透花散春   作:月見 栞

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 ホームに降りると、程なくして東京行きの電車はやって来る。

 運よく人の疎らな車両に乗り込んだ私は、荷物を席に置いて一息ついた。

 ふと気になって、ポケットから先程受け取った封筒を取り出す。

(……全く、妙なところで律儀なんですから)

 あの日のケーキは仮にも奢ると言ったのだから、気にする事はなかったのに。そう思いながら封筒を軽く振ると、違和感に気が付いた。

 

 おかしい。

 あの日のケーキ代はどう考えても小銭で済む金額の筈だ。

 

 なのに、封筒の中には四角く薄いものが入っている。

 

 妙な予感がして、震える指で封筒を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー中には、あの日預けたブロマイドが入っていた。

 

「…………え、」

 きちんとスリーブに入っているそれは、あの頃と変わらず美しい憧れの人を映していて。

 混乱する私の膝に、ひらりと紙が着地する。

 

 拾い上げたそれは、折りたたまれた便箋だった。

 

 反射的に私は、それを広げる。

 

 案の定それは、手紙だった。

 

 

 

 

 

『ダイヤへ

 

 この手紙を読んでるってことは、もうあのブロマイドは見てくれたのかな?

 私もダイヤも、千歌がAqoursを復活させてから大忙しで、これの約束を忘れてて。

 荷造りをしてる時にこれを見つけて、折角だから手紙と一緒に渡そうと思って、こうやって渡すことにしました。

 

 あの時のダイヤは本当に辛そうで、悲しそうでーーしかも、そうしたのは殆ど私のせいだったから、すごく後悔したんだ。どうにかしてあげたいけど、どうしたらいいか分からなくて、苦しかった。

 結局、ダイヤの望み通りAqoursは復活して、私達は何もかも取り戻してーーむしろ、あの頃の私達じゃ手に入れられなかったものまで手に入れることが出来た。

 思い立って行動した千歌はもちろんだけど。こんな風になれたのって、ダイヤが裏でたくさん動いてくれたからだって、改めて思うんだ。

 

 新生Aqoursとして、あとはAZALEAとして活動している時、ダイヤは本当に楽しそうだった。

 昔のダイヤみたいに、真面目で熱血で、でもちょっとお茶目なダイヤが見れてーー私、すごく嬉しかったんだ。

 だからね、これはーーダイヤの大切な宝物は、責任を持って返します。

 

 今のダイヤは絶対に、これを捨てる事なんてないって信じてるから。

 憧れも、大好きも、輝きも。

 みんな、今のダイヤは持ってるから。

 

 こんな私と、ずっと友達でいてくれてありがとう。

 Aqoursを復活させてくれて、私と鞠莉のことを気にかけ続けてくれて、ありがとう。

 私はダイヤと友達になれて本当に、幸せだったよ。

 

 じゃあね。

 

 

 

                                       松浦果南』

 

 

 

 

 

 

「…………っ、……」

 

 無色の花弁がはらはらと散る。

 押し寄せる感傷と記憶に、嗚咽の1つも追いつかない。

 

 

 

 英雄のような、人だった。

 大らかで勇敢で、強い人。

 

ーー私の、大切な親友。

 

 

 

 視線を上げる。

 春の空は、彼女の愛した海のように、青かった。

 

 

 

 

                                     fin.




これで最後です。
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