バガラリー、既にある。
はい、ということで、続きです。
初めは抜き足。そしてさし足、忍足を飛ばして駆け足になってしまったできではありますが、楽しんでもらえたら幸いです。
それでは、どぞ。
音を出さないように、大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。白い息がタバコをふかしてる様でちょっと楽しい。
あれから心許ないほどの壁しか残ってない家に入ったはいいものの、果てさて、どうしますか。
ヒバリに一応隠れてみると言った手前、1%…いや0.5%くらい生存確率を上げる為に、何とか隠れることとする。
「ヒバリー、ちょっと隠れるとこ探す為に移動するから、無線一回切るね」
「…分かりました。ご武運を」
…ご武運をって、何かカッコいいよね。かっこよくない?
取り敢えず私は、返事として「へいへいさー」という謎の号令をかけて無線を切る。…無線の向こうでヒバリが苦笑を浮かべたのを幻視した。解せる。
さて、私が今いる家は、日本ゆかりの和風建築な家。まぁ寺院だからそりゃそうか。こういう家に来ると、何かこう冒険したくなるよね。ほら、昔ボロボロの…資料? パンフレットみたいなので読んだ忍者屋敷的な感じで、隠し扉的なものないかな? あれがあれば隠れるのに最適な気がする。
足の具合を見る。どうやら、血は止まったようだ。良かった。これで失血死しなくて済む。
アラガミから隠れおおせても、失血死で死んでたら意味がないし。凍傷…は、まぁゴッドイータの環境適応能力で心配はいらないか。うーん、私たちって結構人外だね。…今更か。
取り敢えず、壁に沿って移動を開始する。出来る限り音を立てないように、三角座りからの手と足を使って浮いては進み、を繰り返す。何だこの地味な移動。
しかし、神器邪魔だな…。捨てようかな…。
どうせ私が死んだら神器だけ回収されるんだろうし…置いておいても良いよね? 確か神器ってアラガミが嫌うオラクル因子で作られてた気が…ダメだ。講義ほぼ寝てたから覚えてないや。違うんや。私が悪いんじゃない。バガラリーが悪いんや。
じゃなくて。
神器…うん。これはここに置いていこう。
これはここに置いていくのであって、決して捨てていくわけではない。いいね?後で私か、それとも別の回収班の人とかが回収するから。
じゃ、そう言う事で。
……だぁーもう、ちくしょう。置いて行かないよ相棒! 私とお前は一連托生! 死ぬときゃ一緒さ!
ということで、神器を抱えて移動中。
取り敢えず、この建物から出よう。壁がほとんどないから、隠れる場所もない。隣の家は結構状態良さげだから、そっちに移ろう。
外を確認。うっわー、いるわいるわ。わんさかいるわ。もう嫌んなっちゃう。アラガミ極東動物園にようこそってか? 喧しいわ。
このアラガミ達の目を掻い潜って、隣の家に入れと? …何その無理ゲー。ダレカタスケテ。
でも、やらなきゃ死ぬ。やっても死ぬ。…あれ? ならやらなくてもいんじゃね?
右見て左見て、また右を見て。少し間を開けて左見て。
…何だろう。ここ移動するのむちゃ怖い。今こっち見てないけど、移動してる時にでも目が合ったらと考えると怖過ぎて進めない。
…てやんでい! 女は度胸! やってやんなきゃ女が廃るってものですよ! シャオラ! 行くぞ! 行きますぞ! さぁ行くぞ! 行ってくださいお願いします。
いつもの私の恐怖克服術が使えない。足が震えて、震えて、震えて。いつもなら、自分って馬鹿だなぁみたいな思考に切り替わって、恐怖が薄れるんだけどなぁ…。
はぁ、真面目にやるか。隣家の距離。ざっと7メートル。これは…近い方なのか? まぁいい。戸は開いてる。壁も開いてる。入るのに問題はない。つまり、見つからなければよろしい。
血の跡は血が止まった事により心配しなくて良い。手と、足と、お尻の跡は雪が時間をかけて消してくれる。…時間をかけて。どうか見つかりませんように。
ここから見える範囲にいたアラガミは、みんな死角に行った。今移動すれば、見つからないはず。
大きく息を吸い込み、落ち着かせるように吐き出す。
最初の一歩は、思ったよりもあっさりと行き、そしてそこからは取り敢えず早く隠れたいとしゃかしゃかと無駄に機敏に動いた。私ってすごい。やればできる子。ちょー偉い。誰か褒めて。
いつもの調子も取り戻した事だし、ざっと内部拝見。さっきいた家よりも遥かに状態はいい。それでも天井には穴が空いてるし、壁も床も捕食された跡がある。
そう、床に捕食された跡である。つまり、床に穴が空いていたのである。
…この中に入れば、バレないんじゃね?
こう、斜めに食い進んだせいか、外から中は見辛い。試しに神器を中に入れて、外から見た感じを見てみたけど…うん、意外とわからない。ただ、意外とってだけで、見つかる時は見つかりそう。何かこう、見辛くなるように木の板とかあれば…。
家の中を見渡すと、天井を捕食した際に落ちてきたであろう木の板が、いくつかある。
これで軽く壁を作って隠れれば…。
うん、意外といけそうである。
元々天井に使われていた木だけあって、大きかったそれは穴に壁として立て掛けると地面から板が生えて何気に目立った。しかし、この板を使って穴を塞ぐように置こうとは思えない。
この木の耐久がなくて、バキッ!からのアラガミさんこんにちはって事になりそう。っていうかなる。水分吸ってるせいか、ボロボロだもの。バキッといくよ。そして見つかるよ。目が合うよ。パクりんちょからのご馳走様でしたで私死んじゃうよ。
ということで、私は早速穴に入る。そして板を下から引っ張り、こう、うまい具合に立て掛けて、私の姿を隠す。
これで、外から見たら天井から崩れた木の板が、床に空いてる穴に偶々入った…って見える筈。まぁ、相手アラガミなんで、そういう風に見せて効果があるのかどうかって言われたら、分からないんだけども。
後私ができることは…ここで静かに待つこと。いつまでかわからないけど、とにかく待つ。アラガミが離れ、助けが来るまで。
どうか、見つかりませんように。
◇sideヒバリ
私には、少し変わった友人がいる。名前は三日月アヤ。16歳。ゴッドイータ。使う神器はブラスト。適応率は33%…って、そうじゃなくて。もう、オペレーター歴が長いせいか、事務的な思考になってしまう。
アヤさんは何というか、お調子もの? やんちゃ? 彼女を言い表す言葉が思いつかないのだけれど、兎に角、彼女は変わり者 なのだ。何かいつものらりくらりとしていて、のほほんとしていて、いつも、平気そうな顔をしている。
そして、いつも静かに微笑んでいる。
他のゴッドイータに何かを言われても、のらりくらりと躱し、何事もなかったように私のところまで来て、任務を受けて、帰ってくる。
私は、それを見ているのが辛かった。彼女は私に微笑む時、その目が何かを諦めているように見えてしまうから。
目は口ほどに物を言う…。なるほど、サカキ博士が仰っていた意味が、今はよく分かる。
訓練から帰ってきた時、「やっぱりダメだった…」と語り、任務から帰ってきた時、「また足を引っ張ってしまった」と語り、他のゴッドイータに何かを言われた時は、「私はやっぱり落ちこぼれなんだ」と、その目は語っていた。
そして、彼女自身それを口にする。
でも、私は知ってる。いつもいつも、目では諦めているけれど、まだ、まだと努力し続ける貴方の姿を。
諦めても、また、何度も訓練しに行く姿を。試行錯誤し、努力し続ける貴方を、私は知っている。
どうして、そんなに頑張れるのだろうか。一度聞いた時、彼女は「うーん、私頑張ってるのかな? そうだと、嬉しいなぁ」って。よく、分からない。また今度聞いてみよう。
私は、彼女をこの支部の誰もよりも尊敬している。これまで、死んで欲しくないって、出会う人全員に思ってきたけれど、その中でも特にアヤさんだけは、死んで欲しくない。
彼女が居なくなった時を考えるだけで、私は怖い。怖くて怖くて、いつも寝る時で震えてしまう。考えないようにしようと思っても、いつのまにか、そのことを考えてる。そして、夢に見る。
お願い、生きて、帰ってきて。
今日も私は、そう願う。
帰ってきたら、また、いろんな話をしましょうね、と。
その願いを嘲笑うかのように、アヤさんから無線が入った。片足がなく、周囲にアラガミは溢れた、絶体絶命の、状況。
アヤさんが、死んでしまう。
私は溢れる涙が抑えきれなかった。それなのに、無線の先のアヤさんは、いつも通りの声音で話す。まるで、なんでもないかのように、のらりくらりと。その目はきっと、いつものように諦めているのだろう。
そのことを指摘すると「あ、バレた?」なんて言う始末。挙げ句の果てに、私が覚えてくれるから、死ぬことは怖くないだなんて、酷いことを言う。私は、絶対に忘れない。忘れることなんて、できるはずがない。
何度、アヤさんに話を聞いてもらっただろうか。アヤさんは所謂、聞き上手…というやつで、どんどんいろんなことを話したくなってしまう。サクヤさんも、ジーナさんもそうだった。彼女はきっと、気づいていない。貴方がいる事で、どれだけ私が救われたかを。両手の数でなんて、全然足りないくらいに。
だから今度は、私が助ける番だ。
大丈夫。私は知ってる。彼女が、決して諦めないことを。なんやかんやで、今出来るだけのことをすることを。
なんやかんやで、生きることを諦めないことを。
「リンドウさん、至急、カウンターまで来てください」
どうか、アヤさんを助けてください。
◇
あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
随分と長く、この穴の中にいる気がする。サカキ博士に教えてもらったけど、昔の動物は冬になると冬眠するらしい。私は今、冬眠しているといってもいいのではないだろうか?
穴に隠れて暫くは、いつ見つかるのかと怖くて怖くて仕方がなかったが、慣れとは恐ろしいもので、今では近くで物音、足音、唸り声などがしない限り、いつものようにくだらないことばかりを考えることができる。心の平穏って、大切だね。
周囲のアラガミも随分減ったようだ。頻繁に聞こえていた音が、今では嘘のように聞こえない。
といっても、ザイゴートやサリエルのように、空中に飛ぶアラガミからは音が殆どしないから、あまり参考にはならないが。
…私は後、どのくらいここに入ればいいのだろうか。
何て、思っていたからだろうか。
足音が、した。
音的に軽い。大型、及び中型ではなさそうだ。小型…二足歩行。オウガテイルか、ドラッドパイクか、はたまた…。、
ギシッと、床が軋む音がする。床下にいるので、余計に音が聞こえて、恐怖心を煽る。やだ、何これ、むちゃ怖い。
…、あ、ダメだ。怖すぎ。泣きそう。ダレカタスケテ。
ガタッと、板が、取られた。
……取られたーーー?
「よう、生きてるか?」
………。
「……やおっす、リンドウさん。生きてますよ」
「何だよ、意外と平気そうだな。…さぁ、帰るぞ」
穴から這い出す。
リンドウさんは、私の足を見て顔をしかめた後、大きく息を吐く。
彼が吐き出す息は、正真正銘、タバコの煙だった。
穴から出た空気は、とても煙たかった。
ゴホッゴホッ。
その後、無事に回収ヘリに乗って、アナグラに帰還した。
出迎えてくれたヒバリの笑顔は、いつもと変わらない、優しげな笑顔だった。
…たったひとつ、目に涙を溜めていたこと以外は。
お疲れ様でした。
ということで、ヒバリ視点から何だか思うように書けず、駆け足で走り抜いてしまいましたが、許して。たぶん、改稿するので。…たぶんね。
さてさて、ifルートということで、アヤさんにが無事帰還しました。
と言っても、片足がなくなったので、もうゴッドイーターとしては活動できません。
さてはて、これからのアヤの生活は、どうなっていくのでしょうか。
実は、もう考えてあります。
ので、まだ数話ぐらい続けようと思いますので、またお時間あるときにでも、覗いてやってくださいな。
ではでは。