ヒカルは、今自分の夢にいる意識を自覚した。
『ヒカル』
ゼアスが彼を呼んだ。白い夢の世界で、いつの間にか自分と同じ大きさのゼアスが目の前にいた。ということは。
「今回は休眠状態にならないんだね」
前回まではゼアスは力の回復に専念しなければならないほど弱った状態だったが、今は違うということ。
『うん、初代ウルトラマンさんのおかげで力が戻ったんだ。送ってもらった光がかなりのエネルギーだったみたいだね。だからこれからはいつでも話せるし全力の力を貸せるよ』
「よかった」
ゼアスの力を使えることよりも、ゼアスが回復して元気になったことの方をヒカルは喜んだ。
『君が強くなる邪魔はしたくないけど、ボクをいつでも頼ってくれていいよ』
「ありがとう」
ヒカルは、少し安心した。
そうして、夢から目覚める。
目を開けると、見慣れた天井。自室のベッドで寝ていた。
窓の外は暗い。ゼットンを倒した後、すぐ家に帰りベッドにぶっ倒れたところで記憶は途切れている。
横に顔を向けると、知らないおじさんが漫画を読んでいた。
「はあ!?」
跳び起きる。
おじさんが漫画から顔を上げて彼を見た。
「ああ、起きたのだな」
「いやそんな自然な対応されても! あなた誰ですか!?」
「ワタシはウルトラマンだ」
「…………」
まじ? とヒカルは間の抜けた意識で思う。
確かにウルトラマンは、多分誰でも人間体になれる。
『ヒカル、彼は確かに初代ウルトラマンさんだよ』
そしてゼアスの
「まじか」
「滞在させてもらうといっただろう」
「でもまさか僕の家に来るなんて……」
そのうえ漫画読んでるなんて。
初代ウルトラマンさんは漫画を閉じ本棚に仕舞って言う。
「では、今までの経緯を話そうか」
それは聞きたかったので、ヒカルは黙った。
「恐らく、ベンゼン星人はブルトンと融合している」
「な!?」
『やっぱり、そうでしたか』
「ゼアスは知ってたの?」
『知っていたわけじゃないよ。でも推測はしていた。ベンゼン星人は空間に干渉していたからね』
初代ウルトラマンは、ブルトンと因縁がある。原作初代ウルトラマンで、ウルトラマンはブルトンと戦った。
その怪獣の異名は、四次元怪獣。その名の通り四次元に干渉する能力を持つ。もっと分かりやすくいえば空間を操る能力だ。いわゆる何でもありな、最強怪獣の一角である。
「でもどうして初代ウルトラマンさんはそれを知っていたんですか?」
「少し待ってくれ。その初代ウルトラマンという呼び名は、長すぎる。だからマンか、それかハヤタとでも呼んでくれ」
「ハヤタって、一体化していた変身者の方の名前ですよね?」
「ああ、そうさ。ワタシ固有の名前がないので、ハヤタから名を借りていることがある。この姿もハヤタのものだ」
そう言われてみれば、原作ウルトラマンのハヤタの容姿だと気づいた。
「そうなんですか。ならハヤタさんでいいのかな」
『ならボクもそう呼ばせてもらいます』
「ああ」
ハヤタは頷いた。
「それで、ワタシが何故知っていたかだったか。この前、ワタシはブルトンと戦っていた、瀕死まで追い詰めたのだが、奴は宇宙へと逃げてしまったのだ」
『つまりそのブルトンがベンゼン星人と融合したんですね』
「そういうことだとワタシは思っている」
「ベンゼン星人にそんな力あったっけ」
ヒカルは疑問に思う。
『なかったはずだよ。だけどベンゼン星人は、いつしかボクに強い恨みを抱くようになった。強い恨みでとんでもない力を使うようになる怪獣は結構いるんだ。ベンゼン星人はその執念でブルトンと融合したのかもしれない』
「そう、なんだ」
なら、ヒカルの知っているベンゼン星人よりも遥かに強大であると思っておいた方がいいだろう。ヒカルはそう身構えた。
『でも、だからハヤタさんの救援が間に合ったんですね』
何故初代ウルトラマンはあの奇跡的タイミングで現れることができたのか。
ウルトラマンが起こす奇跡以外にも、理由があったのだ。
ハヤタと戦っていたブルトンが逃げ、そのブルトンとベンゼン星人が融合したのだから、そのベンゼン星人と戦っていたゼアスの最も近くにいたウルトラマンが、ブルトンを追っていた彼だったのだ。
一番近くにいて助けを求められれば、それに応えるのがウルトラマン。助けに来れたのは必然だ。
「そういえば、今さらだけどベンゼン星人を直接叩けないの? というかそいつ
「ベンゼン星人は四次元空間を作り出し何処かに潜んでいるようだが、探し出すのは困難だ。探し当てる可能性がない訳ではないだろうが、すぐには不可能だろう。探している内に地球を狙われたら終わりだ」
「確かに」
『それに』
ゼアスはハヤタの言葉を継ぐ。
『あいつは多分、
「より悲惨なことって」
『問答無用で地球を破壊するか、今までよりも積極的に人を殺して回るかもしれない』
「それ、は」
やばいね、とヒカルは言葉を続けた。
「なにはともあれ、よろしく頼む」
「はい」
『共に地球を、人を守りましょう』
ハヤタが手を差し出してきて、ヒカルはその手を握った。ハヤタは頼もしく笑んでいる。
まだ問題は残っていて、不安は消えない。初代ウルトラマンが来ても不安はゼロにはならない。
それでも、頼りになる仲間が増えた。
なんだか、楽しくなりそう。ヒカルはそう思えた。
※
「悲しいです」
学校の昼休み、屋上へ来るなりひよこがそう言った。
「なにがそんなに悲しいんだい?」
「大切な髪飾りを無くしてしまったんです……」
ひよこはしょんぼりしていた。
ひよこの頭にいつもあった筈の、鳥のひよこ型の金色の髪飾りが無くなっている。
なんだかいつもあったものがなくて寂しいな、とヒカルは思う。
それに、大切な友達の、大切なものが失われてしまったのは悲しい。
「せっかく初代ウルトラマンさんが来てテンションアゲアゲでしたのに、テンションダダ下がりです……」
「テンションアゲアゲだったんだ」
なんとかしてあげたいとヒカルは思う。
「なくしたのはいつ?」
「昨日の夜だと思います……」
「確認した中ではいつまであった?」
「多分、昨日のお昼休みにトイレの鏡で見た時です……」
「ならその間の時間に落としたんだね」
「そうだと思います……」
「その間の時間は何をしてたの?」
ひよこは指折り考える。
「えっと、ゼットンが来て、ゼアスと初代ウルトラマンさんが倒したら家に帰って、ご飯食べてお風呂に入ったら、もう無かったです……」
「ということは、学校から――」
ひよこは、ヒカルがファイヤーゼットンに負けた時、その元へ走った。そして、ヒカルが倒れた場所は。
(わからない)
ヒカルはどこで自分が倒れたとか、そんなことは一々覚えていなかった。
しかしそれだと町中が捜索対象になってしまう。それはもう、見つけるのがほとんど不可能だ。
だから、せめて分かりやすいように絞った。
「学校から、ひよこちゃんの家までを探せばあるかもしれない」
「家の中は血眼になって探しましたし、登校中にも目を皿にして探しましたけど、ありませんでした……」
「もう一度探そう。僕も手伝うから!」
「でも、悪いですよ」
「そんなこと言わないで。友達でしょ。これぐらい手伝わせてよ」
「……はい」
ひよこは申し訳なく思いながらもこくりと頷いた。ヒカルの善意が嬉しかった。
そうして、放課後から二人は髪飾りを探し始める。
二人で必死に探した。
学校の廊下を、教室を、校庭を、街中の道路を、道脇の草木の間を。
様々な場所に目を向けて、探し続けた。
それでも、見つからない。
まったく、見つからない。
忽然と姿を消した鳥のひよこ型の、金色の髪飾りの、金色のきの字すら見えてこない。
ヒカルは沈黙のまま探すのは精神的に辛いだろうと思って、話しかける。
「そういえば」
「はい?」
「ハヤ――初代ウルトラマンさんが来てテンションアゲアゲって言ってたよね」
「今はそのテンションが懐かしいくらいですけどね」
「ゼアスのお嫁さんになるって言ってたけど、初代さんも好きなの?」
「別枠です。ゼアスはお嫁さんになりたくて、初代ウルトラマンさんは憧れです」
「そうなんだ」
(良かったねゼアス)
『ソウダネー』
ゼアスは軽く流した。ひよこの言うゼアスはヒカルが変身したゼアスのことだからだ。
いつしか、陽が落ちてくる。
もうすぐ日が沈み、夜になる。
ひよこの大切な髪飾りは見つからない。
「もう、いいですよ」
ひよこが柔らかい声音で、ついにそう言った。
「なんで、大切なものなんでしょ?」
「はい、でもいいんです。ヒカルさんは頑張ってくれました。ボロボロじゃないですか」
ヒカルは林の中に突っ込んだり、地べたを這いずってまで探していた。
「ドブの中に手を入れた時はどうなるかと思いましたよ」
ひよこは苦笑してから笑って。
「ありがとうございます。だからもう帰りましょう」
お礼を言って手を伸ばす。
「……うん」
そこまで言われたら、彼は無理に続けるのは逆に迷惑をかけてしまうと判断した。
「帰ろう」
「帰りましょう」
「でも、大丈夫?」
「大丈夫です」
そう言って、彼女は弱々しさを隠して微笑むのだ。
※
某日。
優日のお見舞いから家に帰った後、ヒカルはハヤタに手合わせを願っていた。
裏庭で対峙し、師事を受ける。
ヒカルは何度も投げ飛ばされた。
自分の攻撃が命中したと思ったら流されて、いつの間にか転がされてるのだ。
(やっぱり、強いなあ)
初代ウルトラマンの、裏付けられた確かな実力。
頼もしい。
それからも投げ飛ばされ続けたけれど、ヒカルは全然痛くなかった。怪我もない。
相応の技術がなければできない芸当だ。
(やっぱり、違うなあ)
ヒカルはただ感心して、憧れた。
そして、こんな風になりたいと、向上心も刺激された。
「ハヤタさん、僕に技を教えてください」
強くなりたい。強くしてほしい。その一念でヒカルは頼んだ。
「いいけど、付け焼刃に新しい技を得るよりも基本を鍛えた方がいい――と、まあ、そういう理屈は、ウルトラマンに言っても仕方ないか」
ハヤタは一つ息を吐き、ヒカルの目を見る。
「だが、そう簡単な覚悟で得られるとは思わないことだ」
「わかってます。だけどやってみないことには何も変わりませんから」
「良い心がけだ」
「いえ、なんか偉そうなこと言っちゃってすいません」
ヒカルは自分が偉そうに何かを言える人間だと思っていなくて、過ぎた発言をしたと感じる度に申し訳なさを覚えるのだ。
「では、何を望む?」
どんな技を使いたい? そんなニュアンスでハヤタは問うた。
ヒカルは考える。顎に手を当てて沈思黙考する。
(ゼアス、スペシウム光線は、確か覚えなくてもいいんだよね)
『うん。僕にとってスペシュッシュラ光線がそれだからね』
スペシュッシュラ光線はゼアスが初代ウルトラマンに憧れて編み出した技なので、ゼアスにとってのスペシウム光線のようなものなのだ。
それを知っていたヒカルは、だから教わるなら別の技だよね、とゼアスに確認を取ったのである。
「あと、選んだとしても相性もあるだろうから、覚えられるとは限らないぞ」
「それでもいいです」
ヒカルは考える。
そして思い至った。
「そうだ。あれにしよう」
※
ヒカルはぐっすりと眠る意識の中、夢を見ていた。
ひよこが彼の家のキッチンで料理をしている。
エプロンをつけて、鼻歌まで歌いながら。そのメロディーは"シュワッチ! ウルトラマンゼアス"だ。
ヒカルはテーブルに着きながら、その背中を味噌汁のいい匂いを嗅ぎながら見つめている。
はあい、朝ごはん出来ましたよー。そう言いながら柔らかい笑顔で振り返る彼女をぼーっと眺めて、ヒカルは幸せを感じる。そんな空間。
心休まる夢を、見ていた。
――ヒカル。
…………。
――ヒカル。
…………。
――ヒカル、起きるんだ。
なんだよ。
――もう朝だぞ。
今いい所なのに。
――朝食が冷めるぞ。
うるさいなあ。
――ヒカル。
しょうがないなあ、もう。
彼は、目を開けた。
「朝だぞ。起きるんだ」
目の前におっさんの顔があった。
ヒカルは寝起きのその光景に眉を顰める。
「ヒカル、おはよう」
「おはよう、ございます……」
『おはようございます』
まさか、おっさんに起こされるとは。いや、ウルトラマンに朝起こされる日が来ようとは。彼は思ってなかった。人生何が起こるかわからないものである。
(それ言ったらウルトラマンになって怪獣と実際に戦う方がやばいかな)
「顔を洗ってきなさい、朝食はできている」
あなたは僕の母親ですか。そんな言葉を飲み込んでヒカルは起き上がる。
ハヤタが部屋から出て行くのを追って、ヒカルは洗面所で顔を洗い、ダイニングに行く。歩いている内にもいい匂いが漂ってくる。
ダイニングに入ると、とても美味そうないい匂いだった。テーブルに着くと、目の前には朝食が並べられている。
「ウルトラマンおにぎりにウルトラマン焼き魚、そしてウルトラマン玉子焼き、ウルトラマンおひたし、ウルトラマン味噌汁だ」
「ウルトラマンつければいいと思ってない?」
「正確にはゾフィー兄さんおにぎり、セブン焼き魚、ジャック玉子焼き、エースおひたし、タロウ味噌汁だ」
「ハヤタさんを抜いたウルトラ六兄弟だね」
『凝ってますね』
朝食は全部ウルトラマンの顔を模して彩られていた。焼き魚は乗っている大根おろしでウルトラセブンの顔を作っている。
料理としては、普通の和食料理だ。
三人でいただきますを言い、食事を始める。
「うっま。ウルトラ兄弟うっま」
『やばいですね』
「それは良かった」
ゼアスとヒカルは一体だ。だから味覚も感じることができる。
「いやほんと美味しいですよ。ハヤタさんって強いだけじゃなくて料理も上手かったんだなあ」
「敵だ」
「え?」
衝撃音。ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン。と聞こえた。共に地震も起こる。味噌汁がテーブルに飛び散った。
「行こう」
『ヒカル、行こう!」
「……うん!」
ヒカルとハヤタは急いで家を出た。
そうして快晴の青空の中、見上げる。
ゴドレイ星人がいた。だが、それだけじゃない。まだ降って来る薄赤い光。その数、三。ドンドンドン!!! 衝撃を起こしながら地に降り立ち、姿を現すゴドレイ星人たち、四体。虫の
「な」
ヒカルは慄く。苦しまされてようやく倒した相手が、一気に四体も来たのだから。
「まだだ」
何処からともなく現れる怪獣が四体。ファルドンだ。また四体。
「狂ってる……」
「まだだ」
バードンも四体空から飛翔して来る。ウルトラマン殺しが、四体だ。
「十二体も……」
「いや、もう一体いる」
「どこに」
ハヤタは上を指差した。
その先には何もない。青空だけがある。
しかし上にウルトラマンの感知力を向けたことで、ヒカルも理解した。
空からは、宇宙からは、超巨大怪獣が接近して来ていた。
その名は、超巨大天体生物ディグローブ。
奴が落ちてきたら"地球は終わる"。
それは、ヒカルにもわかった。
ディグローブは小惑星規模の質量を持っており、頭と尻尾のような突起が付いている怪獣だ。
こいつがもしも地表に衝突すれば、半径100kmものクレーターが発生。日本全土が被害を受けるにとどまらず、舞い上がった粉塵により地球全体が氷河期に陥ってしまうのだ。
さらに大気圏内でディグローブが爆発すれば半径20kmもの地上を焼き尽くす放射熱が発生する。
大気圏に入られても詰みなのである。
「あいつの迎撃可能までのタイムリミットは……」
奴の速度と場所から計算して、どれくらいだ。
「一分だ」
ハヤタがすぐに計算し答えを出した。
「一分……」
それまでに十二体もの怪獣を倒して、ディグローブも止める。
それができるのか。ヒカルは不可能レベルな困難にしか思えなくて、恐怖した。
「でも」
「ああ」
「なんとかするしかないよね」
「そうだ」
『ヒカル』
「うん」
ゼアスに促され、ピカリブラッシャーを彼は手にする。
なんとかするしかない。戦いとは、いつだってそういうものだ。
ヒカルはピカリブラッシャーを掲げる。
ハヤタは円筒状の神器、ベータカプセルを掲げる。
閃光が変身アイテムから瞬いた時、二人は光の巨人へと姿を変えた。
赤と銀の巨人が並び立つ。
「ゼアスーー! 初代ウルトラマンさーーん!」
ひよこが家から飛び出して声援を送った。
「ウルトラマンだ!」
優日が病室の窓に突進するように張り付き、瞳を輝かせていた。
ヒカルは構えながら初手に迷う。
まず、敵の数が多い。何処から対処すればいいのか、わからない。しかもバードンは速い上、全員遠距離中距離攻撃が使える。
『落ち着くんだ。やつらも一斉に攻撃すれば大渋滞を起こし同士討ちの危険がある。だから落ち着いて順番に対処すればいい』
だが敵が多いことは変わらないうえ、何よりディグローブが接近中だ。
だから。
『スピード勝負だ』
ファルドンが幻影能力を使い、一体が三体になる。つまりファルドンが視認上では十二体と化した。
まず初っ端、ハヤタはウルトラ眼光を放った。その名の通り、両眼から光線を放つ技だ。それがファルドンの幻影に命中していく。
すると。"ファルドンの幻影がすべて消えた"。
ウルトラ眼光とは、なにかを見破る技だ。見えない敵の、視えなくする能力を無効化したり、バリアーを無効化したりできる技だ。
それによって、幻影能力を無効化したのだ。
ファルドンは、ただの四体に戻った。
ハヤタはスラッシュ光線――片手から放つ牽制技の光を連続でそれぞれの怪獣に放ち、怯ませる。牽制して近づけさせない。
『まずはバードン。あのスピードは厄介だ。ヒカル、僅かの間頼む』
『わかりました!』
ヒカルはゴドレイ星人とファルドン、合計八体もの足止めを頼まれた。
彼にとっては無茶が過ぎるが、僅かな間だけならばなんとかするつもりだ。ハヤタもヒカルならできると信じ、任せたのだから。
ハヤタがバードンに向く。ゴドレイ星人とファルドンの破壊光線が一斉に放たれる。ヒカルはスペシュッシュラ光線を撃った。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
青色の光線を体の向きを変えていきながら撃ち続けることで破壊光線を撃墜していく。光線で対処できずに間を縫って飛来する破壊光線は、無理矢理身体で受けた。ダメージを受けるが、まだ倒れはしない。彼は耐える。足止めを全うする。
その稼がれた時間で、ハヤタが動く。バードンがボルヤニックファイヤを吐き出す。また別のバードンがマッハ二十で接近してくる。
ハヤタはボルヤニックファイヤの軌道上から飛び退きながら、神速で八つ裂き光輪を投げた。
八つ裂き光輪、スペシウム光線程ではないが有名なウルトラマンの技。スペシウムエネルギーを輪状に光速回転させ投げ放つことで敵を切り裂く。
「GYAO!?」
その八つ裂き光輪がバードンの毒袋を狙い違わず切り裂いていった。
毒袋を潰されたバードンは、猛毒が逆流し極度に弱体化する。間髪入れずにハヤタは八つ裂き光輪を三発早撃ちした。
「GYA!?」「GYAOO!?」「GYAAO!?」
三発とも正確に毒袋に命中。バードンを木偶の坊も同然の状態へと堕とす。最大限の警戒が必要な強敵ではなくなった。
これで、バードンをほとんど封殺したといえる。
バードンを弱体化させて得たその時間で、ハヤタはスラッシュ光線をゴドレイ星人とファルドンに連発する。怪獣たちは怯んだ。
『今だ』
『はい!』
怪獣たちがひるんだ隙に、ヒカルはゴドレイ星人に肉薄。ミドルキックを繰り出す。しかし咄嗟に強靭な爪で防御される、が、ヒカルはそれを蹴りでかち上げた。ゴドレイ星人の両腕が上げられて、胴体がガラ空きだ。
ゴドレイ星人は胸部から紫色の破壊光線をすぐさま放とうとしてくるが、その前にハヤタからスペシウム光線が抜き撃ちされる。青白い必殺光線を撃ち込まれたゴドレイ星人は爆散した。あと十二体。
二人は、付け焼刃だがコンビネーションの訓練もしていたのだ。
ヒカルはバク転で後ろに下がり、ハヤタと並ぶ。ハヤタは両手で宙から地まで四角状になぞる。ウルトラバリアーで巨人二人の前に半透明の防御壁を作り出したのだ。
ゴドレイ星人とファルドンの遠距離攻撃が大量に飛んでくる。紫色の破壊光線と青色破壊光線が乱舞する。それらはウルトラバリアーに防がれ、二人に届かない。
ハヤタが敵の攻撃を防いでいる内に、ヒカルは壁から僅かに体を出してスペシュッシュラ光線を破壊光線の隙間を縫って放つ。ファルドンが一体爆散した。あと十一体。
それからウルトラバリアーの横に回ろうとしてきたやつを優先的にヒカルはスペシュッシュラ光線で撃ち抜いていった。ファルドンがさらに二体爆散する。あと九体。
そこでウルトラバリアーの耐久度は限界を迎え、割れ砕けた。
怪獣たちは、接近戦に切り替えてきた。ゴドレイ星人とファルドン、バードンも加えた一斉攻撃。
ヒカル一人だったなら、ボコボコにされてボロ雑巾の様にされていただろう。
だが、一人ではない。頼もしすぎる先輩がいるのだ。
『ヒカル、背中は任せた』
『はい!』
切った張った。千切っては投げ。まさにそのような言葉通りのことが繰り広げられ、怪獣たちを圧倒していく。
バードンが乱戦に紛れて猛毒を喰らわせようと画策してくるが、万全状態のバードン相手に光線技を当てたハヤタにとって、弱体化したバードンのスピードなど取るに足らない。
ハヤタの光のエネルギーを込めた手刀がバードンの胴体、そして内臓に突き刺さり、内側から爆発する。
ヒカルも足先に光のエネルギーを込め、ゴドレイ星人の背中へ回し蹴りを当て、内側から爆発させた。
二人は、それぞれをフォローし合いながら、パンチやキックや手刀で怪獣たちを倒していく。
一連の流れが収まった時には、残りの怪獣はゴドレイ星人とファルドンとバードンが一体ずつになっていた。
追い詰められた三体は、捨て身で突っ込む選択をする。
ゴドレイ星人はヒカルへ。
残り二体がハヤタへ。
ヒカルの正面から迫るゴドレイ星人は爪の先端を向け猛突進してくる。ゴドレイ星人が今まで出した速度にない、捨て身の速さだった。
虚を突かれたヒカルは避ける時間がない。だから。
正面から体を受け止めた。
突進は止まらず後ろにずり下がっていくが、やがて止まる。
同時、眩い閃光をゴドレイ星人は放出した。
『その攻撃は、もう知ってるんだよ!』
ヒカルは閃光の直前に腕で目を覆っていたので、影響を受けていない。
『うおおおおお』
ヒカルは攻勢に出た。何度も拳をゴドレイ星人に打ち付ける。最後に全力のキックをお見舞いした。ゴドレイ星人が怯む。
ヒカルはポーズを取りエネルギーを溜め、腕を十字に組み、スペシュッシュラ光線を放った。
爪に防がれ、爆発。爪を破壊するが、瞬時に再生しようとする。
(背中を任されたんだ。ここで僕が倒さないと)
ヒカルは瞬速で二発目のスペシュッシュラ光線を撃った。
胴体に命中した青色の必殺光線は、ゴドレイ星人を
ハヤタに来た方の、ファルドンとバードンの二体は、捨て身に、本当に命を投げうった突撃だった。死に物狂いに目を血走らせ、奴らは、ウルトラマンにどちらかの攻撃が届けばいいと考えている。
実際並のウルトラマンならば、確実にどちらかの致命的な一撃を受けていただろう。
されど、初代ウルトラマンは、並のウルトラマンではない。
ハヤタは神速で、スラッシュ光線を少しエネルギーを多めに込めて放った。
それはバードンに命中し、爆散、バードンは倒された。
バードンを倒すまでにかかった時間は、ファルドンが一歩進む程度の時間だ。
そしてファルドンがハヤタに到達するまで、あと四歩もある。
ハヤタは腕を十字に組み、スペシウム光線を撃ち放つ。
原初の必殺光線は、正面からファルドンに命中し、撃ち抜き倒した。
『あと、一体』
ヒカルは空を見上げる。
残り十秒ほどで、ディグローブ撃破不可能圏内に入る。
『ヒカル、あの技を使うぞ』
隣に並んだハヤタが言った。
『はい!』
ハヤタに教えてもらった技を、使う時が来た。
二人の巨人は、両脇に固めた拳に緑色の渦と化したエネルギーを纏わせ、それを右腕だけに集束させていく
そうして、右拳を突き出し、渦巻く緑色の熱光線を放った。
『『ウルトラアタック光線!』』
ウルトラアタック光線――初代ウルトラマンが、スペシウム光線が効かなかったケロニアという強敵を倒すために使った技だ。
スペシウム光線の方が弱いわけではなく、スペシウム光線で倒せない敵を粉砕するための技。
ヒカルのウルトラアタック光線は、付け焼刃に覚えた技なのでハヤタほど上手く使えない。それにエネルギーをスペシュッシュラ光線よりも多く使ってしまう。しかし威力だけは絶大だから使いようはあるのだ。
渦巻く緑色の熱光線は天へと飛んでいく。
宇宙空間にまで到達した二つの緑色は、ディグローブに直撃した。
それを感じ取った二人は、腕をXの形にクロスする。
ウルトラアタック光線は、最初に熱光線を当てて、それから腕をクロスさせることで――。
熱光線を敵の内部から大爆発させる必殺技なんだ。
二発のウルトラアタック光線が、小惑星規模の巨体を誇るディグローブを、粉砕した。
残敵は零体。決着だ。
街を人々の歓声が包む。
「いいぞーウルトラマン!」
「ゼアスもかっこいいぞ!」
「キャーーーーーーー!! ゼアスーーー! 初代ウルトラマンさーーーん! かっこいいですよーーー!!!」
ひよこは目を
「やったねウルトラマン!! 最高!! かっこいい!!」
優日も病室でぴょんぴょん飛び跳ねて楽しげに騒いでいた。
歓声を受けるハヤタを見て、その光のヒーローの姿を見て、ヒカルは思う。
(やっぱり凄いなあ。初代ウルトラマンは)
こんなにもスムーズに旨くいったのは、初代ウルトラマンが味方だったからだ。ヒカルだけだったなら、今頃死に
『確かにハヤタさんは凄いよ。ボクがずっと憧れている通りの人だ。でもね、勝てたのは、ヒカルの頑張りがあったからだよ。君が頑張ろうと思って行動しなければ、この結果はなかった。勝つのに時間がかかって、人の命が失われてしまっていたと、ボクは思うよ』
だから、君のおかげで守れた人がいたのだと、それを知って欲しい。ゼアスはそう言った。
それが少しでも自信に繋がればいい。勇気を
(ありがとう、ゼアス)
ヒカルは、その思いを受け取った。