哿(エネイブル)のルームメイト   作:ゆぎ

79 / 196




雪平vsお話し

 今まで、それなりに良い関係を築けた怪物は少ないけど0じゃない。ヒルダや玉藻を無しにしても、吸血鬼や狼、中には悲しい別れかたをした相手も勿論いたが、睨み合うだけが100%じゃなかった。今回はその悲しい別れにはならないことを祈りたい、心から。

 

「あゃ!」

 

 その舌足らずな驚き方に、別に何か理由があるわけじゃないが俺は腕を組んだ。

 

「ひでえ部屋、格安のモーテルでもまだ品があるぞ」

 

 中国風の座敷牢の中で置き行灯に照らされている悟空は『?』マークにゆらしていた尻尾を、ピーンと真っ直ぐに突き立てる。

 

「ゆ、雪平ですか?」

 

 どうやら主人格様が表に出ているってことで間違いなさそうだ。高速道路のときと気配がまるで違う。

 

「正解。キンジと理子が明日にでもここに会いに来るだろうが、その前に話をしておきたくて。人間にとってFAITH to FAITHのコミュニケーションは大切」

 

「猴と、ですか?」

 

「色々とな。正直、すんなりここまで来れるとは思わなかったが。玉藻への賽銭が効いたかな」

 

 たまたま出くわした悪魔の手を借りて潜入、地獄が荒れてこっちに移って来てる連中がそれなりにいるとはいえ、確かにラッキーだ。やっぱり玉藻の恩恵かな。ここでも名古女の短いスカートが目立つ制服を着ている悟空は……一転、重たさの残る声色で、

 

「あい……私からもお話したく思ってました」

 

「ならよかった。あと10分そこいらで俺はこの階段を上る」

 

「本題に入りましょう。孫は今は眠りについていますが完璧な力で戦うには……あと1日半ほどの猶予があるです」

 

 早速本題、話が早い。

 

「続けて」

 

「孫として過ごすは、心身に疲れが溜まるです。戦うは孫ですが、この体はあくまで猴のものです。器がくたびれては力は発揮できない──貴方にはこの意味が分かりますね?」

 

「そのせいでとっかえひっかえ器を変えてたヤツを知ってる。じゃあ、その猶予を過ぎて、孫がフルパワーになるときまでお前は待機か」

 

「もちろんもう普通には戦えますが。それはココたちの望むところではないです。望まれるのはあくまでも万全の状態の孫です」

 

 なるほどな、諸葛は明日の夜に和平交渉をするって言ってた。それもこのためか。手札に抱えてる切札を使わない手はないな。たった数日、日程を調整するだけで使えるようになる手軽なカードなら尚更だ。

 

「雪平、さっき猴は自分を孫の器と言いましたが何もお互いの記憶を共有しているわけではないです。ですが猴も化生の世界では長生きとされる身です。あい、カインと刻印の話も──猴には分かります」

 

 悟空の尻尾が緊張を示すように垂れ下がる。

 

「過去に、もう何百年も前のことですが孫はカインと会ってるです。けれど、そのときにはカインは剣を捨てたあとでした」

 

 ……もしかしてとは思ったがモノホンの顔見知りか。いや、悟空は1000年以上の歳月を生きてる獣人界の大御所。あの寿命をねじ曲げてるロウィーナとブラドの年齢を足しても敵わない。その果てしない月日の中でカインとばったり出会っていたとしても不思議じゃない。野郎も隠居する前には、あちこち放浪してた節があるからな。

 

「海の底に沈めたって言ってたな。ただのナイフでもバカみたいに強かったが」

 

「……やはり、会ったのですね?」

 

 半ば、そうではないかと予想していたような顔で視線を向けてくる。

 

「色々あって、刻印と剣が必要になったんだ。カインは隠居して養蜂家をやってたよ。まさか、あんたと知り合いとは一言も話してくれなかったけどな」

 

「刻印と剣は、互いに引き合うと聞きます。しかし、雪平が刻印を持っているということは……」

 

「死んだ、正確には自分から死を望んだ。俺の兄貴に刻印を託したあと、長年抑えてたものが吹き出したように──会ったときとは別人になっちまった」

 

「あい……私には分かります。カインは呪いで自分が堕ちることよりも死を選んだのですね」

 

 まるで、自分がカインなら同じ道を選んだと言わんげに悟空は頷いた。

 

「キンジに頼んだんだろ、自分を殺すように」

 

「──猴は猴として、誇り高く死にたいです」

 

「……」

 

「孫を出し入れされて人間に与するのは、約1400年前──三蔵法師玄奘さま以来です。玄奘さまは良い御方だったですが、藍幇は私利私欲に孫を使おうとしている。だから猴は……」

 

「……あんたが誇り高いのは、俺にも分かる。それにたぶん……人間で言うなら、あんたは良い人なんだろう。俺よりずっと、天国行きのチケットを配られるくらい」

 

 たかが10分ちょっとしかない時間だぞ、俺。さっさと伝えたいことは言え。

 

「昔、あんたが出てくる本を読んだ。まあ、文字がでかくて絵のついてる図書館に並んでそうなヤツだったが」

 

「猴の、ですか?」

 

「ヒーローなんて最悪、最後は勝つだろうけどそれまでは地獄だ。いつだってストレスのない綺麗な終わり方ならいいが、大抵はそうじゃない。匙を投げたくなるような結末はザラ」

 

 きょとん、としている丸い目に俺はぎこちなく笑ってやる。

 

「でもお前が頼んだ遠山キンジってやつは、これまたジョン・マクレーンみたいに愚痴を吐くに吐きまくりながら戦うが──これがどうして。いつも綺麗な終わりかたに持っていく」

 

 そう、何とかしちまうんだ。この一年、それを存分に思い知らされた。教えてくれた。

 

「食い意地の張った天然タラシ。確かに聞こえは悪いがどんな最悪の状況も、さすがに……今回はもう駄目だろうってときでもあいつはその場にいる誰かを巻き込んでなんとかしちまう。こっちはいつも犠牲だらけのクランクアップが精一杯だったってのに、あの女タラシは──俺にはできないことをやってくれる、だから俺も期待してる、今回も綺麗なクランクアップにしてくれるってな」

 

「……雪平、如意棒は無敵の矛。『矛盾』の故事にある、『どんなものでも貫ける矛』なのです。見えてるものを目で狙うので、狙いを外す事もありません。必ず一人は……仕留められます。いくら遠山や貴方の武が優れたものでも──」

 

「大丈夫だよ、レーザーがなんだってんだ。俺は悪魔が飼ってる犬っころに腸を抉られて、グレた大天使ミカエルには指パッチンで体をミンチにされたが、こうして五体満足で今日も生きてる」

 

「あ、あい……み、ミンチですか? それは、素晴らしいことですが……み、ミンチ……?」

 

「遠山キンジはダイハード。世界で一番ツイてない、殺せない男だ。レーザー1本で落とせる男には俺には思えねえよ。きっと何とかするさ。人間の中にはキンジみたいなオカルト一歩手前のゾンビみたいなヤツがいるんだよ」

 

「み、ミンチ……あい……」

 

「……悪かった。もうミンチはいいから、今度から別の喩えにする」

 

 どうやら、彼女の中身は見た目相応の童心らしさも漏れなく引き継いでいるらしい。最初は?マークだった尻尾が忙しなく形を次から次に変えている。この尻尾を切ったら孫に変身できないとか──ないよな。そんな都合の良い展開は。

 

「雪平は遠山が本当に、如意棒を止めると?」

 

「止めれるかは知らないけど、撃たれても息はしてるだろうな。そっちに100ドル賭ける」

 

 正直、如意棒の恐ろしさを理解していない人間の発言

──それは自分でも否めないが。それでも俺はなけなしの100ドルをあいつに賭ける。負けたら頭を踏んでやる、そう心で決めた刹那、

 

「話を変えていいですか?」

 

「まだ時間はある、いくらでも」

 

「ココから話は聞きました。雪平の祖はウィンチェスター、賢人の血族ですね?」

 

 確かに、微妙に話の舵を変えてきた。信頼関係の第一歩は嘘をつかないこと、あながち間違いでもないな。

 

「堅物の独身貴族の集まりだよ。科学では判明できないことを観測して、本に書いて記録する。変な同好会だよな、でも一応跡継ぎってことになってる」

 

「星伽は古代、日本から緋緋色金を手に渡ってきて──時の皇帝の求めにより私を変えた巫女・緋巫女の一族です。星伽とかつての賢人たちは交流がなされていたと聞くです。これはそれを踏まえて話しますが──孫は不安定な、十全ではない神を意味します。あい、孫は不完全な『緋緋神』なのです」

 

 鋭くなった瞳から語られた言葉に、頭をバットで殴られた気分だった。いや、俺の中でも彼女の言葉を真実だと裏付ける要素がある。ルシファーは緋緋神のことを嫌ってた。俺の知ってるルシファーとまだ会ったばかりだが孫の性格を、尋問科なりに相性分析してみると──はぁ……役に立たないと思ってた知識がこんなところで陽の目を見たか。

 

「信じるよ。星枷が緋緋色金の監視を一族単位でやってる話は知ってる。本当に深いところまでは知らないが」

 

「星伽の刀は、人類には制御しきれぬ緋緋色金の力を操作するため──人が造り出した物。あの刀と正しい術式があれば、孫を猴に戻すことも可能です。故に、孫もあの刀を嫌ったと思うのです」

 

「星枷に警戒心を剥き出しにしてたが、意思とは関係なくお眠りさせられるわけか。遊び足りない子供はそりゃ嫌がるよな」

 

「それが猴の考えた1つ目の手です。如意棒は……発射する前に溜めの時間があるです。右瞳が赤く光り、ある瞬間急に明るさが増すタイミングがあるです。そこからはもう発射をキャンセルできない。なのでその時を見極めて、星伽巫女の制御棒で孫を猴に変え、猴がわざと外して撃ちます。そこですぐ、遠山が猴を撃ち殺せば──それは孫としての敗北、戦いの中であれば藍幇も納得するでしょう」

 

 つまり、それは見かけの上で孫が破れたという状況を作り出す──八百長だ。だが、これはきっと星枷やキンジの意思さえあれば、成立してしまう戦略だ。キンジが女を殺すわけない、分かっていても胃が石のように固くなる。だが──

 

「……1つ目の手?」

 

「猴は戦いの最中、星枷の制御棒の力を感じたです。そしてもう1つ感じたことがあります。それはここで確信になったです。雪平──貴方の手にはカインの刻印と元始の剣が揃ってるです」

 

 問いではなく、最後は確信を持って、告げられる。いつか、病院でヒルダが見せたような疑いのない眼差し。半眼で下げぎみだった目線を重ねてやる。

 

「だったら?」

 

「如意棒は緋緋神の持つ力の一端です。その力の底は測りしれないですが、それは貴方の手にある刻印も同様です。雪平、その本質が呪いであることは……貴方は理解しているのでしょう。外すに外せない呪いであることも」

 

 ……まずい、この流れは読めてしまった。

 

「悟空、実はだな……この刻印は……」

 

「あい、存じてます。大天使ですら堕落を耐えられなかった呪いであると。きっと、今はそうでなくても、貴方も呪いに蝕まれていく。解くことはおろか、譲渡することもままならない強力な呪いです」

 

「実はモノホンじゃなく……」

 

「殺人を、血を浴びなければ精神が蝕まれて、そうでなくとも堕落は避けられないと、かつてのカインが言ってたです。望んで手にいれたものではないと」

 

「知り合いの魔女の魔導書をくすねて──」

 

「ですが、きっと貴方と出会ったのも何かの縁を感じるです。刻印と剣の力が揃えばその力はきっと、絶大なものとなるでしょう。雪平、貴方が本当の意味で孫を殺すことを望めば──きっと、如意棒を潜り抜けて、孫を殺すことができるです」

 

 それがもう1つの手。仮に星枷が孫を制御する術式の継承を受けていなくても通る一手。カインの刻印が大好きな殺意という餌をありったけ注いで、その恩恵を持ってあらゆるものを殺すことのできる元始の剣を彼女の胸に突き立てる。至ってシンプルだ。

 

「無理だな。やりたくもないし、それに悪いが──出来ない」

 

 即答だ。無理、これに尽きる。却下だ。

 

「好ましい手では、確かにないです。アルテミスから貴方の人柄は聞いてるです」

 

「時間が押してるのにさりげなく気になる名前を出すな。嫌味かよ。まあいい、アルテミスのことは全部終わってから詳しく聞く。彼女、元気だった?」

 

「あい、元気でした。貴方に矢を盗まれたと」

 

「違う、あれは落ちてたから拾っただけ。あいつも去り際まで何も言わなかったし、あそこはウチの私有地。ゴミとして捨てるところを俺が拾っただけ。カード(武器)は拾った、そういうこと。あー、ちくしょうめ、話が脱線した」

 

 サプライズ登場だな、狩りの女神様。見事に邪魔してくれて、元気そうで何よりだよ。心から安心した。

 

「この刻印はでっち上げだ。知り合いの魔女から本をくすねて、それっぽいのをでっち上げた」

 

「……あい?」

 

「作り物なんだよ、正確には。不完全な偽物。元始の剣を最低限扱えるだけのパス。頭がおかしくなる危険はほとんどないが、お前が期待してるだけの力もない」

 

「……でっち上げた、ですか?」

 

「師がいいもんでね」

 

 いつかのヒルダも同じ顔をしてた。こう、絶句してるときの顔だな。俺もやったことがある。神崎がフリタータを作ってて、火災探知機を鳴らしたとき。

 

「確かに刻印の気配を感じたです。それが、雪平の自作……?」

 

「カインから刻印を受け取ったのはウチの兄なんだ。オリジナルの刻印はそっち。そいつを剥がして大変なことになったけど、それはまた別の話ってことで」

 

「刻印を解いたですか……!?」

 

 再度、尻尾が驚いたように突き立つ。

 

「天才ハッカーと天才魔女が手を組んだら、太古の呪いも解けちゃったわけ。俺がすごいわけでもなんでもないんだけどさ」

 

「……あ、あい。にかわに信じられないですが」

 

「俺も匙を投げかけた。カインはあれが解けなくて隠居したわけだし、解けるわけないって。でも結果的にはなんとかなって、今でも兄貴は生きてる。腕にも刻印はなし。あのときには考えられなかったけど」

 

「あい、かなり……信じられないです」

 

「世の中にはそういう意味不明な、常識もガン無視の人間もいるんだ。人の警告も聞かないでミカエルとルシファーの一騎討ちに、大音量でカセットテープを流しながら車で乱入していくアホとかね。俺は『やめろバカ』って助手席で泣き叫んだけどガン無視で墓地に突っ込んで……でもそういうアホが──結局のところ、いつだって八方塞がりの状況を台無しにしてくれるんだよ」

 

 そう俺はもう無理だと匙を投げた状況をディーンはいつも台無しにしてくれた。いつだって。携帯を見れば、もう僅かばかりの時間。

 

「何が言いたいかって言うと、キンジもそういうタイプなんだよ。予期しない結果を持ってくる」

 

「……私の胸には、取り出せない位置に緋緋色金が埋まっているです。今回を乗り切っても……」

 

「じゃあ、ローテンションだ。今回はキンジに孫を任せる。次に孫が悪さをするようなら、そのときは俺がなんとかする。まあ、その次は──そうだな、孫が戦うこと以外にもっと面白い趣味を見つけることを祈ろう。ゴルフとかな。次のことは明日考える、まずは今日を生き延びてそれを一日ずつ重ねていけばいい、みんなでな?」

 

「……雪平はハンターです。獣人とハンターは、本来は敵対するものです。どうして、そこまで私に入れ込んでくれるですか?」

 

 ああ、そうなんだろう。獣人を、個ではなく種の単位で忌み嫌う者だっている。首をかしげて、控えめに聞いてきた彼女のそれは、たぶんもっともな問いかけなんだろう。

 

「人間だって怪物だよ。怪物の仕業だと思って踏み込んだ事件の犯人が、実は人間だったってオチは一回や二回じゃなかった。俺には吸血鬼も狼男も、天使も悪魔も死神の友達だっている。最近になって妖狐も増えたしな。獣人や魔物がみんながみんな=敵にはならない、絶対に

な」

 

 吸血鬼(ベニー)に、狼男(ガース)に、悪魔(メグ)に、死神(テッサ)に、人間以外のみんなに何度も助けられてる。それに、

 

「それに、今まで、救えたのに救えなかった命なんてざらにあるんだよ。人間もそれ以外も。武偵って仕事をやるようになって、それが……ただでさえ悔しかったことがもっと悔しく感じるようになった」

 

「あい、雪平。貴方が多くの別れを見てきたのは理解できます。しかし、だからこそ、そんな貴方だから私の選択も理解できると、そう思っています」

 

 ああ。自分がおかしくなったとき、おかしくなる前に自分を殺せ──家族にそれを言うのがウィンチェスターって一族だ。分かるさ、だがな、それでも──

 

「他人の生き死にを決めるなんて身勝手かもしれない。貴方の決めた覚悟もそれまでの葛藤も……俺には測れない。でもさ、俺の知ってるドクターはこう言ってた。自分は病人が嫌いで、だから外科医になった。外科医になって切って、何が何でも救ってやるって」

 

 携帯の画面に記されたタイマーを見て、俺は静かに背を向ける。

 

「俺もキンジも気持ちは一緒、貴方には生きていて欲しい。だから、その二つの提案はどちらも飲めない。交渉が決裂したときは第三の──いつもの作戦で行く。お決まりの出たとこ勝負、諦めないって作戦で」

 

 俺は尋問科だ、あの綴先生の教えを貰った。彼女が本当に死を望んで、真実を言ってるかなんて簡単に分かる。自分でもない他者のせいで自分から死を望む──器にさせられたせいで。冗談じゃない。器云々の悲劇でクレアは涙を流した──あの二の舞をさせろなんて冗談じゃない、冗談じゃないんだよ。神崎のこともそうさ──相手が神様だろうが知るか。神を足蹴りするのはいつもどおりだ。

 

「大丈夫、遠山キンジは死なない。だから、明日あいつが訪ねてくるなら、世間話でもすればいいさ。これが終わったら一緒にバナナでも食べようとか、そんな感じで」

 

 ああ、本当はたぶん──分かってる。これは罪悪感からの選択。でもいいさ、キンジに高い肉を奢ることになっても今回はあいつに協力してもらう。ルームメイトだからな。

 

「……どうする、ですか」

 

「ん?」

 

「それで、雪平も、遠山も死んだら……」

 

 振り向いたとき、その顔は俯いて、尻尾は地に垂れ下がっていた。

 

「ココから聞いてないのか、遠山キンジは死んでも生き返る。俺は──まあ、分かんないけど地獄に堕ちるなら十字路の悪魔にでもなって戻ってくるよ。今はボスが消えて選挙中らしいしな?」

 

 なんて、うっすら笑いながら俺はそう答えてやる。いっそのこと、ロウィーナも巻き込んで地獄の玉座に座るのも悪くないしな。

 

「大丈夫だよ、猴。全部終わったら、またキンジとバナナでも食べれるさ。あいつ、この国で本場のラーメンが食べたいみたいだから、美味しいところ教えてやってくれ。ケチだから、なるべく安いところで」

 

 ああ。だから、お前を殺すなんて笑えないクランクアップの手伝いは──しない。

 

「遠山も雪平も、矛盾に挑むつもりなのですか?」

 

 もう何が正しいか分からない。そんな声に向けて、俺は迷わず頷いてやる。絶対に貫けない矛と盾、世にも有名な話。上等だ、答えなんて決まってる。

 

「ああ、歯向かうよ。絶対に貫けない矛と盾が相手でも関係ない。俺もキンジも絶対に──失敗しないので」

 




全15シーズンを見たあとでも、シーズン5のラストのインパラに乗ってディーンが単身墓地に乱入するシーンが作者は一番好きです。少なからず、カセットテープが好きになっていくドラマなのではないでしょうか。


『ヒーローなんて最悪、最後は勝つだろうけどそれまでは地獄だ』S15、10、──ガース・フィッツジェラルドIV世
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。