叢雲   作:東 玲湖

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17 自信と挫折2

~演習当日~

 

空は青く澄み渡り海風が心地よく吹き抜けるなか、演習の舞台である四日市鎮守府港内では着々と準備が進められていた。

演習場の見渡せる位置にテントと机が設置され、いつでも開始できる状態になっている。

 

暫くして両艦娘が揃い、幕僚長の有難いお言葉を貰う。

30分後に開始と言うことでお互いの艦隊はブリーフィングに入った。

早目に終えた横須賀の艦隊から一人の艦娘がこちらに歩いてくる。

 

「提督、お久し振りです。お元気でしたか?」

 

「大鳳じゃないか‼️元気でやってるそうじゃないか。横須賀の第一艦隊なんて頑張ってるんだな。俺は嬉しいよ。」

 

話し掛けてきた艦娘は大鳳。

以前までこの四日市鎮守府に在籍していたが、四日市からの研修生という名目で横須賀にいる艦娘だ。

 

「横須賀は厳しいですよ。神通さんや加賀さんほどじゃないですけどね。それでは行きますね。打ち上げでまたご挨拶に参ります。」

 

そう言うと艦隊に戻って行った。

 

自分も準備が終ってないことに気付きテーブルに着席する。

今回は特別演習なので演出評価者は艦隊6人につき7人である。

各艦娘に一人ずつ評価担当が付き、残りの一人は作戦指揮評価だ。その7人の後ろに書記がいて、口頭で言った評価点や改善点を書いて貰う。こちらは加賀や叢雲、神通などが評価する。作戦指揮は提督が担当。

 

もう少しで開始だが、この座りにくいパイプ椅子でも心地よい海風が吹抜け、気分はさながらピクニックだった。

 

開始の合図が鳴り、双眼鏡を覗きこんだ。

隣の神通は覗き込みながら

 

「A+、B-2、C特記反射、B+」

 

など歯科医の検診みたいな感じになっている。

ここで説明すると、Aが攻撃、Bが回避、Cがその他のことである。

自分は作戦指揮なので、イヤホンに耳を傾けながら口頭で後ろに伝えていく。基本艦娘はインカムで指揮のやらりとりをしているので、旗艦がどういう指揮をとっているかを判断する。

基本的な指揮は提督が出すが、現場の直接な判断は旗艦に委ねているからだ。

 

「意外と長く持ったな。」

 

そう呟くと左手にしている時計を確認する。

四日市鎮守府が全員大破判定までの時間を確認したのだ。

演習が終了したので全員集まり幕僚長からの総評で終了するはずだった。 

 

四日市の艦隊では泣いている艦娘もいるし、横須賀の艦隊では喜んでいる艦娘もいる。

 

「横須賀第一艦隊には悪いがもう一試合やってもらう。補給を再度済ませてここに集合するように。」

 

両艦隊がからはざわめきの声が聴こえる。

 

「提督殿。もう一試合とは相手は誰なんですか?」

 

一人の艦娘の問いに一斉に四日市提督を見つめる艦娘。

 

「直ぐにわかる。」

 

そう言い残すと壇上から降りた。

 

 

補給をしている間に幕僚長と提督の前に四日市鎮守府の艦隊が整列する。

 

「お前たちはよくやった。今日までの訓練は無駄じゃなかった、それ以上に負けたことに意味がある。今まで自分たちは連戦連勝で負けなしだったが悔しいだろう?世の中には自分より強い奴が沢山いる。深海悽艦にも恐ろしくヤバい奴がいることを心にとめて、慢心無く国防に努めるように。」

 

「お前たち。このまま負け知らずでいってたら、その6人の中から必ず殉職者がでるところだったぞ?」

 

二人の励ましと叱責で再度泣き出す者もいた。

しかし涙の奥の眼は力強くこちらを見ていた。

 

「さあ、お前たちの演習は終りだ、これからの演習を目ん玉かっぽじってよぉーくみとけよ。なかなかみれるもんじゃないからな。」

 

言い終えると後から声がする

 

「準備出来たわよ」

 

そこには普段スーツや海自の制服しか着ない叢雲、神通、北上、高雄、加賀の戦闘服姿があった。

 

「え、5人で横須賀第一艦隊と演習するんですか?」

 

「まあ見てなさい。」

 

「おい叢雲、時間だけ聴いとくぞ❗」

 

「300秒」

 

そう言うと5人は歩いて行った。

 

「提督無茶ですよ。あの横須賀第一艦隊に5人だなんて、向こうには戦艦も空母も2隻いるんですよ?勝てっこないです。」

 

「まあみとけ」

 

提督の口元が笑っていた。

 

 

 

~演習打ち上げ会場~

普段はどんちゃん騒ぎの打ち上げ会場だが今日は違った。

殆んどの艦娘がお通夜状態だ。

結局最終演習は230秒で決着がついたのだ。

加賀の艦戦の無駄のない射出や配置、高雄の中長距離からの誤差の無い砲撃。北上の相手の行動を読みきった魚雷射出。そして神通、叢雲の神掛かった回避と反撃射撃。

全てが美しく無駄の無い行動で誰もがみとれてしまう。

 

そんなヤバい奴ら相手に自信があった第一艦隊の艦娘も撃沈。

第一艦隊にぼこぼこになった四日市鎮守府の主力艦隊も撃沈。

楽しそうに焼き肉を食べているのは、叢雲たち5人と霧島位だ。

 

そんな艦娘たちを見た幕僚長が声あげる

「お前ら日本最強だとか、主力艦隊だとか言われてるけどこの海軍省でエース艦隊はこの5人だ。霧島やお前たちより上の艦娘は全てこの5人にぼこぼこにやられてる。この5人を目標に。いや。追い越せる様に訓練して努力するんだ❗いいな❗」

 

艦娘「はい‼️」

 

「よし‼️肉を食え‼️」

 

そのやり取りを終えると皆で楽しそうに焼き肉を食べ始めた。

 

「叢雲さん。今度砲撃練習みてもらっても良いですか?」

 

「加賀さん‼️今度射出訓練一緒にお願いします‼️」

 

などと四日市、横須賀の艦娘があの5人を囲っている。

 

幕僚長と提督は二人でビールを注ぎいながら今日演習を振り替える。

 

「なぁ。うちの第一艦隊の評価はどうだった?叢雲くんや神通くんは何か言ってたか?」

 

「詳しくは演習改善報告書で提出するそうですが、二人とも、まだまだ新米風情には負けん。って言ってましたよ。」

 

「何だよそれ‼️ただの負けず嫌いなだけじゃないか(笑)」

 

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