哿(エネイブル)のルームメイト   作:ゆぎ

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感想、評価が分かりやすくモチベになるの再認識。


White-eyed demon

 

 

 

「こ……ふッ!」

 

 既に赤く濡れていた洗面所の上に新しい血を口から上塗りする。喉の奥につかえそうなものを吐けば吐くほど、洗面所に毒々しい赤色が咲いた。

 

(……イヴの置き土産か。いや、これが本来の刻印のあるべき形……最悪だ。無理してまずい酒を喉に流し込んだ気分だ……)

 

 掌で額を叩き、鏡に映る血走った瞳を見ながら思う。

 洗面所に壮大に喉からぶちまけたこの吐血の原因は一つ、()()()()()()以外にない。

 

 濡れた口元を拭い、鏡を睨んだ瞳は自分でもゾッとするような不気味さがあった。

 

 カインの刻印は、呪いだ。その本質は呪い。身体能力を向上させる一方、まるで対価のように殺人を求められる。

 ディーンがそうだった、刻印を宿した者は殺人を求められる。対価を払わなければ吐血から始まり、徐々に頭がイカれてくる。メタトロンの言うところの制御できない狂犬の完成だ。

 

「……逆にこれまでがイカれてたのか。刻印と剣があるのに何もなかった、その方がおかしい」

 

 起きて早々に、鏡に映る自分に向けて自虐もいいところの言葉を投げ掛ける。

 折角の豪華絢爛な洗面所だと言うのに気分は晴れない。このイカれたリスクを嫌っての見てくれが立派なだけのでっち上げだった。

 

 それがヒルダと迷い込んだ煉獄で、イヴが外側を身繕っていただけの呪いを弄くった。煉獄に送還させられた腹いせだとしたら大成功だ、頭痛の種どころじゃない。

 

(ミカエルがこそこそやり始めたこのクソ忙しいときに……)

 

 刻印のリスクがないわけじゃなかった、乱用すればアマラが言ってたようにいつかはこうなった可能性はある。

 だが、そう考えると煉獄へ飛ばされてイヴと遭遇したことは、まるで刻印をこの状態に無理矢理もっていくためのテコ入れみたいだ。

 

 鏡を睨みながら、日本に経つ間際のヒルダとの会話を思い出す。煉獄を抜けて、ヒルダとも当然騒動の元凶については話をした。

 煉獄の扉を開ける存在なんて知れてる。死の騎士、大天使、神とアマラーー両手の指以下だ。

 

 ミカエルに奪われた右目を帯で隠し、洗面所を汚した血を水で洗い流す。

 

 死の騎士はない、動機がない。あの生真面目な性格も踏まえて真っ先に外せる。

 大天使もない。残ってるのはルシファー、異世界から来たグレてるミカエル、檻で腐ってるミカエル。誰が煉獄の扉を無意味に開けるっていうんだ、ありえない。

 

「……売れない物書き。何から何まで最初から仕組まれてたか」

 

 汚した血を洗い流し、残った左目で鏡を見る。

 

 

 

 

『良かった、ちゃんと()()の眼よ?』

 

 

 

 いつから、いつからそこにいたんだろう。

 さっきからずっと見ていた鏡に白いワンピースの少女が映り込んでいた。

 

 俺のすぐ後ろ、洗面所と部屋を繋ぐドアの前で愛らしくブロンド髪の少女は首をかしげる。平賀さんよりもずっと小さい、小学生になったかどうかのそんな幼 い少女。

 

 気付かなかった、背後を盗まれたのに今の今まで何も気付かなかった。突然、何もない虚空からそこに現れたように……何の兆候もなかった。

 ……違う、普通じゃない。この子は……普通じゃない。

 

『怖い顔。ねえ、まだ気付かないのー? もっと頭の中をクルクルって回さないとー、もうっ仕方ないなぁー大ヒントあげちゃう!』

 

 まるでホームドラマに出てくるお転婆少女のような大袈裟な振る舞い。

 少女がはにかんだ刹那、白いワンピースに赤黒いシミが手品のように浮かび上がった。

 

 見逃すには大きすぎる、血をそのままぶちまけたような赤いシミを浮かべて少女の顔を借りた()()は笑う。

 あどけなく愛らしい顔を皮肉ったようなゾッとする姿には、覚えがある。

 

「……リリスか」

 

 ぐるっと、鏡に映った青色の瞳が白色に裏返る。

 色を失った、清廉さなんて欠片もない不気味なまでの白色の瞳は紛れもなくーーリリス。

 

『キリってばあったまいいー! 大正解よ?』

 

 頭の奥に直接響かせるような不愉快極まりない声に歯がぎり、と軋む。

 

 リリス、白色の目の悪魔。

 ルシファーが産んだ最初の悪魔であり、かつて悪魔の軍を率いた、冷酷、凶悪、強大、の三拍子揃った忌むべき化物……

 

「シッターと飼い犬を殺した、あのときの器か」

 

『惜しい、嘘つきじじいが抜けてる。あのときは楽しかったわ。毎日のようにケーキが食べられるの、毎日が誕生日よ?』

 

「……アバズレ女が。ままごと感覚で平和な家庭ひとつ滅茶苦茶にしやがって」

 

 この上ない憎悪を込めた目で後ろへ振り向く。

 ペットをけしかけ、俺の腹を切り裂いてくれた恨みはまだ忘れてない。

 今すぐにその赤いシミのど真ん中にルビーのナイフを突き立ててやりたいところだが、ちょっと頭を冷やせば違和感が渋滞してる。

 

「前に殺したぞ、アザゼルやアラステアと仲良く虚無で転がってるはずだ」

 

『ええ、虚無でぐっすり。けど、だとしたら貴方の目の前にいる私は?』

 

 はにかみ、悪魔は赤いシミに自分から掌を押し付け、ワンピースに血を塗り広げていく。庭先のブランコで親と遊んでる年頃の少女がやるようなことじゃない。

 ハッキリと、中に居座ってる存在は『別の者』だと教えてくれる。

 

 だが、眼前の悪魔はたしかに葬った。葬ってしまったがゆえにルシファーを閉ざしている檻の最後の鍵が開いてしまった。

 虚無でぐっすりーーそう、死んだ悪魔は問答無用で虚無という墓場に放り込まれる。

 

 音も気配もなく、硫黄の匂いも電子機器のショートや点滅もなく、虚空から突然顔を出したような現れ方といい、この白い目の悪魔はーー

 

「まやかしだ。ルシファーと一緒、幻覚。俺の頭がどうにかなっちまったせいで見えてる、ただの幻覚。大方原因は……」

 

 一つしかない、刻印だ。

 半眼で睨んだリリスが小さな足を鳴らし、抱き付いてきた。膝までしか届かない両手が巻き付いてくる。

 

『あったまいいー! またまた大正解よ?』

 

 刻印は、持ち主を堕落させる。

 なるほど、これ以上ない不吉な兆候だ。リリスの幻覚は十分すぎる。もう張りぼてのタトゥーシールじゃなくなった、紛れもなくこれは第一級の呪いだ。

 

「最近のオマケはトースターじゃないんだな。こんなサービスがあるとは思ってもみなかった、分かってたら全力で拒否ってやったのに」

 

『不吉な予感? でも不吉な予感はいい赤ワインとぴったりよ?』

 

「……もう飲まねえよ、んなもん。好きなのはコーラとラムネとソーダだ」

 

 饒舌な悪魔の親玉を放って洗面所を出る。

 こうなった以上、明日明後日でどうにかできる問題じゃない。無視しとけばいつか消えてなくなる作戦だーー見込み薄だけどな。

 

「ーー出るわよ。鬼が動いた、正確には神崎アリアの方から」

 

 部屋に戻ると、ちょうど二つ折りの携帯電話を夾竹桃が折りたたんだところだった。

 キンジの周りに来たとたんこれだ。状況が目まぐるしく動き回る。電話の中身はメヌエットとの世間話じゃなさそうだ。

 

「あのお嬢様は相変わらず休むってことを知らねぇな。今度は何を?」

 

「遠山キンジが言うには、稚拙な潜入作戦(スリップ)

 

「潜入作戦……?」

 

「稚拙な、が抜けてるわ。稚拙な潜入作戦」

 

 棘がある、イコール無茶な作戦だったか。

 あとで詳しく聞くのが楽しみだ。

 

『やったー、みんなでお出かけなんてワクワクしちゃう!』

 

「……どうしたの? ホテルの壁で射撃訓練するつもり?」

 

「まさか、ちょっと嫌な声が聞こえたもんで。昨日アクション映画見すぎたかな。行こう」

 

 ベッドで玩具のピアノを弾いていたリリスから銃口を下げ、先に部屋を出た夾竹桃を俺も追いかける。

 鍵盤も黒鍵にも赤い血が跳ねたピアノで、悪魔の親玉が讃美歌を弾く。世の中病んでるぜ。

 

 

 

 

「ロンドンはだだっ広いぞ、足は?」

 

「常に備えはある、今回は運が絡むけど」

 

 気取った笑みも絵になる彼女に案内され、乗り込んだ車はなんとよく知っている一台だった。

 ルノー・スピールスパイダー、頭を守るものは何もない開けたオープンカーが乱暴な運転でロンドンの道に乗り出した。

 

「ロンドンは渋滞が多いの。パシフィック・コーストハイウェイ並み」

 

「廃棄ガスをたんまり吸えそうだ。巻き込まれないことを祈っとく。けど、パシフィック・コーストハイウェイなんてよくすんなり出てきたな?」

 

「LAで遊んでたの、一時ね」

 

「そりゃ初耳。ハロウィンじゃお化け屋敷のお姉さんでならしたとか?」

 

 去年は理子がUZIを積んでバスを蜂の巣にした青いスポーツカーは、今度は彼女の友人がハンドルを握って壮大に風を裂きながらロンドンの街を駆ける。

 

「なあ、スピーカーのボリュームあげない? GPSの声の女がなんか言ってる、ほら下ろしてとかなんとか」

 

「驚きだわ、海外に来てまで発病するのね。助手席だと黙れない症候群」

 

「いや、急ぐのはいいんだけどさ。お前このまま行くと先にどちらが葬式を上げるかどうかって問題になるーー何が言いたいかって、ここはアウトバーンでもサーキットでもないのッ!」

 

 朝の通勤時間帯、残念ながら車の通りはお世辞にも少ないとは言えなかった。

 スパイダーは車の間を縫うようにジグザグに走行し、夾竹桃が何度もハンドルを切りつける。やることが派手だねえ、荒っぽい神崎とのドライブが霞むぜ。

 

「どこを目指してる?」

 

「テムズ川の岸に泊まってる海上レストラン、神崎アリアと鬼たちはそこにいるそうよ」

 

『ブブー、色男は一足先に仕掛けちゃった。2時の方向よ』

 

「夾竹桃、2時 highーー行き先変更だ」

 

 2人乗りのスパイダーの助手席に後ろからしがみつき、無茶な姿勢で相乗りしてるリリスが『きゃはッ』とヒステリックな叫びを上げる。

 この忙しいときに構ってやる暇はない。首が折られる心配はないんだ、好きにさせといてやる。

 

「私もアクション映画の観すぎかしら」

 

「だと良かったけどな、現実だ。戻ってこいマイフレンド」

 

 リリスが口ずさんだ方向には、話題の渦中にいる『緋鬼』と思われる女が走行中の車から車を異様な跳躍力で飛ぶようにして渡っているとんでもない光景があった。

 車を足場にし、道路に立つことなく淡々と移動する姿は完全に重力というものを嘲笑ってる。

 

 中には強靭な脚力を受けて、足場にされたルーフを凹ませたものもちらほら。運がお悪い。

 

「あれはキンジの話に出てきた "津羽鬼"って鬼だな。戦役に参加してた閻の付き人、忙しく一人で走り回ってやがる」

 

「話を聞いてみましょうか、シートベルトは?」

 

「とっくに締めてるよ」

 

 やんわりとした確認とは裏腹に、風を切り裂いていたルノーがもう一段加速する。

 車体を痛め付けるような優しくない加速だが流石だな。津羽鬼との距離が詰まった。

 

 前に踊り出るのは無理でも一時的に距離さえ詰まっちまえばこっちの嫌がらせが届く。

 左目を見開き、俺が抜いたトーラスからばらまかれた9mm弾は、前を行こうとする津羽鬼を背後から捉える軌道で迫った。

 

 威嚇射撃なし、最初から本命のルール違反とも言える奇襲。たとえ9mmでも背後から何発も貰えば笑いごとじゃ済まない。

 リーダー格の閻は真正面からベレの9mm弾を()で掴んだらしいがーー

 

「ーー種子島の頃と変わらぬ、アクビが出るわ」

 

 黒留袖の花が刺繍された、動きやすいとはお世辞にもいえない和服で津羽鬼は綺麗なサマーソルトを決めた。

 背中を撃ち抜こうとした弾丸は、虚空となったその下を見事にすり抜けていく。ありきたりな感想だが……後ろに目でもついてんのかよ。

 

 足場を失い宙に投げ出されていた体は、後ろからやってきたトラックのデカいコンテナの上へ着地する。

 

「遠山の縁ある者か。謝さぬともよい、だがこれより追ってこようものならまず、己等の膝から下を捥いでやろう」

 

 殺気たっぷりの鋭い眼光が迷うことなく俺たちへ向けられた。

 

「気のせいかな、追ってこいって聞こえた」

 

「私も。できる限り寄せるわ、そこから先はお好きにやってちょうだい」

 

「あの女、見るからに別行動って空気だ。足を止めればキンジやワトソンへの助けにもなる、あっちがやる気に満ちてるなら好都合だ」

 

 加速したスポーツカーから走行中のトラックに飛び乗る、普通じゃないな。

 

「私は遠山キンジを探すわ、あとで落ち合いましょう」

 

「ああ、後でな。時間があったらビッグ・ベンでも見物しに行こう」

 

「こんなときにお誘いとはね」

 

 お可愛いことーーと、微笑を浮かべた夾竹桃がルノーをトラックに寄せる。

 ベルトを外し、トラックにかけられた可動式タラップを一度足場にして、俺は鬼の陣取るコンテナの上に無事転がり込んだ。

 

「走行中のコンテナがステージとは洒落てる。あんたが津羽鬼だな、覇美は家でお留守番か?」

 

 軽い気持ちで尋ねた刹那、冷たい殺気が肌を切りつける。

 

「人間、覇美様への愚弄捨ててはおけぬぞ。その首、捥ぐだけでは足りぬと思え」

 

「さっきは膝だったろ、今度は首かよ」

 

 こっちは大天使に片眼をくれてやったばかりなんだぞ、これ以上首も膝もくれてやるか。

 

『首を捥ぐだけなんて甘い』

 

 目先には津羽鬼、好奇心で背後を振り向くなんて愚行が許される相手じゃないが、案の定複雑な否定をしてくれた女は俺の隣にやってきた。

 

 アマラを思わせる、黒いドレスを長身に纏ったブロンド長髪の美麗な女。

 けど、いくらパーティー会場を間違えたってこんなところには来ない、普通の女じゃない。夾竹桃と一緒にフェードアウトしてりゃ良かったのにと心底思う。

 

『私なら千の傷でじっくりやる。じっくり切り刻んでから最後に首をもらう、削ぐようにね?』

 

 それはインディアナ出身の歯科衛生士、教会でミサをやったリリスの最後の器。彼女本来の瞳も白色の悪魔の目に醜悪に塗り潰されてる。

 

 津羽鬼には見えず声だって届きやしないが、指で虚空を何度も引っ掻くような仕草を構わず見せつけるように繰り返す。

 津羽鬼の和服が斬り刻まれていないところを見てもこのリリスはまやかし、カインの刻印が見せる手の込んだトリックーー安心した。

 

 走行中のトラックに膝を折り、敵意マシマシの津羽鬼はクラウチングスタートを切るような姿勢を取る。

 

「本当に茶々入れが好きだな、いっそ俺の代わりにお前があの鬼と戦うか? 真っ暗闇から今すぐ這い出て。譲ってやるぞ?」

 

「……何への問いだ、ふれたか? だが、それならば都合も佳かろう。隻眼の男、お前は死を視ること能わぬ。視ようとする前に、死に至っているからだ」

 

 古めかしい言葉での死刑宣告を最後に、津羽鬼の体がーー消える。

 

「……」

 

 人間を辞めたキンジをして、津羽鬼の動きは超スピード。気付いたときには首だろうが膝だろうが捥がれたあと、勝敗は決まってる。

 

『残念。あんたの首が落ちるところ、もう一度見たかったのに』

 

 砲弾のような速度で迫る津羽鬼から突き出された五指は、何もない虚空を裂いた。

 突き出され延びきった指より上、前宙気味に頭上を奪い上下逆転した視界でルビーのナイフを背中目掛けて抜き放つ。

 急加速から急ブレーキ、異常な速度を異常なブレーキで制御するように津羽鬼は反転しながら差し出した指と指の間にナイフを沈ませ、

 

「ーーぬッ」

 

 上下から圧をかけるように刃を止める。

 

 ワンアクションで左手に元始の剣を滑らせ、ナイフを捌いたばかりの腹部を狙い突き出すと、右足が下から刃を蹴りあげるように伸び、肘ごと跳ね上げられて刃を腹部から離された。

 

 異様な脚力に押され、ノックバック。一度は切り取られた距離が僅かに戻り、狂眼で抜いた右手のトーラスが発火炎を散らす。

 一撃必殺の天使の剣の弾丸はまたしても指に挟まれ運動エネルギーを奪われる。が、予め血で濡らしておいた指は銃弾を殺される合間にコンテナに図形を刻み終えた。

 

「……速度(スピード)は俺が上だったな」

 

 錠前に鍵を嵌め込むように掌を真っ赤な図形へ叩き付ける。

 赤い図形の淵を黄色い光がなぞり、次の刹那溢れでた青白い光が質量を伴なって津羽鬼を走行中のコンテナから道路の下へと押し出した。

 

 スピードに乗った乗り物から叩き落とされる危険性は俺も自分の体で学んでる。修学旅行ではそのままビリーのオフィスまで飛ばされちまったからな。

 コンテナを津羽鬼がさっきまで立っていた逆橋まで歩いていく。

 

『下手な決め台詞が台無し、仕留めてないわ』

 

 津羽鬼が這い上がってくる。

 失った右目の死角から抉り込むような角度、イカれた速度で首を下から斬り飛ばすような上蹴りは一歩先に回避が間に合い、虚空を裂いたソニックブームのごとき異音が鳴る。

 

 ……直撃したら首は落ちてたな。

 大鎌を振り切ったような蹴りが外れ、コンテナの上に津羽鬼の両足が着地する。

 

 和装が多少乱れちゃいるが、走行中のトラックから転がり落ちたにしては傷らしい傷はない。静かな殺気がもう一度、コンテナに波うつように広がっていく。

 

「遠山と縁ある男、答えよ。人ではなかろう、何者だ……?」

 

 鬼の瞳が半眼を描き、聞いてくる 。

 

「名前はキリ・ウィンチェスター。育ちはカンザス州ローレンス、好きな映画はトップガンとハムナプトラ。仕事は怪物退治」

 

 弾倉一本を吐いたトーラスを手放し、カインの忘れ形見一つを手に答える。

 

『そういうの好き、ゾクゾクしちゃう。殺し合いの前の自己紹介っていいわね?』

 

 リリスが白い瞳で、悪魔らしく笑う。  

 津羽鬼には聞こえるはずのない悪魔の声、それが再度の衝突の合図となった。

 

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