やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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長らく間空きまして失礼いたしました。

続きは一応書いてます書いてます。

いやまぁちょっといろいろとありましてね……


魚を獲るのではなく……

side teacher

 

最初は驚いた表情をしていた松浦だったが、ふっと微笑み手招きをする。あの、一応俺目上の人だからね、とは思っても松浦の俺に対する行動にいちいち突っ込むのも面倒なので口にはしない。とりあえずスマホをポケットにしまってから松浦の方へと近づいた。

 

「おはよう、比企谷先生」

「おう。こんなところで何してるんだ?」

「私は日課のランニング。ダイビングショップをやるには泳力と体力が必要だからね。ここの階段、昔からのトレーニングコースなんだ」

「え、マジで?」

「うん、マジだよ」

 

いやいやいやいや、嘘だろ。あれ毎日上ってるのか?しかも昔からのトレーニングコース?何なのドMなの?

 

「なぁ、松浦?一つ確認してもいいか?」

「?いいけど?」

「まさかとは思うが、あの階段、全部駆け上がって来たわけじゃないよな?」

「?ランニングなんだから走るのは当たり前でしょ?」

 

はい頂きました体力バカ発言~!マジで行ってるのかこいつ?あの階段全部駆け上がって来たのか?化け物かよ?

 

「どうしたの?」

「いや。ちょっとお前の凄さを認識させられていただけだ、気にするな」

「?ところで、比企谷先生はどうしてここに?」

「ん、あぁ。まぁ部活動の一環だ」

「部活って、スクールアイドル部?」

「まぁな。高海のやつがスクールアイドルには体力が必要!って言いだして、あいつらでここの階段駆け上がりにチャレンジしてる。で、俺は何故かゴールで待つ係」

「そっか。でも、いきなりここの階段に挑戦だなんて、千歌らしいね」

「まぁ、たぶん途中で休むなりしてくるだろうけどな。今は体験入部生もいることだし」

「そうなんだ?じゃあまた新しいメンバーが入るかもしれないんだ」

「まだ未定だけどな。なんか二人ともいろいろ抱えてるっぽいしな。そうすんなりと入ります、とはならなさそうだ」

「おおっ、なんかそうやって考え込んでるところ、先生っぽいね」

「いや俺先生なんだけど?」

 

会話している時、松浦はずっと笑顔だった。ただ、最初にあいさつした時に見た笑顔と、今高海について――正確にはスクールアイドルについて――話をしている時の笑顔は、やはりどこか違うもののように感じた。

 

「ふぇぇぇ、あっ!ゴールが見えてきた!」

「ラストスパート、全速前進であります!」

 

と、何やら賑やかな声が聞こえてくる。いよいよ高海たちの到着らしい。確認のために鳥居の方へ向かうと、何も言わずに松浦もついてくる。丁度階段を見下ろせる位置に着き、下を見ると、

 

「はぁ、はぁ……あれ?果南ちゃん?」

「松浦先輩が、どうしてここに?」

「ふぅ~。ルビィちゃんと花丸ちゃん、大丈夫?」

「は、はい~」

「な、なんと、か」

 

やはりというかなんというか、どうやら途中から駆け上がることは断念したらしい。呼吸こそ少し乱れているが、高海、渡辺、そして黒澤の表情からは若干の余裕が見て取れる。桜内は比較的疲れているようだが、ライブまでの間に鍛えられたのか、まだ少し余裕がある。

 

さて最後の一人の国木田だが、聞くところによるとこれまで運動らしい運動をしてきたことがなく、完全な文学少女だったとか。まぁうん、言いたいことが何かはわかると思うが、とにかくしんどそうである。それでも途中でギブアップするわけでもなく、ちゃんと最後まで上ろうと努力しているあたり、なかなか骨があるように思える。

 

「着いた!」

「おう、お疲れ」

「お疲れ様」

 

社殿の近くまで移動したのち、松浦と一緒に5人にそれぞれの水筒とタオルを渡していく。勢いよく飲む高海や渡辺、先に汗を拭く桜内と黒澤、疲れ果てているのかレスポンスがない国木田。というか最後本当に大丈夫か?

 

「国木田?大丈夫か?」

「あ、はい。マルは、大丈夫です」

「熱中症とかになってないか?念のため……あ、いや松浦、頼めるか?」

「?ああ、診てあげればいいの?でも、先生がやってもいいんじゃないの?」

「まぁ他にいないならそうなんだが、同性の方がいいだろ」

「まっ、そうかもね。え~と、花丸ちゃん、だよね?ちょっと顔見せてね~」

 

顔色や体温、発汗状態や意識の鮮明さ等、色々確認しておいた方がいいと思い、一先ず松浦に任せる。いや、別にそういうことの経験がないわけではない。にゃーにゃ―言う元気娘あたりは割と動くことに夢中になりすぎる傾向があったし、場合によっては俺が対応しなければいけないこともしばしば。

 

ただまぁ、あの時はそれなりに互いのことを認識()って、意識()って、()ってからだったわけで、今の俺とAqoursとではそこまでの関係性は出来上がっていないのだ。特に国木田はこれまでだと授業の時くらいにしか顔を合わせていないのに、そんな相手(付け加えるなら成人済みの異性で目が腐っている)にまじまじと顔を見られるのも気分が良くないだろう。

 

松浦が国木田のことを見ている間、少し離れておくとタオルを首から下げた高海が近づいてくる。

 

「先生って果南ちゃんと仲いいんですか?」

「どうした急に?」

「ほら果南ちゃん、先生に敬語使ってなかったじゃないですか。私たちが上ってくる間も一緒にお話ししてたみたいですし。それにさっきのやり取りも、仲いい感じがしました」

「仲いいってわけでもない。ただ、仕事であいつの店に行くことが何回かあって、あいつの中で俺が常連さん扱いになっているってだけだ」

「そうなんですね。あっ、じゃあ比企谷先生から果南ちゃんを勧誘してくれませんか?スクールアイドル部!」

「いや、一回断られたんじゃなかったのか?」

「そうですけど!比企谷先生なら説得できるんじゃないかなぁ、って」

「根拠は?」

「ないです!」

「いや、そんな自信満々に答えるなよ……」

 

高海から視線を外しながら松浦の方をなんとなく見る。国木田の方は何ともなかったらしく、今は渡辺と話をしている。

 

なんとなく、そうなんとなくではある。

 

なんとなくではあるが、松浦にとってスクールアイドルというものが、単純に幼馴染がやっているものだとか、知識として知っているものだとか、そんな簡単なものではないのではないか、そう感じている。

 

スクールアイドルの話題になった時に、僅かに見えた感情の揺れ。社会的に見ればまだまだ子供である彼女が、世の大人がするように笑顔の裏に隠そうとした何か、本音ともいえる気持ち。どことなくその様子が、黒澤姉のそれに通じるものがあるような、そんな気がしたから。

 

ただ、

 

「まぁ、俺にできるのは魚を釣るのではなく、釣り方を教えることだけだから、そういう直接的なのはダメだな」

「へ?何で急に釣りの話?」

「俺の尊敬する友人が言ってたんだよ。あの頃も今も、俺の中にその言葉が残ってるってだけだ。俺の教師観にも影響を与えているしな」

「先生のが尊敬する友達ですか?どんな人か会ってみたいです!釣りが好きなんですか?」

「高海……作詞担当するつもりなら、まずは国語力あげような。今度みっちりしごいてやるわ」

「えっ」

 

高海と会話しながら彼女のことを思う。

 

あの部室でいつも本を読んでいた彼女のことを。

 

あのライブ会場で微笑んだ彼女のことを。

 

今もあの姉とともに頑張っているであろう、友達のことを。

 

いつか潮風香るこの自然豊かな場所へ、彼女を、彼女たちを、呼ぶ日が来るのか考えながら。

 

――――――――――――――――――――――

 

side ???

 

果南ならこの時間にここにいると思って来てみたら、school idol部のメンバーと一緒にいるなんてね。みんなのことを見つめる果南はとてもやさしい表情をしているけど、私にはやっぱりどこか寂しげにも見えた。

 

だから確信できる。果南はまだ、school idolのことを本当は好きなんだって。そしてそれはダイヤもそう。だからきっとまた一緒にやれるはず。あの時の失敗だって、一緒なら乗り越えられる。今は千歌っちたちもいるもの。

 

それに……

 

千歌っちと話しているこの場の唯一の男性に視線を向ける。

 

比企谷八幡先生。

 

あの人から教えてもらった、伝説ともいえるschool idolを陰で支えた立役者。

 

『比企谷君はね~人をよく見てるよ。よく見て、見すぎてるって感じかな?人が表面に晒している部分だけじゃなくて、その奥底までも見ている感じ。鞠莉ちゃんは凄いと言ってくれるけど、彼の言う私が被っている「仮面」は、比企谷君には全然通じなかったもの。初対面で全部見透かされちゃってた。流石に初めてだったなぁ、そんな人は。そういうところが面白いし、彼の凄いところでもあるんだけどね~』

 

彼のことを教えてくれた女性の話を思い出す。きれいな黒髪となんでもお見通しな雰囲気。パパの日本のビジネスパートナーの社長令嬢でもあるその人は、私にとって憧れだった。何回か顔を合わせるうちに親しくなり、アドバイスとして話を聞かせてもらいもした。

 

『私には妹がいるんだけどね~。昔はあんまり仲いいわけじゃなかったし、今も仕事ではなかなか会えないし。こういうことでお姉さんぶる機会がなかったから、なんだか新鮮な感じがする』

 

なんて言いながら。色々話を聞かせてもらっていたから私は知っていた。

 

彼女がどれほど努力しているかも、どれほど大変な思いをしているかも、全部知っていた。

 

でも、そんな様子を彼女は絶対に他人には見せなかった。完璧であることの重圧なんてみじんも感じていないようなその強い姿勢に、その姿勢を裏打ちするための努力を誰にも気づかせないその「仮面」に、私は憧れた。

 

その「仮面」を初見で見破った人がいたなんて。

 

『あぁそうそう。鞠莉ちゃん確かスクールアイドルやってたんだよね?来年からまたその学校に戻るらしいけど、続けるの?』

『ええ、そのつもりよ』

『ふ~ん。じゃあついでにいいこと教えてあげちゃおっかな』

『いいこと?』

『比企谷君、来年から教師になる予定なんだけど……彼の力を借りたらいいと思うよ』

『力を?』

『彼、高校時代にラブライブを優勝したμ’sのマネージャーやってたの。それになんだかんだいって結構お人よしだからね~。廃校の危機から学校を救いたい!なんて聞いたら、きっと力になってくれると思うんだけどなぁ~』

 

そう言いながら彼女はこっそりと写真を見せてくれた。

 

そこに写っていたのはラブライブの優勝旗を持っているμ’sのメンバーと何人か別の生徒。雑誌等にも一切掲載されているのを見たことがない。完全にプライベートで記念撮影をした時のものらしい。

 

『彼が、比企谷君』

 

写真の指さされた箇所には、μ'sのリーダー、高坂穂乃果に飛びつかれながら、驚いた表情になっている特徴的な目をした男子だった。

 




ん、まぁまぁこんな感じで物語は進んでいきますよ~。

いつかちゃんと過去回想篇もやるつもりではいますが、まぁそれもどの段階で入れるべきやら……

まぁそれ以前の問題ですね、はい。
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