最後に見るのは?
吸血鬼、その言い伝えはほとんどがデタラメだ。十字架を見ても平気だし、日光を浴びても死なない。心臓に杭を打ち込んでもな。だが血は吸う、それは本当だ。奴等は生きるために血を吸うことを定め付けられる。
吸血鬼の生態は典型的な群れ社会だが、人を襲わず牛や動物の血を吸って生きている個体も中には存在する。輸血用のパックを盗んで飢えを凌ぐ連中もな。だが大抵の吸血鬼は生きるために人を襲って血を吸い漁る、襲われるまで吸血鬼だと気づくのは難しい。元は人間から変異した個体が殆どだからな。純粋な吸血鬼は頂点であるアルファ・ヴァンパイア、そして──無限罪のブラド。
(……アルファが特別扱いした吸血鬼か)
放課後、俺は自由履修の時間を放擲して、公園に来ていた。ベンチに背中を預けると見上げた空は未だ青く澄み、太陽が昇っている。傍らの袋をあさって、買ったばかりのハンバーガーを取り出すと、包装を剥がして頭からかぶりつき、嚥下する。
この前は魔宮の蠍が隣でサラダをシャカシャカしていたが、いま隣には開いた袋が置かれているだけだった。誰かと食事を共にすることが常態化していると、一人の食事が味気ないものに思えることがある。『人は誰しも自分の淋しさを埋めようとする放浪者』、かつての綴先生の解釈が思い出された。孤独を好む者はいても孤独を耐えれる者は少ない。
俺は、握りしめていたハンバーガーにがぶりと噛みついた。なぜ、いまさらこんなことを考え、感傷的になってやがるのか。きっと理子が檻に閉じ込められた過去、そして吸血鬼の話を出したからだ。どちらも俺の過去とは切れない縁で繋がれている。結局、海を渡ったところでハンターの仕事から逃げれなかった。土地を変え、学生になっても行き着く先は同じ、インパラに乗って怪物を退治してる。道を逸れてもすぐに決められたレールに戻される。普通の生活を諦めたのはいつからだろ。
「ウィンチェスターだな?」
弾かれるように声の方に振り返った。陽光を弾く銀髪に、東京武偵高の防弾制服という姿。特徴的な碧眼の瞳が理知的に光っている。見たことのある顔に俺はかぶりを振った。
「……もう取引が済んだのか?」
「私たちは策の一族、交渉は得意分野なのでな」
「先生にいじめられたろ?」
「……」
……図星かよ。青い顔で隣に座ってきたのは、地下倉庫で対決したばかりのジャンヌ・ダルク30世。言わずと知れたフランスの大英雄、ジャンヌ・ダルクの子孫。秘密結社イ・ウーの構成員で氷を使役する魔女だ。
綴先生によれば尋問科の取り調べが終わり、今は警視庁で再三の取り調べを受けている筈だがどうやら司法取引に応じて、武偵高へ通うことにしたらしい。先生が珍しく上機嫌で出勤してやがったが、どんな取り調べをされたかは聞いてやらぬが慈悲ってやつだ。綴先生の尋問、蘭豹先生の体罰はこの世の地獄だ、みんな知ってる。
「お前も尋問科だったな」
「そういうあんたはどこに?」
「情報科だ」
通信学部(コネクト)か。諜報学部の俺や探偵学部のキンジとは別の畑だな。
「司法取引が済んでも卒業するまでは武偵高に縛り付けられる。監視する立場から監視される立場になった気分はどうだ?」
「良い気分ではない。むしろ、今すぐに私をこんな目に遭わせたお前を奈落の底に叩き落としてやりたい。だが、そう何もかも自由にはいかないのでな」
「ああ、助かるよ。ハンターとしてなら魔女との戦いの誘いは受けてやるが、武偵としては断るしかない。昨日の敵と協力するのも武偵の道だ。まあ仲良くやろうぜ」
話題の接ぎ穂が見つからないまま俺は空いていた右手で紙袋をジャンヌに向けてやる。沈黙が降りかけたその時、ジャンヌは不意に袋の中に手をやった。
「血は争えんな。お前の好物は兄と同じだ」
「人の食事事情なんてどうでもいい情報どこから仕入れてくるんだ?」
「知りたいのか。イ・ウーのことを」
「いいや、夾竹桃から差し障りのなさそうな部分だけ聞いてるよ」
「……桃子はどこまで知ってる?」
……夾竹桃か。そういや、武偵高には鈴木桃子って名前で転校扱いだったな。それが本名か偽名かは知らねえが俺は一貫して夾竹桃で呼び名を通してる。
「俺が怪物を退治してること。理子や神崎も同じ認識でいる。要は漫画のネタさ。理子や夾竹桃とは派閥が一緒なんだろ?」
「理子と私はイ・ウーで同期だった。彼女は知らないが私は彼女のことが嫌いではない」
ジャンヌは紙袋からハンバーガーを一個取りだし、包紙を解いた。横目で見たジャンヌは地下倉庫でも感じたことだが、切れ長の碧眼、輝かしい銀髪、まるで西洋人形みたいに整った顔立ちをしていた。イ・ウーのメンバーはどいつも無駄に美人だな。俺はかぶりをふり、残っていたハンバーガーを嚥下する。
「理子から話を受けたな?」
冷たい声色で本題を切り出される。
「ブラドのことなら話は受けたよ。でも俺がこれまで狩ってきた獣人とは別モンだ。首を落としてゴールデンタイムまでに帰れる相手じゃない」
「……首。つまり、吸血鬼か」
ジャンヌは顎に手を当てながら、頭の中に蟠っている疑問を整理していく。ジャンヌは首のヒントだけでブラドの正体に気づいた。こっち側に詳しい。薄々感付いていたが確信が持てなかったんだな。
「理子は知っているのか。お前たちがアルファを討ったことを」
「知らねえだろうな。むしろ、お前が知ってることに驚いてるよ」
「私は物知りなのだ、覚えておけ。ウィンチェスターが絡んでいると知ればブラドも手段は選ばない」
「なんとかするさ。アルファを捕まえたときは10人以上のハンターが本陣に乗り込んで、殆んどが死んだ。理子には頭数を揃えるように話をつけてある。今回は無敵のコルトもない、鉈一本で乗り込んだりはしねえよ」
それにコルトは『不殺』をルールとする武偵向きの武器じゃないんだ。ブラドを討っても証言させないと、意味がない。コルトを使えば迷わず煉獄……怪物の墓場行きだ。神崎の母親を救うことには繋がらないからな。
「つか、お前……妙にこっちの事情に詳しいんだな。予言者か? 石板読めたりする?」
「……お前は何の話をしているんだ?」
「ああ、悪い。それならいいんだ。予知能力まで持ってるのかと思ってさ。マイノリティ・リポートみたいに」
「あるわけないだろう。お前はバカか」
……ちくしょうめ、真面目に返されたら何も言えなくなるだろ。思いがけない返しに俺はポケットに両手を突っ込む。敢えて無防備な姿勢を作ってやるがジャンヌはハンバーガーを租借して動こうとしない。本当に戦うつもりはないんだな。かつて戦った魔女が隣で堂々と食事してる、信じられねえよ。こんなのはロウィーナくらいだと思ってた。
「なあ、ジャンヌ。今度は俺から質問させてくれないか。お前は、どこまで知ってるんだ。ああいや、変な意味じゃない──檻のことだ」
ジャンヌの手がぴたりと止まる。
「理子も神崎も俺のことを怪物専門の退治屋って思ってる。実際そうだ、仕事は怪物退治。だがお前は怪物じゃなくて、黄色い目に触れてきた、獣人よりワンランク上の化物についてな。地獄の檻なんて……馬鹿げた物を口にしたのはお前だけだよ」
聞く意味のないことだ。ジャンヌは知ってる、黄色い目を狂信的と評した時点でこっち側にいるんだ。それでも俺は聞きたかった。聞いておきたかった。
「──名のある魔女や異教の神でお前たちを知らない者はいない。上から下、魔女から怪物、異教の神までお前たち兄弟を厄災に例えていた。関われば敵味方関係なく夥しい血を撒き散らすとな」
「ああ、言えてる」
俺は自虐的に笑ってやった。肩を落とすまでもない、敵にも味方にも犠牲を出す、何も間違っちゃいない。何も違わない。
「黄色い目を討ち、地獄の門を開け放った時点でお前の名前は数多の魔女に知られていた」
「俺たちが開けたんじゃない。俺たちは開いた門を閉じようとしたんだ。だけど間に合わなかった。アザゼルもメグ──奴に味方していた悪魔はどいつも抜け目ない奴等ばかり。連中はゴジラとモスラ、一方はかわせてももう一方に捕まる。満身創痍で門の前に辿り着いたときには悪魔に誘惑された人間が扉を開いた跡だった」
「真実が脚色されず伝わることは珍しい。お前の名はイ・ウーでは広く知られているのだ」
「なんでさ。人間相手は専門外だぞ」
「私以外にも事情を知る魔女がいたら?」
これには俺も顔色をなくすが、ジャンヌは重々しく頷いただけだった。
「パトラのことは知っているな。砂礫の魔女、クレオパトラの末裔。彼女以外にもイ・ウーには複数の魔女が在籍している。そして彼女たちは、全員が私以上の戦闘力を秘めている。私の戦闘力は──イ・ウーの中で最も低いのでな」
ジャンヌは一旦言葉を切って顔を上げると、俺の目を真っ直ぐ見た。ジャンヌは超能力者でありながら、聖剣『デュランダル』を所持する騎士というハイブリッドだ。その実力は折り紙付きであり、ジャンヌの言葉には怖気を振るわずにはいられない内容だった。もし、いま奴等が徒党をくんでやってくるような事態になれば、笑うに笑えないな。
「あれだけ強いのに控え扱いか。理子も夾竹桃も末恐ろしい場所にいたもんだ」
「私にすれば本当に恐ろしいのはお前だ。私は今でも信じられない。お前が──」
「檻を閉めたことか?」
言葉を被せると、『そのとおりだ』とジャンヌは重々しく首を振った。
「……会ったことはない。だが、だが……あれが人がどうにかできる存在でないことは、私にも分かる……」
「ああ、コルトでもあいつは殺せなかった。アルファは殺せても魔王には頭痛を起こすのがやっとだ。古今東西の異教の神が束になってもサンドバッグ行き、俺も諦めかけてたよ。"ルシファー"を葬るなんてこと──できるわけないってな」
肩を震わせて怯えるジャンヌを笑う気にはなれなかった。あれは人が戦うべき存在じゃない、人が見るべき存在でもないんだ。
「なにをやっても殺せない。だから俺と兄貴は身を投げたんだよ。色んな物を犠牲にして、あいつを道連れに檻まで落ちた。それしか方法はなかったからな」
俺は深く息を吸って肺を満たす。けじめをつけたんだ。檻を開いたことへのけじめを自分たちの手で終わらせた。
「……噂は本当なのだな。お前が檻の中にいたのは」
「思いだしたくもない。四六時中、狭い牢獄で俺はあいつの遊び相手だ。地獄にはテレビもないからな。頭の中を引っ掻き回されて、何度もぐちゃぐちゃにされた。尋問科の捕虜プログラムが……優しく思える」
「お前は今でも正気を保っている、こんなことは言いたくはないが私はお前を尊敬する」
「よせよ、正気でいるだけで尊敬されても困る」
「それだけの存在だからだ。キリ、理子に協力したのは彼女が監禁されていたからか?」
そっと向けられた碧眼に俺はかぶりを振った。
「分からない。閉じ込められたやつの気持ちなんてそいつしか分からねえよ。俺は泥水も腐った肉も口にしなかった。理子の気持ちは分かってやれない。それに理子も本心から共感なんて求めてないんだよ。あいつなら暗い過去なんて張り合ったところで何にもならないって知ってる。あいつの気持ちに共感出来るなんてのは、あいつに同情してるってことだろ……」
「だが、それもお前の持論でしかない」
「かもな。けど俺はあいつの過去を理解できねえし、共感できない。あいつの過去は誰かが共感していい物じゃねえんだよ」
日が落ち、夜が深まった時間にはインパラを女子寮前に停車させた。すぐに右座席のドアが開いて、ほぼ同時に俺はハンドルに両肘を置く。
「悪かったな。つまらねえ話に付き合わせて」
「いや、車内は快適だった。良い車だな」
誉めてるのは俺か、それともインパラか。まあ後者だろうな。俺は肩をすくめて笑ってやる。
「ジャンヌ」
俺は右座席の窓から体を乗りだし、女子寮へ入ろうとするジャンヌを呼び止めた。振り返った碧眼にそのまま視線を結ぶ。
「ようこそ、武偵高へ」
刹那、驚いた様子でジャンヌは立ち止まった。満足した俺の反応を見たジャンヌは微かな間を置き、流暢に英語を紡いだ。
「
……参ったな。そいつは卑怯だ。
「
迷わず、俺は同じ言葉を返していた。
◇
本日は土曜日。つまり数少ない休日になるのが学生の常ってやつだ。まだ朝が早い方なのだが部屋にキンジの姿が見当たらない。そういや、今朝は出かけるって言ってたな。普段着感覚で防弾制服に袖を通し、空腹をどうにかすべく冷蔵庫を開ける。今日の朝食は……そうだな、ピーナッツバターとジャム、最高だ。キンジの姿も見えないことだし、映画でも見ながら食べるか。俺は一旦開きっぱなしの冷蔵庫を閉め、テレビ下の棚からDVDケースをとりあえず二本選び、
「キリ」
「うおっ!?」
背後から神崎に呼びかけられて、俺は本気の悲鳴をあげた。唇を引き結びながら、神崎は動揺する俺を不服そうに見上げてくる。
「なにしてるのよ?」
「見てのとおりだよ。レッドソニアとミラクルマスターを見る」
「ファンタジー系が趣味だったとはね」
露骨に似合わないと言った口調で神崎は冷蔵庫に取り置きしてあるコーラを一本持ち出した。俺は腕を組んでどうしても気になったことを口にする。
「どうしたんだ急にめかしこんだりして」
「べ、別にめかしこんでないわよ! 普通よ普通! ちょっと出掛けるだけ! ほんと、それだけ!」
狼狽した神崎の服装といえば、いつもの制服姿やC装備と違っていた。ラッフル付きの白ブラウスにブラックスカートという、武偵とは真逆の気品に満ちた姿。お嬢様然とした姿だが、考えてみれば神崎は貴族の生まれでモノホンのお嬢様だったな。コーラは余計だが立ち振舞いを自然にすれば確かにそれっぽい。
「なかなか似合ってるぜ、お嬢様」
「う、うるさい。喋るの禁止!」
「で、相手は誰だよ。今朝からキンジが見えないんだ。あいつには内緒で教えてくれ」
「あんたも人の話を聞かない男ね……キンジよ。お台場で待ち合わせしてるの」
──ああ、そういうことか。
「へぇ、デートかよ。お前もやっとその気になったんだな」
「で、デート……!?」
「頑張れよ、神崎」
「だから、デートじゃないんだって……」
そのわりに耳まで真っ赤にして、服も気合い入ってるじゃねえか。俺は中立だが目の前の神崎を見てると、なんつーか応援したくなった。キンジ、今日くらいは神崎にかっこいいところ見せてやれよ。やがてかぶりを降った神崎はMINIのキーを手元で揺らす。
「朝食を邪魔して悪かったわね。インパラの燃料を買ってあるわ。彼女にも朝食をあげて」
「マジかよ、悪いな」
「いいのよ。あんたのはBabyは大食いだし」
燃費が悪いって言わなかったな。なかなかの言い回しだ。初対面より好印象だぞ。神崎はインパラの燃料を置いて部屋を去っていった。ルームメイトと同級生がデート、残った俺は部屋で映画観賞か。なけるぜ、とりあえず飯食うか。
一人になった俺がミラクルマスターを流しながら、コーヒーを準備していると、不意にテーブルの携帯電話が震えた。一瞬、夾竹桃やジャンヌを期待して俺はかぶりを振った。バカか、お前は。俺は自虐しながら通話ボタンを押した。
『はい』
『キリ・ウィンチェスター? 声が聞けて嬉しい。私のこと覚えてる?』
──おい、マジかよ。
『忘れるわけないよ、ドナ保安官。一緒に戦った仲じゃないか』
俺は驚きながら通話の音量を上げた。電話をかけてきた彼女はミネソタ州の保安官、色んなことが重なって狩りや俺たちに関わってしまった人間の一人だ。
最初に出会ったのはスパサービスのスタッフに化けていた脂肪をすいとる魔物を狩ったとき。それからも何かと縁があって、何度も一緒に仕事した。立場は保安官だが同僚のミルズ保安官と一緒で、そこいらのハンターより腕っぷしが強い、それにタフだ。FIVE-Oに転職してもやってけるよ御世辞抜きで。
『でも驚いた。だって──』
『そうよね、久しぶり。突然ごめんなさい。クレアだって電話してないのに私が先に電話するなんて』
『いいんだ、気にしないで。クレアは元気にやってる?』
『今朝もアレックスと喧嘩してた。ピーナッツバターとジャムについて』
『そうか、それで何かあった?』
刹那、通話口から声が途絶える。
『正直に言うわね。力を貸してほしいの』
重苦しい声が聞こえて、俺は目を細める。空いた手は既にテーブルのノートパソコンを開いていた。
『分かった、続けて』
『……姪っ子がね、行方不明なの。日本に友達と旅行に行ったきり。連絡が繋がらなくて……ごめんなさい、狩りとは無関係よね』
『名前と、滞在場所。観光に行こうとした場所や滞在日数は分かる? すぐに調べる』
俺は有無を言わさず返していた。狩りをしていると大切な人を失うことがある。彼女もそうだった。彼女の恋人は彼女のことを愛しながらも別れることを選んだ。どうしてかって思うだろうがそれはドナが狩りをしてると知ったからだ。間接的に俺たちはその原因を作ってしまった。
彼女はハンターじゃない、保安官だ。ただ、俺たちと関わったことで怪物のことを知ってしまった。保安官は人を救う仕事で、誰かが怪物に襲われていれば彼女は見て見ぬフリはできない。それはミルズ保安官も同じだった。怪物退治に力を貸してくれた、とても勇敢だ。でも誰だって戦えるわけじゃない。
俺たちは親父から狩りを仕込まれた、それしか道がなかったからだ。俺たちは一本しかない道を最初から歩いていた、だから狩りを受け入れていた。だが、分かれ道から合流するにはハンターの仕事はあまりに酷だ。
彼女の恋人も人を救うために保安官になった。犯罪者を捕まえて事件を解決して誰かを守るために、その気持ちはハンターと変わらない。だが、ある日突然吸血鬼や人の脳ミソを吸ったり食ったりする怪物、そして無惨に殺された亡骸を見て戦うことなんて決意できなかった。それは当たり前の反応で、巻き込もうとした俺たちが異常だった。
ドナが狩りを辞めればあるいは一緒にいられたかもしれない。けど彼女は辞めなかった。彼も彼女の答えを分かったうえで離れることを選んだ。やるせない、そして彼女を巻き込んだことに腹が立った。兄弟揃ってインパラで嘆いたよ、俺たちは誰かを救ったけど同時に他の誰かを不幸にしてる。
現実を受け入れる、それが俺たちの人生だ。辛くても前を向くしかない、そう言い聞かせて歩くんだよ。でもろくなことにならない。いつだって最後は、血を見る。償いのつもりなんてない、でもこれだけは言う。言わないといけない。
『──ドナ、約束するよ。必ず見つけだす』
──今の俺は武偵だ。やるべきことをやる。
いつか主人公もデートできるといいですね。主人公の容姿について一切触れていないので、次話からは触れていくつもりです。
そして!ついにお気に入りが500を突破しました!尖った小説に感想、評価を感謝を。いつも励みになってます。
『連中はゴジラとモスラ、一方はかわせてももう一方に捕まる』S3、10、ルビーーー