やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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スランプというか仕事の影響というか、最近どうにも筆が進まないトマト嫌い8マンです。

いやぁしかしスクスタ、楽しいですねぇ。
衣装もいろいろあって(お金はかかるかかる)本当にやりがいありますね。

しかし仕事がなぁ、仕事めんどいんだよなぁ。

まぁ、本日はちょっとしたお出かけ前に続き載せま~す。


きっとその悩みは……

黒澤の家は高海たちよりかは学校に近い場所にあるらしいが、いかんせんあまり遅くなるのもよくないということや、日の落ちる時間が遅くなりつつあるもののそこそこ暗くなっていることを踏まえ、黒澤を家に送りながら相談を聞くこととなった。

 

自転車を押して歩く俺と隣を歩く黒澤……あれ、これ捕まったりしないよね?大丈夫だよね?

 

「あの、先生」

「なんだ?」

「その、花丸ちゃんのことなんですけど」

 

やや俯きがちのままではあるが、黒澤が本題に入る。相談内容については、まぁ、その実なんとなく察しはついていた。今日の練習でも、黒澤が国木田のことをずっと見ていたしな。

 

恐らく、というよりもほぼ確信めいたものではあるが、黒澤は国木田に対して負い目を感じているのだろう。それはきっと、

 

「花丸ちゃん、本当はスクールアイドルやりたくないんじゃないかって思ったんです」

「じゃあ、何で体験入部なんか?」

「それは……ルビィが、入れるようにしてくれたんだと思います。花丸ちゃん優しいから。でも、入ってからずっと思っちゃうんです。花丸ちゃんに、無理させちゃってるんじゃないかって。本当はやりたくないのに、ルビィのために……」

 

黒澤がスクールアイドル好きなのは明らかだった。こっちに来てからの短い間でもひしひしと伝わってくる熱意に、にこや花陽に匹敵しうるほどのものを感じ取れるほどだから、その想いの強さは察っせられるだろう。

 

そんな黒澤だが、何かしらの理由があって自分からスクールアイドル部には入ろうとはしなかった。それについても思い当たる節があるが、今回の本題はそこではない。

 

スクールアイドル部に入ろうとしていなかった黒澤が入るきっかけとなったのは、間違いなく国木田だろう。二人で一緒に体験入部に来たことからもそれが推測できる。黒澤から誘って国木田が付き添った可能性もあったかもしれないが、あの様子ではそれはないだろう。

 

国木田は確かに社交性が黒澤よりも高いが、それは自分を持ったうえでのものだ。かつての由比ヶ浜のように、ただ周りに同調し、追従し、流されるものではない。ゆえに、黒澤にお願いされたからといって、それが黒澤のためにならないと判断した場合には、断る強さも持っているだろう。むしろ周りに合わせて、様子をうかがって行動をとってしまうのは、黒澤の方といえる。

 

その理由もシンプルだ。黒澤が優しい女の子だから。

 

予め言っておくと、以前の俺なら優しい女の子は嫌いだと断言していただろう。その優しさはありとあらゆる人に向けられ、その本心を隠し、気を遣い、自分を押し殺す。そういった姿を滑稽に感じていたこともあったし、何よりそんな女の子と関わると自身にとってろくな

 

ことがない――正確には自分が勝手な理想を押し付けて勝手に幻滅してしまうだけだが――ということもあったからだ。

 

ただ、今は違う。

 

あいつらが、そんな風に思わせてくれたから。

 

だから考えた。この場合国木田と黒澤、二人が何を考えどのように行動し、そしてどう思っているであろうかを。いつか恩師に言われた、理屈だけじゃない、人の感情を考え、最善の方法を見つけ出すために。

 

「なぁ、黒澤」

「は、はい!」

「お前は体験入部してみてどうだった?」

「えっ、ルビィが、ですか?」

「まぁ、感想を聞きたいだけだ。深く考えずに思ったまま回答してくれ」

「そ、それは……とっても楽しい、です」

「だよな。はたから見ててもそう思ったわ。んじゃ、国木田の方はどうだ?黒澤から見て、体験入部中の国木田はどんな風に見える?」

「花丸ちゃんは……」

「楽しそう、だったんじゃないか?黒澤と一緒で」

 

由比ヶ浜のように人を良く見ている黒澤にもわかっているだろう。練習の時も、部室で高海たちと話をしている時も、そして体力が限界に近くてふらふらになっている時でさえ、彼女は笑っていた。心の底から楽しそうに。

 

ほんのわずかの間観察していただけの俺でもわかるのだから、黒澤が気づいていないはずがない。ただ問題なのは、

 

「あとは国木田がどうしたいのか、それをちゃんとはっきりさせてやるしかないんじゃないのか?」

「花丸ちゃんが?」

「多分だけど、あいつは自分には似合わないと、スクールアイドルなんてキラキラした場所に、自分はふさわしくないと、そう思ってるんじゃないか?」

「そんなことっ」

「そうだな。けどな、そういうことは周りがいくら言っても、結局は本人がどう思っているかにかかっちまうもんだ。幼い頃からずっとそう思ってきていたとしたらなおさらな」

 

 

『そういうの似合わないし』

『なんでそう思うんだ?』

『ずっとそうだったから。小さい頃に一度着てみたことあったにゃ。でも、』

『似合わない、って言われた……か。それも恐らく男子に』

『……ヒッキー先輩凄いにゃ、どうしてわかったの?』

『まぁ、これでもそういうのを見る目だけはあるからな』

 

一人中庭の木に背中を預け、体育座りをしていた一人の少女を思い出す。妹と同い年の少女の様子に、思わず父性――いやこの場合は兄性か?――本能が仕事をしてしまい、話を聞くことにした。別段表情を見るわけでもなく、人ひとり分は空いているであろう距離。ただ、その少女の話に思ってしまった。

 

ああ、彼女もまた周囲から受けた悪意のない理不尽に悩んでいるのだと。

 

そして今回の国木田もそうだ。つくづくそういうものを、そういう者を見つけることに、気づけることに自分は優れているらしい。やはりスタンド的な何かが……とと、危ない危ない。危うくまたくだらない思考を巡らせ、後から死にたくなるというテンプレをなぞるところだった。

 

まぁ、つまり何が言いたいのかというと、だ。

 

「これは俺の友達の話なんだがな――」

 

それをどうにかしたいと考えている少女に、アドバイスをしてやるのもまた、教師らしいことじゃないだろうか。

 

――――――――――――――――――――

 

side ruby

 

「これは俺の友達の話なんだがな、そいつは自分が可愛くないと思いこんでいた。子供の頃に同級生の男子に言われたことがきっかけで、それ以来ずっと自分には可愛いものは合わない、そんなふうにずっと思っていた」

 

突然友達の話をし始めた先生に、ルビィは少しだけ戸惑いました。こっちを見ていなくて、ただまっすぐ前を見ながら話していましたが、それでも先生が何か大事な話をしようとしている、ような気はしました。

 

「まぁある日そいつはキラキラした世界を知ったんだ。自分には縁がないと思っていたキラキラしたその世界に、でも確実にそいつは心奪われ、惹かれていた。ただ、そいつは自分には似合わないから、ってその気持ちを心の奥底に、無意識のうちにしまい込んでしまったんだ」

 

先生の語る話、それはどこか花丸ちゃんにも重なっているような気がしました。自分に対する自信がない、似合わないという理由で楽しいという気持ちにふたをしてしまう。

 

いえ、もしかしたら本当は気づいていないのかもしれません。でも、本を読んでいるとき以外に、あんなに楽しそうにしている花丸ちゃんを見るのは初めてで、そんな花丸ちゃんを見るのがうれしくて。

 

「正直こういうのは本人が似合う似合わないを考えるのではなく、やりたいと思う、或いはそう思っていることに気づかない限りはどうにもならない。それについては他人が何を言っても受け入れられない」

「そ、それは……」

「ま、それについては国木田次第だしな。っと、着いたか」

「あ、はい」

 

気が付けば、もう家の前まで着いていました。

 

「んじゃ俺も帰るわ」

「あ、はぃ」

「……そうだ。最後にちょっとだけ言っておくわ」

 

自転車にまたがったまま、比企谷先生が振り返ります。

 

「国木田のことは最終的には国木田本人が決めなきゃいけない。けどそれは、お前も同じだ、黒澤」

「えっ」

「体験入部ってのは楽かもしれないな。部員と同じように活動はするが、正式な部員じゃないからいつでも逃げ出せるし、部活に対する責任もほとんどない。でも、いつまでもそのままいられるわけじゃない。もう一週間になるわけだし、国木田もお前もそろそろ決めないといけないわけだ。スクールアイドルを続けるか、辞めるか」

「る、ルビィは……」

「そしてこの選択は誰が何を言ったからとか、他の誰がどうしたからとかそういったことで決めるなよ。あくまで決めるのは自分だからな。自分がどうしたいのか、しっかり考えとけ。じゃ、お疲れさん」

「あ、」

 

そういうだけ言って、ルビィが呼び止める間もなく比企谷先生は自転車を漕ぎだしてしまいました。

 

自分がどうしたいのか。

 

ルビィは人見知りだから、つい人の様子を見てしまいます。仲いい人のことは特に。

 

今もお姉ちゃんと花丸ちゃんのことをずっと見てて……

 

でも、ルビィのことは見ていなかった、かも、しれません。

 

ルビィがしたいこと、それは……

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