やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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沼津バーガーのツイートでSiriusの名刺が紹介されてたのにテンション上がった作者です。

あれきっかけにもっといろんな人が見てくれないだろうか……


まぁ、そんなことはさておき、いよいよ二話の終わりです!


君と僕との繋がりの始まり

その後、暗くなってきたこともあり、渡辺が帰る必要があるとのことで、解散することとなった。一足先にバス停へ駆けていく渡辺を見送り、俺は自転車を回収した。

 

「それじゃあな」

「はい。比企谷先生、また明日〜!」

 

手を振る高海に軽く会釈して自転車を押して車道に出る……と、

 

「あの」

「ん?」

 

いざ跨ろうと思った時に声をかけられる。振り向くと、そこに立っていたのは先に帰ったと思っていた桜内だった。

 

「……何だ?」

「少しだけ、お話ししてもいいですか?」

 

えっ、何これ告白?……なんて中学時代になっていただろうし、何のドッキリだ?って高校時代にはなっていただろう。

 

けれども、流石に大人にもなればその辺りも成長するもので。桜内が何か悩み事があり、相談したいと思っているのであろうことは、何と無く想像ができた。

 

「……少しくらいならな。そこの海岸でいいか?」

「はい」

 

取り敢えず自転車を階段のそばに止め、海岸の方に降りる。海の方を見つめる桜内のやや後ろに立つ。

 

少しの間、波の音だけが響いた。

 

「私、ずっとピアノばっかりだったんです。子供の頃からずっと、ピアノが大好きで……まるで空を飛んでるみたいな気持ちになって、ただ夢中で弾き続けたんです」

「今の高海みたいに、か?」

「……はい」

 

ポツリポツリと彼女が語る話は、きっと彼女のあの表情の訳を、その理由に繋がっているのだろう。

 

なんで急にとか、なんで俺に、なんてことは思わない。きっと、たまたま高海と出会った時に、ほとんど事情を知らない身近にいた大人が俺だったからだろう。

 

「中学生の頃、ピアノの全国大会まで行ったことがあって。高校を音ノ木坂にしたのも、そこが音楽に力を入れている学校だったからで。みんなから、結構期待されてたんですよ。だから私も頑張って……でも、あるコンクールの時に……」

「……弾けなかったのか?」

「……それ以来、どうしてもピアノと向き合えなくなっちゃって……気分を変えるためにって、こっちに来たんです……でも、なんだかそれって……」

「逃げてるみたいで嫌だ、か」

 

授業での態度や、他の人への気の配り方とかからも、桜内梨子という少女が相当責任感の強い奴ではないかと思っていた。真面目、とも言える。

 

生来の真面目さゆえに苦悩した少女を、俺は他にも知っている。彼女たちもまた逃げること自体を嫌い、馬鹿正直に問題に向かいあっていた。それしか目に入らないかのように。まるで何かに掻き立てられるかのように。

 

そうやって、雪のように白い彼女は、海のように透き通った彼女は、苦悩していた。

 

そんな時、どう言葉をかければいいのか、何が正解なのかなんて、俺にはとてもわからないけれども。ただ、彼女たちと違う方向で問題を見つめる俺だからこそ、かけられる言葉もあるのだと、あの時知った。

 

ならば、俺がするべきことは決まった。

 

「桜内……お前、1つ勘違いしてるぞ」

「勘違い?」

「お前多分、自分が逃げてること、それ自体が悪いことで、なんとかしてそれだけに向き合わないといけない、って思ってるだろ?」

「それは、っ……そうかもしれません……」

「なぁ桜内……逃げてもいいんだぞ?」

「えっ?」

 

驚いた表情で振り返る桜内。小さくそよぐ風が彼女の長い髪を揺らし、月明かりがどこか芸術的な雰囲気を醸し出す。一瞬見惚れそうになりながらも、彼女から視線を逸らさずに語りかける。

 

「逃げること自体は悪いことじゃない。時にはそれが賢い選択の時もあるしな。周囲の期待とか、そういうの全部無視して、逃げ出してもいいんだ」

「でも、それじゃあ私は……もう、ピアノとは」

「まぁそのまま逃げ続けたらな。けど、そこからまた向き合うこともできる」

「また向き合う……ですか?」

「別にピアノと向き合うってのは、ピアノだけをやり続けるってことじゃない。寄り道、脇道、迷い道。そういうの全部経験することで、また道が見える……かもしれないぞ」

 

逃げることが悪だなんて誰が決めた?

 

その逃げた先でまた何かを見つけられるかもしれないじゃないか。そしてそれが何よりもかけがえのないものになるかもしれない……多分、知らんけど。

 

桜内のその罪悪感、それをどうにかしてやること。

 

それが今の俺に、浦の星女学院教師に向けられた、目の前の少女からの言葉なき依頼なのだから。

 

「だからまぁ……気晴らしでもいい。何か新しくやってみてもいいんじゃないか?」

「スクールアイドルですか?」

「悪くない選択だと思うけどな」

 

少し茶化すようにしながらニヤリと笑ってみせる。これやると相手に笑われるか気味悪がられるかのどちらかなんだよなぁ、極端すぎるだろ。

 

果たして桜内はというと……

 

「ふっ、ふふっ。比企谷先生って、意外と面白いんですね」

 

おっと、どうやら受けたらしい。気味悪がられるよりはマシだし、なんならちょっとだけ嬉しい。

 

「それに、なんだか思ってたよりもずっと話して良かったと思います」

「そりゃ何よりだよ。で?どうするつもりなんだ?」

「……少し、考えてみたいです。私がこれからどうするのか、どうすべきなのかを」

 

そう言ってから、また海へと彼女は視線を向ける。先ほどよりかは強い視線で、まっすぐ前を見つめている。その姿に、

 

「そうか。まぁ、あんまし遅くまで外にいないようにな」

 

とだけ告げ、歩き出す。

 

俺にできることはここまで、ということだな。

 

しかしまぁ、かつての恩師のようにとはいかないが、これなら教師としては及第点ではないだろうか……ダメか?

 

そんなことを考えながら自転車に跨る。

 

最後にちらりと桜内の方を見ると、彼女はまだ海を見つめている。

 

悩んで、足掻いて、そうしてなんとか答えを出す。

 

それが正解かどうかなんて、きっと誰にもわからないだろうけれども。

 

彼女が出した答えは、きっと間違いではない。なんとなくそう思える。

 

小さく息を吐き、ペダルを漕ぎ出し、ようやく帰路につくのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side cherry blossom

 

 

暗い部屋の中で、私はピアノにそっと視線を向ける。

 

流石に肌寒くなってきたこともあって、海岸を離れた私は、自室のベッドに座り込んでいた。

 

ぼんやりと手にしたスマホの画面を見つめると、高海さんが大好きだと言っていたμ'sが写っている。

 

彼女が参考にと書いた歌詞、その曲のライブ映像をついさっきまで見ていた。

 

前に見た制服とは全然違う、花の妖精のようにも見える衣装を着た彼女たちは、高海さんの言うように、輝いて見えた。

 

幼い頃、自分が大好きなピアノを演奏している時のような、そんな輝きであふれていた。

 

ふと、気づくとピアノの前に立っていた。

 

そっと椅子に座り、鍵盤に指を添える。

 

小さく息を吸い、ピアノの音とともに、言葉を紡ぐ。

 

「ユメーノトービーラー♪

 

ずっと探し~続けた~♪

 

君と~僕と~の~♪

 

繋がりを探し~て~た~♪」

 

パチパチパチ、と小さな拍手の音が聞こえる。

 

ハッとして音の方向を見ると、嬉しそうな表情の高海さんが、反対側のベランダに立っている。

 

「高海さん!?」

「えへへ。そこ、梨子ちゃんの部屋だったんだね!」

「もしかして、そこって、」

「うん。私の部屋だよ!」

 

なんとも言えない偶然に、驚いていると、高海さんが少し身を乗り出し気味に、興奮気味に話す。

 

「ねぇ、今のユメノトビラだよね?梨子ちゃん、歌ってたよね!」

「え、えぇと」

「その曲、私に凄いたくさん元気をくれるんだ。明日が待ってる、予感の星が降ってくるって。迷いながらでも立ち上がって、少しずつ、少しずつ進んでいくんだって!私が見つけた、トキメキの鍵……だから、私もやるんだって!」

 

そう語る彼女は、本当にキラキラしてて……画面の中の彼女たちのように、昔の私のように……

 

「高海さん……私は、どうしたらいいんだろう……」

 

そんな彼女に、ついついポツリと言葉を漏らしてしまう。比企谷先生から、逃げてもいいと言われて、他にも向き合い方はあるって、道はあるって言われて……でも、何をすればいいのかもわからなくて……

 

「ねぇ、梨子ちゃん……一緒に、スクールアイドル、始めませんか?」

「……高海さん」

 

言いながら、彼女がベランダ越しに手を差し出してくる。その笑みは、これまでの勧誘で見せてきたものとは違う、大人しくて、でも優しい微笑み。

 

「でも……私はピアノを……」

「捨てなくていい」

「えっ?」

「私がスクールアイドルを好きな気持ちが捨てられないみたいに、梨子ちゃんだって、ピアノを好きな気持ちが捨てられるわけないもん」

「でも、私は高海さんや渡辺さんのように、本気で始めようとしてるわけじゃない。そんなの……」

 

それは、ただ逃げるだけよりもずっといけないことだ。だって、それは彼女たちを利用しているだけではないのか。彼女たちの本気の気持ちに対して、失礼ではないか。

 

でも……

 

「私ね、さっきの演奏聴いてて思ったの。もっと梨子ちゃんのピアノを聴きたいって。だから、もし私たちが梨子ちゃんの力になれるなら、私は凄く嬉しいよ。みんなを笑顔にする、それがスクールアイドル……それって、すっごく素敵なことじゃない?」

 

そう言ってベランダからさらに身を乗り出して手を差し出す高海さん。その笑顔に、その言葉に、私は……

 

「ね?」

 

思わず必死に手を伸ばしていた。

 

普通に考えたら、こんなに離れているベランダから手を伸ばしても、届くはずがないのに……

 

でも、伸ばした手が少しずつ、少しずつ近づいていく。

 

そして……

 

「桜内梨子ちゃん、ようこそスクールアイドル部へ」

「ええ。よろしくね、高海千歌ちゃん!」

 

指先の触れた瞬間、聞こえた気がした。

 

私たちの、始まりの音色が。

 




Siriusのメンバー紹介、パート4!
黒澤ルビィ担当のゆこっぴさんです!

個人で踊ってみた動画を投稿しているだけあり、
メンバーの中でも踊りのレベルが高い。
少し低めの身長というのもあってか、ルビィ感増し増し。

個人的には「可愛いは正義!」という言葉が一番似合う。

Siriusだけでなく、彼女個人の踊りも是非見てください!

SiriusのTwitterアカウント
→@Sirius_LS
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