やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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8月8日はまさかの比企谷八幡と優木せつ菜、二人の誕生日!
というわけで今回は誕生日を記念したSSを書いてみることにしました(笑)

設定はこのシリーズとは全くつながりはないですが、系統として似た感じになるのでここの番外+突発のエリアにて掲載いたします。

時系列とかが微妙に分かりづらい感じになってしまっているかもしれませんが、そのあたりは特に気にせず、まぁ、気軽に読んでくださいな。



本気系の見せる本物は、とても美しく愛おしい

きっかけは本当に些細なことだった。

 

偶々とあるイベントでお台場の方へと足を運んだこと、それがきっかけだった。

 

まさかそれが、ある意味運命的ともいえる出会いの始まりになるだなんて、誰が想像できただろうか。

 

 

 

「ふわぁ~、お兄ちゃんお兄ちゃん。なんかすごいね」

「あぁ……人が多すぎてもう帰りたくなってきた。というか帰っちゃダメ?」

「ダメです!」

「あ、ですよね」

 

折角の素晴らしき提案もバッサリ妹に切られてしまった日曜日。学校が休みになるため、脳も身体も思い切り休めるはずの時間を、なぜか俺と小町はお台場で過ごしていた。小町がどうしても見に行きたいと言い見せてきたのは一枚のチラシ。なんだなんだと思いチラシを見てみると、

 

『なにこれ?スクールアイドル?』

『今高校生の間で大人気の部活動なんだって!総武にはないの?』

『聞いた事ねえな。というかあったとしても俺が知ってるわけないだろ』

『まぁそこはお兄ちゃんだしね~』

『で?このチラシは何なの?』

『今度お台場で、なんかいくつかの学校からスクールアイドルが集まってパフォーマンスするんだって!無料だし、折角だから見てみたいじゃん!受験勉強の息抜きのためにも』

『ほーん。ま、いいんじゃねえの。楽しんで来い』

『何言ってんの?勿論お兄ちゃんも行くんだよ?』

『は?何で?』

『なんでって、小町が心配じゃないの?いっぱい人が集まるところに行くし、小町のこともスクールアイドルと勘違いした人からファンですって声を掛けられちゃうかも『うし、行くぞ!』……う~んこのチョロさは小町的にポイント高いような低いような』

 

等というやり取りがあり、結果的に俺は小町に連れられるような形でここまで来ることになったのだ。まぁ、小町は可愛いし変な虫がつくのを防がなければならない使命もあるわけだから仕方がないと言えば仕方がないわけなのだが。

 

「あ、そろそろ始まるみたい!」

 

よほど楽しみだったのか興奮気味に小町が声を上げる。壇上には司会者らしき女性が立ち、イベントについての話をしている。

 

「それでは最初のグループに行きましょう!」

 

司会の挨拶を終え、いよいよ始まるようだ。

 

壇上に上がった4人の少女たちがトップバッターらしい。一瞬の静寂の後、曲がかかり彼女たちが動き出す。

 

――瞬間、周囲は歓声に包まれた。

 

―――――――――――

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん、スクールアイドルって凄いね」

「ん、あぁ。そうだな」

 

イベントもそろそろ中盤に差し掛かる頃。何組ものパフォーマンスを見てきたが、正直言って自分はスクールアイドルというものをなめていた。

 

所詮は部活動――遊びみたいなものだと。

 

けれどもそれは違っていた――間違っていた――認識を誤っていた、そう言わざるを得ない。

 

ステージからさほど離れていない場所から見ていたからだろう、ステージに立ったいろんなグループのメンバーの表情が良く見える――見えるからこそわかる。

 

あれだけ激しく踊りながら歌い、そして笑う。

 

決して簡単なことではないはずなのに、それこそプロにとっても大変なことのはずなのに、彼女たちは崩れなかった。

 

瞬間瞬間、そのどれもを切り取っても凄いと思えるほど、彼女たちは全力だった。

 

また一つのグループが終わりはけていく。イベントはそろそろ半分ほど過ぎたころ、

 

『さて次に登場するのはまさかのソロ参加!私立虹ヶ咲学園から来た期待の新人!』

 

司会の言葉に合わせて、一人の少女がステージ上に上がってくる。

 

クリーム色のジャケットに白いブラウス、赤のスカートには右側に大きく伸びるリボンがついており、両手は白い手袋に包まれている。

 

「こんにちは!スクールアイドルの優木せつ菜です!皆さん、スクールアイドルは大好きですか?」

 

大好き~!!という声があちこちから聞こえる。野太い声もあれば、女子の可愛らしい叫びっぽいのまで。

 

「私も大好きです!私はソロでの活動ですが、ここにいる皆さんと一緒に盛り上がっていきたいです!」

 

そう言った彼女が見せた笑顔に不覚にも――ああ、本当に不覚にも、俺は見蕩れてしまった。

 

周囲の歓声も、飛び跳ねる隣にいる小町のことも、全部が全部頭から消えていた。

 

ただ全力で笑顔を振りまく彼女に、たった一人で歌を届ける彼女に、その瞬間俺は心奪われていたのだった。

 

と、ステージ上の彼女がこちらを向いた。盛り上がる周りの中、自分だけ棒立ちだったのがなんだか申し訳ないような気がしてしまい、なんとなく会釈してしまった。いや、見えているはずがないのに何やってんの俺、クッソ恥ずかしい。

 

なんとなく気恥ずかしくて顔を背けようとしたとき――気のせいだったのだろうか、彼女がこちらに向けてウィンクをした、ような気がした。いや、うぬぼれんな俺。あれは大衆向けのサービスであって、特定の誰かに向けられたものではない。

 

ない、はずなのに。その瞬間、なぜか体の奥の方が熱くなった――みたいだった。

 

――――――――――

 

「どうかしましたか?」

 

そう言いながら首をかしげながらこちらを見上げるように覗き込んでくる少女に、ついつい思考の沼に沈んでいた意識が引き戻される。

 

「あぁ、いや。ちょっと考え事をな」

「考え事ですか?何か悩んでるなら相談してくださいね。力になりますから!」

 

元気よくこぶしを握る少女は、まぶしいばかりの笑顔を向けてくる。ステージの上にいるわけでもなし、照明をその身に受けているわけでもなしだというのに、輝いて見えるのは、色眼鏡がかかっているのだろうか。いや、眼鏡かけてるのは少女の方なんだが。

 

「そんなんじゃない。ただ、まぁあれだ。初めてステージ上の優木せつ菜を見た時のことを、なんとなく思い出してただけだ」

「初めて……あぁ、あのお台場での。なんだか懐かしいです」

 

肩の両側にかかるように結ばれている三つ編みの片方をいじるようにしながら、少し照れたように微笑む。

 

「あの時、なんとなく観客の中であなたが目に留まったので」

「あぁ、やっぱり見えてたんだな」

「そうですね。周りの人の中で、あなただけが驚いているような、不思議がっているような、そんな表情をしていましたから。意外と見えるものなんですよ、ステージから」

「そんなもんか」

「はい」

 

そう言って微笑む彼女――中川菜々こそ、スクールアイドル優木せつ菜のもう一つの顔であり、俺の大切な人でもある。

 

「でもびっくりしちゃいました。学校間交流で千葉の有名な総武高校の生徒会とお会いした時に、あなたがいたんですから」

「ほんとにな。俺もお前も生徒会役員じゃなかったし」

「あなたを誘ってくれた一色さんと、私の協力を受けてくれた三船さんに感謝しないとですね」

 

学校交流会に参加した(俺はさせられた)生徒会役員ではない者同士で、一年生の生徒会長をサポートする者同士。妙な共通点から俺たちの関係は始まったのだった。

 

思いのほか意気投合したのか、一色は三船と頻繁に連絡を取り合い、何故か俺を連れ立って会いに行くことも多かった。ちなみに三船はその様子を見て、

 

『あなたも大変そうですね。一色さんは私の同級生によく似ていますし、比企谷さんと話している時の一色さんは、その同級生が大好きな先輩といる様子を思い出します』

 

とか言ってたし。よくわからんが、恐らくその見解は大いに間違いであることは声を大にして言いたい。

 

まぁ、そんなわけで俺は中川菜々と出会い――そして何度目かに会った時に、彼女が優木せつ菜であることを知ったのだ。

 

しかし本人としては中川菜々=優木せつ菜ということはどうやら外部には秘密にしていたことらしく、知ってしまった時には大いに慌てていたのは記憶に新しい。

 

なんてことはない。彼女が中川菜々から優木せつ菜に変わろうと眼鏡をはずし、髪をほどいたところを偶々目撃してしまっただけのことだった。そもそもそのことを言いふらすような相手もいなかったため、そのことは二人の間での秘密、というものになったのだ。

 

それからしばらく、俺は中川菜々から相談事や悩み事を聴く関係になった。内容としては生徒会関係のこともあれば、アニメやライトノベルについて、果ては優木せつ菜についてのこともあった。まぁ、同好会以外では俺しか知らない秘密なら、俺にしか話せないこともあるだろうと思ったから、俺も特にそのことについて不満を漏らすことはしなかった。

 

「あの時は本当に助かりました」

「いや、大したことしたわけじゃねぇし」

「大したことです!だって、そのおかげで私は今も優木せつ菜としてステージに上がれているんですから」

 

そう言ってくれるが、それでも実際俺が大したことをしたとは思えない。俺のしたことなんて、至極単純で、簡単で、そして……思い返すと、なかなかに恥ずかしいだけだ。

 

『どうして、わかってくれないんでしょう』

『言わなくてもわかる、なんてことはあるわけない。そもそも言ったところで、分かった気になるだけのことが多いんだ。だから、なんでわかってくれないのか、なんて考えても仕方がない……けど、だからこそ、言葉にしないとわからないこともある』

 

あぁ、でも――

 

『優木せつ菜は、お前がなりたい自分じゃないのか?大好きなものじゃないのか?お前の言ってた野望は、スクールアイドルの可能性は、偽物か?』

『そんなこと!ない、です……でも、私は――』

 

それでも、その時の言葉が、少しでも彼女の力になっているのなら――

 

『我慢しながらやるもんじゃねぇだろ。本当に大好きなら、その気持ちを絶対離さないくらいの思いでやるしかない。そうやって初めて、見ている人にも伝わるんだろ。そうやって初めて、スクールアイドルっていうのは、人を感動させ、輝くんだろ』

『我慢しながら、やるものじゃない……』

 

なら、それは喜ぶべきことなのかもしれない。なぜなら――

 

『もっと確かめさせてくれよ。優木せつ菜の――中川菜々の本気が――本物なのか』

『私の――本物……』

 

彼女の本物の輝きを見たいと、その時も――そしてこれからも何よりも願っているのだから。だから俺はあの日――

 

『これから先、きっとまた悩むことはあると思います。何が起きるかわからないですし、不安になることもあるかもしれません。それこそまた、躓いて、から回って、立ち止まってしまうかもしれません。でも、あなたがいてくれたら、きっと大丈夫な気がするんです!』

 

『比企谷さん……もし私が悩んでいたら、また、手を握ってくれますか?』

『おう』

『不安な気持ちを抱えたら、話を聞いてくれますか?』

『おう』

『私の本物の本気を――見ていてくれますか?』

『……それは、奉仕部部員への依頼か?』

『……いいえ。依頼ではありません。ただ私が――優木せつ菜として、そして中川菜々として、あなたに――比企谷八幡さんに隣にいてほしいと思ったから。だから――』

 

『あなたの大好きを、私にください。そして、私の大好きを――受け止めてくれませんか?』

 

そう言いながら、イメージカラーと同じくらい鮮やかな色に頬を染めた彼女が差し出した手を、俺は握り返したのだ。

 

―――――――――――――――――

 

「ふふっ」

「ん?どうした?」

「いえ。こうして手を繋ぐたびに、あの日のことをつい思い出してしまいまして」

「……奇遇だな。俺もだ」

 

少し恥ずかしい気持ちになったから思わず視線をそらしてしまう。いまだに恥じらう俺に比べて、中川の方は抵抗がないのか幸せそうに手を握ってくる。やだなにこれ、やっぱり恥ずかしいわ、俺って意外と乙女なのかしら?……きもいな、うん。

 

「こうしてあなたの手を握っていると、本当に安心できるんです。この先も大変なこともたくさんあるかもしれません。でも――」

 

そう言って彼女は握る力を少し強める。思わず彼女のほうを見ると、中川は正面を向いたまま――その横顔に自信と期待を込め――嬉しそうに笑った。

 

「この手を引いて、引かれている限りずっと!私が進む世界は、とても眩しくて、愛おしくて――無限大の可能性が待っていてくれているんだって、信じられますから!」

 

あぁ、この表情だ。

 

彼女のこの笑顔は――初めて見たあのステージ上のものと同じで――俺の心をつかんで、離してくれそうもない。

 

「あ、そろそろ着きますね!本日発売のスクールアイドルグッズ、それにアニメグッズ!絶対に手に入れたいです!」

「わかってるわかってるから。とりあえずまぁ、店ん中行くか」

「はい!」

 

言うが早いか、彼女は俺の手を引きながら、やや駆け足気味に見えてきたお目当ての店に向かうのだった。

 

あぁ、まったく。

 

やはり本気系スクールアイドルが見せてくれる輝き(笑顔)は、とてもとても美しく、眩しく、そして何より――

 

――本物だった。

 




はい!と、いうわけで、

まさかまさかの二人の誕生日一緒という偶然、という名の奇跡(笑)ですよ!
いやはや、せつ菜の曲を聴いてた時にちょくちょく八幡のセリフがアンサーとして頭をよぎることがあって、なんか似ているようで似ていない、似ていないようで似ている、そんな気がしたので……

書いてみて、なかなかに楽しかったです。

改めまして、比企谷八幡様、優木せつ菜(中川菜々)様、お誕生日おめでとうございます!

それから、もう一人。
私が個人的に大好きなある方も本日誕生日なので、その人も!
ハッピーバースデーです!
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