書き終わって思ったんだけど、何でこんな話を書いたんだろう。
時系列は原作前です。
所々「ん?」ってなるところがあるかもしれませんが、ご了承下さい。
ゴッドイーター。
この世界を荒らすアラガミに対抗することができる唯一の存在。人類最後の砦。私こと三日月アヤは、そんなゴッドイーターのうちの1人だ。
まぁ…私は落ちこぼれなのだけれど。
「おい、落ちこぼれが帰って来たぞ! 今日はどうだった? オウガテイルに追いかけ回されてションベン漏らしたりしてねぇだろうな」
疲れで重たい頭を上げて、セクハラ発言して来た変態クソ野郎を見る。
ニヤニヤと意地悪そうに顔を歪ませた口だけ野郎こと小川シュンがそこにいた。
私は特に何も言わず、一瞥しただけで横を通り過ぎる。
「…おい、無視してんじゃねぇよ」
ガッと肩を掴まれ、無理やり振り向かされる。
「何…?」
「何無視してんだ落ちこぼれの分際でよー。お前自分の立場わかってんの? あ?」
そう言って凄んで見せて来るシュンは、しかし言うほど怖くはない。
私はこれ見よがしに溜息を吐き、やれやれと言いたげに前を向き直し歩みを再開する。
「てんめぇ…」
シュンの顔が怒りで真っ赤になっているだろうことが手に取るようにわかる。
しかし私も、何の対策もなくあえて煽るような態度をとったわけではない。少し遠くにいるとある人物を見た結果なのだ。
かくして、私が見つけたその人、雨宮ツバキ教官が私に気づいて声をかけて来た。
「む…三日月か。ちょうどいいところに来たな。支部長から時間が空いてる時に来てくれと連絡があった。ヒバリに報告が終わり次第向かうように」
「了解しました」
「うむ。…ところで、シュンと何かあったのか?」
「いえ、別になんとも」
別に何も、ではなく、何ともないという風に言うのがミソである。
「……そうか。時間を取らせて悪かったな」
「いえ。…それでは失礼します」
歩き出した背後から、シュンの慌てた声が聞こえてくる。ざまぁみろ。
「ヒバリ」
「あ、アヤさん! 任務お疲れ様でした!」
彼女は竹田ヒバリ。ここフェンリル極東支部のオペレーターであり、いつも笑顔で帰りを迎えてくれるこの支部のアイドル的な存在である。
笑顔を見せてくれる彼女に、私も小さく微笑みながら書類を渡す。
「はいコレ。任務の報告書」
「ありがとうございます。…あの、先ほどは大丈夫でしたか?」
さっきシュンに絡まれたことを言ってるのだろう。心配させないために、笑顔で答える。
「大丈夫だよ」
そう言ったのだが…しかし、ヒバリはその可愛らしい顔を悲しそうに俯かせる。
「ヒバリ?」
「…いえ、なんでもありません。そう言えば、支部長から支部長室にくるようにと連絡がありましたが、お聞きになりましたか?」
「さっき教官から聞いたところ。早速だけど今から行くわ。面倒ごとは早めに終わらせたいから」
「分かりました。でも、しっかり休んでくださいね? 休めるときに休んでおかないと、いざという時動けなくなりますよ。ゴッドイーターに代わりはいないんですから、ご自愛くださいね」
「ありがとう。そうするわ。…でも、ゴッドイーターの代わりはいないかもしれないけれど、私みたいな落ちこぼれのゴッドイーターの代わりは、いくらでもいるわ」
それじゃあね。と言い残し、エレベーターに向かう。背中に何やら視線を感じるが、無視だ無視。
エレベーターを降り、誰ともすれ違うことなく部屋に到着する。
ドアを3回ノック。ら返事が聞こえたためドアを開けて入室する。
「失礼します。第4部隊、三日月アヤ、ただ今参りました」
「ああ、いらっしゃい。わざわざすまない」
「いえ。…それで、ご用件はなんでしょう」
「すこし、君の配属についてね」
「配属…ですか? 第4部隊から抜けると?」
「ああ、そうなるね。君には次から偵察部隊に所属してもらうことになった。そっちの方が、君のためにもなると思うのだが…どうかね」
「…ご配慮、ありがとうございます」
「…そうか。以上だ。退室したまえ」
「失礼します」
支部長室から出ると、そのまま近くの壁に寄りかかって、崩れるように座り込む。
とうとう、ゴッドイーターですら、なくなってしまった。
いや、ゴッドイーターなのだが、討伐部隊でもなければ防衛班でもない。本来ならゴッドイーターではない人がつく、偵察班。意味することは、戦力外通知。
分かっていたことだ。私が落ちこぼれで、みんなの足を引っ張ってしまっていることぐらい。でも、仕方がないじゃないか。私には神器は重いのだ。
適合率、33%。
これが、私と神器の適合率である。適合率の低い私には、神器はひどく重く、身体能力もゴッドイーターとして必要とされる最低限のもの。
残り67%の確率でアラガミになっていたことを考えれば、ある意味運が良かったのかもしれないが…、正直、アラガミと戦える気がしない。
私は大きくため息をつくと、任務を更新するためにヒバリのところに向かった。
◇
偵察班になって、3ヶ月が過ぎた。偵察班になってから、毎日が仕事付。下手したら、討伐部隊にいる時よりも仕事は多いかもしれない。
いや、しれないではなくて、確実に多い。
偵察班は、その任務の性質上どうしても死者が多くなる。死者が多いということは、単純に人手不足ということ。
他の支部ではどうなのか知らないが、最前線のここ極東はアラガミの動物園。すーぐに新しいやつが来る。
帰ってきてたったの1時間しか経っていないのに、また任務が入った。
場所は…ほら、あの廃寺。雪積もってるあそこ。寒い。
因みに1時間前は地下。あのマグマが煮えたぎってるところ。暑い。
どうやら新種のアラガミが目撃されたとか何とか。それの確認に行かなくてはならないらしい。
メンバーは私と、そこそこの古参と新人。取り敢えず、新人がヘマをしないかだけが心配だ。
因みに、私の神器はブラスト。第1世代だ。装備は確かほぼ初期のやつ。ぶっちゃけあんまり覚えてない。ただただ軽量を続けて削れるところは削ったから、ぶっちゃけ元の形なんて覚えてない。
で。
取り敢えず任務に来たんだけど、案の定新人君がやらかしてくれた。マジ勘弁。
偵察はいかに見つからないかが肝なのに、新人君ビビって大声あげて走り出しちゃった。
もちのろん、追いかけてきたザイゴートにパクりんちょされた。もうアラガミに見つかってしまったので、神器をぶっ放す。ヒャッハー。汚物は消毒だ!
…私は某有名な誤射姫ではない。断じてだ。
私が撃ったカスタムバレット、「流星」は天高く舞い上がり、そして遺体を食らうザイゴートに直撃。爆ぜる。
当たりどころが良かったのか、一発でザイゴートは倒れてくれた。
私はすぐさまオラクルリザーブを限界までするために、Oアンプルをがぶ飲みする。ゲップ、最高だぜ。
流星の爆発音を聞いてか、周囲にアラガミが集まってきているようだ。因みに、そこそこ古参の人は、とっくにアイコンタクトで逃げるように指示を出して逃げてくれている。
重い神器を持ち上げて一息つく。よっこらせ…と。
…おかしい。私はまだ十代のキャピキャピ女子なのに、なんだこのおっさん臭さ。女子力どこいった。
あー、なんかもう何もかもどうでもよくなってきた。だって見てくださいよ奥さん。目の前にアラガミが何匹も。
えーと、何匹いるんだこれ。しのごのやの…わっかんねぇー。
取り敢えず10以上。オウガテイル3。ザイゴート5。コンゴウ2。で、なんか見たことない白いヴァジュラが1…と。こいつが新種か?マジ勘弁。尚、現在も小型が増え続けてる模様。
あー、私、ここで死ぬのかな。
取り敢えず、無線入れますか。
「あー、こちら偵察班第1部隊隊長、三日月アヤ。誰か応答願う」
「アヤさん!? 私ですヒバリです! 今どこにいますか!?」
「今はー、うーんどこだろう。多分降下地点より北に数キロってところだと思う。で、現在アラガミに囲まれてるなう」
「少し待って下さいね…って、なんですかこのアラガミ反応! 囲まれてるじゃないですか!?」
「あー、うん。新人君がビビって悲鳴あげながら逃げちゃってね。即バレ。因みにその子はさっきザイゴート美味しくいただかれました」
「今すぐそこから離脱して下さい! 早く!」
「いやー、それはちょっと無理そうかなーって」
「どうしてですか! 早く! こうしてる今もアラガミが集まってきてます!」
「いやー、だって、もう片足ないし…」
「…そんな」
マジマジ。私嘘つかない。
さっき流星撃った時に、下からドレットパイクがその立派な角を地面の中から突き上げてくれちゃって、とっさに反応できたわいいものの片足が持ってかれました。
一応すぐさまスタングレネードを使って目くらましした後、心もとないほどの壁しか残ってない建物に入って身を潜めるも、まぁ流れた血を追えばすぐに見つかる。
一応回復錠を使ったけども、適合率の低い私は傷が塞がりかけてるところまではいっても、それ以上はなかなか進まなかった。思わずため息をつく。
そこまで説明して、ヒバリがなんの反応もしなくなった。大丈夫だろうか?
「ヒバリ? 大丈夫?」
「だいじょぶなわけ、ないじゃないですか…」
「ちょ、泣いてるの?」
「だって、こんなアラガミの量に、片足までなくして…、しかもアヤさん、もう生きること諦めちゃってるじゃないですか!」
「あ、バレた?」
「分かりますよ」
「あっははー、ごめんね。だってこれもうどう考えても無理でしょ? 新種のアラガミもいるし」
「新種も…」
「そうそう。なんかしっろいヴァジュラ。顔が女みたいで、氷を操ってるね」
「そんなアラガミが…」
「うん。これはちょっと、リンドウさんとかソーマさんとかじゃないと、渡り合えないんじゃないかなー。やばそうな雰囲気がバリバリしてるよ」
私のその言葉に、ヒバリが思わず声をなくす。
「ま、そんな訳で一応隠れてみるけどさ、私の生存は絶望的だと思って」
「そんな…いやですぅ、嫌ですよぉ……、まだ諦めないでください!近くのゴッドイーターに、救援を出してますから!」
「いやいや、こんな地獄にちゃんとしたゴッドイーターを送るとか、絶対ダメだからね!?死んじゃうよその人!」
「でも、このままだと…!」
「もー、仕方ないじゃん、私はここまでだったんだよ」
「どうして、どうしてそんなことが言えるんですか……」
「んー、自分でわっかんない。なんか、頭がスッキリしてるんだよね。よく分かんないや。でも、今なら死ぬことも怖くない…かな?」
「…どうして「それにね」…?」
「私が死んでも、ヒバリは私のこと覚えていてくれるでしょ?」
ヒバリが息を呑む音が聞こえた。
「いつも私に語ってくれるみたいにさ、こんな人たちがいたって、私のことを語ってくれるでしょ? 泣いてくれるでしょ? なら、それで十分じゃない?」
「……あの、かなり酷いこと言ってるって、自覚ありますか?」
「あるあるー、私って最低だよね。置いて行く人にこんなこと言うんだもん。でもね、なんかヒバリがそうしてくれるって知ってたら、何か安心してるんだよね。いつか、私が死んだ時も、この人はちゃんと私を覚えてくれてるんだろうな……って。それってさ、たぶん死んだ人からしたら、飛び跳ねてしまうくらい嬉しいことなんだと思う。私ならベッドの上で跳ねまくるね」
「………」
「それにね、私が死んでも変わりはー…」
「いません!」
「……」
「アヤさんの代わりなんていないんです! 私の友達に、代わりなんていません! もう二度、そんなこと言わないでください!」
「……」
「……」
「……ねぇ、ヒバリ」
「…何ですか」
「ちょっと怖くなっちゃったからさ、また、話してよ。今まで出会って、そして別れていった人たちのこと」
「…仕方ないですね、少しだけですよ」
そう言って、ヒバリはかつて確かにアナグラにいて、そして帰らぬ人となった人たちのことを話してくれた。話が面白い人や、内気で気弱な子。元気が有り余っていて、いっても笑顔だった人。落ち着いた大人のお姉さんといった雰囲気のお姉さん。不器用ながらも優しかった、おじさん。
…うん、こんな風に私のことを語ってくれると思うと、きっとそれは幸せなことなんだよ。
死ぬのなんて、怖くない。
「それでですねー、「ヒバリ」……っ、」
「ありがと『ガッ。グチャ。グチュ…』ザザ、ザザザザー……。
「そ…そ、それででずね。み、みがづきアヤさんって言う、ちょっと変なんでずけど、でも、ぞごが面白くて、頑張り屋さんで、辛いごとも辛いと言わずに我慢して、努力できる、素敵で大切な、ゎだじ
の、だいぜつな、ともだぢが、い……て……………
後日。血だらけになった三日月アヤと思われる右手と、しっかりと握り締められた神器が、廃屋から見つかった。
お疲れ様でした。
これ、もともとは連載で書こうと思っていたのを、主人公が死ぬ話にしたらどうなるかなーって好奇心が生まれて、書いてみたらこうなった。
因みに、私は自分でこれを書いてるにもかかわらず何故か泣きました。泣きながら書きました。
おかしな話ですね。
もし感想とか評価とかが多ければ続きを書こうかなって。
生き残りルートとか、ヒバリ視点とか? まぁそんな感じ。