デジモンエタニティ   作:LOST

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火炎炸裂!コアグレイモン! Dパート

【コアグレイモン!】

 

広場に突如出現した巨大な姿。橙色の体躯に黒いラインが傷跡のように全身に走るデジモン。ゴツゴツとした肌の下には重厚な筋肉が盛り上がり、脈拍に合わせて怒張を繰り返していた。巨木のような二本足で身体を支え、長い尻尾が身体のバランスを取って立つ。その姿はまるでティラノサウルスを彷彿とさせる。彼の名前はコアグレイモン。その爪から前腕にかけては金属性のプレートが小手のように覆い、頭はビスと金属板で補強された焦茶色の外殻が覆っていた。

 

コアグレイモンはミノタルモンの前に立ち、両腕をクロスさせ、頭部の外骨格を前面に向けた。

一枚の鋼鉄の壁を作り上げたコアグレイモンの身体にミノタルモンの『アースクェイク』が突き刺さった。

 

衝撃と防壁が激突し、余波が周囲の枯葉を吹き飛ばした。

 

オレンジ色の枯葉が煙幕のように散り行く。その中からコアグレイモンがゆっくりと上体を起こした。

コアグレイモンの金属プレートや外骨格には傷一つなく、その巨体の後ろには衝撃波の一欠けらすら通さなかった。

 

「うおぉおおおおお!」

 

コアグレイモンが吠える。

木漏れ日の光が金属に反射し、コアグレイモンの身体を煌かせた。

 

「なにっ!?進化しただと!?」

「え……あれ……アグモンなのか?」

 

コアグレイモンはミノタルモンから視線を切らさぬようにしながら、緑色に輝く瞳をわずかに後ろに向けた。

コアグレイモンがその身を挺して守った子供達やデジモン達には怪我はない。

 

「みんな!僕の後ろにいて!これ以上、僕の後ろに攻撃は通さない!!」

 

コアグレイモンは両腕の爪を握りしめ、ミノタルモンへと向き直った。

 

「ミノタルモン!太河をはなせぇええ!!」

「ちきしょう……進化するなんて聞いてねぇぞ!!」

 

コアグレイモンがミノタルモンに向けて突っ込み、頭部の外殻をミノタルモンの腹に叩きつけた。

 

「がはっ!!」

 

腹部への衝撃で一瞬硬直するミノタルモンの身体。

その隙を逃さず、コアグレイモンが左拳をミノタルモンの顔面に向けて振り切った。

 

「ぐあぁあ!!」

 

ミノタルモンの腕の力が緩み、太河の身体が落下する。

枯葉の上に落ちた太河は霞む視界でコアグレイモンを見上げた。

 

「……コア……グレイモン」

「太河!大丈夫!?」

「うん……なんとかね……」

 

太河は軋む身体に鞭をうち、コアグレイモンの後ろへと移動した。

 

そして、太河の安全が確保できたことでコアグレイモンの視線がより一層強い光を放った。

 

「太河も……みんなも……僕が守る!!」

「『ダークサイドウェイク』」

 

地を這う衝撃波。激しい音がして、衝撃波がコアグレイモンを直撃する。

だが、やはりコアグレイモンの身体には傷一つない。

 

「今度はこっちの番だ!『バーンフレイム』」

 

コアグレイモンは口の中に火球を溜めて打ち出した。

大きさは小ぶりだが、散弾のように火球が飛び散る『バーンフレイム』がミノタルモンに襲い掛かる。

 

「まだまだぁ!!」

 

コアグレイモンは一気に間合いをつめる。踏み込んだ太い足が木の葉を舞いあげた。

右の爪を握り締め、直線的なストレートパンチを繰り出す。

 

「『クロウナックル!!』」

「この野郎!調子に乗るなぁああ!!」

 

ミノタルモンはその拳に自分の機械腕をぶつけて応戦する。そして、拳がぶつかった瞬間、ミノタルモンは機械腕から蒸気を噴き上げて衝撃波を打ち出した。せめぎ合ったのは一瞬、吹き飛ばされたのはコアグレイモンだった。

コアグレイモンがその衝撃に押されて後退する。だが、コアグレイモンは倒れない。

足先の爪で大地をしっかりと把持し、尻尾を大きく振って姿勢を保つ。舞い上がった土煙の中でコアグレイモンの緑色の眼光が強い光を放っていた。

コアグレイモンの爪を補強している金属板はいまだ無傷。コアグレイモンは爪を握りしめ、ボクサーのように両腕を構えた。

 

「こいつ……」

 

ミノタルモンは苛立ちを隠しきれずに歯ぎしりをした。

その時、頭上から小さな影が飛び降りてきた。

それはガジモンだった。

 

「『ガジモンクロ―!!』」

 

ガジモンの鋭い爪がミノタルモンの機械腕のパイプの一部を引きちぎった。

 

「なにっ!こいつっ!!」

「『パラライズブレス!!』」

 

間髪いれずにギルモンが顔面に向けて空気弾を叩き込む。

ミノタルモンはその攻撃を反射的に機械腕で防いだ。だが、それは自分の視界を塞ぐことに他ならない。

そんな大きな隙を見逃すコアグレイモンではなかった。

 

「こっちもいるぞ!『コアフレイム!』」

 

コアグレイモンの口から放たれた灼熱の火球。それの直撃を受ければさすがのミノタルモンでも危ない。ミノタルモンは舌打ちをしながら両腕で防御姿勢を取った。

だが、アグモンだった時とは攻撃力の桁が違うのだ。攻撃を受けたミノタルモンは大きく仰け反り、わずかに後ずさった。

 

「ぐっ、ぐうぅうううう!」

 

ミノタルモンは苦々しげな表情で自分の機械腕に目を向けた。度重なる攻撃に一部の動力パイプは歪み、フレームの何本かが熱で一部融解していた。

 

「やぺぇな、こりゃ……」

 

ミノタルモンの額に玉の汗が浮かぶ。

ミノタルモンとコアグレイモンのパワーはほぼ互角。しかも、ガジモンがちょっかいをかけようと虎視眈々と狙っているのだ。他のデジモン達もダメージが抜ければすぐに参戦してくるだろう。その中でコアグレイモン相手では勝ち目が薄い。

 

「ちっ!ここは引くか!『ダークサイドウェイク』」

 

ミノタルモンは衝撃波で地面の土を巻き上げた。

砂塵が吹き荒れ、コアグレイモンはすぐさま太河を庇う。そして、砂埃が落ち着いた時には奴の姿は消えていた。

 

「……行った……かな?」

 

大河が恐る恐る周囲を見渡す。

コアグレイモンも鼻をひくつかせて周囲の様子を探るが、その風の中にミノタルモンの気配は感じとれなかった。

 

「うん、ミノタルモンは近くにはもういないと思う」

「そうか。よかった」

 

太河はコアグレイモンの足から数歩あとずさり、改めてコアグレイモンの巨体を見上げた。

 

「えと……一応……アグモンだよね?」

「うん!でも、今は進化してコアグレイモンだ」

 

『進化』

 

コロモンからアグモンに進化した時も驚いたが、今回はそれ以上の驚きだった。

デジヴァイスを取り出して図鑑を開いてみると、コアグレイモンのデータが追加されていた。

 

「コアグレイモン……成熟期……成熟期?」

 

コロモンは幼年期。

アグモンが成長期。

そして、コアグレイモンが成熟期。

 

これが進化の段階らしい。

 

「もしかして、まだ上の段階とかあるの?」

「うん、完全体って言うんだ。でも、僕はこの島で完全体のデジモンなんて見たことない」

「そうなんだ……でも……どうして進化できたんだ?」

 

そう言うと、コアグレイモンは腕を組んで首を傾げた。

その仕草はやはりアグモンのままであり、同一人物(デジモン)であることは間違いないようだった。

 

「うぅん……なんでだろ?太河を守らなきゃって思ってたんだけど……でも、太河の『仲間を守って』ていう強い願いが、力と一緒に僕の中に流れてきた……それで、進化できたような……そんな気が……するような?しないような?」

 

そんなことを言っている間にコアグレイモンの身体が再び光り輝き、その大きさが縮小していく。

光が収まった時には、元通りの大きさになったアグモンが尻もちをついていた。

 

「あっ、戻っちゃった」

 

アグモンはそう言ってタハハと笑った。

太河はアグモンへと駆け寄った。

 

「アグモン、身体とか大丈夫?痛いところとかない?」

「うん、僕は大丈夫……って、僕のことより太河だよ!太河こそ大丈夫なの?ミノタルモンに酷い目にあわされて……」

「ちょっと……ここが痛むかな。でも大丈夫。アグモンが助けてくれたから」

 

太河は苦笑いを浮かべて左腕をさする。

生半可な痛みではなかったが、窮地を脱した今となれば耐えられないこともない。

 

「ありがと、アグモン」

「てへへ……どういたしまして」

 

そんな時、太河は後ろから足音が近づいてくる音を聞いた。

太河が振り返ると、少し汗をかいたシャオが小走りで駆け寄ってきてくれていた。

シャオは振り返った太河が元気そうな様子なのを見て、呆れたような苦笑いを浮かべた。

 

「ったく、無茶しやがって……大丈夫みたいだな」

「うん、なんとかね。他のみんなは?」

「こっちも大丈夫。皆に大きな怪我はない。ロバートがまた喚いていたがな」

「そっか……良かったぁ……」

 

太河は安堵のため息を吐き、その場にへたり込んだ。

そんな太河にシャオが手を差し出す。

 

「ほら、立てるか?」

「うん。あっ、イテテて……」

 

左腕のダメージが一番大きいが、それ以外にも複数の場所を痛めていた。

特に、肋骨に嫌な痛みが残っていて上手くシャオの腕を引き寄せられない。

 

それでもなんとか立ち上がるとシャオが肩を貸してくれた。

太河はその好意に甘えることにして、腕をシャオの肩に回した。

横幅のある体格かと思っていたシャオであるが、服の下は贅肉が少なく、随分と筋肉質な身体をしていた。

 

そんなシャオは太河に向けて怪訝な目を向けていた。

 

「ほんと、なんでお前はそうやって身体張るんだよ。マゾなのか?」

「好きでやってるわけじゃないんだけどね。他にいい作戦が浮かばないだけで……」

「今回のことだけじゃなくてだなぁ……まぁ、いいや」

「なにさ。途中でやめないでよ、気持ち悪い」

 

そう言った太河にシャオは軽くため息を吐いた。

 

「気にすんな。お前が底抜けのバカだって話だ」

「まぁ、かもね」

 

今回の太河にその評価を覆すだけの手札は持ち合わせがない。

行き当たりバッタリの作戦でたまたま上手くいったから良かったものの、一歩間違えば周囲を巻き込んで大変なことになっていた。アグモンが進化してくれなかったら本当に危なかった。

 

「ほんと……バカだよね」

 

落ち込んだようにそう言った太河。

シャオはその太河を見て、口の中だけで「めんどくせぇな」と呟いた。

シャオはこれ以上話を続けても良いことはないと思い、話題を切り替えた。

 

「それより。何か見つけたんじゃなかったのか?」

「あっ!そうだ!!忘れてた!シャオ!もう一度大樹のところに連れてって!」

「いいけどよ、何があったんだ?」

「いいから早く!」

 

太河はシャオに連れられ、再びウロの中へと足を踏み入れた。その底から新たに掘り起こしたもう一つの鞄。

太河はボロボロのそれを持ち上げる。腐葉土を払い、表面の汚れをできる限り落とした太河はそれを陽の光の下でもう一度確認する。

 

それは学生鞄と同じく、慶風学園の校章が入った小さな鞄。

 

水着を入れる為の水泳鞄であった。

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

太河が見つけた鞄の中身を龍禅寺と士ノ道の女子2人が確かめたところ、中には女性用の競泳水着と水泳道具が一式入っていた。水着袋は防水処置が十分なされていたおかげか、中の腐敗は比較的軽度ですんでいた。2人はその水着のタグに『織原』の名前が残っているのを見つけた。

 

やはり、この鞄は『織原 ミカ』のもので間違いないようだった。

 

薬師寺と士ノ道は2人でその事実を何度も確認した。

そして、最後にはこれが夢でないことまで確かめた上で、薬師寺は皆の注目を集めるように口を開いた。

 

「間違いありません。これは織原さんのものですわ」

 

彼女がそう言うと子供達の中から「お~」と歓声があがった。

薬師寺はその鞄の発見者である太河へと目を向ける。

太河はフローラモンに薬草で作った痛み止めの湿布を張ってもらっているところだった。

 

「瑠々川さん。お手柄でしたね。それにしても良くわかりましたね。もう一つ鞄があるなんて」

「確証はなかったけどね。でも、もし織原があの日、部活帰りに校舎裏からこの森に飛ばされたんなら、必ず水泳バックを持っているに違いなかったんだ。そしたら案の定だった。やっぱり、織原もここに来てるんだ」

 

太河がそう言うと、薬師寺も大きく頷いた。

 

「ええ、彼女がここに来ている可能性ががぜん高まりました。今後は織原さんの手がかりを追うことを優先します。私達より先にここに来ているのなら、彼女は何か知っているかもしれません。皆さんもそれでいいですわね?」

 

薬師寺に否定の声は入らない。

 

ただ、織原を追うのはいいとしても、それには大きな問題がある。そのことを太河が指摘した。

 

「けど、彼女がどこに向かったのかはわからないままだ。これからどうする?森の中を歩くのはやっぱり危険だし……」

「もちろん、今まで通り川を下りますわ」

「えぇっ!まだ歩くのかよ!!」

 

ロバートがブーイングをするが、薬師寺は毅然とした態度を崩さなかった。

 

「もちろんですわ。わたくしはまだここに人がいる可能性を捨てていませんのよ。人がいるなら、必ず水場の近くに生活しているはずです。なんでしたら、私は海まで歩くつもりですわ」

 

薬師寺の言葉にロバートは「海までだとっ!?」と悲鳴をあげた。

 

「冗談だろ!?だいたい、海までいったところで人が見つかるって保障はどこにもないじゃないか!!」

「でしたら、このまま同じ場所に留まるのですか?それこそ意味がありませんわ。それに、不可解なこともあります」

 

薬師寺はそう言って自分の腕をさする。

そこはミノタルモンの衝撃波に吹き飛ばされ、強く地面に打ち付けた場所であった。

服の下には太河と同じく、フローラモンからもらった湿布が塗られていた。

 

「先程のミノタルモンは……私達を探しておりました。そうですわよね」

 

薬師寺の問いに太河は頷く。

 

「うん……『選ばれし子供達』……あいつは僕らのことをそう呼んでた」

 

『選ばれし子供達』

 

そのフレーズを聞き、渚沙が顎に手を添えて首をひねった。

 

「……私達は……選ばれた……誰に?」

「わからない。でも、ミノタルモンは僕らを選んだその『誰か』のことを知りたがってた」

 

その時、ロバートが両手を叩いて「わかったぞ!」と声を張り上げた。

 

「わかったって何が?」

「決まってるだろ!僕らが帰る方法だよ!!」

 

自信満々といった顔をするロバートであるが、周囲はあまり期待はしていなかった。

ロバートがどういった結論に至ったのかなんとなく察していたのだ。

 

「僕らを選んだ奴をミノタルモンより先に見つけ出すんだ。そんでもって、こっぴどくとっちめてやって、帰る方法を聞き出すんだ。なぁに、心配するな!僕のこの渾身の右アッパーを叩きつけてやれば誰だって話したくなるだろうさ!」

 

そう言って気障(きざ)な笑みを浮かべるロバート。

そこに向けて士ノ道があからさまにため息を吐き出した。

 

「なんだよ!僕の案にケチつける気かよ!」

「別にそうではない。だが、あまりに短絡的だと思っただけだ」

「なんだと!!」

「そもそもだ!」

 

まだ何かを言おうとしていたロバートを士ノ道が鋭い声で封じた。

 

「そもそも、私達を呼んだ『誰か』とは誰だ?どうやって探す?」

「そりゃ……それは……えと……」

「わからないのなら、そんな相手を探すより、容姿のハッキリとしていて、確実にここに来ていることがわかっている織原を探すのがまだ賢明だ」

 

堂々と言い切った士ノ道。だが、ロバートはそのまま黙り続けたりはしなかった。

 

「でも、織原の奴が帰る方法を見つけてる訳がないじゃないか!見つけてたらとっくに帰ってきてるはずだろ!?それよりもこの事件の元凶をとっちめる方がよっぽど建設的だ!」

「それは……」

「ほら見ろ!いいか!僕は一刻も早く帰りたいんだ!帰るための最善を尽くすことの何が間違ってるんだよ!」

 

ヒートアップしていきそうなロバートと士ノ道。

太河はこれ以上問題になる前に話を纏めることにした。

 

「別にどっちかに絞って探す必要はないんじゃないかな」

「ん?どういう意味だ?」

「『僕達を呼んだ誰か』にしろ、『織原ミカ』にしろ、とにかく俺達は『人探し』をしなけりゃならない。だったら、水場である川沿いを行く選択は間違ってはいない。森の中は見通しが悪くてミノタルモンに奇襲されるかもしれないし」

 

太河の意見にロバートと士ノ道が押し黙る。

ただ、ロバートが口を閉じたのはほんの一瞬のことにすぎなかった。

 

「……そうだよ。僕はそれが言いたかったんだよ」

 

ロバートが不貞腐れたようにそう言った。

 

「僕だって同じことを言おうとしたんだ。だけどそれを士ノ道が勝手に遮るから最後まで言えなかったんだ。僕は最初からそう言おうとしたんだからな!」

 

先程まで川を下ることに反対していたロバート。彼の掌の回転の速さには驚くばかりだ。

そんなロバートの態度に太河は苦笑いを浮かべるにとどまったが、口論の相手をしていた士ノ道は露骨に眉間に皺を寄せていた。

 

彼女は元々曲がったことが嫌いな性格だ。その上にこのサバイバル生活でストレスが溜まっている。

ロバートの小さな負け惜しみでさえ、今の士ノ道には過剰なまでに神経を逆なでしてしまう。

 

士ノ道は感情に任せて、口を開きかけた。

 

「士ノ道さん」

 

それを制するように太河が静かに言った。

 

「士ノ道さん……今はやめよう……」

 

太河はゆっくりと首を横に振る。

 

「………………」

 

これ以上は口論をしてはいけない。

 

この広場に残っていてはミノタルモンがまた戻ってくるかもしれない。言い争いの声が危険なデジモンを呼ぶかもしれない。

 

耐えてくれ、と太河の目が訴えていた。

 

「くっ……」

 

士ノ道は感情をなんとか飲み込み、この場で沈黙を保った。

ただ、握りしめた両拳の震えがその憤りを物語っていた。

太河は引き下がってくれた士ノ道に軽く頭を下げつつ、安堵のため息を吐き出した。

 

そして、その場をまとめるように明るい声を出した。

 

「……というわけで、僕は薬師寺さんの『川を下る』っていう意見に賛成だ。他のみんなは?」

 

太河はそう言って周りを見渡す。

 

「……いいと思う」と、渚沙が頷いた。

「俺も異議なーし」と、シャオが気の抜けた返事をした。

「うん、僕もそれがいいと思う」と、鐘山も賛成した。

 

全員の意見がまとまったところで、太河は大きく伸びをして身体を起こした。

 

「それじゃあ、改めて川のところに戻ろっか。でも、今日はもう進むのはやめておきたいな。身体中がバッキバキだよ。薬師寺さん、勘弁してくれない?」

「……そうですわね……デジモン達も疲れていますし、今日はもう川辺でキャンプとしましょう」

「ええっ!また野宿かよ!いい加減ベッドで寝たいよ……」

 

ロバートの泣き言にまた薬師寺が叱り声をあげ、またもや太河がそれを収めつつ、彼等は川岸の方へと戻って行った。

 

そんな彼等の最後尾を歩いていたシャオ。

彼は置いていくことになった『織原 ミカの鞄』をもう一度振り返った。

 

「…………」

 

ガジモンがそんなシャオに気が付いて足を止める。

 

「ん?どうしたんだシャオ?また、変な顔になってるぞ」

「変な顔って言うな。考え事してたんだ」

「にははは、そいつは失敬」

 

ガジモンはシャオの身体に駆けのぼり、シャオの肩に自分の顎を乗せた。ガジモンはシャオと同じ目線に立ち、その視線を追う。

 

「やっぱ、あの鞄を見てたのか?なぁ、シャオ。何がそんなに気になるんだよ?」

「気になる……っていうか……なんていうか」

「曖昧な言い方だなぁ」

「俺もよくわかんねぇんだ。気にするな」

「ふぅん……」

 

シャオはガジモンの頭をガシガシとなでて、ため息を吐きだす。

だが、結局その疑問点を口に出すことはせず、シャオは他の皆に遅れないように歩き出した。

シャオが考えていたことはただ一つ。

 

『あの鞄はポリエステルだ……バクテリアが分解するような素材でできてるわけじゃない……そんなポリエステルが1か月そこらであそこまでボロボロになるもんか……ありゃまるで……数年……いや数十年は経過した後のように見える……いや……でもまさか……』

 

シャオは腹の底に腑に落ちないものを抱えながらその場を後にした。




~~~ ♪ ~~~ ♪ ~~~ ♪ ~~~ 

たどり着いた海。
人の気配のしない海岸ではあったが、人工物が見つかった。
人間の手がかりにはしゃぐ彼らを水中から赤い瞳が睨みつける。

海に投げ出された仲間を救うため、身を挺して危険を背負う善久。
パートナーの危機に大海蛇がその姿を顕現する。

次回、『海上戦線!シードラモン!』

今、終わらぬ冒険譚が始まる。

~~~ ♪ ~~~ ♪ ~~~ ♪ ~~~ 


皆さん、どうもこんにちは
今回は遂にオリジナルデジモンが登場しましたのでもう一つコーナー追加です。


≪今週のデジモン≫

コアグレイモン
成熟期 ワクチン 恐竜型
必殺技
・バーンフレイム
得意技
・クロウナックル
グレイモンの亜種とされるデジモン。前腕を覆う鉄鋼や強化された頭部外殻など、より守備に特化した進化を遂げた。必殺技の『コアフレイム』は複数の火球を一斉に放ち、広範囲を攻撃できる優れた技だ。肉弾戦も得意で、拳の攻撃は立ちふさがる敵を粉砕する。


主人公のパートナーですけど防御型。
イメージでは普通のグレイモンよりずんぐりしており、よりゴジラに近い重厚感のある感じです。腕の補強プレートは剣道の小手を簡略化したもの、頭を覆う金属板は細長い鉄板をX型に張り付けています。

本当は絵で説明したいんですが、絵心がなくてすみません。

今後もオリジナルデジモンが出てきた時にはこういう感じに説明していきますのでよろしくお願いします。
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