デジモンエタニティ   作:LOST

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到着!ここは一体どこなんだ!? Cパート

「デジタルモンスター。略してデジモン」

「デジ……モン?」

「そうだよ、僕達デジモン」

 

太河達は『わけがわからない』とお互いの顔を見合わせて眉間に皺を寄せる。

 

そんな時、森の中から非常に情けない声が聞こえてきた。

 

「パーーーーーパーーーーー!」

 

その声の方を向くと、森の中から疾走してくる二人の人影があった。

金髪碧眼のロバート・アットマンと大きな体の鐘山 善久(よしひさ)だった。

 

「鐘山!そ、そいつをおっぱらえよ!」

「で、でも……」

「そうそう、こっちはロバートを待ってたんだべ。いつまでも付いてくべ~」

 

鐘山は二匹のデジモンを抱えてロバートを追っている。ロバートはそんな鐘山から逃げるようにしてこっちに向かってきていた。ロバートは太河達を見つけ、泣き出す一歩手前のような有様で滑り込んできた。

 

「ああ、お前ら!いいところに、こ、こいつらを追い払え!」

 

ロバートはあろうことか一番前手近にいた太河を盾にするように後ろに回り込んだ。

それを見て、シャオがこれみよがしにため息を吐きだした。

 

「やっぱこいつもいるよな」

 

やれやれと首を横に振るシャオ。

ロバートはそんなシャオには目もくれず、震える手で鐘山の方を指さした。

 

「て、転校生!こいつを追っ払えば!ぼ、僕の右腕にしてやるぞ!!」

「瑠々川だ!瑠々川 太河!!それに、ロバートの右腕にはなりたくない。何を掴まされるかわかったもんじゃないからな!」

「な、なんだと!!」

 

そんなロバートに向かって鐘山の腕に抱えられたデジモンの一体が飛び出した。

そのデジモンはやはりコロモンのような球形で、全身に青と水色の縞模様の毛が生えていた。猫のような尻尾と耳を持ち、口の中からは小さな牙が飛び出している。

 

そのデジモンは太河の頭に飛び乗り、後ろにいたロバートを見下ろした。

 

「ロバート!あんまり人を困らせるもんじゃないべ!!」

「うわっ!うわっ!来るな!来るな!来るなってば!!」

「そういうわけにはいかないべ!オラはロバートのパートナーデジモンなんだべ!!」

「なんなんだよそれ!!お前なんか知らないよ!!」

「だ~か~ら~パートナーのワニャモンだって言ってるべー!!」

「助けて!パーーーパーーーー!!!」

 

パパを呼んでその場を走り回るロバート。ロバートは太河の傍を離れ、シャオやカヲルの周辺を走り回ってワニャモンと鬼ごっこをしている。

 

「この子たちは安全だよ。ちゃんと話をしてみろ?」

 

太河はそう言ったが、ロバートは聞く耳持たず。

 

「な、なにを!僕に指図するな!」

「隙ありだべ!」

 

ロバートの背中にワニャモンが飛び乗る。

 

「うわ!うわ!うわぁぁああ!パパーーー!」

「ああっ!もうっ!うるさいべ!」

「僕の肩にのるなよ!は~な~れ~ろ~!」

「やだべ!ここ、気に入ったべ」

 

引き離そうとするロバートとその手から逃れつつもロバートの身体を飛びはねるワニャモン。そんな一人と一匹に呆れた目を向けつつ、太河は鐘山に話しかけた。

 

「鐘山くん、君もデジモンを連れてるの?」

「えっ?ああ、うん。えと、デジモン?」

「ああ、この子たちのこと」

 

太河はそう言って足元のコロモンに手を伸ばす。コロモンはすぐさまその意図に気づいて、飛びはねるようにして太河の腕の中に収まった。

 

「デジモンって言うんだって。デジタルモンスターの略」

「ああ、なるほど……うん、僕の『パートナー』は……」

 

鐘山の小脇に抱えられているデジモンは身体に似合わぬ大きな角をつけたデジモンだった。

 

「ツノモンです。善久(よしひさ)のパートナーです」

 

丁寧に頭だけでお辞儀をするツノモン。随分と礼儀正しいデジモンだった。

鐘山とツノモンの落ち着いたコンビの隣ではロバートが再び声を張り上げていた。

 

「それで、ここはどこなんだ!」

 

それに答えたのは肩に張り付くことに成功したワニャモンだ。

 

「だから、ここはデジタルワールドだって言ってるべ!デジタルワールドのファイル島だべ」

「お前は黙ってろ!」

「いやだね、オラはオラの好きなように喋らせてもらう!」

「なんだと!?お前なんかパパにかかればあっという間に……あっという間に……」

「あっという間になんだべ!?ほら言ってみろ!」

「う、うるさい!!うるさい!うるさい!」

 

がなり合うロバートとワニャモンを放置して、太河達は今後のことを話し合っていた。

 

「とにかく、ここにこれだけの人がいるってことは渚沙や薬師寺さんや、士ノ道さんも必ずどこかにいると思うんだ。ますは彼女たちを探した方がいいと思うんだけど……どうかな?」

 

太河の提案にシャオが真っ先に頷いた。

 

「いいんじゃないか?遭難した時は動かないのが鉄則だが……もうあのゴリラに追っかけまわされた後だから今更だ」

 

シャオがそう言うと、鐘山が眉をひそめた。

 

「……え?ゴリラ?」

「鐘山は出会わなかったか?そいつ幸運だな。ロバートがあんだけ叫んでるからお前らも追っかけまわされたのかと……」

 

そこまで言って、シャオが何かに気が付いたかのように口を噤んだ。

 

「シャオ?どうかした?」

 

太河の目の前でシャオの顔からみるみるうちに血の気が引いて行く。

そしてシャオは震える唇で呟くように言った。

 

「な、なぁ……あれ、やばくねぇか?」

 

シャオは誰に話しかけたわけでもなく、周囲にそう言った。シャオの表情は既に引き攣っており、真っ青だった。

 

シャオは何に恐怖しているのか?

 

太河はシャオの視線の先を追う。

 

その方向の森が揺れていた。

 

木々が揺れ、倒され、そしてメキメキという破砕音が近づいてくる。

そして、『それ」を証明するかのような雄叫びが聞こえてきていた。

 

聞き間違いようがない。

 

ゴリモンの吠え声だった

 

太河は咄嗟に声を張り上げた。

 

「皆!走れ!!」

 

シャオが真っ先にゴリモンのいる方向に背を向けて走り出した。

 

「え?え?なに?なんだ?」

 

こういう時に察しが悪いロバートだ。

 

「ロバート!早く!!」

 

立ち止まるロバートの背中を鐘山が無理やり押し込む。

 

「遊んでる場合じゃねぇべ!いそげぇ!!」

 

ワニャモンも気づいたのか、ロバートの肩から飛び降りて、背中に体当たりをぶちかました。

 

「いてっ、なにすんだよ」

 

その直後だった。

 

「ぐぁぁぁああああぁぁぁあああ!」

 

白い体毛の巨大なゴリラが木々をなぎ倒して現れた。ゴリモンに間違いない。

それを見て、ロバートが飛ぶように逃げだした。

 

「うわ!うわ!うわぁ!なんだあれ!!助けてーーー!」

 

太河もデジモン達と一緒に走り出す。

 

「パーーーパーーーー!パーーーパーーーー!助けてーーー!!」

「ああもう!逃げ足だけは早いべ!!」

 

ワニャモンの言う通り、ロバートは逃げ足だけは一級品のようだ。ロバートは一気に加速し、シャオまでも追い越して先頭を走っていた。

 

「うぉぉおおおおおぉお!」

 

耳をつんざくゴリモンの吠え声に太河は思わず耳を塞ぐ。

 

「ねぇ、コロモン。あのゴリモン、なんかさっきより怒ってない?」

「みたいだねぇ!!」

 

森の中を走る太河達。その中で鐘山の足の回転速度を落ちていた。遅れていた太河と並走するぐらいまで減速している鐘山。太河はその彼に声をかけた。

 

「鐘山君!どうかした!?怪我でもした!?」

 

このままでは太河より遅れてしまう。

だが、当の本人はというと手元で携帯電話を操作していた。

 

「成熟期、データ種、獣人型……必殺技はパワーアタック」

 

鐘山がそう呟く。

 

「えっ、なにそれ!?」

「奴のデータだと思う……」

 

鐘山はそう言って携帯をポケットにしまい込む。

ゴリモンに追われ、かつツノモンを小脇に抱えている鐘山。そのはずなのに、彼にはさらに端末を操作する余裕まであるらしい。

 

「それで、どうすればいい!?」

「ど、どうしようか?」

「どうしよっかねぇ!」

 

どちらにせよ、走って逃げる以外の選択肢がない。

その時、前の方からシャオの鋭い声がした。

 

「おいっ!止まれ!!」

「うわっと!おと、おととととと!!」

「くそが!世話かけんじゃねぇよ!!」

 

ロバートとシャオのやり取りが前の方から聞こえてくる。

太河と鐘山は目の前の茂みを飛び越えた。

 

そこは森の切れ目だった。足元が土の地面から岩場に変わっていた。そこでシャオが立ち止まっていた。

彼等の目の前には激しい勢いで川が流れていた。泥で茶色く濁った水が白波を立たせて荒れ狂っている。とてもじゃないが、泳げるような勢いではない。

 

シャオは川に落ちそうになっていたロバートを引き戻したところだった。

 

「お、おおお、落ちるとこだったじゃないか!もっと早く声かけろよ」

「てめぇは礼も言えねぇのかよ!」

「う、うううううるさい!って、うわ、来た!!」

 

ロバートの恐怖で怯える視線の先。怒り狂ったゴリモンがその両腕を振り上げて森から飛び出してきたところだった。

 

「ぐぉぉおおおおおぉおぉおお!」

「ぱ、パーーーパーーー!」

 

ロバートが涙目に叫ぶ。その声にゴリモンが反応した。右手の大砲が構えられる。

そこに収束する光は一度見たら忘れられない。太河の頬に一筋の汗が流れ落ちた。

 

「『エネルギーカノン』」

 

赤く光るエネルギー弾が打ち出される。

 

「危ない!!」

 

鐘山が咄嗟にロバートに飛びかかった。

鐘山がロバートを押し倒した直後、さっきまでロバートが立っていた場所を『エネルギーカノン』の光弾が通過した。

 

光の弾丸は川の中に着弾し、巨大な水飛沫を吹き上げた。

 

「なにすんだ鐘山!痛いじゃないか!」

「ご、ごめ……」

 

ロバートは自分がどんな危機にあったかまるでわかっていないらしい。

だが、太河達にもそんなロバートに構っている余裕は既になかった。

 

「いいから早く立て!!」

 

太河が声を張り上げるも、ロバートは腰を抜かしたまま後ずさるだけだ。

 

「……あ、あああああ!ご、ゴリラが!ゴリラが!!」

「ロバート!立てって!」

「あ、あああ……助けて!パーーーパーーーー!」

 

ロバートは尻もちをついたままパパと連呼するばかり。

その声がまたもやゴリモンを刺激する。

 

「ぐぁああああおおおおおおおお!!」

 

ロバートは動けない。

 

どうすればいい?

 

戦う?このゴリラを相手に?

逃げる?どこに?目の前には激流。他の方向に逃げようにも、森も茂みもないこんな場所じゃ無理に決まっている。

 

太河の中に一瞬、自分だけなら逃げきれるかもしれないという考えがよぎった。

ゴリモンの注意はロバートに向いている。彼を囮にすればもしかしたら上手く森に駆け込めるかもしれない。

 

そもそもムカつく奴だ。築いてきた関係性だって薄い。本気で死んで欲しいとまでは思ったことはなかったが、だからと言って切り捨てるのに必要な覚悟は薄い。

 

ここで逃げ出したところで目撃者は少数だ。

それにここにいる2人なら無暗に言いふらすこともないだろう。

誰も僕を責めたりはしない。

 

やるか?やってしまうか?やるなら今しか……

 

 

 

 

その刹那。

 

 

 

 

 

カランと音がした。

 

聞き覚えのある音だった。

 

その音が太河の中の緊張感を一瞬だけ途絶えさせた。

太河の意識がゴリモンから離れ、その音の方に引き寄せられる。

太河は何も考えることなく、当たり前のように音のした方向を向いた。

 

「あ…………」

 

そこに落ちていたのは太河が腰に結んでいたはずの水泳用のゴーグル。

それが、石の上に落ちて音を立てたのだ。

 

それは、太河の御守り。

それは、太河が幼い頃に引っ越しをする時に受け取った宝物。

それは、自分が愛用していた白い手ぬぐいを交換したもの。

 

交換した相手は『織原 ミカ』

 

『斜に構えてしかめっ面なんてらしくないんだから』

 

どこからか、声が聞こえた気がした。

 

ギリ、と奥歯が鳴った音がした。

 

太河は胸の中に熱く燃えだした感情に従うように行動を起こす。

ゴーグルを拾い上げ、素早く首に通し、隣に落ちていた木の枝を拾い上げる。

 

太河はその枝を両手で握り、身体の真正面に構えた。

 

この構えこそ太河が最も集中できる姿勢だっだ。

 

剣を構え、相手を真正面に据え、精神を目前の事象に統一する。

 

太河が幼い頃から身体に叩き込んできた姿勢。

腕の怪我で諦めざるおえなくなった、太河の道。

 

それは『剣道』

 

こんなものがゴリモンに通用するとは思っていない。

 

だけど、日々繰り返してきた姿勢を維持することで頭に冷静な判断力が、心に不動の闘志が沸き上がってきた。

 

目の前に迫る巨体。太河は今にも逃げ出そうとする両足を無理やり踏みとどまらせ、一歩前に足を踏み出した。

 

後ろにはロバートと鐘山がいる。守るべき存在がいる。

助ける相手が誰であろうとこの際関係ない。

 

「見捨てたりするもんか……切り捨てたりするもんか……もう二度と……諦めたりするもんか!!」

 

斜に構えるなんざ、そんなの……

 

「僕らしくないんだ!!」

 

その隣にシャオが並んだ。

シャオは格闘技の構えを取り、ゴリモンに立ち向かおうとしていた。

 

「シャオ、どうして……」

「あん?お前が馬鹿なことしようとしてっからな……付き合うしかねぇだろ……友達やめた覚えはねぇしな」

「……ありがと!」

 

1人が2人になった。

 

それでも状況は決して変わらない。太河の身体の震えも止まらない。何もしていないのに息が上がる。吐き出した空気が震えていた。ついでに膝も震えていた。恐くて仕方なかった。今にも泣きだしてしまいそうだった。

 

だけど太河には自分を叱咤しながらも立っていられた。

腹に力を込め、足をさらに一歩前に出せた。

 

その直後だった。

 

太河達の目の前に小さな姿が割り込んだ。

 

「たいが!!たいがが戦うなら!だったら、僕らが……戦う!!」

「えっ!?コロモン!!」

 

コロモンが威嚇するようにその場で跳ねる。

それに続くようにシャオの前にパグモンが滑り込んだ。

 

「パグモン!お前!なにしてんだ!?」

「決まってんだろ!オイラがシャオをまもる!!」

 

そして、コロモンとパグモンは何の躊躇いもなしゴリモンに向かって飛びかかった。

 

「うぁああああああああ!」

「おりゃぁああああああ!」

 

太河達が止める間も無かった。

 

コロモン達は一気にゴリモンの前に飛び出した。

 

コロモンが泡を放ち、パグモンが噛みつこうとする。

 

だが、それはあまりにも無謀だった。

 

「うざってぇえええええ!うらぁあああああ」

「うわあぁああ」

「ぐああぁああ」

 

コロモンもパグモンもゴリモンの腕の一振りで吹き飛ばされる。

力の差はあまりにも歴然としていた。

 

「コロモン!」

「パグモン!」

 

太河とシャオはとっさに自分達のパートナーを受け止めた。

 

「コロモン!なにやってんだ!」

 

太河が抱き留めているコロモンは頭の耳のような触手で太河の腕をどけようとしていた。

まだ戦うつもりなのだとコロモンの全身が訴えていた。

 

「ダメだコロモン!お前達が勝てるわけないじゃないか!」

「でも……僕は……守らないと……たいがを護らないと」

 

その隣ではパグモンがシャオの腕から抜け出そうとその無茶苦茶に暴れていた。

 

「パグモン!やめろって!馬鹿野郎!なんで、そこまでやるんだ!」

「オイラは待ってたんだ!何年も……何年も……シャオを待ってた!!それで、やっと会えたんだ。だから……だから……」

 

太河達はデジモン達の小さな体をなんとか押しとどめようとする。

それでもデジモン達は正面のゴリモンへと立ち向かおうと暴れ続ける。

そんな太河達の目の前で、ゴリモンのエネルギーが再び腕に収束しようとしていた。

 

それを見たコロモンの瞳に覚悟の光が宿る。

 

「僕が……行かなきゃ!」

 

止めようとす太河の腕の中からコロモンが飛び出した。

パグモンの体がシャオの手をすり抜ける。

 

「行くなぁぁああ!」

太河が声を張り上げた。

 

「やめろぉおおお!」

シャオが吠えた。

 

2匹のデジモンは自分のパートナーを守るためにゴリモンの砲塔の前に躍り出る。

 

「コロモォォォォン!」

「パグモォォオオン!」

 

その刹那、太河とシャオのポケットの中で何かが強い光を放った。

 

【コロモン進化----】

【パグモン進化----】

 

 

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