少しずつ書きます。
本当はあとがきとか活動報告のおまけとかにしたかったのですが、ネタが増えそうだったのでこちらに。
多分本編アニメでは描かれないような子の不可思議な話が増えそうです。
「ホーリックシュー!! 頑張って!!」
十重二十重の国旗の前、名を呼ばれたウマ娘は飛び上がって応援への返事をしていた。
「任せて!! わたしが勝って、キーウィの名を知らしめてやるんだから!!」
「ホーリックシュー!! がんばえ!! がんばえ!!」
仔ウマ娘たちが遠ざかる彼女の尻尾を追うように黄色い声の声援を叫び続ける。
手をブンブン振って大きな声で満面の笑みで声援に応えていく。
「一番でビューンと走って、でもって!! 一番取って帰ってくるから!!」
空港に詰めかけた仲間達に手を上げて、決戦の地へと飛ぶ。
飛行機へと向かう搭乗口、声援の最後を聞ける場所に敬愛するウマ娘が立っていた。
ブルネットのミドルヘアー、翠の瞳に優しい笑みで。
「ファーラップ……さん、私…….頑張ります」
キーウィと中大陸を代表し大陸遠征に向かったことのあるファーラップは、遥かな後輩であるホーリックスの見送りに来ていた。
自身の遠征は残念な結果に終わり、それが元で大陸と喧嘩になった有名ウマ娘でもある。
「ホーリックス、キーウィは昔からたくさんのウマ娘がいるけど国は小いしオセアニア全体を見てもレースで名を挙げたウマ娘も少ない。だからねきっと島国のウマ娘さんも大陸からくるウマ娘さんも貴女のことなんてしらないと思うわ」
消極的、ナイーブとも取れる言葉に強張る顔のホーリックス。
その頬を姉とも慕うファーラップが両手で包む。
「これはチャンス、貴女知らない者達にその脚を知らしめてあげなさい」
状況は「負」ではないと輝く瞳に、感極まり唇を噛むホーリックス。
「はい!!」
オセアニアの希望ホーリックスは此の年島国開催のJCへ招待され今向かう。
洋々と飛行機に乗る彼女に惜しみない声援を送った仲間達、ヘースティングズのウマ娘達は機内に消えたホーリックスの姿に少しの不安を見せていた。
「頑張って……ホーリックス」
ファーラップの優しい顔に困ったような笑顔を見せる。
大勢のウマ娘やキーウィ人が手を振りホーリックスを応援し、ホーリックスも満面の笑みと大きな声で答えながら機内へと消える。
「ホーリックス……気負わず自分らしく走るのよ。貴女は強い仔だから……きっと」
心に言い聞かせるような言葉を胸に、ファーラップは彼女を心配していた。
「ああでも……大丈夫かな、あの子……元気に見せているけど……」
「うっうっう……さみじいよぉ、一人はいやだよぉ……」
耳をペタンと頭隠して体ははみ出ているが、戸棚に張り付くように座ったホーリックスは、震えながら泣いていた。
ここは島国、トレセン学園外来ウマ娘のために用意された部屋がある寮。
ホーリックスはレース当日までをここで過ごすことになっていたが、最初の1日目から泣き続けていた。
空港にきたお迎え、外来ウマ娘をもてなす宿泊施設兼寮の長と呼ばれるウマ娘の前では笑顔だった。
自分を見る島国の人達の前でも笑顔で手を振って見せ、握手に応え、トレセン学園から歓迎と称した複数の生徒とトレーナー達の挨拶にも率無くこなし、部屋に戻ったところで突然寂しくなってしまった。
プライベートが守られる一人部屋だが、故にすべてを遮られた孤独の世界とも言える。
ポツンと隔絶されたドアの前で、張り詰めていた気の糸は切れ、そのままペシャント座り込んでいた。
思い返せばキーウィからはこの国はとても遠い、気象も真逆で暖かかった故郷とは打って変わって寒いのに驚いた。
同じ夏冬があったとしても、寒さに柔らかさを感じないのは初めてだった。
「うぇぇぇぇぇん、えぇぇぇぇぇん、ざみじぃよぉおおお」
ホーリックスは寂しさが募りすぎて部屋から抜け出していた。
たった1人の部屋の中に居続けるなんて無理だった、1も2もなく、キーウィの仲間の声が聞きたい。
ここでは聞きなれない言葉ばかりが流れて自分は果てしなく独りだと実感してしまう。
壁で隔絶された部屋に居続けるより、何かわからなくても声のする場所に居たくて部屋を後にしたが、初めての場所で電話を探すのは不可能だった。
あっという間に砕けた心で、今度は廊下に座り込み泣いていた。
手に持った化粧用コンパクト、開いた鏡で涙でくしゃくしゃになった自分を見て。
「泣いじゃダメ、がんばるゥ゛のぉ、がんばるの、ホーリックスがんばるのぉ」
自分相手に自分を励ますという最終手段に入ったところで、その声はかかった。
「うわぁどなんしたん? びっくりやでって……なんや招待ウマ娘さんか? 部屋わからんくなったんか?」
涙で暮れるホーリックスへと声をかけたのはタマモクロスだった。
寮の1階、小さなコミニティールームのソファと戸棚の間でうずくまっていたホーリックス。
小腹を空かせて自室から降りてきたタマモクロスは間接照明だけになっている部屋の中で細くもぼそぼそと聞こえねお経のような声におっかなビックリ近寄り彼女を見つけていた。
「お化けかおもったやんか、って、どうしたんや、なんで泣いてるんや?」
「泣いでないよぉ」
言われると恥ずかしい、体育座りでベソかいていたホーリックスは静かに立ち上がると振り返って。
「泣いでないりすぅ……」
「いや、泣いてるって自分めっちゃ泣いてんで」
「泣いでないよ、ルームがわがんながっただげなのぉぉぉ」
一生懸命繕った顔、なんとか決めたいところなのに涙が全然止まらない。
後から後から滝のように出る涙で、目をカッ開いてみせるホーリックスの顔は滑稽すぎる。
タマモクロスは若干吹き出しそうになりながら、来ていたチャンチャンコで口を隠して。
「うそやん、めっちゃ泣いてるやん自分。それに部屋わからへんなっとるやんけ」
笑そう、でもこの声はどこか暖かい。
鼻をつーんと啜ったホーリックスは自分をおくってくれた仔ウマ娘達を思い出し、まだ涙が溢れて。
「泣いでないのぉ……たたざみじいの……」
あれほどの大声援に押されてここに来たのに、右も左もわからないこの土地で寂しくて仕方ない。
止められない涙と同時に本心もだだ漏れになっていた。
「さみしいんか?」
「寂しいよぉ、だってこの国の人誰もしらないし、私のこと誰もしらないし……誰も……1人も私を応援してくれないし」
誰もいない、それは寂しいこと。
タマモクロスも自らの身の上に重なるものがあった。
鄙びた田舎から華やかな東京トレセン学園にやってきた。
強気で腕を奮い故郷を後にしたが、その実心細くてたまらなかった日々があった。
ましてや遠く離れた世界の端からきたウマ娘、一人で遠くに行くのは心細いに決まっている。
気持ちは痛いほどわかる。
「だったらうちが応援したるわ!! ほれこれで1人必ずいるっちゅーことやで」
海外から来たのなら言葉も異なる国から来たのなら、その寂しさは何十倍にもなって当然だ。
「タマモン、ありがとぅ」
こうしてホーリックスは日本で最初の友達を得てレースに向かうことになった。
まあね、逃げてるわけですライスから。
でも少しずつ書いてるし社会人にしてはまあまあ時間も作っているほうです。
最近刑事ドラマにはまっています。
早く2期が来ないと事切れそうですよ、お願いします!!