ウルトラマンゼアスS   作:ソウブ

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 優日は、草原を駆けていた。

 見渡す限りの広い広い、清涼感すら漂う若草色の世界で、ヒカルと並んで駆けていた。「お兄ちゃん! あたしこんなに走れてるよ!」

「良かったね」

「うん!」

 

 走り疲れると、気持ちのいい芝生に二人並んで寝転んだ顔を見合わせて笑い合う。

 

「今度また、色んな所に行こうね!」

「大切な妹の頼みなら、行かないとね」

「目指すは世界地図制覇だよ!」

「大変そうだなあ」

「いやなの?」

「いやじゃないよ楽しそう」

 ヒカルは優日の頭を優しく撫でる。とても気持ちよさそうに彼女は目を細めた。

 

 優日の、幸せな世界だった。

 

 

 夜になり、ギジェラの効能が切れ、優日は目を覚ます。

「……すごく、幸せだった」

 あの世界に戻りたい。もう一度体験したい。

 ギジェラに縋りたい。このまま堕ちていきたい。

 快楽に、手を伸ばし掛けた。

 

「でも」

「でもでもでも」

「これは、ギジェラは、良くないものな気がする……」

 

 苦しい。ギジェラを求めないのは辛い。

 息が荒くなる。嫌な汗が噴き出る。手が震えてくる。

 ギジェラを遠ざけたくない。まるで目の前の、すぐ手の届くところにある最大幸福を見逃すような焦燥感と悲壮感が襲って来る。

 少しでも油断すれば囚われそうだ。

 絶対に後悔するぞと言われてるような気分になる。

 

「でも、だめ。あたしの、良い方の心が言ってる気がする。ギジェラに身を任せちゃだめだって」

 

 幸せな夢に身を委ねるのは、自分の本当の望みではないと言い聞かせ、跳ね除ける。

 

 そうして、優日はギジェラに縋らないよう決意を固めた。

 苦しいけれど、その選択ができた。

 そう。

 

 "優日はギジェラに抗った"のだ。

 

 一体どれほどの人間がそれをできるだろうか。

 

 確実に、彼女の兄よりも心が遥かに強い。

 ひよこといい、彼の周りには強い女性ばかりがいる。

 

「お兄ちゃん……」

 そして、兄の心配までするのだ。自分が辛いことに抗ってる中、大切な人の心配をするのだ。いや、むしろ彼女らはそちらの方が主だろう。

 周りの大切な人の幸福の方が彼女らにとっては重要だ。

 

 しかしそれは、ヒカルも同じはずだ。

 同じはずだったのだ。

 それを崩し、弱い心に付け入ったのが、ギジェラだ。

 

「お兄ちゃんは、どうしてるのかな……」

 窓の外にゼアスは見えない。頼もしい赤き巨人が見えない。

「お兄ちゃん、情けないからなあ……」

 優日は動きが覚束ない体を、ベッドを手すりにして立ち上がらせ、頼りない兄の元へ向かおうとした。

 

 病室のドアが開く。

「優日ちゃん、ヒカルさんを、助けてあげてくれませんか」

 ひよこが、優日を頼りに来たのだ。自分では、今のヒカルを連れ戻すことはできないと思ったから。

「当然ですよ、ひよこさん。お兄ちゃんは、あたしが助けます」

 優日は決意を(たた)えた瞳をして即答した。

 

(お兄ちゃんがピンチなら、あたしがなんとかしなきゃ。お兄ちゃんは情けないから、お兄ちゃんを支えなくちゃ)

「ごめんなさい優日ちゃん……私、とっても残酷なことお願いしてます」

 ひよこは優日を病室から連れ出し、病院の廊下を歩く。兄の元へ妹を導く。

「いいんです。これが一番だって、あたしも思ってますから」

「……ありがとうございます。さすがヒカルさんの妹ですね」

 ひよこはそんな優日に敬意を抱いた。

「私、死神みたいです」

 優日を死へと導く死神。

「そんなことないですよ。あたしと同じで、お兄ちゃんを助けたいだけの、お兄ちゃんの大切なお友達です」

 優日は弱々しくなったひよこの手を握った。

「優日ちゃん……」

 

(だから、もういいよね。優しい夢はもう終わり)

 優日は、ギジェラへ残っていた僅かな心残りさえ、断ち切った。 

 

 ここからは、辛い現実と大切な人が待っている。

 

(あたしは、ウルトラマンになりたい)

 

 ウルトラマンというのは、心根(こころね)なのだ。光の巨人になって戦うからウルトラマンなのではない。

 ウルトラマンの心根を持つことこそが、ウルトラマン足り得る条件だ。

 優日は今、ウルトラマンになる。

 

 

 

 

 優日はひよこに連れられて、明橋家に近い小さな公園に着いた。昔ヒカルがよく遊んでいた公園だ。

 

「ギジェラ……」

 そこでヒカルは、幼い少年からギジェラの花を奪おうと手を伸ばしていた。

 子供を守り助けているウルトラマンが、子供から奪おうとしていた。

 ギジェラは良くないものだから子供から薬物を取り上げるようなものと言えば聞こえはいいが、自分の欲望の為に奪おうとしていることは変わらなかった。

 

「お兄ちゃん!! ばかーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 優日は駆け寄って駄目な兄の頬を殴った。全力で、平手でなく拳を固めて右ストレートを入れた。

 

 殴り飛ばされたヒカルは無様に倒れる。

 

「情けない情けないとは思ってたけど、いつからそこまで意気地なしになっちゃったの!?」 

 妹は兄を思って遠慮なく叱咤する。

 

「だって、優日が幸せに生きていく為にはもうこの方法しかないじゃないか……」

「あたしは、こんなのに頼るくらいなら死んだ方がマシだよ!」

 

 優日は自分の命がもう長くないことを分かっていた。

 聞かされていなくとも、自分の体のことだから、なんとなく予感していた。

 それでも、その上で、優日はそう言うのだ。

 

「お兄ちゃんが強くなって、何があっても立ち上がって、進んでいけるのがあたしの望みなんだよ。だから、あたしの未来がどうとか考える必要ないんだよ」

「死んだら意味がないだろ!」

「そんなことない。これは生き方の問題。いつ死ぬとか関係ない。あたしはこう生きたい。だから聞いてお兄ちゃん」

「…………」

 ヒカルは黙って優日を見た。優日の、自分と同じ赤い瞳を見つめた。その瞳は力強い光を湛えていて、とても眩しかった。

 

「お兄ちゃん、お願いするよ」

 優日もヒカルの目を見つめて言う。

 

「"一生のお願い"」

 

 優日が、よくあるその文言を口にしたことは、ヒカルの知る限り一度もない。

 だからこれは、本当に"一生のお願い"ということだ

 

「お兄ちゃん、揺るがない強い意思を持って立ち上がって」

 

「諦めないで前を見て限界を超えて」

 

「何度倒れても、立ち上がって」

 

「戦って、そして勝って」

 

「ウルトラマンをやってよ、お兄ちゃん」

 

「どうか、あたしの願いを叶えて。ウルトラマン」

 

 

 その言葉を聞いてヒカルは、

「あ……」

 今、ようやく、ギジェラの夢から目が覚めた。

「あああ……」

 罪悪感と自責の念が彼の心を責め苛む。

「ごめん……優日……ごめん……」

 

 そのお願いを、聞かないわけにはいかなかった。

 大切な妹の、命に代えても守りたい妹の、一生のお願いなのだから。

 

 優日の為になる一番の方法がそれなら、ヒカルは立ち上がるしかない。どれだけ辛くても、戦いたくなくても、苦しみながら立ち上がるしかないんだ。

 

 ギジェラの効果を無視して突き抜けるほどの、妹の一生のお願いという、兄に効く心の光だった。

 

「いいよ、だから、あたしのお願いを聞いて」

「うん、約束するよ」

 寂しい笑みで答える兄。満面の笑みで受け取る妹。

 

「あたしに対して、罪悪感なんて抱かないで。ただ、立ち上がって」

「うん」

 彼は勇気を胸に、罪悪感も自責の念も悲しみも無力感も、拭えないもの全部抱えて、それでも負に押し潰されることなく、どれだけ辛くても立ち上がる決意を得た。

 

 大切な人に未来がなくても、未来を守るのがウルトラマン。

 

 彼は、妹の一生のお願いを聞くために、ウルトラマンであらなければならない。

 

「僕は、ウルトラマンをやるよ」

「それでこそお兄ちゃんだよ。情けなくても、やるときはやるんだから」

 

 優日は、ずっと支えたかった兄を支えた、助けた、救った。

 だから彼女も、ウルトラマンだ。

 

 人の助けを求める声を聞き届け、守り救うのが、ウルトラマンであるのだから。

 

「じゃあ、行くよ」

 ヒカルは懐から"赤い電動歯ブラシ型の神器"、強化された変身アイテム、ピカリブラッシャー2を取り出した。

 揺るがぬ決意を得たことで、光の力が新たなステージへと至ったのである。

 

『ヒカル、おかえり』

「ただいまゼアス。ほんと、色々ごめんね」

『いいよ』

 そう即答するようなゼアスだから、ヒカルは全服の信頼を向けられるのだ。

 

「いってらっしゃい」

「信じてます」

 

 優日とひよこが微笑んで送り出す。

 二人は彼を、信じ切る。

 

 彼はピカリブラッシャー2のスイッチを入れる。震動するブラシを歯に当て、口内を洗浄する。

 そして、掲げた。

 

 今こそ立ち上がれ、愛と正義のために。

 

「ゼアーーーーーーーーーーーーーーーース!」

 

 ピカリブラッシャー2から光が溢れ出し、ヒカルを包んで巨人へと変えていく。

 

 赤き巨人、ウルトラマンゼアスが降り立った。

 

 巨大なギジェラの本体の元へ赴く。町はずれの空き地に奴は根を張っていた。少し飛ぶだけで、そこへは着いた。

 

 ギジェラを求めて本体へ集まっていた人々が声を上げる。

 

「ゼアスだ……!」

「ギジェラを壊さないでくれー!」

 

 人々が懇願する。それでもヒカルは戦うと決めた。優日のお願いを聞いたのだから、迷いはしない。

 ヒカルにとって、これはギジェラとの戦いじゃない。自分との戦いだ。優日の願いを果たせるかどうかの、兄としての矜持を全うできるかどうかの戦いだ。

 

 四本の触手を持つ、花の蕾が中心に存在する、巨大な金色花の怪獣。それが、超古代植物ギジェラの本体だ。

 

 ギジェラへ向けて走る。

 まず接近してダメージを与えないことには始まらない。最初からの必殺光線は対処されるだろう。そもそもギジェラは花だけ倒しても意味がない。奴は地面奥深くまで根を張っている。根に逃げられれば倒しにくくなり、より厄介なことになるだろう。だからなによりまずは、ダメージを与えて弱らせることが必須。

 彼はギジェラへ肉薄する。

 

 ゼアス・キックで、連続蹴りを放った。が、触手に阻まれる。

 四本の触手の乱舞が襲い来た。ヒカルは拳や蹴りで対処。

 剣戟の様な格闘が繰り広げられる。

 ゼアスの腕よりも太い触手が唸り、叩きつけられようとするのを、体捌きで避け、手刀で叩き落とす、そして別の触手が走り襲う。

 

 そんなふうに、接近戦を演じていると、突然。

 

 ギジェラの中心にある花の蕾が開いた。花開いた金色の中には、牙の生えた口が存在する。

 

 ヒカルは、それに不意打ちで噛みつかれた。この口は少し伸びるのだ。

『ぐあっ!?』

 胴体に牙が食い込む。

『痛い痛い痛い!』

 結局彼は痛みには一切慣れていない。こんなものに慣れることなどできなかった。これまで同様彼の精神力を削っていく。

 

 それでも、もうヒカルは迷いはしない。精神をぶっ叩かれても立ち上がる。痛みに耐え噛みついている口を殴ろうとする。

 が、触手に両腕と両足へ絡みつかれた。拘束される。この触手は光の巨人を拘束するほどの力を持っている。

 

 触手から電撃が迸った。

 巨人の顔へ向けて、ギジェラの口から金色の幻覚花粉が噴射される。

 一気にギジェラの攻勢がぶつけられた。

『ああああああああ』

 電撃は彼の感覚を可笑(おか)しくし、確実に命を削り、花粉は意識を混濁させ快楽へ誘う。

 

 されど。

「お兄ちゃん頑張れー!」

 優日の、妹の声援は、心の光を奮い立たせ兄を強くする。

 心の光は、ウルトラマンのエネルギーだ。

 

『うおおおおおおおおおお!』

 お兄ちゃんパワーを発揮したヒカルは、右腕に絡みついていた"触手を一本引き千切った"。

 一瞬のみ、とんでもない怪力を出したのだ。

 続けてギジェラへ殴りつける。ギジェラにダメージが入り、怯む。拘束が解けた。

 

 ここからヒカルは攻勢に出ようとした。矢先。

 

「やめろー! ギジェラは救いなんだ!」

 

 ギジェラを壊されたくない人々が、ギジェラを守ろうと間に入ろうとしてきた。

 何人もの人が、ヒカルとギジェラの間へと向かって走ってくる。

 巨人と怪獣、巨体と巨体の戦闘の間に入ろうとすることがどれほど危険かは言うまでもない。軽いはずみで踏み潰されてしまうだろう。

 ウルトラマンは全力で護るだろうが、強敵との戦闘中では限度がある。

 

 それでもウルトラマンは護る行動しか取りはしない。

 幸いウルトラマンゼアスには、人を助けやすい能力がある。

 

『ウルトラワープビーム!』

 

 ゼアスの目から放たれる、瞬間物体移動光線。人々を救出する為の技。

 何人もの人を遠くの安全な場所へ避難させていく。

 あっという間に、妨害に入った人々を助けて見せた。

 

 しかし、その行動には否が応にも隙ができる。

 その隙を狙われて、三本の触手が伸び、また拘束されてしまった。

 電撃と幻覚花粉が浴びせられていく。

『ぐぅ!?』

 左足だけは拘束を逃れ、振り上げ触手を蹴り飛ばそうとするが、避けられる。

 

「ギジェラいいぞ!」

「やっちまえー!」

 ギジェラを求めてはいたが、巨体の間に入るほどの狂気にまでは陥っていなかった人々が、ギジェラの優勢に歓喜の声を上げる。

 

「……でも、ゼアスがかわいそうだよ。これでいいのかな」

 子供がその光景を――ギジェラに蹂躙されるヒカルと、大人達の態度を――見て、疑問の声を零した。

 

 

「ヒカルさん」

 ひよこは、ヒカルを助けたかった。ギジェラの魅せる幸せから、連れ戻すことはできなかったけれど。

 今なら力になれる。

 

 ひよこは祈った。ただの祈りでは何も変えられはしないが、この祈りはウルトラの母と感応する為の祈りだ。

 

 ひよこの力は、いつもの強化だけではなく、弱さと戦っているヒカルの心を、思いだけを、人々へ届けた。

 

「みなさん、目を覚ましてください!」

 

 ――痛い辛い怖い苦しい、でも、戦うんだ。護るんだ。約束を守るんだ。負けられない。絶対に、何度でも立ち上がってやる。

 

「これは……」

「ゼアスの心なのか……」

「俺達は、こんな思いをしてまで戦ってくれているゼアスを、見捨てていいのか」

 

 自分の幸せだけを求めて、これまでも、今も護ってくれている存在に、こんな態度でいいのか。

 徐々に、心に光を取り戻していく人が増えていった。

 こんなに弱い心の者が立ち向かっているのだ、自分が負けてどうすると、思う人達が出て来た。

 妨害を止めるものが、増えていく。

 

「ゼアス! 頑張れ!」

 子供が叫んだ。

 

 妨害する者がいなくなり、人々の心の光が届けられたことで、ヒカルは全力で戦えるようになった上、さらに強くなる。

 

『ああああああああああ!』

 触手をもう一本引き千切った。

 左腕に巻き付いていた触手が地へと落ちる。

 

 

 そんな時。

 朝になった。

 日が、昇って来たのだ。

 

 

 ギジェラの主な活動時間は、昼である。ギジェラ花粉の幻覚が最も作用する時間帯が、日の光がある時間帯だ。

 そして、ギジェラが十全の力を発揮できるのが、日の光が存在する時なのである。

 

 ギジェラが日の光によって信じられないほど強化された。

 光で強くなるのはウルトラマンだけではない。

 

 触手が再び、瞬時にして生えてくる。最初と同じ本数、四本へと戻った。

 

 先までよりも速度が上がった触手に、四肢を拘束される。速度が違い過ぎて、ヒカルは反応ができなかった。

 

 さらにギジェラの力が強過ぎて、触手を引き千切るどころか動かすことすらできない。

 

『なんで、こんなに……!』

 

 幻覚作用が本来の力を取り戻したことで、人々もまた幸せな夢の世界に堕ちて、心の光を届けられなくなった。

 

 先までの何倍にもなった電撃が襲う。幻覚花粉を先よりも多い量吹きつけられ快楽に落ちそうになる。

 

 痛みと命の減衰と意識の混濁に、気力が無くなっていく。

 

 カラータイマーが点滅し。鳴り始めた。

 

 ピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコン。

 

 動けない。他の強くなる要素が無くなっても、ひよこから受けた強化だけは残っているはずなのに、触手を振り解けない。

 絶体絶命。

 けれど。

 ここで終われない。こんなところで終われない。

 優日に誓い約束したんだ。ここで負けるなど、かっこ悪いどころではない。

 

『揺るがない強い意思を持って立ち上がって、諦めないで前を見て限界を超えて、何度倒れても、立ち上がって、戦い、そして勝つんだ!』

 

 諦めない。諦めるな、その勇気で限界を越えろ。

 

 その時、ヒカルの内側から燃え滾るものが芽生えた。

 兄の誓いが、心の光と成る。心の光は、ウルトラマンのエネルギーだ。

 燃え滾る赤く熱い鼓動が、力と成る。

 

 限界を越えろと妹に一生のお願いをされたのだ。ならば、限界くらい越えてこそいい兄というもの。

(そんな輝く意思が僕にはある)

 もう弱くなどいられない。

 今こそ、命の限り進む時。

 

 弱い自分から強い自分への新生を望む強い意志が、ヒカルに、ウルトラマンゼアスに、新たな技を生み出させた。

 

 今こそ変われ、赤き炎へ。

 

 赤き巨人の体が、さらに赤くなっていく。溜め込むように、赤熱していく。

 動きはしない。拘束されているから動けはしない。ただ内側から、赤く熱く。

 

『僕は強くなるんだ!』

 

 強くなれ。ヒーローになれ。優日のヒーローになれ。

 

『ゼアスダイナマイト!』

 

 ヒカルの体は大爆発を起こした。

 

 ウルトラマンタロウのウルトラダイナマイトや、ウルトラマンメビウスのメビュームダイナマイトのような自爆技、ウルトラマンゼアスが持ち得る筈がなかった新技、ゼアスダイナマイト。

 

 内側に溜めた炎のエネルギーを一気に開放し爆発させる極大威力の大爆発。

 

 それはギジェラを文字通り根絶やしに、焼き尽くす。

 

 ギジェラは地中にある球根が本体だ。そして根が僅かでも残ればそこから復活しまた生えてくる。だから(すべ)てを焼き尽くさなければ倒せない。

 必殺光線では倒し尽くせないその根を焼き尽くせるのが、この自爆技なのである。

 熱エネルギーが、ギジェラを根絶させた。

 

 爆発四散した巨人の体は、ヒカルの中に残っていた光のエネルギーと、ひよこから送られる光で以って、復元する。再び大地に立つ。

 ヒカルは身も心も、新生した。

 

 心を強く、怖気づいても諦めない。ヒカルはもう下を向きはしない。

 

 朝日を背負い立つ、新生した光の巨人は、とても力強かった。

 

 咲いていたギジェラの花は枯れ、人間の新たな一歩となる光が世界を照らしていた。

 

 

「お兄ちゃんは、もう大丈夫だね」

「ですね……」

 

 二人の少女は、赤き巨人の背中を見上げて、そう確信していた。

 

 強くなったあなたへ、祝福と情愛と、親愛を。

 

 

 

 

 

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