SPACEBATTLEGAILヤマトⅡ(仮) 作:サイレント・レイ
― ……全ては定められた運命の事… ―
― ……でも… ―
― ……それだけではありません ―
― ……遠い星の戦士達よ… ―
― ……貴女達に全てを… ―
――― 冥王星・海王星間宙域 ―――
宇宙戦艦ヤマトとその仲間達がイスカンダル遠征を終えて地球に帰還してから2年が経過していた。
此の間に地球は地球連邦として改めて1つとなって復興事業の一環として太陽系内全ての惑星の開拓事業を推し進め、此の年に入ってから太陽系外にも進出していた。
「…此方第三外周艦隊・第四八群、只今太陽系内に入りました。
繰り返します、此方第三外周艦隊・第四八群…」
「……なんか退屈だねぇ~…」
「不謹慎だぞ、アサシモ!」
「退屈なのが最も良いの!」
イスカンダル遠征をヤマトと共に戦った仲間達の内の重巡チョウカイ、アサシモ&イソカゼ&ハマカゼの3人の駆逐艦娘、空母ズイホウ、そして軽巡ヤハギの6人は第三外周艦隊の一部である第四八群として太陽系外からの輸送船団の護衛役を務め、たった今ワープを終えて太陽系内に入って地球への帰路を進んでいて、不謹慎な事を言った為にイソカゼとハマカゼに怒られていた。
「そうそう、今なら昼寝しほうだいだよ!」
「アガノ姉!!!」
更にアサシモに続いて、ヤハギの姉妹艦にしてアガノ級軽巡一番艦アガノが不真面目な事を言った為に、此方はヤハギに怒鳴られていた。
因みに、彼女達第三外周艦隊の群艦隊旗艦(厳密に言えば、第三外周艦隊に編入されている日本艦隊の旗艦)として戦艦キリシマがいるのだが、キリシマは現在は近代化改装を行う為に横須賀に残留したので、彼女の代わりとしてヤハギの姉妹艦にしてアガノ級一番艦のアガノが入っていた。
尚、本来のキリシマの代わりはアガノ級二番艦ノシロだったのだが、近日中のアガノの怠惰ぶりが酷かった為、ノシロとヤハギの2人によってアガノに変更となったのだ。(長姉の立場が全く無いな…)
更に言うと、ヤハギはイソカゼと共に空母アカギを総旗艦とする第一外周艦隊への転属が決まっていて、此の航海で輸送船団が安全圏の木星軌道に入り次第、第一外周艦隊が駐留する第十一番惑星へ単独で向かうようにとの事前通達があって、そんな彼女の後任であるアガノは慣らしとして先行編入の狙いがあった。
「通信報告はどうでした?」
「問題無く、“予定通りに地球に帰還せよ”だそうです」
ヤハギの質問にチョウカイが微笑みながら答えていた事から見て取れる通りにキリシマに代わって旗艦を務めているのがヤハギであった。
普通に考えれば、艦隊内最上艦種にして艦隊旗艦型巡洋艦であるチョウカイが旗艦代理を務めるべきと思われるが、当のチョウカイが艦隊参謀を続投したい事を望んだ上、イスカンダル遠征帰還後も器量向上が著しいヤハギに譲ったとの経緯があった。
更に言うと、先述の通りにヤハギは転属先の第一外周艦隊で1個水雷戦隊を与えられる予定なので、チョウカイは旗艦としての練習させる形での
で実際、ヤハギは立派に旗艦を務めあげようとしており、そんな三妹をアガノが気付かれぬ様に微笑んでいた。
「……ねぇ、ヤハギ、安全圏に入ったから、連絡を入れたくない?」
「連絡? 何所に?」
キョトンとしているヤハギにチョウカイがニッと笑った。
「練習艦隊ですよ。
マヤの話だと、今日の艦隊訓練が終わったらしいので、サカワと会話出来ますよ」
「…っ!?」
ヤハギが顔を赤くして驚き、そんなヤハギをアサシモ、ハマカゼ、イソカゼの3人が笑っていた。
サカワはアガノ級四番艦、ガミラス戦中に建造されるも、戦況悪化からの資材不足から長らく建造凍結されていて、イスカンダル遠征後に建造が再開されて今年初めに竣工し、現在は練習艦隊に編入されて訓練を続けていた。
ヤハギは唯一の妹であるサカワを、ノシロから怒られる程に溺愛しすぎていた為、度々ネタにされていた。
因みにチョウカイの姉にしてタカオ級重巡の生き残りの片割れであるマヤは、チョウカイとは別方向の近代化改装を受け、現在は慣らしの再訓練を受けるついでに、教官兼任の練習艦隊の旗艦を務めていた。
尤もマヤが練習艦隊への編入を最後まで嫌がっていて、編入後に目を“死んだ魚の様なモノ”にしながら配下の者達の指揮を取っていた光景(噂だが、周囲や教え子達に「
「チョウカイ、慎みなさい!
沖田提督の指揮下だったら厳罰が下されます!」
ヤハギの注意に当のチョウカイは「はいはい…」と返していたが、イスカンダル遠征以降も長く艦隊を組んでいた事からチョウカイのは冗談だとヤハギは捉えていて、それ以上は何も言わずに只溜め息を吐くだけだった。
で、暫く変な沈黙が続きながら任務を追考していた。
「……ヤハギ?」
「ね、ねぇ、チョウカイ、私、最近イスカンダル遠征を思い出すんだけど、おかしいかな?
たまにヤマトの攻撃命令の幻聴が聞こえる時があるの」
ヤハギが思わずアガノを見詰め、アガノを所在や動向が一切不明のヤマトと見間違えた上、そのアガノに気付かれた為、誤魔化そうとチョウカイに振った。
「…おかしくないよ。
私もあの遠征が懐かしいし、今こうしていたらヤマトやズイカクからの通信が入りそうな気がするの」
苦笑してからのチョウカイの返しにヤハギだけでなく、アサシオ、ハマカゼ、イソカゼの3人も同感と示した。
イスカンダル遠征時は星間航路図があるも何もかもが分からず手探り状態の悪戦苦闘な航海、予測を超える数多の宇宙気象、1年間との限られた期間故に時間の脅迫概念、不確かなイスカンダルへの疑惑や不信感、何時襲って来るか分からない上に強大さを増してゆくガミラスへの恐怖、次々に死に別れていく仲間達、そして此れ等に対応出来ない自分への失望、辛い事だらけで全てを投げ出して地球に逃げ帰りたいと思った事は何度もあった。
だがそんな日々がとても懐かしく思う事が多々あり、しかも地球に帰還する度にそんな思いが強くなっていた。
「へ、へぇ~…そうなんだ…」
アガノは、そのイスカンダル遠征に怪我と性格的問題で参加出来なかったので、一切合切分からず挙動不審な動きをしていた。
そんなアガノは置いておき、先述の通りに地球はガミラス戦から復興事業と平行して、軍備増強計画を実施していたのだ。
まぁガミラス戦で艦娘達が大量に“戦死”“退役”“長期病養”の3つのどれかとなっている以上は戦力回復として行うのは万人からやむを得なしとされていたのだが、問題だったのは“波動砲艦隊構想”として、新型波動エンジンを開発・量産しての波動砲搭載艦娘の大増員を行っていた為、嘗ての核戦力増強と同様に艦娘達だけでなく地球全土での大論争が起きていたのだ。
反対派の抑え込みながら、地球連邦政府と防衛軍は波動砲搭載艦娘の大増員を2つの手で行っていて、1つはガミラス戦を生き延びた戦艦娘や波動砲の余白がある一部の巡洋艦娘(此の影響で波動砲を搭載する巡洋艦娘を“
そしてもう1つの手が、イスカンダル遠征でのヤマト以下の3人の戦艦娘を元に設計され・昨年からイギリス中心の欧米各国で大量建造が開始された量産型波動砲搭載戦艦・ドレッドノート級前衛航宙艦(通称:主力戦艦)の艦隊配備であり、既に
更に前衛武装宇宙艦なるドレッドノート級より遥かに強力な超弩級戦艦が極秘裏に建造中で、艦娘の人選も終わって間もなく一番艦が竣工するとの噂があった。
まぁヤハギ達は艦娘且つ軍属の者として、此の広い宇宙で第2第3のガミラスと言える敵対勢力が現れる事への危惧を理解していたので、地球の富国強兵策に理解してはいたが、ヤマトと共にイスカンダル遠征に赴いた者として地球の方向性に不安を感じていた。
「ねぇねぇねぇ、イソカゼ!!!
そう言えば、貴女の方の後任は決まったの!?」
話を戻し、アガノはヤハギ達6人が気を重くしていたのを払拭したかった事に加えて話に加わりたかったので、ヤハギと共に転属となるイソカゼの後任を訊ねた。
「確か後任を推薦出来たんだよね?
気心の知れたウラカゼかハツシモ、それとも此方に来たがってたクロシオを要望したの?」
イソカゼの後任は第三外周艦隊に残る者達も気にしていたらしく、アガノにズイホウも乗っかった。
因みに、クロシオとウラカゼは練習艦隊の一員として地球にいて、ハツシモは月面艦隊の一員として姉妹艦のハツハルとワカバと共に月にいたのだが、後任が3人のどちらかでもないとして、イソカゼはハマカゼと目線を合わせた後、イソカゼは苦笑してハマカゼは大きな溜息を吐いた。
「…後任は、シラヌイでほぼ内定だ」
「ちょっと待てぇぇぇー!!!
アイツを薦めたんか!!?」
「いや、それが………上に冗談でアイツの名を上げたら、トントン拍子で進んでいったんだ」
「……絶対、厄介払いだ…」
イソカゼ本人から後任がカゲロウ級二番艦シラヌイである事を告げられ、ヤハギ・アガノ・ズイホウの3人はシラヌイを知らなかったので反応は鈍かったが、アサシモが思わず叫んでしまい、チョウカイは左手で頭を押さえながら臥せった。
「何で、そんなに嫌なの?」
「確かシラヌイって、成績は結構良かったよね?
性格も悪くないから、イスカンダル遠征に参加出来てもおかしくなかったよね?」
アサシモとチョウカイが明らかにシラヌイ着任を嫌がっていたので、ヤハギとアガノは思わず目線を合わせながら首を傾げた。
だが実際にシラヌイはカゲロウ級内でも逸材ユキカゼに次いだ実力者であって駆逐艦娘達の中で唯1人ユキカゼの
そして現在、ユキカゼが戦没してカゲロウ級内最強駆逐艦娘となるだけでなく、カゲロウ戦没によって昇格した一番艦(此の事で“カゲロウ級”は“シラヌイ級”に改名となったが、誰もそう言わないので有名無実)を文句無しに務めていたので、不満に思う理由が分からないでいた。
「そう言えばチョウカイさんって、短期間の1度だけシラヌイが随伴艦にしてた時がありましたよね?」
「…ええ……第6次冥王星沖海戦で私が指揮した群艦隊にシラヌイはいました」
チョウカイはズイホウの質問に溜息を吐いた後に答えたが、まだ鬱々としていた。
「あの娘は艦娘として実力相応な上に冷静な戦略的判断が出来てましたから、確かに優秀です。
ですが、どうも頭に血が上りやすい性格らしく、まぁユウダチ程にないにしろ、暴走による猪突猛進に走りやすいんです」
ヤハギ達3人はチョウカイのシラヌイの判に苦笑しながら納得していたが、実はシラヌイは上層部や一部の艦娘に嫌われる前歴があったのだが、チョウカイは敢えてそれを言わなかった。
「……シラヌイ、転属拒否をしてくれない、かな?…」
「私、嫌だよ!!!
あの暴走艦と組むの!!!」
シラヌイ転属に対して、チョウカイは僅かな可能性にすがり、アサシモは頭を抱えて嫌がっていた。
「まぁ、シラヌイもあれから丸くなっている筈だし、元より人が良いから仲良くなれる筈だ」
「…イソカゼ、1発殴らせて」
だが諸悪の根源たるイソカゼはヤハギ達3人と共に他人事として笑っていたので、チョウカイとアサシモから睨まれ、シラヌイ転属に拒絶反応があるハマカゼもまた右拳を震わせた。
喜怒哀楽は各々であったが、ガミラス戦からの平和且つ平穏な一時である事に変わりなかったが、それはチョウカイに届いた長距離通信で終わりとなった。
「…ヤハギ、朝日奈提督から通信!!!
前に展開する!!」
チョウカイはヤハギが頷いて了解したのを確認して通信サークルを前方に展開したら、彼女達第三外周艦隊・第四八群を指揮する朝日奈みらい三佐が敬礼した姿で映されたので、ヤハギ達7人は直ぐに真顔となって彼女に右拳を左胸に当てる敬礼を一斉にした。
みらいは三佐の階級に反してあどけなく可愛らしさが残る20代前半の提督であったが、此れは防衛軍では艦娘だけでなく、提督までが不足していた事から優秀だがまだ若い士官(更に予備役や左遷された問題児まで)を無理にでも起用せざるを得ない人手不足の表れであった。
『第三外周艦隊・第四八群に通達します!!』
まぁ年齢面で問題があるかもしれないし実際に経験不足からの不手際が度々あるも、みらいの提督としての手腕は優秀な域に十分入っていたので、ヤハギ達は提督(上官)として素直に彼女を受け入れていたので、直ぐに右拳を下ろして姿勢を正した。
只し唯一の不満なのは、みらいは熊の人形(みらい曰く、名は“モフルン”)が入った手提げを終始持っている事であった…
『太陽系外のメルヘン星にてガミラスの残党が確認され、第三外周艦隊に集結命令が発せられました!
第四八群の船団護衛は木星艦隊が引き継ぐと防衛司令部からの達しで、直ちに護衛任務から離脱してワープを実施、第三外周艦隊への復帰を目指して下さい!』
ヤハギ達7人はみらいへ「了解!!!」と揃って答えながら右拳を左胸に当てる敬礼をし、みらいが身分不相応とも思える優秀且つ高練度のヤハギ達7人に微笑みながら答礼した後に通信が切られた。
「「っ、しゃあ!!!」」
「アガノ姉!!!
アサシモ!!!」
此の直後にアガノとアサシモがハイタッチをした為、直ぐにヤハギが怒鳴った。
「チョウカイ、メルヘン星までのワープ航法はどんな感じ?」
「此所からだと、
ヤハギはチョウカイに頷くと、直ぐに艦隊先頭に位置して反転………イスカンダル遠征時とは違って7人各々でのワープを行って、先ずは艦隊集結宙域に向かった。
時に西暦2202年、地球は此の時から新たなる敵との戦いが始まろうとしている事など、誰も知らなかった…
感想または御意見、或いは両方でも良いので宜しくお願いします。
今回のは旧作の松本零士版コミックを参考にしています。
更に言うと、朝日奈みらいが提督としてのチョイ役で出ましたが、更に相田マナと桃園ラブも提督としてのチョイ役で出る予定です。