私のことを、語り継いでくれますか   作:猫の休日

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お ま た せ 。

卒論の口頭試問の準備で何気に忙しかったのと、後はゲームしてました(白目




if カウンセラーアヤちゃん

目を覚ますと、そこは知らない天井だった。

いや、どこか見覚えがある。どこで見たんだろう?

そんなことをぼんやりと考えていると、ギィ…とドアが開く音がして。

 

「アヤ、起きなさい」

 

懐かしい声だ。その懐かしさに体が硬直する。

 

「お母…さん?」

 

顔を見る。しかしその顔は口より上から暗くなっていて、はっきり見えない。

 

「ほら、早く。お母さん、先に行ってるわよ?」

 

待って。待って待って待って!

 

「お母さん! 待って!」

 

今、今出て行ったら、アラガミが…!

ベッドから跳ね起き、お母さんの後を追ってドアを開けーー。

 

 

 

ハッと、そこで目が覚めた。

背中に流れる汗が冷たい。慌てて周囲を確認する。そこはもう、夢に見たかつての我が家ではなく、アナグラの医務室だった。

 

「うぐぅ!」

 

左足が痛んだ。そう言えば、取られちゃったんだっけと、他人事のような思考をする。

とっさに左足を触るが、手にコツンと、何かが触れた。

毛布を剥いで見ると、私の足から木の棒が生えていた。…いつのまにか義足を付けられていたようだ。

…義足って、かっこよくね? ほら、歴戦の猛者みたいな。

 

…ダメだ。いつもの調子が出ない。帰ってきてから、どうなったんだっけ?

何か、ヒバリが泣きながら笑って、お帰りって言ってくれたのは覚えてるんだけど、そこからの記憶がない。私、そこで気を失ったんだろうか?

 

…と、考えつつも頭の中では先程の夢を考えてしまう。いい加減、逃げないでその事実に直面しよう。

あれは、間違いなくお母さんだった。お母さんの声で、お母さんが死んだあの日、最後に着ていた服だった。そしてーー。

 

「………あ、れ?」

 

顔が、思い出せなかった。

何故? 何故何故何故何故?

 

前は思い出せていた、筈だ。

あれ? 前っていつだっけ。数日前? 昨日? それとも、数ヶ月、数年前?

待て、待て、待て待て待て。

 

 

いつから、私はお母さんの顔を忘れているーー?

 

 

やけに早い心臓の鼓動が、耳元で聞こえる。本能が、思い出すのを拒んでいるかのように、体が震えて、拒絶反応でも起こしてるみたいに。

 

目の前が、真っ暗になった。

 

そして、私は思い出したくもない、あの瞬間が、瞼の裏に浮かぶ。

お母さんの最後。お母さんが、オウガテイルに喰われてる、その瞬間。そしてその時、目が合った筈のお母さんの顔はーー、黒く塗りつぶされていた。

 

 

 

 

 

 

スッと、目を覚ます。

寝起きだというのに、やけに頭がクリアだ。今の私なら、何でもできる気がする。空だって飛べちゃいそう。手を小さくパタパタする。

 

「なに、してるんですか…?」

 

手をパタパタさせながら声がした方を向くと、そこには不審者でも見るような目つきをしたヒバリが立っていた。

やめて、そんな目で私を見ないで、癖になっちゃう。…うん、気持ち悪いな、ごめん。

恐らくヒバリは見舞いに来てくれたのだろう。そしたら、さっきまで眠っていた筈の私が起きていて、何やら手をパタパタさせていると……。私ヤベェな。

やめて、そんな目で見ないで、恥ずかしくて死にたくなっちゃう。ちがうんや、なんか寝ぼけて頭がどうかしてたんや…。

いや、待てよ? 今なら寝ぼけてるってことで流せられる…?

これだ! 三日月アヤ、ここに勝機を見たり!

 

「いや、今なら空を飛べそうな気がして」

「……よかった。いつものアヤさんですね」

 

……ちょっと待て。いつもの私ってなんだ。いつもの私はこんなクレイジーなやつじゃないぞ。いつもの私は、そう、完璧。完璧なのだよ? ヒバリくん。

 

「ちょっと待ちたまえヒバリくん。いつもの私とはどういうことかね。いつもの私はもっとお淑やかで、艶かしくて、そして笑顔の魅力的な大人なお姉さんだぞ」

「…まだ寝ぼけてるんですね。もう、早く起きてください!」

 

…解せぬ。

一度私のことを何だと思っているのか、小一時間ほど語り合おうではないか。

 

「…アヤさん、大丈夫ですか?」

「? 目なら覚めたけど?」

「いえ、そうではなくて、昨日お見舞いに行こうとした時、突然アヤさんの叫び声が聞こえて…その……」

 

昨日…、ああ、思い出した。うん、でもまぁ大丈夫。今なら、何とか。

 

「大丈夫だよ。昨日はちょっと、夢見が悪くてさ」

「……無理、しないでくださいね」

「分かってるよ、ありがとね」

 

ヒバリの顔は、どこか納得いってないって顔で、私の顔をじっと見てくる。

対する私は魅力的な笑顔。だって、私は大人のお姉さんだからね。

 

そうしてしばらく見つめ合って、先に折れたのはヒバリだった。

 

「分かりました。アヤさんがそう言うなら、今は特に何も言いません。でも、何かあったらちゃんと言ってくださいね?」

「あいあいさー!」

 

私の返事に、「もう…」と困り顔の笑顔を見せてくれるヒバリは天使。可愛い。もう大好き。ちょー愛してる。

 

「まぁ何はともかく、アヤさん、生きて帰ってきてくれて嬉しいです。今はゆっくり休んでくださいね」

「お、おう…」

 

いや、何て言うかそういうことを面と向かって言われますと、その…照れる。

だから、その、そんな微笑ましいものを見るまで私を見ないでください。優しい目で私を見ないでください。恥ずか死ぬ。

 

 

その後、ヒバリと少し話した後、ヒバリは仕事があると帰って行き、私はゆっくりと、瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「…カウンセラー?」

「はい。アヤさんの新しい仕事はカウンセラーです。医務室の一角に専用スペースが設けられる予定ですので、準備ができるまではゆっくりしててください」

 

退院して、ゴッドイーター ではなくなった私は今後どうしたらいいか分からず、取り敢えず自販機の前でぼーっとしてた時、教官にヒバリから仕事の話があると聞いて、カウンターまで来ていた。

そこで聞かされた新しい仕事は、まさかのまさか、カウンセラーだった。

 

…いやちょっと待て。

 

「あの、ヒバリ? 私カウンセラーとか、全然知識とかないし、何したらいいか分からないんだけど」

「ああ、その点は大丈夫です。アヤさんはいつも通りの対応をしてくださればそれで」

「…よくわかんないんだけど、それでいいの?」

「はい!」

 

何か、めっちゃ力強く返事された。

いやまぁ、正直ゴッドイーターじゃなくなったから、アナグラ追い出されて飢え死ぬか、はたまた義足だから逃げられずアラガミに食われて死ぬものだと思ってたから、ありがたいっちゃありがたいけども…カウンセラーか…何したらいいのかな。

 

そんな悶々とした気持ちを抱えながら日々を過ごしているうちに、カウンセラー室、できました。

取り敢えず仕事だからその場にいるようにしてるんだけど、その、ものすごく暇です。

だって基本みんな仕事忙しいですし、できたばっかりっていうのもあるんだろうけど、何の知識のない元ゴッドイーターがちょこんと座ってるだけだから、そりゃあ利用しないわな。私だってしない。ここに座ってるのがヒバリなら、行列できそうだけど。

していることといえば、時たまに様子を見に来るサクヤさんやジーナさん、リッカさんやリンドウさんと少し話して、後はいつも通りヒバリとの癒しの時間を過ごしたりしているぐらい。

なんだろう、なんて言うかその、ものすごく申し訳ない気持ちになってくるんですが。

みんな命がけで仕事してるのに、命を預かる仕事してるのに、私はただここに座ってるだけ。

しょっちゅう運ばれてくる怪我人相手に特に出来ることもなく、お医者さんの動きを眺めてるこの申し訳なさよ。手伝おうにも義足だから寧ろ邪魔になりそうだし…。

まぁ、意識のある怪我人たちとはよく話すし、何か仲良くなれるから別にそこまで苦ではないんだけど、私の良心が申し訳なささでいっぱいだよ。

 

誰かもっとカウンセラーアヤちゃんを利用してもいいのよ?

 

 

 

 

 

最近、ここアナグラでは一部の人たちの間で、とある話題で盛り上がっていた。

その人たちの共通点として、怪我などにより入院していた者たちという点で、総じて彼ら彼女らはこう語る。

 

医務室に天使がいる、と。

 

義足によってあまり出歩くことなく、仕事だからと、用がなければ立ち寄ることがない病室に引きこもっているため本人は知らないが、アヤのカウンセラーは、実はかなりの好評であった。

曰く、話をしっかり聞いてくれるし、そこから同情や哀れんだりするわけでもなく普通に話し、時折面白い言い回しや冗談を交えて楽しく話すそのあり方はかなり好感が持てる。

本人からしてみれば普段通りに過ごしているだけに、それがより効果を発揮していたりする。

 

そんな感じで、初めは医務室を利用した人たちの間での話題であったが、医務室を利用する人は時間とともに増え、それは初めはゆっくりと、しかし今では駆け巡るように、確実にアナグラに広まっていったのであった。

 

 





お疲れ様でした。
取り敢えず、私が思いついたアヤさんの仕事はこのようになりました。
私はカウンセラーについて、全くと言ってもいいほど無知なので、何か違和感やらがあっても、この話ではそういうものだと納得していただけると幸いです。

また、ここから話的にはコメディーっぽくなっていくかもしれませんので、先に告知しておきます。ご了承下さい。

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