Fate/egoist   作:アグナ

1 / 2
大晦日のリビドーを抑え切れなかったのだ……。
ふふ……未完の連載が増えていく(白目)




「祖、安倍清明。陰陽道土御門―――謹んで泰山父君冥道諸神に奉る」

 

 

 

 

………

…………

………………。

 

 例えば、死だ。

 

 生命活動の停止、脳活動の終了、意識が霧散し二度と戻ってこない現象。人はそれを死と呼ぶ。誰もに必ず訪れる必定の結末。始点が在るゆえ終点があるように、無限の螺旋で閉じた完璧、完成という例外を除いて悉くを掻っ攫う運命。生を欲する我らに対する死神。それに直面した時、人は正か負を抜いてまず確実に、必ずに、逃避と言う行動に出る。

 

 例えば、人生とは死に至るまでの余暇だとか。死を持って完成するだとか。或いはそれでも想いは逝き続ける打とか。綺麗ごとを聖者賢人は並べるが、結局のところその結末を粛々と受け入れてしまっている。ワタシは死にたくないといっているのに御託を並べて結末だと寿ぐ。

 

 なんて、間抜け。まるで案山子か何かだ。ワタシは死にたくないと言っているのに死なない方法ではなく、死を説いて来る。貴様らに耳は、言葉を理解する脳はあるのかと叫べば、ものみなワタシに憐れみの視線をくれやがる。何だそれはふざけるな、死にたくないという願いがそれほど憐れなのか? それほど醜いものなのか?

 

 だって、生者ならば誰もが思うはずだ。死にたくない、生きたいと。確固とした己が個我を世界に独立し続けたいと、そう願う事の何処に悪がある? 言えるものなら言ってみよ、その命、今すぐ投げ出せといわれて投げ出せる者がいるか?

 

 少なくともワタシは嫌だ。

 

 生きたい、生きたい、生きたい、生きたい―――生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる生きる生き生き生き生き生き生き生き生き生き生生生生生生生生生生―――ただ死にたくないのだ。

 

 だからこそ生存の可能性があるならばワタシは往く。他の者など知ったことか。前例が無い? 不可能? 誰も出来ない? 笑止、貴様ら所詮は死を受け入れた敗北者共だろうが。ならば如何なる賢者、如何なる英雄の言葉も不要無価値。全て、総て、凡て、我が生存に役立たず。

 

 書物を読み漁った。科学を極めた。法則を読み解いた。言葉を、生命を、世界を―――万象悉くを死のためにくべた。

 

 その過程で名を馳せた―――どうでもいい。

 その過程で悪と呼ばれた―――どうでもいい。

 その過程で狂人だと罵られた―――心の底からどうでもいい。

 

 生きるのだ。ワタシは生きるのだ。誰がなんと言おうと評価しようと生きるのだ。

 何故生きるか? 愚問、死にたくないからである。

 

 それを侵す者、邪魔するものは親類縁者だろうが死ね。ワタシが生きるために死ね。

 役立たず共、邪魔をするなら―――ワタシの唯我こなみの生の礎となれ。

 

 

 

 

「汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ―――天秤の守り手よ」

 

 月の海、0と1とが構成するこの世界を霊子虚構世界「SE.RA.PH(セラフ)」と言った。簡単に言って電脳世界。ここは月に人外の何者かが作った現代科学の及ぶところ無い規格外のスパコンともいえるムーンセル・オートマトン。その表層部に位置する空間だった。

 

 ムーンセル・オートマトンは言ったように人外が作ったオーバーテクノロジー。ゆえに演算技能は人類が保有するあらゆる演算機の機能を凌駕する。観測・記録をするこのスパコンは使い方によっては人類史を、世界を変えるだけの力を保有する。それ即ち、万能の杯……ゆえにこの力を手にする権利を人は「聖杯」と呼んだ。

 

 そして、それが何よりこなみが此処に居る理由。死することが最も恐ろしい彼女が、それでもこの究極の生存競争。「聖杯」を争う「聖杯戦争」に参加した理由であった。

 

「サーヴァント・キャス……あれ? バーサーカー? クラスミスなんじゃないのこれ?」

 

 こなみの眼先、これでもかと言うぐらいの魔力を纏って現界した男はその規格外の登場と霊格に相反して凄まじく気の抜ける口調で己に対して疑問を口にする。背負った身丈並みのラッパにとんがり帽子、色とりどりの衣服や装飾の数々は成る程、「道化」か「吟遊詩人」かのそれ。即ち、この上なく胡散臭い。

 

 これでもこの男とのパスがはっきりと彼が己のサーヴァントであることを示している。

 

「サーヴァントで間違いないな? そうだな? ならばこれで契約成立だ。私が生きるためにしゃんと働け。道化」

 

「うわーお。これはこれは、また随分アレ(・・)なマスターを引いたものだ。でも、僕を従者にしてしまったあたり、どっちもどっちかい? まあ良いけど」

 

 慇懃無礼なこなみの言葉にサーヴァントと呼ばれた道化男は金銀の瞳(オッドアイ)を不気味に輝かせてこなみの言葉に肩を竦める。

 

「その通り。私が貴女のサーヴァント、クラスは何の間違いかバーサーカー。そうだな……適当に『悪魔使い』とでも呼んでくれたまえ。それとも真名聞きたい?」

 

「興味ない。サーヴァントとして機能すればお前にそれ以上は求めない。語りたければ好きにしろ。私も好きに無視する」

 

「おいおい、無視されると分かって語るなんてそりゃあもう道化にとって一番の拷問じゃないか! マスター、君ってドSかい? それともサディスト?」

 

「どうでも良い。ついてこい、悪魔使い。私は一秒だってこんな場所に居たくないんだ」

 

 言って踵を返すとこなみは颯爽とサーヴァント召喚によって開かれた扉の方へと歩いていく。

 

「……やれやれ、これは本当に骨が折れそうなマスターに召喚されたようだね。大丈夫かい俺?」

 

 まるで自分のことなぞ考えず、ひたすら己、己と言った態度のマスターに呆れた風に呟く悪魔使い。但し、その口元は実に愉しげに歪んでいる辺り、この男もこの男だった。

 

 そうしてマスターに続こうとしてふと、辺りの景色に気付いた。……こんな場所(・・・・・)とは、成る程、確かによく言ったものだ。

 

「これは、これは凄まじい」

 

 粉微塵に破壊された人形の山(・・・・)

 引き千切られた手足(・・・・・・・・・)撥ね飛ばされた首(・・・・・・・・)

 惨殺殴殺暗殺射殺絞殺自殺―――殺戮された死骸の群。

 焼死圧死溺死病死ショック死―――悉く、そう、悉く皆殺し。

 

「……確かに、サーヴァントなんてどうでもいいかもね。うん、素晴らしい。これは素晴らしい。もしかして我、英雄譚を書く機会に恵まれちゃった系? とっくの昔に神代は終わったと思ってたんだけどねェ。事実は小説より奇なりって? キハハ! 愉快愉快。確かに現世は地獄だね、(やつがれ)

 

 その惨状に道化は笑う。倫理や正義をおいてただ面白いか否かで生きる道化の態度は正にその名の悪魔使いの名に見合う態度であった。バーサーカーは己のマスターの行く末が面白いと確信し、全力で付き合うことをいきなり勝手に心に決めて、歩き去るマスターの背中を追って行った。

 

 ―――これは正義の物語でもない。賢人の決意でもない。聖人の戦いでもなければ英雄の戦いでもない。

 ましてや崇高な願いを抱いた奇跡の話などでは断固としてない。

 

 狂気を纏った人が当たり前の願いを叶えるためだけの物語。

 

 さあ―――人間(かいぶつ)が来るぞ。




モデル・どっかの逆十字と蝿の王。

因みにモデルの方々は登場しませんのであしからず。
後、別に知らなくても本編に影響しない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。