哿(エネイブル)のルームメイト   作:ゆぎ

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阿断事

 

 

 

「……ルシファー? こっちがやっとの思いで虚無にぶち込んでやった魔王をどっかの馬鹿が脱獄させようとしてんだよ、頭がおかしくなってんのか」

 

「さてね、虚無はそこまで話さなかった。ただお前に伝えろとだけ、淡白でしょう?」

 

 冗談だろ、魔王が虚無から出ようとしている。それは全身を凍てつかせるには十分な報せだった。

 ふらりと前触れなくアバドンが現れたのよりもさらに1ランク上の嫌なニュースと言っていい。

 

 アマラや神ですら簡単には干渉できないあの虚無の世界から魔王を引っ張り上げる、そんなことができるのか?

 いや、事実そういう可能性があるから虚無はわざわざアバドンを遣わした。冗談じゃねえ、アバドンの来訪だけでも頭がどうになりそうなのにルシファーが脱獄……?  

 

 どうして面倒な連中に限っていつも墓穴が浅すぎるんだ。ルシファー、一体これで何度目だ。決着がついたと思ったら何食わぬ顔でまた現れる。

 本当にしぶといやつだ。ここまで来ると尊敬してやるぜ、さすが魔王だ。

 

 

「でもこれで虚無との取引は果たした。窮屈な時間もこれでおしまい、やっとお前と楽しめる」

 

「気が変わって俺の頭をどうしてもトロフィーにしたいとか?」

 

「いいえ、お前の首は落とさない。その代わり、お前の大切なものを奪ってやる。全部。お前が失いたくないと思うものを全部奪ってやる、愛する人、家族、大切な仲間、全部奪う。お前の目の前で、いいえ、もっと近くで──」

 

「前にも言おうと思ってたんだが、俺たまにお前の話を聞かず口がぱくぱく動くのを見てる。お前の話ってピッグペン暗号みたいに頭捻らないと分かんないんだよ」

 

「なら教えてあげる──死ぬよりもっと酷い。首が落ちるのは一瞬よ? だけど、お粗末な殺し方をするにはお前の体ってそそる。ディーンと似てるわ、お前たちの体は女の淫らな欲望を掻き立てる」

 

 

 狂気を孕みながらもその顔から笑みは消えず、むしろ軽々しさすら感じる雰囲気でその手は俺の首元にかかる。いや、鎖骨から服を下ろすように──そして外気に触れるのは、悪魔に取り憑かれるのを阻む「悪魔除け」のタトゥー。

 

「こんな子供騙しの落書きでも、あると()に入れないのよね。クラウリーは焼いて台無しにしたみたいだけど、私はあいつと違ってそんな回りくどいことはしない。肉ごと剥がしてやる、綺麗にね?」

 

 軽快な物言いに反し、イカれた内容を並べるアバドンは唯一自由な首から上を動かして冷ややかに笑った俺に、息でも触れるような距離で告げた。

 

「合体しない? 楽しくやりましょうよ」

 

 その気ならいつでも折れたと言わんばかりの力で襟首を掴まれ、強制的に視線が合う。

 

「……悪いがそういうのは間に合ってる、嬉しいことに周りに美人が尽きないんでね」

 

「そう、それは楽しみ。お前がどれだけ無口でも一緒になれば全部分かる。カインも、ヘンリーも、愛する人がいたけど全部奪ってやった。お前もそうなる」

 

「女王様よ、俺がそんなもん許すと思うか? 調子にのってでかい口ばかり叩くと、後で恥をかくことになるぜ」

 

「あっはは……坊や…? 胆力はなかなかだけど女王の首に届くほどじゃない。ジェシーにも言ったわ、お前の許しなんて関係ない。アバドンは、すべてを手に入れる」

 

 ぱちッ、マバタキした瞳が奈落のような黒黒とした瞳に変わる。死人のように冷たい手が首に、頬に、這い上がってくる。

 

「想像してみて? 赤ん坊の血が顎を伝って流れ落ちる感触、女の内臓を抉り出す時の叫び声、お前は何もできない。死ぬより悲惨よ? 私が上に乗っかかってお前は見てるだけ。下手でも心配しなくていい。言ったでしょ? 私たち意外と相性がいいって」

 

「繰り言は終わってからにしろ。久々に地上に出て舞い上がってんのは構わねえがトロフィーにされんのはお前の首かもしれんねえんだぜ、アバドン」

 

「楽しくやりましょうよ、一緒に地獄を統べる。お前とはいい関係になる、見てるだけだけど」

 

「お前の方こそ、このままおとなしく虚無に帰るなら俺のオカルトグッズのコレクションには加えないでおいてやる」

 

「お前は状況が見えてないわぁ。勝ち馬に乗った気でいるけど現実は──ちょっと待って、本気?」

 

 

 咄嗟に感じた違和感にアバドンが口を紡ぐ。

 なんでかってそれは、俺が適当に携帯に設定したアラームが横槍を入れたから。録音された悪魔祓いが気持ちよく話してたアバドンに待ったをかける。

 一転、暴君は呆れるようにかぶりを振った。

 

「何か備えはしてると思ってた。けどそれが、セットした悪魔祓いを流す、それだけ? そんなもんで私を追い払えると思った?」

 

 そいつはどうかな。

 タイミングは運任せのセットだったがここで鳴ってくれるならまだ俺にもツキはあるようだぜ。

 

「──Exorcizamus te, omnis immundus spiritus.omnis satanica potestas……」

 

 もしかすると一つの幸運と一つの不幸を招く、実に公平なロカの魔術がまだ期限切れになってなかったのかもな。

 服の内側から聞こえてくる録音した悪魔祓いに、俺も寸分狂わずに上からラテン語を重ねがける。

 

 普通の悪魔なら口から黒煙を吐き、器から飛び出ていくところだがアバドンはルシファーが選抜した高位の悪魔。

 目の前の地獄の騎士は、二重の悪魔祓いにも不愉快な顔を浮かべるだけで慌てない。

 

「omnis congregatio et secta diabolica.Ab insidiis diaboli──」

 

「斬新さはあるけどそれだけ。結果のついてこない曲芸を見せられても響かない」

 

 ああ、でも実を言うと備えはもう一つあるんだ。

 俺も最近気付いたんだが──サムは本当にとんでもない拾い物をしてくれたよ。

 にぃ、と笑ったアバドンに鏡合わせのように俺も磔のまま笑ってやる。

 

 

「お前の腕も錆びついたわね?」

 

 

「かもな。だが、お前のほうがマヌケだ」

 

 

 アザゼル、リリス、ラミエル───地獄の有名人との楽しくもない戦いで学んだことは、たった数秒の攻防一つで有利不利が傾く。それが退路のない首を賭けた殺し合いなら尚更に。

 刹那、何の前触れもなく飛来した凶器はアバドンの頭を背後から揺らした。暗闇で痛いほど眩しく見える蒼白の閃光とともに。

 

 

 

 

 

 

 ミョルニル──いわゆるトールのハンマー。かの有名なトールが振るったとされる電気振動を自前で起こすことができる持ち主の力に相応しい第一級のオカルトグッズ。

 同じく北欧の神であるヴィリがオカルトグッズのオークションで落札したのを紆余曲折あってサムが持って帰った。

 

 長らくバンカーに飾られていたが実際のこいつは、多くの映画や創作で使い回されているのに相応しい性能をしてる。たとえば下準備は必要だが、賢い犬みたいに祈って呼べば勝手に戻って来る、とかな。

 

 

 間接的にアバドンが嫌うクラウリーのおかげで手に入ったような武器が、今皮肉なことに俺の危機を救って因縁の相手に牙を剥いた。

 短い悲鳴を発し、膝を崩したアバドンの体には青白い電流が断続的に流れ、同時に俺を縛っていたPKの圧も消えて足が地につくーー──いけ、一発入れるなら今しかない。

 

 

「………っぅあああアアア! よくも、こんな……!」

 

 乱れた茶髪を揺らし、絶叫をひきつれてうなだれていた首が持ち上がるとそこにあるのは混じり気のない憎悪に満ちた顔。

 だが、近づいてきてくれたおかげで走らずとも殺傷圏内。またPKをもらうより槌を振りかぶった俺の腕の方が、一足先にアバドンの頭蓋へ落ちる。

 

 

「滅びろ、デーモン!」

 

 あとを考えないありったけの力で、持ち上がったアバドンの頭をもう一度地に叩き落とす。

 インパクトと同時に青の稲妻が弾け、たしかな手応えを感じさせる殴打の音。アバドンの上半身が今度こそ工場の床に伏した。ようやくこれで一発。

 

 もう一発、追い打ちしてやろうと腕を振ったところでそりゃそうかと体が後方へ突き飛ばされる。倒れたまま手を突き出したアバドンの苦々しいお顔、またもやPKにふっ飛ばされた体が今度は受け身なく床へダイブ。

 肺のなかの空気が壮大にこぼれるが呻きながらアルテミスのナイフを3本、倒れたままのその高さに向けてワンコンマの差で投げ放つ。

 

「──いいナイフだけど私は殺せない。お前がどんな引き出しを持っていても私を夢中させてくれるのは元始の剣だけ」

 

 イカれた反応速度で不死の存在を殺せると言われるナイフを全部掌で受け止めたアバドンは、悠々と埃を軽く払いながら立ち上がった。

 

「あの剣はお前を殺せる唯一の武器だから?」

 

「んー、えげつなく言えばね。だからお前に勝ち目なんてない。どこまで嫌がらせができるかだけ。さて、これで仕切り直し」

 

 いいや、仕切り直しじゃない。

 迎えに来たみたいだぜ、勝利の女神っていうか勝利の天使が──本当に律儀だよお前は。

 

 

「──やれ、()()!」

 

 音もなく、いつからそこにいたのかも分からない。

 が、たしかに背後を取ったブロンドの天使は俺が叫ぶまでもなく、天使の剣を地獄の騎士の背中へ突き刺した。

 赤く染まった刃が自分の胸下から突き出てるのを見て、背後のアナに一度振り向いたアバドンが見開いた目を俺へと戻す。

 

「天使を呼んだの……!?」

 

「冷血無比な女王さまと戦うのに俺が何の備えもなしに乗り込むと思ったか」

 

「ふっ──!」

 

 ずぶっ、と差し込まれた剣を肉ごと引き抜くような勢いで手元に返し、至近距離でアナのPKが今度はアバドンの肢体を浮かせ、最初にいた計器の方へ跳ね飛ばした。

 

 完璧な奇襲だ。

 お見事という他ないがこれで終わりじゃないとアナも分かってる。手元で天使の剣を回し、持ち直したその隣に俺も並ぶ。

 

「遅かったな。カフェでも寄ってたか?」

 

「仕掛けるタイミングを待ってたの。相手は地獄の騎士よ? 正面から堂々と歩いていくのはバカのやること、私はバカじゃない」

 

「そうだな、凄腕だ。天使様、今日は会えて特に嬉しい。けどもう少し付き合ってもらうぞ」

 

 何事もなく立ち上がり、首を右に左にと倒してそれそれは恐ろしい視線を向けてくるアバドンに背中が冷たくなっていく。

 

「天使を殺すのはリストに入ってなかったけど、いいわ。相手になってあげる、恩寵ごとお前の首を落としてやる」

 

「私の首は高いの、悪魔ってクレジット持ってる?」

 

「どの悪魔かによるよ、クラウリーは持ってた」

 

「あのボンクラの名前は聞き飽きた。本当に小賢しいわね、嫌がらせの知恵は第一級。でも私を伏せるには足りない、続行といきましょう?」

 

 怒りで燃え上がっていた顔が、いきなり冷えたような落ち着いた声色になってアバドンの瞳が深淵に染まる。

 けっ、面倒くせえことしやがる。怒りを抑えて、冷静になってたほうがより面倒に見えるぜ。

 

 分かっちゃいてもアナも皮肉っぽく笑ってる。仕方ねえさ、普通の悪魔なら天使の剣を一突きされるだけで虚無にぶち込まれてる。

 さっきの奇襲で、普通の悪魔ならもう終わってた。

 

 メグみたいな腕利きでさえ一突きされてしまえば死は避けられないほど天使の剣って武器は殺傷力にあふれる。そいつでも殺せねえってことは──モノホンのモンスターってことだ。

 不死性って意味なら、アバドンはアラステアよりも遥かに上。

 

「ミスらないでよ?」

 

 

 アバドンの深い黒に相対するようにアナの瞳が青白く光を帯びる。悪魔の黒い瞳とは正反対の天使としての白い瞳を晒し、アナがアバドンに向けて右の掌を狙いをつけるように翳す。

 瞳が染まったのは天使のガソリンタンクとも言うべき恩寵を稼働させた合図。

 次の瞬間、さっきアバドンを弾き飛ばしたのがお遊びに思える濃度のPKキャスお得意の不可視の衝撃の波がアバドンにぶつかり、そのままヤツの体を飲み込んだ。

 

「……」

 

 口を閉ざした茶髪は揺れ、床に堆積していたものは片っ端から巻き上げられて突風に飲まれたように飛んでいく。

 

 腕のいい魔女や異教の神でさえ、一発で決着までもっていける天使にのみ許された恩寵というふざけた動力源を駆使した、反則みたいな飛び道具──だがしかし、

 

「天使はそれなりに見てきたけどお前のまるで鍛えられてはいない。さては、事務職ね。現場はまだまだ経験不足。お前じゃ相手にならない」

 

 ふと、口を開いたアバドンは衝撃の波に飲まれながらも口角を歪める。

 あんな危険地帯にいてゾッとする発言だが俺の瞳が派手に見開かなかったのは、カインがキャスの恩寵をフル稼働させたこれと似たような状況で何も動じず無傷だったのを目にしていたから。

 

 ″変わらない記憶などない、だが大切なのは記憶すべき今をどう生きるか ″──

 アダムとイヴの第一子、全人類の先祖とも言うべき彼から学んだことはそれに尽きる。

 

 やがてアナの出力が落ち、衝撃の波が響いていた工場が落ち着きを取り戻したとき、にやついた暴君の一瞬の油断に俺はエレンの形見であるスキットルの中身をその革ジャンにぶちまけた。

 

 

「っ──なにをしたッ!?」

 

 聖水じゃない、スキットルの中身は天使を閉じ込めるための聖なるオイル。が、何も天使を封じるだけの道具じゃない。

 

「メグが、身を以て教えてくれた」

 

 聖油の火は黄色い目の血族ですら焼いちまう。

 ワンコンマ、アバドンの言葉が切れたとき瞬間、俺がブックマッチで灯し投げ放った火が濡れた足元から体を包むように壮大に吹き上がった。

 

 

「────Yippee-ki-yay、ざまあみろ」

 

 

 最後の一本だったってのに。

 また着火の道具買わねえとな、近頃は誰かさんも煙管にねだってくるしよ。

 

 目の前で弾けた赤い焔と熱気、そしてアバドンの絶叫とやがて大っぴらになったその口から黒い煙が明るく照らされた虚空へと舞い上がる。

 

 

「ahaaaaaaaaaa──!」

 

 赤い炎と生き物のように動き回る黒い煙。映画の撮影なら撮れ高は上の上だろう、生まれ変わったらまた映画の製作現場で働いてみたいね。死ぬほど大変だろうけど。

 

 にしても悪魔らしく、なんと醜い絶叫なんだ。

 

 

 

 

 あまりに突然の襲来だった。

 それも地獄の騎士なんて大物がふらっと現れるんだからタチが悪い、しかも墓穴を突き抜けてときた。冗談じゃねえぜ。

 

「動かないで」

 

「なあ、これも300ドルか?」

 

「まさか」

 

「ありがとう」

 

「800ドルから、ここアメリカじゃないのよ?」

 

「はは、出張費踏まえても首が繋がってるなら安いもんか。お、ついでに服のクリーニングもいらなくなった」

 

 額にアナの指が触れると、擦過傷からこの1戦で負ったあらゆる傷が消えていく。ついでにくたびれていた服も新品みたいに汚れが消えた、ありがたや。

 

「マルベリーシルクでこないでよかった」

 

「ちょっとの埃でやたら気にしてたアレか。そいつは英断だけどよ、ふと思うんだが服なんて着てなんぼだと思わねえか?」  

 

「そうね、それは否定しない。でも服はいつ、どこで、誰と着るかが大切なの。年中、謎のアルファベットのシャツとジーンズで固定されてる誰かさんには関係ないけど」

 

「最後のは否定するぞ、他のだって着る」

 

 おかげで軽くなった体を動かし、嘘のように静かになった工場をラフなコートでやってきたアナエルと後にする。この冬も真っ盛りの夜に………

 天使は寒さも暑さも関係なしってたまに羨ましくなるぜ。

 

 

「んで、一体どこから聞いて潜んでたんだ? 見事な奇襲で恐れ入ったが」

 

「ルシファー、嬉しくないニュースが飛び出てきたところから」

 

「ああ、そう。なら説明する手間もいらない、それについてはよかった。ふぅ、お待たせBaby──今夜もなんとか首が繋がってるよ。祈りをありがと、助かった」

 

「なにそれ?」

 

「我が家じゃみんなこれやるの」

 

 口付けた手でインパラのボードを叩く、親父、ディーンと受け継がれてお次は俺に、次に伝染するのはジャックか、それとも──

 

「てか、アナ。来てくれて助かったが……」

 

「出して。私の趣味は翼を失ったあの日から変わってない、地上で新しい体験をすること。このまま帰ると、うまく使われたみたいで気に入らないしね」

 

「それ、アマラも言いそうだな。新しい体験ってところだけ」

 

 シートベルトを締め、すっかり相乗り気分のアナはセトリ用のダンボールボックスを早くも見つけて、つこお前そんなにはしゃぐ女だったか?

 

「俺もいま新しい体験をしてる。お前がこんなにはしゃぐ女だとは思わなかった」

 

「どこに行くの? 帰宅? それとも私に楽しい体験をプレゼントしてくれるわけ? 命を懸けて助けた報酬として」

 

「ああ、喜べ。これからホテルで深夜アニメの鑑賞会だ」

 

「それは楽しみ。倦怠期の夫婦喧嘩がようやく終わったって聞いたから、確かめる手間が省けた」

 

「もっと楽しめること探せ。知ってるか、幸せを感じられるものを手元におけば心が豊かになる」

 

 そう書いてあった、ワトソンの言ってた自己啓発本にな。試し読みだけでうんざり。

 ルシファーのことはとりあえず後から考えよう、とりあえず──ドライブしながら考えるにはことが大きすぎる。

 

「──おい待て、なんだこの刃物みたい曲は! スラッシュメタルかッ!? こんな曲入ってたか?」

 

「こうなるかと思って持ってきた。いい? これがフロアキラー、80年、90年の曲ばかり聞いてるその頭に聞かせてあげる。これが西海岸有数のハコを埋めた新世代のレジェンド──」

 

「ひ、ひでえ、まるで芝刈り機だ……! なにがフロアキラーだ、オーディエンスとの対話もクソもねえだろこんなの! どんな気分でVJは演出すりゃいいんだよ! おい、入れる曲は交代だからな! 次は俺が『彼女のModern』を流す!」

 

 天使さまがこんな反骨精神まみれのヘビーさで盛り上がるとはね……

 

 ああ、楽しそうで何よりだよアナエル。

 いや、シスター・ジョー。今夜は本当に助かった。

 

 

 






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