やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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折角なので平成最後のこの日に投稿しますね(笑)
なお、平成最後と令和最初の日は沼津よりお送りいたしまーす。

いよいよファーストライブ!
そして今回もなんと……


ファーストライブ

校舎の入り口に立ち、空を見上げる。ゴロゴロと低い音が響き、時々遠くの方で空が光る。

 

ライブ当日。残念ながら天候には恵まれなかったらしい。激しく降りしきる雨。空模様だけでなく、海模様もどこか怪しげで、どことなく不穏な雰囲気を醸し出している。

 

「ファーストライブ、か」

 

決してそれがなかった方が良い、なんてことは思わないし思えない。それは彼女達に対して、失礼だから。

 

しかし、それでも。

 

あの空っぽに近い講堂を最初に見たときの3人の表情は、今でも思い出せる、思い出せてしまう。

 

「そんなところに立っていては、風邪を引きますわよ」

「別にそんな濡れてるわけじゃないし大丈夫だ。というか、その言葉そっくり返すぞ」

 

視線を向けるでもなくかけられた声に応える。黒澤が隣に立つ。

 

「体育館で待ちませんの?」

「あぁ。ライブの時間になったら行くわ」

 

今頃体育館では、高海たちが最後の準備をしているところだろう。客の入りはここからでは確認できないが、結果は行けばわかるだろう。

 

「あなた、あの3人が心配じゃありませんの?もうすぐ本番ですわよ。何か声をかけるとか、あるんじゃないですの?」

「……ないな。なんならもう言えることは言ってある。後はあいつらが本番どうするか、それだけのことだろ」

 

実際、今更彼女達にかける言葉などない。もうここまで来たからには、後はライブをするだけ。

 

これまでの準備も、練習も、彼女達はこの時のためにしてきたし、それを俺も手伝ってきた。けれども、ここからは彼女達にしかできないのだ。

 

「……今日、成功すると思いますの?」

「さぁな。なんだ?心配してるのか?」

「ちっ、違いますわ!わたくしはただ、生徒会長として、彼女達の挑戦を見届ける義務がありますの。それ以前に、彼女達はこの学校の生徒。ならばその学生生活が良いものであってほしいと願うことは、生徒会長として当然……何を笑ってますの?」

「くくっ、あ、いや、すまん。なんでもない」

 

必死に取り繕おうとまくし立てるその姿に、どことないポンコ……人の良さを感じてしまい、思わず笑ってしまった。

 

本当に、こいつはこいつで学校のこと、生徒のことを大切に思ってるんだと、認識させられる。

 

「まぁ、あれだ。満員になろうがならなかろうが、結局はあいつらのすることは変わらないしな」

「……思ったよりも冷めてますのね」

「あそこに立つのは俺じゃないしな」

 

そう言って背中を預けていた壁から離れる。そろそろいい時間だろう。

 

「んじゃ、行くわ」

「……わたくしも行きますわ。ライブの確認も、生徒会長としての義務ですので」

「そうか」

 

結局、ただの一度も視線を合わせることなく、俺と黒澤は並んで体育館の方へ向かった。

 

ちらりと携帯を見る。一応連絡はしてみたものの、やはりそう簡単にこっちに来られるわけもなく、今回はほとんどから申し訳なさげな連絡が来ていた。

 

……一人を除いて、だけどな。そもそも返事自体来てないし……

 

その後、一言も交わすことなく、扉の前にたどり着く。特に躊躇するわけでもなく、扉を開けて中に入る。下向き気味だった視線を上げて前を見る。

 

 

そこに見えたのは、満員からは程遠い客席だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side mandarin

 

「雨……止まないね」

 

雨だけじゃなく、雷の音も遠ざかる気配がない。

 

せっかくのファーストライブ。せめて天気には恵まれて欲しかったけど、しょうがないよね。

 

曜ちゃんの作ってくれた衣装に着替えた舞台裏。もう後少しで始まる、私たちの最初のライブ。

 

緊張もするけど、不思議と落ち着いていられていることに、ちょっと驚いてる。

 

「そろそろだね」

「何か掛け声でもやる?」

「そうだね。えっと、どうしよっか?」

 

ついつい3人で顔を見合わせてしまう。

 

「手を重ねる感じかな?」

「こう?」

 

曜ちゃんが最初に差し出した手に、梨子ちゃんと私の手を重ねる……でも、何だか少しさみしい感じもする。

 

「……手、繫ごっか」

「「え?」」

「ほら、3人で輪を作るようにして、っと」

 

私の右手を梨子ちゃん、左手を曜ちゃんと繋いでみる。2人も空いている方の手で繋ぎ合う。

 

2人の手の感触を確かめるように目を閉じる。真っ暗な中でも、2人の手の温もりはしっかり伝わってくる。

 

「大丈夫。3人一緒だもん」

「……そうね」

「それに、先生も見てくれてる」

 

そうだよね。先生も必ず見てくれるって、約束してくれたもんね。

 

 

突然協力したいって言ってくれて、しかもスクールアイドルの活動についても詳しくて、私たちの知らないところでも色々してくれて、なんだか不思議な先生。

 

普段はちょっと不機嫌そうに見えるけど、かけてくれる言葉は優しくて……

 

『ちゃんと見届けてやる。だから、全力で歌って、全力で踊って、俺を驚かせてくれ』

 

うん。

 

やろう。

 

「行こっ!せーの、」

「「「Aqours、サンシャイーン!」」」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ゆっくりと幕が上がっていく音がする。

 

なんとなく3人ともステージに立ってから目を閉じてしまっていたから、今、幕の向こう側がどんな様子だったのかはわからない。

 

と、完全に幕が上がりきったのかな?小さな音が止まった。

 

ゆっくりと目を開き、顔を上げる。

 

 

1、2、3……10人くらいかな?すぐには数えられなかったけれども、それでも満員ではないことだけはすぐにわかった。

 

「あっ」

「……っ」

 

両隣から小さく、思わず漏れてしまったかのような音が聞こえてくる。

 

繋がれた手から伝わる不安や残念という気持ち。

 

私も……思わず手に力が篭りそうになって、

 

「あ」

 

入り口付近に立って、じっとこっちを見つめる先生の姿が見えた。

 

1秒?1分?1時間?そんなに長いはずないんだけどな。なんだか時間の感覚がおかしくなっちゃったみたい。暗くてよく見えないはずなのに、先生と目が合った気がした。

 

先生はその表情を変えずにただこっちを見てるだけ。でも、なんだかわからないけど、それだけで心が落ち着いた。

 

ちゃんと見てくれてる。

 

そう思うと、あんなに緊張してたのに、あんなに不安だったのに、不思議と大丈夫だと思えた。

 

手を離し、一歩前に出る。

 

2人の視線を背中に感じながら、はっきりと言葉にする。

 

「私たちは、Aqoursです!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side teacher

 

入り口付近の壁にもたれながらステージを見る。一瞬高海がこっちを見ていたような気もするが、今の彼女の視線は自分の真正面、観客を見ている。

 

「あんまりショックじゃなさそうデスね」

「どうだろうな。けど、ショックだろうとなかろうと、今やるべきことは変わらないだろ」

 

いつの間に隣に立っていた小原にそう返す。実に当たり前のようにそのまま同じように壁に背を預ける小原。

 

「これからどうするつもりデスか?」

「さぁな。先のことなんて考える場合でもないだろ。あいつらにとって大切なのは、今この瞬間、ここにいる人たちなんだからな」

 

例え目標に達していなかろうと関係ない。今ここに集まっている人たちは、他でもなくあいつらを見に来た客なのだから。多かろうと少なかろうと、そこには何の違いもない。

 

だから、今彼女たちにできること……いや、すべきこと、それは……

 

 

 

桜内と渡辺が一歩前に踏み出し肩を並べる。

 

「歌おう!私たちの全力で!聴いてください!」

 

高海のその言葉を合図に照明と音響の生徒が動く。

 

3人が最初の立ち位置に着く。息を吐いてからポーズをとる。

 

桜内の曲と、高海の歌詞、そして渡辺の振付がほぼ同時に始まるこの曲は、彼女達の歌声とともにスタートを切った。

 

高海の大好きという気持ちを込めたその歌は、彼女たちの出だしらしく、最初のときめきを見つけた、その気持ちを込めた歌。

 

ちらりと周りの様子を見てみる。

 

10人もいるかわからないけれども、誰もがじっと彼女たちのパフォーマンスを見ていた。口元に見えるのは、笑顔。中には音楽に体を揺らす人もいる。

 

しっかりやれている。

 

そう思ってステージに目を戻した瞬間、落雷とともに、視界が真っ暗になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side mandarin

 

「っ、何?」

「停電?」

 

今まさにサビに入ろうとした瞬間、光が消え、音が止まった。客席側からも戸惑う声が聞こえてくる。

 

さっきの雷の影響で、停電しちゃったみたい……

 

声は聞こえるけど、誰も見えないし、手の届く範囲に誰もいない。まるで暗闇の中に、一人放り出されちゃった気持ち。

 

さっきまで見えていた気がした輝きの一端は、今はどこにも見えない。

 

悲しくて……悔しくて……心細くて……でも、私たちはステージに立っている。みんなを楽しませるために、だから……

 

必死に歌詞を紡ごうとする。声が震える……

 

視界がにじむ。泣いちゃダメ、そう思うのに……

 

 

バンッ!と大きな音を立てて、体育館の扉が開く。外から強い明かりが差し込んで、ステージを照らす。

 

土砂降りの雨の中、雨合羽を着た人影が見える。

 

「バカチカぁ!」

「……美渡姉?」

 

少し目が慣れたらわかった。肩で息をしながら親指を立てているのは、間違いなく美渡姉だった。でも、どうして?

 

「あんた!開演時間、間違えたでしょ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side teacher

 

高海の姉が中に入るのに続くように、次から次へと人が入ってくる。真っ暗な体育館では正確な数はわからないが、人の波が止まる気配がない。

 

後から知ったことだが、駐車場どころか道路までもが車でいっぱいに埋まっていたらしい。

 

 

と、突然照明が戻りステージを照らす。3人の姿が鮮明に浮かぶと同時に、観客席の様子もぼんやりとだが見える。

 

体育館を埋め尽くす人、人、人。

 

老若男女問わず、大勢の人がここに集まっていた。

 

「Incredible……」

「そうだな……やっぱり優しい町だよ、ここは」

 

最後に入ってきた人物を見ながら、小さく呟かれた小原の言葉に、何となく返事してしまう。

 

入ってきたのは既に中にいたはずの黒澤。視線に気づいたのかこちらを見る。ふんっ、といった具合に顔を背ける仕草に笑ってしまう。

 

そういえばこの学校は発電機があるんだったな、なんて思いながら。

 

 

あの日、ほぼ空っぽの講堂で彼女たちは歌った。それが彼女たちの始まりだった。

 

今目の前の3人は、彼女たちとは異なるスタートを切ることになったようだ。

 

「……ホントだ。私、バカチカだ」

 

笑顔で涙を流しそうになっている高海。一瞬俯いてから、顔を上げる。その表情は強い決意と、喜びに満ちていた。

 

「キラリ!」

 

その言葉に合わせるように、桜内が、渡辺が、そして彼女たちを手伝うクラスメートたちが動く。

 

再び流れる音楽に合わせ、3人は踊り、歌う。

 

その姿に、観客が沸く。

 

今の彼女たちのそれはまだまだラブライブに出場できるレベルには達していないかもしれない。

 

でも、それでも彼女たちは客を楽しませるに足るパフォーマンスができていた。

 

3人の熱意に引かれたのか、壁につけていた背中を離し、小原のそばから離れ、少しだけステージに近づく。とは言っても、結局は一番後ろなんだが。

 

ここからでもはっきりと、彼女たちの楽しげな表情が見える。

 

 

トンッと背中に小さな衝撃が加わる。誰かが背中合わせになるようにしてきている。

 

小さな笑みを浮かべてしまう。

 

こんなことするやつ、俺は一人しか知らない。返事はしてなかったが、わざわざ来てくれてたらしい。

 

「どうだ?あいつらのファーストライブ」

「ふんっ。まだまだ全っ然ね。歌も踊りも拙いところがあるし、駆け出し感満載ね。パフォーマンス途中で泣きそうになっちゃったのも、プロとしてはアウト」

「流石に厳しいな」

 

特に体を相手に向けるでもなく、そのままの姿勢で会話する。あの頃から変わらない様子に、少し笑ってしまう。

 

「キャラは立ってると思うか?」

「それも全然ね。あの頃の穂乃果たちと、そう変わらないわよ」

「そうか」

「そうよ……だから、もう少しだけ、期待してあげてもいいわよ」

「そりゃどうも。スーパーアイドルのお墨付きなら、この先期待できそうだな」

「なぁに呑気なこと言ってんの?あんたの働き分も含めての期待値なのよ?」

「え〜」

「え〜、じゃない!」

 

ここで彼女が背中を離し、回り込んでくる。マスクにサングラスという、これまた相変わらずな変装をした彼女のツインテールが揺れる。

 

「あんたが付いてるんだから、絶対ラブライブ 優勝しなさいよ!」

「するのは俺じゃないけどな。それに、期待値高くないか?」

「それくらいやってもらわないと、こっちが困るの!スーパーアイドルの元マネージャーなんだから」

 

それだけ言って、彼女が踵を返す。

 

「もう行くのか?」

「ええ。一応これでもそれなりに忙しいのよ。でもまぁ、見に来てよかった」

「そうか……頑張れよ」

「あんたもね」

 

最後に特徴的な手の形を作り、ピースのように顔の横に持っていく。こいつの代名詞で、締めるらしい。

 

「じゃっ、ラブにこ」

「……久々に見るな、それ」

「惚れ直したかしら?」

「いや、普通に痛いな」

「なぁんでよ!」

 

演奏の邪魔にならないように小声で、でもしっかりとあの頃と変わらない様子に、どこか安心した。

 

最後にサングラスを外し、ウィンクだけしてから、矢澤にこは体育館を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side mandarin

 

最初の曲が終わった。

 

全力で歌って、全力で踊った。

 

自分たちも楽しかったけど、それよりも、こんなにたくさんの人が見にきてくれた、見て、笑顔になってくれた。

 

そのことが、本当に嬉しかった。

 

隣を見ると、曜ちゃんと梨子ちゃんも笑顔だった。

 

やれたんだ、私たち!

 

「スクールアイドルはどこまでも広がっていく!」

「どこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられる!」

「それが、私たちの憧れたスクールアイドルの言葉です!」

 

と、誰かが観客席の後ろから一番前まで歩いてくる。

 

「この成功は今までスクールアイドルを大きくしてきた方々の努力と、この町の方達の善意によるもの。勘違いはしないように!」

 

強い視線で、凛とした態度でそういうダイヤさん。その言葉は正しいんだと思う。みんな優しい人たちだから。でも、

 

「分かってます。きっと私たち、まだまだなんです。まだ、始まってもいない。でも!見てるだけじゃ始まらないから!」

 

曜ちゃんと梨子ちゃんが片方ずつ手を握ってくれる。思わず顔を見合わせて笑う。また前に視線を向けると、体育館の後ろの方に立っている比企谷先生が見える。

 

始まる前とおんなじで、ただそこに立って見てるだけの先生。でも、ずっと私たちを見てくれてた先生に、伝えたい。

 

「今しかないこの瞬間だから!私たちは、」

「「「輝きたい!」」」

 

さぁ踊ろう、また歌おう!次の私たちの曲を!

 

「聴いてください!」

 




今回はちょっとした番外編!
Siriusのメンバー3人、つくねさん、まあむ様、あのさんの3名による踊ってみた動画。
決めたよ Hand in Hand!

こっちは完コスでの踊りですが、流石はSiriusのダンス担当と名高いお三方、かっなりキレッキレ!

全員が美少女の上上手いから、見てて楽しい!

普段とは違うSiriusメンバーの一面をどうぞご堪能あれ(笑)

Youtube
https://m.youtube.com/watch?v=Surf8a--3Io

ニコニコ
https://sp.nicovideo.jp/watch/sm34147847?ss_id=dd1e21fd-f3ea-4d2c-b19c-ba190612d7dd&ss_pos=8&&cp_in=wt_srch

SiriusのTwitterアカウント
→@Sirius_LS


あ、因みに明日も載せる予定です(笑)
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