やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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いよいよ次だ……次で最初のライブを書ける……

あ〜、結構引っ張った気がする……


まぁそれはさておき、もうすぐゴールデンウィークですわね。
がっつり長い休みなので、バリバリ楽しみであります!

そんな気持ちで今回のお話を、どうぞ!


「水」の名前

「あっ、比企谷先生!」

「な、なんだ?」

 

海岸に到着した俺を出迎えたのは、何やら悩んでいる様子の高海だった。

 

また何か問題があったのだろうか?などと考えていると、高海がタタタッと駆け寄ってくる。

 

「お願いします!グループ名考えてくださいっ!」

「……は?」

 

 

 

「実は昨日のビラ配りの時に、ルビィちゃんと花丸ちゃんにあったんですけど、その時にグループ名を聞かれまして……」

「3人で色々考えてたんですけど、」

「なかなかいいものが思いつかなくて……」

 

あ、やっぱり決まってなかったのか……前々から聞こう聞こうと思っていたがなんだかんだタイミングを逃してしまっていた案件である。

 

そう、彼女たち3人のグループ名。

 

単純に一回パフォーマンスするだけなら別段重要ではないかもしれないが、今後活動を継続するのであれば名前は重要になる。

 

多くのスクールアイドルがいる中で、かぶることなく、かつ覚えやすく、それでいてしっかりと自分たちをアピールできるものでなければならない。

 

「因みに候補とかあるのか?」

「えっと、出たのとしては……スリーマーメイドとか?」

「って、なんで蒸し返すの!?なしって言ったでしょ!」

「私的には制服少女隊ってのは捨てがたいんだけどなぁ」

 

なるほど。どうやら相当迷走しているらしい。というか、渡辺。その名前だと今製作中の衣装と全然違うだろ、もう一考しろ。

 

つっても、俺にネーミングセンスなんて期待するだけ無駄である。大衆ウケの良いものとか考えるの苦手だしな。

 

というわけで、

 

「俺には無理だな。3人で決めろ」

「えぇ〜」

「冷静に考えてみろ、高海。俺がそんないい名前を思いつけるセンスのある人間に見えるか?」

「そ、それは……え〜っと」

「おいやめろ。本気で考えて反応に困るんじゃない。自分でわかってても傷つくわ」

 

あはは、と苦笑いする高海。まぁ、自分でやってしまったことだから仕方ないことだが、こいつのストレートな反応はやはり無意識のうちにこちらにダメージを与えてくるときがある。

 

そういうとこが由比ヶ浜や穂乃果に近しいと思っちまうんだよなぁ。

 

「でも、どうしよっか?」

「とりあえず色々アイディア出してみて、先生に見てもらうっていうのはどうですか?」

「まぁ、それくらいならできなくはない」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

と、いうわけで、暫し3人の出すアイディアを聞いていたわけなのだが……

 

「うぅ〜、難しいなぁ」

「なかなかいいのが出ないね」

「悪いわけじゃないと思うぞ。ただなぁ……」

 

そう、決してアイディアがダメっていうわけではないのだ。ただ、既に似たような名前のスクールアイドルがいるとか、彼女たちらしいイメージが湧きにくいとか、何かが足りない、抜けているような感じがしてしまうのだ。

 

「う〜ん……ん?」

 

頭を抱えていた高海が何かに気づいたかのような声を上げる。視線の先を辿ると、彼女たちがたくさん書いた名前たち、そこから少し離れた場所に、1つだけ明らかに筆跡が異なるものが見える。

 

砂の上に書いた割には中々に丁寧な字でこう書かれていた。

 

「Aqours」

 

「これ、なんて読むんだろう?」

「エーキューアワーズ?」

「どう考えても違うと思うが?」

「あ、アキュア?」

「もしかしたら、アクア?」

「アクア……つまり水ってことか?」

「「「おお〜」」」

 

水、アクア、Aqours。

 

名前の見た目のインパクト、名前の覚えやすさ、それに水。彼女たちが共に歩みを始めたきっかけが海なのだし、今もこうして目の前に広がる景色の大半が水である。そういう意味では、彼女たちをよく表している名前にも思える。

 

「ね、名前これにしよっか?」

「いいの?誰が書いたのかもわからないのに?」

「だからいいんだよ!私たちが名前を決めようとしている時に出会った。それって、すっごく素敵なことじゃない?」

 

キラキラとした顔を向ける高海。渡辺と桜内が顔を見合わせ、小さく笑う。

 

「そうだね」

「それに、とても素敵な名前だもの」

「よしっ、決まり!今日から私たちは!」

 

 

 

 

『浦の星女学院スクールアイドルの、Aqoursです!』

 

翌日。

前もって使用許可を取っていた町内放送から、3人の声が流れる。沼津の駅付近にあまり行かない待ちの人にも知ってもらうために、ライブの宣伝をすることになったのだ。

 

まぁ、そういう意味でも、昨日のうちに名前が決まってよかったな。名前を覚えてもらえた方が、何かといいしな。

 

『あ、ちょっと待って。私たちまだ正式な部活じゃない』

『あっ、そうだった!』

『じゃあなんて言う?』

『うーんと……』

 

……コントか!

 

若干グダつきながらではあるものの、とりあえずライブの宣伝自体はできたのだった。

 

 

そしていよいよ……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side sailor

 

「うん、うん。もうすぐだから。はぁい」

 

電話を切って小さく息を吐く。気がつけば、もうライブの本番は明日に迫っていた。

 

既に辺りは暗くなっていて、もともと街灯がそんなに多くないこの辺りは、家々から漏れるあかりと、私が乗せてもらっている志満さんの車のライトくらいしか照らすものがない。

 

衣装も、歌も、踊りも準備はできている。いっぱい練習したし、クラスの子達も照明や音響、ステージの飾り付けを手伝ってくれている。

 

何度も駅に行ってビラを配ったし、感触も悪くはなかったと思う。

 

「うまくいきそう?」

 

前を向いたまま志満さんが質問する。

 

「う〜ん……うまく……体育館を満員に、できるといいんですけどね」

「満員ね〜。初っ端にしては中々高いハードルね」

「はい。でも、千歌ちゃんもあんなにやる気になってますし、私も一緒にやるって決めてますから。だから、結果はどうであれ、明日は目一杯やりますよ」

「そっか。それにしても不思議ね〜。あの飽き性だった千歌ちゃんが、ここまでやる気になるなんて」

「飽き性なんじゃなくて、中途半端にやるのは良くないって、そう思えるから。だからこそ、これだ!ってなると、あんなにのめりこめるんですよ」

 

今日の終わりまでずっと、千歌ちゃんは明日に向けて燃えていた。不安や緊張もあるだろうけれども、それよりも楽しみにしてるんだなぁ、ってこっちが思うくらいに、彼女はキラキラしてた。

 

「曜ちゃんはほんとに、千歌ちゃんをよく見てるわね」

「長い付き合いですから」

「そっか……明日が不安?」

「……正直言うと、少しは」

「ふふっ、大丈夫よ。この町の人は優しいから。ね?」

 

そう言って志満さんは微笑む。それに対して、はい、と頷く。そういえば、さっきも似たようなことを言われたなぁって思い出す。

 

この町に来てまだほんの少ししか経っていないはずなのに、志満さんと同じことを言っていたことが、どこか不思議にも思う。

 

でもあの人は私たちに向かって、はっきりと言った。

 

『このタイミングで言うのもなんだが、今しかなさそうだからな。明日のライブが終わるまで、何人来るかということは考えるな』

 

『何人でもいい。たった1人でもいい。来てくれた人は、お前達のパフォーマンスを見たいと思って来てる』

 

『だから、来てくれてる人のために、全力で歌って、全力で踊ることだけ考えろ。全力で楽しんでもらうことだけ考えろ』

 

『……まぁ、大丈夫だろ、多分。優しい町だしな、ここ』

 

たった1人でも、来てくれた人のために全力で……か。

 

どこか来る人の数のことが頭から離れなかった私にとって……ううん。多分梨子ちゃんにとっても、千歌ちゃんにとっても、その言葉はストンと心に落ちた。

 

スクールアイドルが歌って踊るのは、人を集めるためじゃなくて、お客さんに楽しんでもらいたいから。最初の頃に参考として読んだ雑誌にも、そんなことが書いてあった。

 

体育館を一杯にすることをついつい意識しちゃってたけど、そうじゃないんだ。

 

だから……全力で千歌ちゃん達と楽しもう、そう思えた。

 




Sirius紹介ターイム、梨子ちゃん編。
最初の3作品では双葉さんが担当していたパートですが、彼女の後に参加したメンバーを紹介します!

今回紹介しますのは、夜桜心春さん。
単発案件での参加ということでしたが、二曲に参加。

大変可愛らしく、桜内梨子パートを踊っていた彼女。今後再度登場するかは不明ですが、また踊っているところを見たくなる魅力があります。

あ、因みに最年少です、確か(笑)

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