時間ってことの困るところは新らしく作れないってこと、すべてが思い通りになってたらいいけどそんなことってあるか?
欲しいものが手に入らず惨めな想いをするのが人間。だから、欲しいものが全て手に入るとおかしくなる。
「ありがとな、無事に戻って来てくれて。俺一人で苦行を進まずに済んだ」
「皮肉の混じったご挨拶は俺の担当だぞ。まあいいや、また会えて何よりだよ腐れ縁。特に五体満足で会えたことにな」
因縁しかない地獄の猟犬と久方の戯れをやった夜から数時間後ーー陽光がすっかり差し込んだマンハッタンに俺は踵を返していた。
悪趣味な試練の一件で、猛毒としか思えなくなった猟犬の血をどっぷりと浴びたシャツは既にゴミ箱行き。普段着としてもお馴染みの防弾制服のまま、人を駄目にしてくれるふかふかのソファーに飛び込んだ。
「そして、恋しかったぜ懐かしのVIPルーム。埃っぽいモーテルと男子寮じゃこんなふかふかのソファー味わえないからな。今のうちに堪能しとこう」
「日本に戻ったとき、普通のソファーじゃ満足できなくなるぞ? ベッドのことで俺に忠告してくれたのはどこの誰だった?」
「人の言葉を使って反撃する、乱豹先生に似たな。あれはあれでとても頭が回る」
「シラフのときに限るぞ、それは」
寝そべっても余裕でスペースの余るソファーに体を投げ出していると、キンジが余ったスペースにもたれるようにして背中を倒してきた。
まあ、我が家とは違って広い領土だ。多少の侵入は多めに見よう。俺のソファーじゃないし。
「しかし、おかしな話だよな。最終戦争なんて聖書のビックイベントを止めて、魔物や天使、悪魔とも戦って来た男が今さら人間が作ったロボットにビビるのか?」
「ああ、恐いね。ロボットは恐い。俺は今まで背中に翼がついた連中や人間を食料にする連中とは腐るほど関わってきたけど、今日までロボットとだけはーーただの一度も戦ったことがない。一度もだぞ。未知の存在との戦いは恐れて当然だ」
専門家が溢れる時代に万能型は稀有だ。
聖書のメインキャストとは大抵顔馴染みだがこれまでのシーズンを振り返っても金属生命体は専門外と言うしかない。
先端科学兵装のさらに1ランク上の怪物。覚悟はしてたがモノホンのターミネーターが出てくるとはな、ゾッとするぜ。
吸血鬼や幽霊と遭遇したところでビビることはないが、液体金属のターミネーターが後ろから猛スピードで追いかけてきた日には一週間は悪夢にうなされる。
「自立機動中? 昨今の米軍が無人機開発にお熱なのは聞いてたがここまで来ると恐怖だ。お偉い方はみんなロボット黙示録しらないのか? ロボポカリプスってやつ」
「あれはSF、こっちは現実科学だよ」
面白いものでも見つけたような、愉快そうな顔でかなめが会話に割り込んできた。
お友だちの空飛ぶ盾を背中に引き連れ、華奢な小首が揺れる。
「今までもありえないものはたくさん見てきたんでしょ? うろたえすぎ。相手の正体が分かってるんだし、逆にラッキーと思ったら?」
「大人しく人間の言うこと聞くのは最初のうちだけだ。そのうち高性能すぎるロボットは自我に目覚めて反乱を起こすようになるぞ。気がついたら人間はみんな培養器に浸かってて、首の後ろに不気味なプラグ付けて繋がれてんだ。先は見えてるんだよ、これこそ悪夢だ」
「最後、マトリックスの話になっちまったな。ターミネーターじゃなくて」
いいんだよ、やばいってことが伝われば。
ソファーから体を起こすと、タイミングが良かったらしい。キンジの指が大理石のテーブルに向いていた。
「ところで、さっきから聞こうとは思ってたがあのお土産っぽい紙袋の山はなんだ?」
「おっと、そうだった。デススターに乗り込む前に胃袋を慰めておこうと思ってな。あれは俺が用意した最強のエジプト料理だ」
無茶苦茶な近況報告で頭から抜けてた。
LOOのことは一旦置いて、俺はビルに戻るのと一緒に持ち込んだ紙袋の山から一つ手に取る。
「ジャンクフードだけじゃ気に入らないって顔してたからな。色々買ってきた。ケバブだろ、コフタにピタパン、食欲をかき乱すガーリックソースもある。あとこれだ、何だと思う?」
「何って……知らん。何だよそいつは」
「ババガヌーシュだ。食ってみろ、目の覚める右フックをかまされた気分になる」
「右フック、斬新さは認めるよ? でももっと別に褒め方はなかったの?」
「意識が飛ぶくらいの味ってことだよ。ああ、もちろん良い意味でな、良い意味で」
首を傾げたわりには真っ先に紙袋からアルミホイルで包まれたババガヌーシュを取り出したのはかなめだった。食欲に素直なところも誰かさんによく似てる。
少しすると、匂いに引き寄せられたようにロカとレキも部屋にやってきた。多めに買い込んどいて正解だったな。
「帰ってたんだ、死にかけたわりに顔色いいね」
「強い助っ人が揃ってたからな、アドレナリン沸騰しまくり出まくりのマジでやばいって状況にはならなかった。まあまあやばい止まりかな、言うなれば」
今朝も相変わらずのロカはフッと小さく笑ってくれて、レキも小さく『お帰りなさい』と返してくれた。
雇われた立場でありながら、昨夜は完全に私用で飛び出したんだが……ジーサードの許可を貰ったとはいえ、この懐の深さには感謝しとくよ。
「なあ、聞いてもいいか。なんでエジプト料理なんだ? 何か買ってくるならギトギトのピザかと思ってたぞ、俺は。お前の好きなギトギトしてるやつ」
「ピサはギトギトで手軽に限る。ただし、ピザとパイナップルは駄目だ。あの二人は同居できないんだよ、住む世界が違うからな。涙を飲んで別れるべきなんだ、無理にくっつけようとしてもあるのは悲劇だ。でっかいやつ」
「そういう人間は常夏の楽園でピザは食べられないねぇ。で、話が逸れちゃったけどなんでエジプト料理?」
ババガヌーシュにはそれなりにご満悦らしいかなめが柔らかな声色で促してくる。
ちなみに、お言葉だがハワイにはピザ以外にも美味いものが溢れてる。ロコモコ、シュリンプ料理、マラサダにココパフ。ホノルルの土地を踏んだ日にはピザの代わりに食いまくってやる。
「昔、ジャンクフードばかり食ってたときにクラスの知り合いに勧められことがあって。まあ、転校転校で1ヶ月もいなかったが、ジャンクフードばかり食べるなって奢ってもらったのを思い出したんだよ。故郷への愛が強い子で、テキサステキサスってうるさかった」
「テキサスの民には1つ星に対するプライドがあります、かつての1つの国だったときの」
凛とした声でレキがそう答える。それは、
「大正解だ。その子がまさにそうだった。テキサス生まれには1つ星に対するプライドがある、何度も聞かされたよ。久々に本土の野道を吹っ飛ばして、色んなことを思い出しちまったってそれだけだ」
ローンスター、かつてアメリカに併合される前の1つの国のお話。テキサス州の州旗にある1つ星は、かつて国だった頃の証をそのまま受け継いでる。有名な話だ。
本土のあちこちを行ったり来たり、俺にはそんな故郷を誇れる高貴な気持ちは無縁もいいところで。ほんの少しその子が眩しく見えてしまったのが、今でも記憶に残ってる。
「1つの国、か。マッシュの言ってるアメリカによる一極支配、お前はどう見る?」
「威嚇で平和を実現する、80年代だ。何より美味いものを食いながら政治の話をするなんて一番不純な行為だろ」
ケバブに噛みつきながら即答してやる。
LOOとセットで聞かされた例のマッシュ。面白いのは髪型だけじゃないらしい。
ジーサードと同じ米国が生んだ人工天才計画の一人で、本人の戦闘技術は皆無らしいが代わりにジーサード以上にIQが高い天才。典型的な拳や銃ではなく、頭で殴ってるタイプだな。
「八紘一宇、俺たち日本人はそれ系の発想を60年以上前に卒業したもんだが」
「賢さも度を過ぎるとね、変な方向に舵を取るんだよ。あんたの中では60年以上前の発想だったとしてもマッシュの頭の中ではまだ現役」
「お嬢様の言うとおりさ、そいつに舵を取らせてもロクなことにならない。色金盗むついでにご自慢の自信もへし折っちまおう、未来の皇帝パルパティーンに議席を与えたら大事だ」
「ごめんなさい、それ分からない。スタトレだよね?」
「スタトレ……!? 冗談だろ!?」
さらっと言ってのけたロカは、目を見開いた俺に平然とした目付きでかぶりを振る。トドメを貰った。
「仲良いな、お前ら。会ったその日にオークション会場で大立回りやったんだって?」
「お行儀の悪いゲストが来たからね。ハッピアワーが台無しになったから報復してやった」
「一番の見せ場はジーサードに拐われちまったがな。例に漏れず、酷いファーストコンタクトだった。どうしてか、深く関わる相手に限って出会いが悲惨だ。ジャンヌや夾竹桃がまさにそれ」
「地球は太陽を中心に回ってる、貴方じゃない」
「ひゅー、宇宙的ツッコミだぁ」
そこテンション上がるところか? 何が宇宙的ツッコミだよ。
唐突に締まった窓に挟まれた気分だ。というと情けなく聞こえるな……
「あのさ、何度も言ったかもしれないけどさ。お前の妹って変わってるね」
「変な見本が付いちまったからな。でもロクでもないやつを見本にするよりずっと良い。ババガヌーシュってナスの料理だったか?」
聞くより先に、プラスチックのフォークで正解を物色しているのが実にキンジらしい。
俺が答えるよりも、使い捨てフォークは先んじてキンジの口の中に放り込まれた。
初めて味わう料理らしいが、すぐに第二第三とフォークを繰り返して口に運ぶところを見るにご満悦のようだ。
「お見舞いにはナスのパルメザンチーズ焼き、前菜にはババガヌーシュ。ナスの料理にも役割分担があるんだと」
「その口振りだと、それも誰かの受け売りか。ナス料理の講義はどこの誰にしてもらったんだ?」
「サミュエル・キャンベル、三度の飯とスポーツ中継より隠し事が大好きな母さんの父親。特技はふいうちとだましうち」
「というと、例によって複雑ですか?」
「そう、例によって複雑だ。安酒とそれを運ぶ女がいれば満足って単純なタイプじゃない」
口にしながら、『複雑』というのは本当に便利な言葉だと思う。核心の部分を掴ませないって意味ではこれ以上便利なこともそうそう無い。
ウチの家庭事情はいつだって複雑だ。ウィンチェスターもキャンベルも複雑な家庭事情が何よりのお友だち。
「ほい、ジーサードから。ネバダに飛ぶ前に一杯やっとけばってさ」
不意に、モノクロの洒落たテーブルの上へかなめがチェリーコーラの瓶を置いた。
ここにいる全員の視線を引き寄せた赤いラベルの貼られた瓶が、一本ずつテーブルに輪を描くように並んでいく。
尋問科では綴先生が『ニコチンとタールのない世界は地獄』と説いてくれるが、俺にすればチーズと炭酸のない世界こそ地獄だ。
俺たちは、これからネバダ基地強襲とかいう無茶苦茶なことをやろうとしてる、このガソリンはありがたく頂いておこう。
「はい、お兄ちゃんの。受け取って」
「ああ、頂くよ。ありがとな?」
「どういたしまして。ねえ、みんな集まって。乾杯しよ」
レキ、ロカに行き渡るのを待ってから、かなめがテーブルに残った最後の1つに手を伸ばした。
「みんな理解してるだろうし、サードもあとで触れるんだろうけど言っとくね。ネバダの空軍基地までの道のりは、間違いなくマッシュの妨害を受ける。こっちが仕掛けるってバレてる以上、前回以上に苦難な道のりになると思っていい」
嘘偽りは抜き、この場にいる全員が理解している現実を口にした上でかなめは続けて、
「でも、この世に不可能はない。強い意思と勇気、練られた作戦があれば、勝ちを確信してる試合の一つや二つ台無しできる。マッシュの思想の根本あるのは支配する者とされる者、力ある者に力なき者が従う思想。だけど、人間にあるのは支配と被支配の関係だけじゃない」
人と人に結ばれる関係は支配と被支配だけ。かつての自分の言葉をねじ曲げるようにかなめは薄く笑い、その唇を怪しく歪める。
「それを気付かせてくれたもの、それはここにいる仲間たちーー家族に乾杯」
高く、かなめは瓶を掲げる。
そして部屋には瓶と瓶がぶつかりあう音が清々しい響き渡る。最高だな、この感じ。家に帰った気分だ。
◇
日没後、俺たちは再びJ・F・ケネディ空港に舞い戻るわけだが、皆が武装のチェックを行う最後の時間、先に手持ち確認を済ませた俺は、恐らくしばらくは見られなくなるマンハッタンの景色を見下ろしつつ電話をかけた。
『はい、峰ですけど』
正確には日本に向けて。
「あれ、理子にかけたつもりだったんが……後から挨拶する手間が省けたな。久しぶり夾竹桃、理子は手が離せないから頼まれた?」
『冴えてるわね、そんなところ。本音を言うとまず最初に私にラブコールがかかると思ってたけど』
「逆だよ。みんなへの報告を先に済ませて、最後の最後にじっくりお喋りしようと思ってた」
『あら、お可愛いこと』
理子と一緒にいるらしい夾竹桃はいつもと変わらぬ調子で告げてくる。
海を挟もうといつもと変わらぬこの感じ、不思議と安心を覚えるよ。どこにいようとこれだけは変わらなさそうだ。
『あ、続けていいそうよ。このまま続けても?』
『ああ、ジャンヌとお前には後から電話しようって思ってたからな。……もしかして聖女さまもそこにいたりする?』
『花まるあげる。スピーカーに変えるわ』
当たりか。仲のよろしいことで。
けど、これから出向くのは決して楽とは言えない旅路。ジャンヌや今や浅くない仲になったみんなの声を聞けるのは正直なところ嬉しーー
『にゃにゃにゃー? こんなところで何してるのかにゃあああっ!?』
刹那、飛び込んできた快活な声に頭が真っ白になる。り、理子……?
『迷子になったのぉ? お腹すいてない? 猫缶あるから一緒にどうかにゃーー!』
……猫。すばしっこくて器用で小っちゃな忍者みたい、だったよなキンジ。
理子が武偵殺しの一件で行方をくらましてから久々にクラスに顔を出したときも話してた、そうこの獣。猫のことをだ。
『なあ、これ聞いとかないと後々仕事に差し支えそうだから聞いとく。なに? なにがあったの? 今、この電話の向こうでなにが起こってるの?』
『そうね、簡単な話よ。ゲームしてる、貴方の友達が。猫に心を奪われてる、テレビ画面の中の。あれは……マンチカンね。分かる?』
『な、なんとなくな。あれかもってのは頭に浮かんでる。まあ、それよりも驚きと疑問で一杯だけどな。お前が猫にまで詳しかったことも、理子をそこまでハイテンションにさせるゲームが一体どんなものなのかも、好奇心が一気に掻き立てられた。お見事だ』
猫? 猫ってなんだ、落ち着いてた頭が一瞬にして驚きと疑問で溢れかえっちまった。すごく平和的な類いので。
『雪平、人生は疑問の連続よ。私はなぜここにいるのか、どうして生きているのか、猫さんはどうして可愛いのか』
「お前らいつから猫好きになったんだよ」
『仕方ないだろ、可愛いんだから!』
久々に理子から飛んできたのは、予想の斜め上を貫いた裏理子の言葉だった。きっと『仕方ないだろ』って顔で両手にはコントローラが握りしめられているのだろう。
『近頃のモデリングは質感がとても綺麗なの。貴方も猫派に寝返るかもね。猫、人心を誑かす魔性の獣』
『あの眼光に睨まれれば最後ということか。油断ならないな』
「聖女さま、久しぶりに声が聞けて嬉しいよ。どんな言葉かはさておいてな」
台詞だけ聞けば猫がメデューサ扱いだ。実に聖女さまらしい、安心するぜ。
とはいえ、古代エジプトでは猫は神聖視された特別な生き物だったって話は事実。神々しいにゃんこ様はイムホテップみたいな邪悪の悪霊にすりゃさぞ恐ろしい獣だろうよ。
「三人とも相変わらずみたいで何よりだよ。久しぶりの里帰りのせいか、柄にもなくセンチメンタルになりかけてた。礼を言っとく」
『ーー遠山も本土での依頼を受けたそうだな。いや、深く聞くつもりはないのだ。何か、私にできることがあるのなら聞いておく』
見られていないと分かりながらも目が反射的に見開いていく。……元イ・ウーが三人集まってれば隠し事も一筋縄には行かないか。
元々、教務科には俺やキンジの海外行きは知られてる。そこからジャンヌや理子に情報が渡るのは時間の問題。それに神崎も英国に逆戻り、このタイミングでの本土への出国が訳じゃないはずもないか。
掟破りの殴り込み。キンジは師団が巻き込むことを嫌ったが、あの目ざとく頭が回る面子に隠し事を企むのも難関だ。
特にイ・ウーの残党と来たら、どいつもこいつも目ざとい上に賢いお嬢さま揃いだからな。こっちのことはなんでもお見通しってわけだ、ジェダイばりに。
「そうだな。実を言うと、少しトラブルに首を突っ込んじゃってーーいいお祈りある?」
『任せておけ』
「ありがとう。ジャンヌダルクの祈りほど心強いものはない」
なんといってもオルレアンの聖女さまだ。神様に祈る、祈られるより遥かに心強い。
嬉しい気休めを貰えたところで合図が出た。
本音を言うとそのゲームがすごく気になるがそれは帰ってから聞くとするか。生きて帰ろうと思える理由が増えた、これはこれで良いことだ。
「そろそろ切るよ、隣人が準備を終えたみたいで少し出掛けてくる。トラブルの種を消しに」
『他に聞いておくことは? 話すなら今のうち』
「ここで話したら止まらなくなりそう、帰ったら話すよ。ーー
『好きねえ、その言葉。じゃあ、また会えたら会いましょう。ご武運を』
別れの言葉も好き放題、相変わらずの調子で通話は事切れる。
今度は真面目な別れの挨拶を考えとくかな。使うかどうかは別として。
「誰に電話?」
「理子と仲良し三人組。レキが待ち構えてた時点で半分諦めてたが多分バレてるぞ。このアメリカツアーが神崎絡みだってことがな」
準備を終えた隣人、今度こそいつもの防弾制服のキンジが諦め半分に息を吐く。
「掟破りの殴り込むに雁首揃えるわけにもいかない。ここまで引き離せたんだ、上々と思おうぜ」
「そうだな、後はオーシャンズ11みたくやることやって帰るだけ。行こう、サードはもう空港で待ってる」
「ボスを待たせちゃ悪いな」
「車内用のBGMも借りてきた、気楽に行こう。ポップコーンも買っていくか、トッピングは……グミとジャム?」
「お前、舌もどうにかしてるよ」
「冗談だよ。舌
「教えといてやる。ロマンじゃ腹はふくれないんだ」
覚えときます。借りたコルベットのキーを手元で揺らし、一階のホールに繋がるエレベーターに乗る。
舞い戻るのはJ・F・ケネディ空港。乗り込む先はミステリーマニア御用達のエリア51。
「武偵が他国の空軍基地に盗みに入る、普通じゃないよな。もしかして俺、どうかしてたか?」
「ダークサイドヘようこそ、キンジ」
今回も楽しい旅になりそうだ。