていなかった。

 

「あの、飛鳥?私一応負傷しているんだけど…」

 

正座した耀がおずおずと手を挙げる。

目の前には飛鳥が仁王立ちしていた。

 

「春日部さん、私達に何か言うことがあるのでは無いのかしら?」

「えっと、手柄を独り占めしようとしてごめんなさい」

「違うでしょう!私が言っているのはどうして危なくなったときに退かなかったかということよ!」

 

飛鳥は鋭い口調で言う。

 

「手柄云々については、まあシャクだけどなにも言わないわ。私達がそこまで信頼されていないことは会って間もない今、仕方のない事よ」

「そんなことは…」

「それよりもどうして危なくなったときに逃げなかったの!あのまま私が来ずに突進していたら貴女死んでいたわよ!!」

 

飛鳥の怒りは蔑ろにされたからではない。多少はそこに対する怒りも含まれていたかも知れないが、彼女は自分がまだまだ力不足だと自覚している。

彼女は本気で耀の身を心配しているのだ。心を通わせる事のできる友人の身を案じての怒りだった。

 

「ごめん、飛鳥。頭に血が昇ってた。」

 

それに気付いたのだろう。耀も素直に謝る。

 

「分かってくれたなら良いわ。次からはこんな無茶しないでちょうだい」

 

飛鳥も素直な耀に溜飲を下げたようだ。その目が穏やかなものに変わる。

 

「それでは早く耀さんをコミュニティの工房に連れて行きましょう。あそこなら治療用のギフトが揃っていますから」

 

説教が終わったところでジンが声をかける。彼の言う通り、命に別状はないと言っても骨にヒビが入っているかも知れないのだ。

飛鳥とジンで耀を支えようとする。

 

「私は大丈夫だから…」

「いいから大人しくしてなさい。友人に無理などさせられないわ」

 

耀の言葉を遮って飛鳥は耀に肩を貸す。

 

「…ありがとう」

(この世界で初めての友人が飛鳥でよかった)

 

友人に寄りかかる無口な少女の顔には嬉しげな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 




いつもより少し長くなりました。
ていうか三人称使いやすっ!!
正直一葉sideも三人称でいこうかな~とか考えてます。皆さんの意見も聞きたいのでアンケートを取るかも?

話は変わりますが、アンケートは取り敢えず置いといて活動報告がありますのでそちらに目を通してください。更新が一旦止まります。
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