デジモンエタニティ   作:LOST

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進化!僕らは戦うんだ! D パート

【キョキョモン進化ーーーリュウダモン】

【バドモン進化ーーーフローラモン】

【ワニャモン進化ーーーコエモン】

 

士ノ道は目の前で起きた出来事に目を白黒させていた。

 

「な、なんだ?キョ、キョキョモンは?キョキョモンはどこに行った」

「真央殿、拙者がキョキョモンでござる。進化し、リュウダモンになったのだ」

「りゅ、リュウダモン……お前は私の『パートナー』なのか?」

「左様。拙者、いくら姿が変れども、真央殿の『パートナー』でござる!」

 

リュウダモンは和風の鎧を身に纏った小型の竜であった。アグモンとは異なり、鎧の下は柔らかな体毛に覆われ、立ち姿はトカゲに近い。兜に埋め込まれた緋色の宝石が夜闇の中で煌めいていた。

 

 

薬師寺の目の前には植物の姿をしたデジモンが立っていた。

 

「バドモン……いえ……あなたはフローラモン?」

「うん。私、フローラモン!真莉愛の代わりに戦うわ!」

「あなた……戦えるの?」

 

フローラモンは手足が植物の二足歩行のデジモンだった。頭は花びらのようなヘルメットが覆っており、その顔立ちはどこか気品に満ちていた。そんなフローラモンは薬師寺を振り返り、手を口元に当ててクスクスと笑う。

 

「私を見てて、真莉愛!真莉愛が見ててくれるなら、私は戦える!!」

「フローラ……モン」

 

リュウダモンは進化したフローラモンを振り返る。

 

「フローラモン!ここはおぬしに任せる!拙者がアグモン殿達の加勢に行く!」

「ええ、任せたわ!」

「真央殿!」

 

キョキョモンの進化の衝撃に茫然としていた士ノ道はリュウダモンの鋭くも優しい声に我に返る。

 

「な、なんだ?」

「拙者……行ってもよいか?」

 

士ノ道はその言葉に自分が言った台詞を思い出した。

 

『キョキョモン……お前が私の『パートナー』だというのなら、一つ肝に銘じておいて欲しいことがある』

『私は……薬師寺様を守る盾であり、薬師寺様の為の剣なのだ。キョキョモン……お前にも同じ使命を背負ってもらう』

 

それは士ノ道が持つ一本の杭。自分の根幹に突き刺さる屋台骨であると同時に、魂に突き刺さる楔。

その杭の重さから士ノ道は逃げることはできない。逃げたいと思ったこともない。

 

だが、それは彼女の問題だ。彼女自身の問題であるはずだった。

 

「違う……」

 

士ノ道は首を横に振る。

 

「違う!違う!!リュウダモン!お前は『士ノ道』ではない!」

 

それを抱えるのは自分だけで十分だ。士ノ道は自らに絡みついた縄を引きちぎるかのように叫んだ。

 

「リュウダモン!お前は……彼等を守ってくれ!!」

「承知!!」

 

リュウダモンはその言葉を待っていたとばかりに弾丸のように飛び出した。

大地を爪で掴み、一直線にアグモン達に向かっていく。そして、勢いそのままにリュウダモンはアグモンに乗っているゴブリモンに強烈な突進をお見舞いした。その反動を利用してすぐさまその場で跳躍し、空中で身体を捻った。狙いは太河に跨るゴブリモンだ。

 

「『居合刃』」

 

リュウダモンの口から鉄の刃が吐き出された。鋭い切っ先がゴブリモンの肩へと突き刺さる。

 

「ぐあぁっ!!」

「アグモン殿!今でござる!」

「うん!『ベビーフレイム』』

 

アグモンはゴブリモンを吹き飛ばし、急いで太河を助け起こした。

 

「太河!大丈夫!?」

「うん……これくらい……なんてことはないさ」

 

太河は鼻から滴り落ちる血を拭う。口の中が切れて血の味もしていたが、骨が折れたような痛みはない。

腕は幾度も棍棒を受け止めて熱を持っていたが、生憎と奴らには太河の古傷を見破ることはできなかったようだ。関節部分が問題なく動くことを確認し、太河は勢いよく立ち上がった。

 

「大丈夫!行ける!!」

 

太河とアグモンの無事を確認したリュウダモンはゴブリモンへと向き直った。

 

「太河殿!アグモン殿!拙者が護衛する!皆と合流いたすぞ!!」

「うん!」

 

いまだゴブリモンの波は収まらない。

 

だが、既に状況は先程とは異なる。太河は皆と合流して一丸となれることを確信していた。

 

1つ想定外があるとするなら……

 

「って、あれ!!ロバート!まだ寝てる!どういうこと!!」

「あれ?あっ、本当だ」

 

太河とアグモンの視線の先でロバートは今も横になっていた。

 

ロバートを守っていた鐘山とベタモンは茫然とした気持ちを隠せなかった。

彼等の頭の中にあるのは『こんなことってある?』という疑問だけだ。

 

ただ、一つの事実があるとすれば、ロバートのパートナーであるワニャモンはコエモンに進化したことだ。

 

コエモンは緑色の毛色をした子ザルのようなデジモンだ。顔には髭を模したような赤い柄の化粧をし、トラ柄の皮をアフリカの原住民のように肩から纏っている。背中には身の丈程もある巨大なパチンコを抱えていた。

コエモンはまん丸な目を半目にして目の前でなおも寝ようとするロバートを見つめていた。

 

「ふあぁ……コエモンか?まぁいいや……あとは……任せたぞ……うるさい奴は……片っ端からぼこぼこに……ぐぅ……」

 

ロバートの掌からデジヴァイスが転がり落ちる。コエモンは全てを諦めたかのようにため息を吐き、デジヴァイスをロバートのポケットへとしまい込んでやった。

 

そして、一度深呼吸をしてみる。

 

だが、やはり我慢ならなかったのか声を張り上げた。

 

「って、なんでだべぇえええええ!!ロバートが寝たいから進化するってどういうことだべぇ!!おいこら!ロバート!」

 

コエモンの心の叫びに同意しながらも鐘山は吐息1つで気を引き締め、ゴブリモンへと睨みをきかせることにした。

 

「ああ、もう!!『ベビースリング』をぶつけてやるべぇええ!!」

 

コエモンは巨大なパチンコを構え、小石を引き絞った。

 

「おらぁああ!『ベビースリング』!!」

 

コエモンが放った小石はロバートの頭上を通過し、シャオと渚沙を襲っていたゴブリモンの後頭部へと見事に命中した。この暗闇の乱戦の中でも針に糸を通せる精密なコントロール。それこそが、コエモンの真骨頂であった。

 

「もう怒ったべ!片っ端から狙い撃つべえええ!!」

 

八つ当たりのように手あたり次第に小石を飛ばして仲間達の援護をしていくコエモン。

 

阿修羅のごとく怒り狂いながら、次々と敵を打ち倒していくコエモンに鐘山は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 

そんな時、乱闘を切り裂くようなシャオの声が飛んだ。

 

「おい!鐘山!そっち行くから援護してくれ!!」

 

シャオがガジモンと共に道を切り開こうとしている。

薬師寺も士ノ道とフローラモンに守られながらも少しずつ鐘山達と合流しようとしていた。

 

いち早く戻ってきた太河もロバートの守りに加勢する。

 

反撃開始であった。

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

 

「覚えてろよぉぉぉぉ!!」

 

ありがちな捨て台詞を吐いて森に消えていくゴブリモンを見送るシャオとガジモン。

 

「結局、あいつらなんだったんだ?」

「オイラにもわかんね」

 

二人はゴブリモン達を手を振って見送った。既に東の空は白みだしていた。

 

「結局、一晩中戦ってたな……」

「もう眠いよ……」

「俺もだよ」

 

シャオは欠伸を噛み殺しながら大きく伸びをする。シャオの手にはいくつもの擦り傷や切り傷が刻まれていた。骨身を削る戦いに彼等は皆多かれ少なかれ傷を負っていた。

その中でも一際怪我の多いのはやはり太河だった。彼は焚火の燃えカスの隣でフローラモンの治療を受けていた。

 

「はいっ!これでいいわ、この薬草は打ち身によく効くのよ」

 

太河の軟膏を両腕に塗ってもらっていた。それはフローラモンがアロエのような植物で作った即席の軟膏だ。殴られて熱を帯びた腕にはその冷たさが心地よかった。

 

「あとは、ほら!この花粉を嗅いで。少しは痛みが軽くなるから」

「ありがと。フローラモン」

「いいえ、お安い御用よ。他に怪我した人はいない?」

 

フローラモンは笑顔を振りまきながら、仲間達の間を練り歩いていく。

怪我をした人に軟膏を塗り、痛み止めの花粉をばら撒いて治療にあたる。

 

そして、一通り仲間達をまわった後、最後に皆から少し離れたところで蹲っている薬師寺のもとへと歩み寄った。

 

「真莉愛!真莉愛は怪我してない?」

「……え、ええ……」

「はい、嘘ついた。私、知ってるんだから。右手出して。ここに火の粉が降りかかったでしょ!」

 

薬師寺はフローラモンの溌溂とした態度に押し切られるように右手を差し出す。

 

「……よく……わかりましたわね」

「そりゃそうよ。私、ずっと真莉愛のこと見てるんだから」

 

手の甲に火傷に効く薬草を当て、その上から植物の蔓で作った包帯を巻いていく。

そんなフローラモンからはライムのような甘酸っぱい匂いがしていた。

 

「どうして?」

「え?何が?」

「どうして。そんなにわたくしを見てくださるの?」

 

その問いにフローラモンは呆気に取られたような顔をした。だが、次の瞬間にはくすぐったそうな笑い声をあげた。

 

「そんなの決まってるじゃない。『パートナー』だからよ」

「わけがわかりませんわ」

「なら、それでもいいわ。はい、おしまい!」

 

薬師寺は手当を受けた右手を見下ろす。リボン結びで整えられた包帯には一輪の花が刺してあった。

 

「わけが……わかりませんわ」

「ふふふ、いいのいいの。ふぁああ」

 

フローラモンは薬師寺の隣に座り、大きな欠伸をして目を閉じる。

それが合図であったかのように、1人、また1人とその場に腰を下ろして横になっていく。

 

一晩中戦っていて疲労のピークを迎えた子供達は訪れる睡魔に抵抗することもできず、夢の世界へと旅立っていった。

 

「ふあぁぁぁぁ……よく寝た」

 

そんな空気をまったく介せず、ロバートが伸びをした。

 

「ああ、まったく煩い夜だったな……あれ?みんなどうしたんだ?」

 

ロバートは本当にずっと寝ていたらしい。

 

「って、お前誰だ!!」

「オラはコエモンだべ。ワニャモンから進化したんだけど……覚えてねぇべか?」

「僕が進化させたのか?いやったぁぁ!いいかコエモン、これからお前は最優先で僕を守るんだぞ」

「はぁ……」

「なんだよその溜息は!?」

「オラ、眠い。もう寝るべ」

「何言ってんだ。僕はもうさっさと家に帰りたいんだよ!ほらさっさと朝ご飯を……って、お前らも寝るな!!起きろ!!」

 

もはや、その程度の声では目を開けることのない子供達。

太河は最後の力を振り絞り、ロバートに声をかけた。

 

「ロバート……見張り……頼む」

「はぁぁぁ!!!なんだよそれ!!お前ら!起きろぉ!」

 

ロバートの抗議の叫びは暁の空に吸い込まれていった。

 

 

 




~~~ ♪ ~~~ ♪ ~~~ ♪ ~~~ 

突如飛ばされたデジタルワールド。そんな突拍子もない出来事に巻き込まれたからこそ太河には一つの希望が芽生えていた。
行方不明になった幼馴染の織原ミカ。もしかしたら、ここに彼女の手がかりがあるかもしれない。

そうして、森の中を探索する彼等にミノタルモンの攻撃が襲いかかる。

倒れていく仲間達。彼等を守る為に身を張る太河。
そんな彼の叫びに呼応して新たな進化が燃え上がる。

次回『火炎炸裂!コアグレイモン!』

今、終わらぬ冒険譚が始まる。


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