やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある 作:トマト嫌い8マン
すっごかったなぁ……
……あ、こっちの物語、続きまーす
「花丸ちゃん、どうしてここに?」
「あ、そのこの人の道案内をしてて、そしたらここに」
「そ、そうなんだ」
目線を合わせてはそらしを繰り返す国木田と黒澤妹。いや何?君たちは付き合いたての中学生カップルか何かですか?
話を切り出しにくそうにしている二人を、どうやら二年生組は見守ることに決めたらしく、少し離れて口を出そうとしていない。この空気の流れはさすがに読むべきか……そう判断し、俺も見守ろうと思った時、
「もしかして、あなたたちがスクールアイドル部かな?」
「「「「へ?」」」」
あっさりその空気に割り込んでしまう奴が隣にいた。
「ねぇねぇヒッキー先輩、この子達がそう?」
「いやそうだけど、お前今このタイミングで聞くか普通?」
くいくいと服の袖を引っ張るようにしながら、興味津々という表情でこちらを見上げてくる。いや割と通常運転なところは元気にやってるんだなぁとか、髪が伸びたことでまた女の子らしさが上がったなぁとかいろいろと思うところはある。ありますよ。でもね、今じゃなくていいだろうが……
「そっか~。さっき花丸ちゃんから聞いたの、ヒッキー先輩の教え子だったんだ」
「あの、あなたは?」
「あ、ごめんね、急に話しかけちゃって」
おずおずといった具合に話しかけてきた桜内に対し、彼女は笑いながら応える。
「えっと、私はヒッキー先輩の友達だよ。他にも二人来る予定なんだけど、週末だからヒッキー先輩に会いに来たんだ」
「えっ、他にも二人?何それ聞いてない?」
「にゃ?連絡してなかったっけ?」
「来てないぞ。ただお前からくるって連絡しかもらってない」
「そうだったかな?でも、二人は遅れてくるって言ってたから先に来ちゃった」
「おい待て、この時間に来るってことはまさか……「あの~」あ、悪い」
いかんいかん。つい高海たちを放置して話し込みそうになってしまっていた。ほら、なんか国木田と黒澤妹とかぽかんとしちゃってるし。
「まぁそのなんだ。本当は刺激剤としてこいつを呼んだんだ」
「刺激剤?」
「ああ。国木田のな」
「えっ、オラ?」
展開に理解が追い付いていないようで目をぱちくりさせる国木田。訳が分からないというように大人二人を見つめる。
「なぁ、国木田とはどんな話したんだ?」
「え?スクールアイドルのこととか、私たちの経験とか」
「んじゃ加入した時のことは?」
「もちろん!」
「あ、そうなのね」
国木田の気持ちに一石投じるために顔合わせしてもらおうかと思っていたが、どうやらいつの間にかそれは終わっていたらしい。まぁ、目的は果たせたらしいからよしとするべきか。
「なぁ、国木田」
「は、はいズラ!」
「いや、そんなかしこまらなくていいから。話をするの俺じゃないし」
「え?」
「俺よりもお前に話したいことがあるやつがいるってことだよ」
そう言いながら国木田から視線を外し、その隣に立っている黒澤妹に視線を向ける。丁度彼女もこちらを見ていたらしく視線が合う。小さく首を動かして同意の意を示すと、どうやら言いたいことは通じたらしく、黒澤妹も小さく頷いた。
「ねぇ、花丸ちゃん」
「ルビィちゃん?」
「ルビィね、スクールアイドル部に入ることにしたよ」
「そっか。よかったね「でもね!」?」
いつになく強い視線を自分に向けてくる黒澤妹に、国木田も驚きの表情を浮かべている。
「ルビィ、ずっと見てたよ。花丸ちゃんのこと。花丸ちゃん優しいから、ルビィがスクールアイドル部に入れるように我慢してるんじゃないかって、ずっと見てた」
「そんな、オラ……マルは別に」
「最初はそうだったんだと思う。でも、今は違うんだよね。だって見てたらわかるもん。花丸ちゃんが、スクールアイドルのこと好きになってるって。ルビィと同じくらい、心から楽しんでいるって!」
例えばそれは振りつけの練習の時。例えばそれは歌の練習の時。例えばそれは高海たちと話している時。例えばそれは辛いはずの体力づくりや階段への挑戦の時。
どんな時でも、国木田花丸の顔から笑顔が消えることはなかった。
それは何かを我慢している者の表情ではなく、全力で楽しむ者の表情。
本人が気づいていたのかどうかはわからないけれども、いつの間にかそこは国木田花丸にとって、嘘偽りなくいたいと思える、思わせてくれる場所になっていた。
その気持ちは「本物」になっていたのだろう。
「でも、オラは、その……」
「それに花丸ちゃん、ずっと大事に持ってるでしょ?スクールアイドルの雑誌」
反射的だったのであろう。国木田の手が肩にかけているカバンに添えられる。学校のカバンとは別に練習の時にいつも持ち歩いている小さめのカバン、その中にはいつも同じ雑誌が入っていた。スクールアイドルの雑誌。
「その雑誌、花丸ちゃんいつも読んでたよね。おんなじページを大事そうに」
「それは……でも、マルには無理だよ。オラとか、ズラとか言っちゃうし」
「花丸ちゃんが見てたの、μ’sの星空凛ちゃんのページだったよね「にゃ?「おいこら」」?あの、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない続けてくれ。すまん」
思わず反応しかけた隣の口をふさぐ。気持ちはわかる、わかるが抑えてくれ頼むから。今ここで反応するのは2つの理由で面倒だ。
1つはもちろんこの流れが変な空気で断ち切られてしまうから。
もう1つは、できれば俺と「彼女たち」との間に何か繋がりがあることはまだ高海たちには伏せておきたいと思っているから。
ちらりと隣からの抗議の視線を受けている気もするがとりあえず無視だ無視。話を続けてくれと黒澤妹に空いている方の手でジェスチャーする。
「えっとね。その子も実は自分はスクールアイドルに向いてないってずっと思い込んでたんだって」
「……この子も?」
「うん。でも大切な友達と大切な仲間に背中を押してもらえたって。そうしたら気づいたんだって」
「何に?」
「似合う似合わないじゃなくて、やりたいかどうかが大事なんだ、って」
「やりたいか、どうか」
「そうだよ」
黒澤妹の隣に並ぶように高海、渡辺、桜内が立ち国木田に笑顔を向ける。
「花丸ちゃんも私たちみたいにスクールアイドルが大好きって気持ちがあるなら、一緒にやってみよ?」
「私だって、最初はやるなんて想像していなかったもの」
「一緒なら絶対に楽しいよ」
三人の笑顔を見て、それから黒澤妹を見る国木田。
「花丸ちゃん」
そう言いながら手を差し出す親友の手を、そっと国木田は握り返した。
「マル、やりたい。ルビィちゃんや先輩たちと一緒に!」
「「ようこそ、スクールアイドル部へ!」」
さてさて紆余曲折を経て、無事に国木田もスクールアイドル部に入部する決意を固めたわけで、俺としても無事に事が済んで一安心なのだが……
「――ところで、比企谷先生の知り合いですか?」
「あ~、まぁそれは、だな……」
一先ずこの状況をどうにかするべきなのかもしれない。
その後、流石に時間的に戻らなければまずいということもあり、会話もほとんどなく急いで学校に戻ることとなった。このままなんとな~く話が流れてくれないかな~とか期待したものの、結局校門前であいつを待たせることになってしまい、当然のように全員で帰る流れとなっていた。
で、坂道を下り始めたわけだけれども――
「も、もしかして先生の、彼女さんですか!?」
うっわぁ、すっげ~キラキラした目でこっち見てやがる。高海の奴、ラブソング作りたいとか言ってたくらいだし、かなり興味津々って感じだわ。まぁもっとも、
「いや違う。高校の時の知り合いだ」
「「え~」」
と抗議の声が二つ。
「いや、何でお前までその反応?」
「その紹介の仕方はなんか不本意だにゃ、じゃなくて不本意だな~って」
「事実だろ。学校はずっと別なわけだしな。まぁ、とりあえずお前らバスだろ?早く行かないとまずいんじゃないか?」
「あっやばっ!千歌ちゃん、早く行かないともうすぐバス来ちゃう!」
「えっ、先生は」
「見ての通り自転車持って帰るんだよ。こいつ一緒だから乗れないしな」
「あ、そうですよね……また詳しく聞かせてくださいね!明日……はお休みでしたっけ?」
「まぁな」
「じゃあ週末明けに!」
「千歌ちゃん、急がないと!」
「わかった!先生、さようなら!」
最後に大きく手を振ってから、高海は少し先で待っている桜内と渡辺を追いかけるように駆け出していく。合流した三人は、下で待っているであろう新入部員二人の元へ走っていくのだった――
――で、だ。
「んじゃ早く戻るとするか。お前の話だと、いつの間にか他にも来ることになっているらしいしな」
「お~!でも私は走るれるから、ヒッキー先輩は自転車使ってもいいよ?」
「いやチャリと並走するとか、君どこの猿の腕の後輩?」
「にゃ?」
「いやいい、忘れてくれ」
まぁなんとかこいつの名前が出ることは避けられたな……いや、別にどうしても隠さないといけないわけではないのだが。
「とりあえず家に行くしかないか。行くぞ、凛」
「おっけ~!」
髪の長さが伸びても、更にぐっと女の子らしい見た目になっても、その変わらない明るさに少しほっとさせられながら、俺は星空凛と共に家を目指すのだった。
ここからちょっとだけサンシャイン本編から離れた展開になります。
まぁたまにはそういうところもないとね、書くの難しいけど。
とりあえずフェス1日目は諸事情あって見られなかったので、25日のディレイビューイングを楽しみにしてます。